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第2章
44話 結婚式場探し
しおりを挟む 命を捨てた騎兵の足止め。
それでも、敵の勢いは止まらない。
遠くから微かに侍女たちの悲鳴が聞こえてくる。
だけど馬車は止まらない。止まるわけにもいかない。
そして遂に、カーナンの町へと突入した。
門番はいたが、公爵家の馬車だ。それに20騎とはいえ護衛もいる。そりゃ通すわよね。
けど、それは考えが甘かった。
いきなり射抜かれる御者。
制御を失って、暴走した馬のせいで馬車は横転。
いきなり視界が回って吐きそうになる。
だけどクラウシェラはそれどころじゃないわよね。
でもオーキスがしかりと抱きかかえている。これなら何とか大丈夫そう。
だけと、オーキスの骨が折れた音がハッキリと聞こえた。
「……予想は……していたわよ」
「お逃げ……ください。まだ、サリウスらがいます」
右足があらぬ方向に曲がっているが、それでも剣を杖にして立ち上がる。
「私はここまでです。ですが、1秒でも時を稼ぎましょう」
ちょちょちょっと待って!
ここでオーキスが死んだら、これからの未来はどうあるのよ!?
あたしが介入したから?
それで歴史が変わっちゃったの?
外では激しい戦闘が行われている。
見た事があるマークの付いた鎧を着た兵士達。
あれはこの街のシンボルだ。
じゃあ、もうここは敵地だったって事!?
サリウスはさすがに5武行典。ほとんど溜めも無く、一度に3本の矢で3人の兵士を射ている。
あれで騎乗しての動きながらなんだからすごい。
一方で、弓はサリウスに当たらない。
これは別に特殊能力って訳ではなくて――というか、もう5武行典って時点で特殊能力みたいなものなんだけど、自分周囲、それもかなりの広範囲にある矢は全て把握している。
誰が射て、どんな軌道でどう飛んでどこに当たるか。
だから、彼に当てる事は出来ない。通常の手段では。
だけど味方の騎兵はじわじわと削られていく。
そりゃそうよね。
どう見ても、相手は数百。それに左右からも、傭兵らしい集団が迫って来る。
そうよね。裏切って、ここまでの計画に加担していたのなら、準備は万端だわ。
この様子だと、完全に四面楚歌。北や南はもちろん、西も東も結局敵だらけ。
でもいったい誰なんだろう。これほどの準備ができるほどの人間は。
多分言われれば分かる……と思う。伊達にこのゲームはやり込んでない。
だけど今はもうそんな次元じゃないかも。
ああ、結局あたし、彼女と一緒に破滅する運命だったのね。
オーキスに庇われていた事もあるけど、クラウシェラには異様なほど怪我はない。
だが馬車から出ると同時に無数の矢が降り注ぐ。
だがそれを全て矢で撃ち落とす弓のサリウス。
あまりの神業に、敵軍に動揺が走る。
そして彼はクラウシェラの前まで来ると、
「背に乗ってください。いざという時、貴方だけは城へと取れていって欲しいとケルジオス騎士候から頼まれています」
「さすがに予想していたのね。まあ違和感程度でしょうけど。貴方も貧乏くじを引かされたものね。ではわたくしからもお願いよ。代わりにオーキスと残存兵を連れて、この町を脱出して頂戴」
「生き残りは我ら3名だけです。それに彼はもう……」
「オーキスは死なないわよ。わたくしの番犬ですもの」
「だとしても、今馬に乗るべきは――」
「くどい! わたくしを誰だと思っているか! お前たちがいる方が満足に戦えないのよ」
――そうだった。
今まで普通に生活していたから忘れていた。
彼女は最強のラスボスにして――、
「貴方は決して自らの命を諦めないでしょう。そして誰かのために死ぬこともないし、許される立場にもありません。そのことを一番よく知っているのは貴方だ。その言葉を信じましょう。では」
そう言いながらも迫って来る多数の敵兵を射抜くと、怯んだ隙に気を失っていたオーキスを馬の背に乗せた。
うん、本当に生きている。良かったー。
こうして、サリウスが走り去っていく中、クラウシェラだけが残された。
当然サリウスの方にも少しの兵は行ったが、いかんせん彼を倒しても何の手柄にもならない。
公爵家の部下ではなく、ただの求道者であることを皆が知っている。
馬の背にズタ袋のように括り付けられている兵士も、どう見たって瀕死だ。
それ以前にサリウス相手にどれほどの被害を出したか。
さすがにもうまともには追えないだろう。
その分、ほぼすべての敵が殺到する。
後ろから追ってきた騎兵たちも、とっくに町に入っている。
味方は誰もいない。全方位が敵。だからこそ、彼女は全ての力を開放できる。
全身から噴き出す黒いオーラ。
それは幾つにも別れた渦のように彼女の体の周りをまわる。
そして、その先端はまるで竜の様。ううん、見えるというか、本当にそうなのよね。
ただまだゲームの段階まで成長していないから曖昧な姿だけど。
将来、彼女はこう呼ばれる事になる。
残虐なる破壊者。冷酷無比の魔女。邪竜令嬢と。
その姿を見て動揺する敵兵たち。
実際に知らなかったのだろうと思う。
あたしも初めて見た時は驚いたわ。即ゲームオーナーになったもの。
ゲームの時点ではその異名自体は轟いていたけど、そりゃそう呼ばれるきっかけがあるはずよね。
でもそれが今だったなんて。
渦を巻いていた黒い幻影のような竜――といって良いのかな? 頭以外の胴体は長い蛇のような感じだけど。
でもそれに巻き込まれた兵は一瞬にして真っ黒い炭となって崩れ落ちる。
武器も鎧も溶け、近くにあった建物や行商のテントに火をつけ、ほんの一瞬で町は阿鼻叫喚に包まれた。
それでも、敵の勢いは止まらない。
遠くから微かに侍女たちの悲鳴が聞こえてくる。
だけど馬車は止まらない。止まるわけにもいかない。
そして遂に、カーナンの町へと突入した。
門番はいたが、公爵家の馬車だ。それに20騎とはいえ護衛もいる。そりゃ通すわよね。
けど、それは考えが甘かった。
いきなり射抜かれる御者。
制御を失って、暴走した馬のせいで馬車は横転。
いきなり視界が回って吐きそうになる。
だけどクラウシェラはそれどころじゃないわよね。
でもオーキスがしかりと抱きかかえている。これなら何とか大丈夫そう。
だけと、オーキスの骨が折れた音がハッキリと聞こえた。
「……予想は……していたわよ」
「お逃げ……ください。まだ、サリウスらがいます」
右足があらぬ方向に曲がっているが、それでも剣を杖にして立ち上がる。
「私はここまでです。ですが、1秒でも時を稼ぎましょう」
ちょちょちょっと待って!
