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第3章

17話 美容師の恭子さん 宅飲みデート

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お互いに会える時間が二十一時以降という事で、恭子さんの部屋で会う事になった。

待ち合わせ場所で待っていると恭子さんが迎えに来てくれて部屋まで行った。

そしてつまみを昨日から作っていたと言ったので、お土産でまた得意のワインと一万円の商品券を入れたのを渡した。

宅飲みが始まった。

「頂いた、お土産を開けても良いですか?」と言われたのですが、「私が帰ってからにしてもらえませんか?」とニコニコして言った。

素直に「はい」と恭子さんは答えてくれた。

ビールで乾杯してその後はハイボールを飲みました。

アテは、肉じゃが、スパサラダ、鶏の唐揚、長崎皿うどん、キュウリの糠漬け、ほうれん草の白和え、納豆、湯豆腐などだった。

料理がちゃんとできる子なんだと感心して、「全部、美味しいです」とお世辞ではなく言った。

「ありがとうございます」と嬉しそうなんだけど、私はどうしても丁寧語になって、彼女も言葉が崩れないからお互いに硬い言葉になってしまっていた。

一緒に小さなコタツに入って世間話をしながら飲んでいた。

比べて悪いんだけど、京香とはどうしても違うんだよな。

やっぱり、肉体関係がないからなのか、いつまでも裃を着ていて話している感じで礼儀正しいのかもしれない。

兎に角、話しが盛り上がらないから彼女の作った料理を、「美味しいです。美味しいです」と言って全部平らげるしかなかった。

「久々の自炊でこんなに綺麗に食べてもらえて嬉しいです。沢山、食べて下さる男性が好きなので、本当に作り甲斐があります」

「そう言っていただけると」

(京香とは何処が違うのかな?)と考えながら恭子さんを見ていた。

(性的な目ではどうしても見られない)と思いながら。

(恭子さんとしたら、絶対にまた『結婚』を言い出すよな)と思いながら。

色気を感じてしたくなる時って、私の場合はいつも女性の方からだが、恭子さんに言い寄られた時もラブホに連れて行く気持ちにはなれなかった。

恭子さんがこの間の美容師のコンテストの際の動画を見せてくれた。

実に地味なカットの映像だった。

スポーツだったら点数が入ると、お客さんも騒ぐから、褒めるタイミングが分かりやすいが、さすがにカットのコンテストはシーンと張りつめた空気の中でやっていたし、見たこともないので、どこで「凄い!」と言って良いのか分からなかった。

「凄いね!」と言えないまま動画が終了した。

沈黙の後、「格好良かったよ」がやっと出た言葉だった。

その後もつまみを食べ終わったら、何だか居づらくなって、「今日はご馳走様でした」と言って帰らせてもらった。

帰宅すると彼女から電話が来て、「お土産、どうもありがとうございました。今日は楽しかったです。またお逢いしたいです。おやすみなさい」と。

私も「ご馳走様でした。全部美味しかったです。またお逢いしましょう。おやすみなさい」と言った。

その後、京香から「何で留守電にしておくのよ!」との苦情の電話が。

何度も電話をくれていたのは知っていたが、電話をしなかったのを怒っていた。

「ごめん、親戚の葬儀に参列していたからさ」と言って嘘を言った。

「だったらいいんだけど」と納得してくれたが、京香と肉体関係になってからは私に頻繁に連絡をくれるようになっていた。

ちょっと面倒臭いんだけど。と思いつつ。

生意気かな?

つづく
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