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第2章
43話-1 康子先生のアトリエで作業
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(ここから康子さんを康子先生や先生に変更します)
この頃の私は康子先生の家の鍵を持たされていたので、彼女が不在でも勝手に母屋からアトリエに入って作業をしていた。
この日の先生は娘さんの店に行っていたので私一人で作業をしていると、先生は帰宅し、彼女は夕方だと言うのに相当、お酒が入っている感じだった。
土練りを終えて、電動ロクロの上に土を置き、スイッチを入れて回し作業をしていた。
取り急ぎ、二十名分の真凛が貰ったと言う結婚祝いのお返しの小皿、五枚セットを作っていて全部で百枚だった。
皿は意外と作り易いのですが、プロではないので、全く同じ大きさにするのが素人には難しい。
康子先生曰く「素人の作品はプロと違ってそれが味なのよ」と言ってはくれはいたが、やはり使う人の事を考えるとなるべくは同じ大きさの物にしてあげたいと思っていた。
そして何よりも次の大物のマグカップを作る為の高台の削りも慣れたかったので皿にしたのだ。
実際に人間国宝の孫が作ったマグカップは高台らしいものではなかったのだが、それでも康子先生曰く、「高台削りは慣れだから恐れずに頑張って!」と言った。
高台削りに使う道具が三種類で、かきべら、木ベラ、そして私が得意としているカンナだ。
私が今までやっていた高台はカンナで削る事だけだったが今回は康子先生が様々な方法を目の前で見せてくれた。
こういう事も個人教授なので有難かった。
彼女はカンナを使用せずに木ベラなどで削っていた。
私がモタモタしていると、先生が見本を見せてくれて手を添えて教えてくれていた。
その時に私はドキドキしていた。
まずはこれしかやった事がない、輪高台だった。
同心円の輪状になった最も一般的なもので蛇の目高台、一重高台などとも言う。
次に三日月高台だ。
高台の厚さが均等でなく、片方は厚くもう片方が薄い三日月形のものだ。
先生も高台を削って、たまたま出来てしまうと言っていた。
そして切高台で、装飾として高台の輪の一部をかきとったもの。
竹の節高台は、削り出した竹の節状にしたものと、順繰りに見せてくれていたが、やっぱり今は新たな事に挑戦するよりも慣れている高台を極めることに専念する事にした。
もっと他にも色々あるそうだが、こういった高台の呼び名と形状を良く学び、実際に削ってみて自分の好みのパターンを見つけていくのが上達の近道だと先生は言った。
また先生は「こうやってカンナでキッチリと削るのも悪くはないけど、それだけでは味が出ないから、マグカップの時には様々な高台に挑戦するのもアリじゃない?」と言った。
つまり先生はプロだから客に合わせなくてはいけない時もあるが、私はアマチュアで作品を作っているのだから、個性を出すのが勝負だということだ。
基本が分かってない内に個性を出すのは難しいので、そう言う意味でも先生に付いて基本を学んで行こうと改めて思っていた。
つづく
この頃の私は康子先生の家の鍵を持たされていたので、彼女が不在でも勝手に母屋からアトリエに入って作業をしていた。
この日の先生は娘さんの店に行っていたので私一人で作業をしていると、先生は帰宅し、彼女は夕方だと言うのに相当、お酒が入っている感じだった。
土練りを終えて、電動ロクロの上に土を置き、スイッチを入れて回し作業をしていた。
取り急ぎ、二十名分の真凛が貰ったと言う結婚祝いのお返しの小皿、五枚セットを作っていて全部で百枚だった。
皿は意外と作り易いのですが、プロではないので、全く同じ大きさにするのが素人には難しい。
康子先生曰く「素人の作品はプロと違ってそれが味なのよ」と言ってはくれはいたが、やはり使う人の事を考えるとなるべくは同じ大きさの物にしてあげたいと思っていた。
そして何よりも次の大物のマグカップを作る為の高台の削りも慣れたかったので皿にしたのだ。
実際に人間国宝の孫が作ったマグカップは高台らしいものではなかったのだが、それでも康子先生曰く、「高台削りは慣れだから恐れずに頑張って!」と言った。
高台削りに使う道具が三種類で、かきべら、木ベラ、そして私が得意としているカンナだ。
私が今までやっていた高台はカンナで削る事だけだったが今回は康子先生が様々な方法を目の前で見せてくれた。
こういう事も個人教授なので有難かった。
彼女はカンナを使用せずに木ベラなどで削っていた。
私がモタモタしていると、先生が見本を見せてくれて手を添えて教えてくれていた。
その時に私はドキドキしていた。
まずはこれしかやった事がない、輪高台だった。
同心円の輪状になった最も一般的なもので蛇の目高台、一重高台などとも言う。
次に三日月高台だ。
高台の厚さが均等でなく、片方は厚くもう片方が薄い三日月形のものだ。
先生も高台を削って、たまたま出来てしまうと言っていた。
そして切高台で、装飾として高台の輪の一部をかきとったもの。
竹の節高台は、削り出した竹の節状にしたものと、順繰りに見せてくれていたが、やっぱり今は新たな事に挑戦するよりも慣れている高台を極めることに専念する事にした。
もっと他にも色々あるそうだが、こういった高台の呼び名と形状を良く学び、実際に削ってみて自分の好みのパターンを見つけていくのが上達の近道だと先生は言った。
また先生は「こうやってカンナでキッチリと削るのも悪くはないけど、それだけでは味が出ないから、マグカップの時には様々な高台に挑戦するのもアリじゃない?」と言った。
つまり先生はプロだから客に合わせなくてはいけない時もあるが、私はアマチュアで作品を作っているのだから、個性を出すのが勝負だということだ。
基本が分かってない内に個性を出すのは難しいので、そう言う意味でも先生に付いて基本を学んで行こうと改めて思っていた。
つづく
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