ここでオーキスが死んだら、これからの未来はどうあるのよ!?
あたしが介入したから?
それで歴史が変わっちゃったの?
外では激しい戦闘が行われている。
見た事があるマークの付いた鎧を着た兵士達。
あれはこの街のシンボルだ。
じゃあ、もうここは敵地だったって事!?
サリウスはさすがに5武行典。ほとんど溜めも無く、一度に3本の矢で3人の兵士を射ている。
あれで騎乗しての動きながらなんだからすごい。
一方で、弓はサリウスに当たらない。
これは別に特殊能力って訳ではなくて――というか、もう5武行典って時点で特殊能力みたいなものなんだけど、自分周囲、それもかなりの広範囲にある矢は全て把握している。
誰が射て、どんな軌道でどう飛んでどこに当たるか。
だから、彼に当てる事は出来ない。通常の手段では。
だけど味方の騎兵はじわじわと削られていく。
そりゃそうよね。
どう見ても、相手は数百。それに左右からも、傭兵らしい集団が迫って来る。
そうよね。裏切って、ここまでの計画に加担していたのなら、準備は万端だわ。
この様子だと、完全に四面楚歌。北や南はもちろん、西も東も結局敵だらけ。
でもいったい誰なんだろう。これほどの準備ができるほどの人間は。
多分言われれば分かる……と思う。伊達にこのゲームはやり込んでない。
だけど今はもうそんな次元じゃないかも。
ああ、結局あたし、彼女と一緒に破滅する運命だったのね。
オーキスに庇われていた事もあるけど、クラウシェラには異様なほど怪我はない。
だが馬車から出ると同時に無数の矢が降り注ぐ。
だがそれを全て矢で撃ち落とす弓のサリウス。
あまりの神業に、敵軍に動揺が走る。
そして彼はクラウシェラの前まで来ると、
「背に乗ってください。いざという時、貴方だけは城へと取れていって欲しいとケルジオス騎士候から頼まれています」
「さすがに予想していたのね。まあ違和感程度でしょうけど。貴方も貧乏くじを引かされたものね。ではわたくしからもお願いよ。代わりにオーキスと残存兵を連れて、この町を脱出して頂戴」
「生き残りは我ら3名だけです。それに彼はもう……」
「オーキスは死なないわよ。わたくしの番犬ですもの」
「だとしても、今馬に乗るべきは――」
「くどい! わたくしを誰だと思っているか! お前たちがいる方が満足に戦えないのよ」
――そうだった。
今まで普通に生活していたから忘れていた。
彼女は最強のラスボスにして――、
「貴方は決して自らの命を諦めないでしょう。そして誰かのために死ぬこともないし、許される立場にもありません。そのことを一番よく知っているのは貴方だ。その言葉を信じましょう。では」
そう言いながらも迫って来る多数の敵兵を射抜くと、怯んだ隙に気を失っていたオーキスを馬の背に乗せた。
うん、本当に生きている。良かったー。
こうして、サリウスが走り去っていく中、クラウシェラだけが残された。
当然サリウスの方にも少しの兵は行ったが、いかんせん彼を倒しても何の手柄にもならない。
公爵家の部下ではなく、ただの求道者であることを皆が知っている。
馬の背にズタ袋のように括り付けられている兵士も、どう見たって瀕死だ。
それ以前にサリウス相手にどれほどの被害を出したか。
さすがにもうまともには追えないだろう。
その分、ほぼすべての敵が殺到する。
後ろから追ってきた騎兵たちも、とっくに町に入っている。
味方は誰もいない。全方位が敵。だからこそ、彼女は全ての力を開放できる。
全身から噴き出す黒いオーラ。
それは幾つにも別れた渦のように彼女の体の周りをまわる。
そして、その先端はまるで竜の様。ううん、見えるというか、本当にそうなのよね。
ただまだゲームの段階まで成長していないから曖昧な姿だけど。
将来、彼女はこう呼ばれる事になる。
残虐なる破壊者。冷酷無比の魔女。邪竜令嬢と。
その姿を見て動揺する敵兵たち。
実際に知らなかったのだろうと思う。
あたしも初めて見た時は驚いたわ。即ゲームオーナーになったもの。
ゲームの時点ではその異名自体は轟いていたけど、そりゃそう呼ばれるきっかけがあるはずよね。
でもそれが今だったなんて。
渦を巻いていた黒い幻影のような竜――といって良いのかな? 頭以外の胴体は長い蛇のような感じだけど。
でもそれに巻き込まれた兵は一瞬にして真っ黒い炭となって崩れ落ちる。
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