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第2章

37話-2 金曜の夜、康子さんに呼ばれて

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食事を終え、陶芸のアトリエは離れにあり案内された。

夥しいほどの素焼きの器などが置かれていて完成品の大皿や大壺も並べてあり、電気窯も外の小屋にあり素人とは思えない設備だった。

私は趣味に毛が生えた程度だったので、余りの凄さに絶句していると、康子さんは「ロクロを回してみませんか?」と言った。

「プロの康子さんの前ではド素人の私では恥ずかしくて」

「そんな事、お気になさらないで、一緒にやりましょうよ」

「では、やらせて頂きます」と言い、前掛けを貸してくれて、土練機を回して出て来た土を渡されたので牛練りをしながらその後、菊練りをしていた。

「土練りは流石です。やはり男性は手が大きいので力強くていいですよね?」と褒めてくれた。

私は土練りを終えて、電動ロクロの上に土を置き、スイッチを入れて回していると、康子さんは私の横に来て、土を伸ばしている私の手の上に透き通るような白い両手を軽く重ねたので私はビクッとした。

「大きい手で、それでいて繊細で……」と言い、私は横にいる康子さんの顔を下から覗き込んだ後に、直ぐに土に目をやり、水の入った桶に手を伸ばしてまた土に手を置いた。

私は(ふ~! 危ない、危ない)と思った。

何故なら康子さんは私の手に添えた時に目を瞑ったからで慌てて目を逸らして、ロクロに戻した。

自惚れではなく、間違いなく康子さんはキスを迫るシチュエーションと言う事に私は理解していた。

それだからこそ大人の女性に恥をかかせないように、分からなかった振りをしたのだ。

そして今日は真凛と使うマグカップを二個だけ作って作業を終え、康子さんは「上手じゃないですか」と褒めてくれた。

「ありがとうございます」

私は以前に有楽町の飲み屋で手相を見る見るママさんから、「女難の相がある」と言われた事がある。

それも「一回りや二回り上の女性から誘われる事があるから気を付けなさい」と言われて、その夜はそのママに関係を迫られた経験があった。

しかし私の偏見かもしれないが水商売の方の多くは不特定多数の男性としていることが多く、病気の心配があったので上手に逃げた。

その店のある日に常連の七十歳ほどの男性が来て、「ママのこれか?」と親指を立てて言われた時に私は絡まれるのが嫌でその後は電話をしてその男性が居ない時に行くようにしていた。

今でもママさんとは付き合いはあるのですが、体の関係はない。

真凛との結婚前に康子さんとそんな関係になったら大変なのでタクシーを呼んでもらって早急に帰る事にした。

自宅には十二時過ぎに帰っても真凛は帰宅していなかったが私は、一時前には帰宅する事を心掛けていた。

夫婦で生活している以上、午前様になるのはお互いに良くないと思っていたからだ。

つづく
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