サレ夫が愛した女性たちの追憶

しらかわからし

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第1章

22話-2 我が家族

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実家に帰るのは二年ぶりの事で、今回の叔父夫婦に誘われなくては帰ることはないと断言できるほど、私は両親や弟たちに会うのが嫌で堪らなかった。

特に逢いたくなかったのは父だった。

その理由は叔父が居ぬ間に結婚していた叔母の家にまで行き、関係を迫ったことを聞いたからだった。

父の立場だったら、初婚の叔母にバツイチの自身の実弟と結婚してくれた義妹なのだから、二人の幸せを願うのが父のするべき行動だ。

そんな事すらわからない父に対して嫌悪していた。

私が父を軽蔑していたのはこれだけではなかった。

父はある新興宗教の大幹部でありながら、その宗教の女性に対しても不倫を持ちかけていて、それが露見したのが、たまたま母の実妹と同姓同名だった。

自宅の電話帳でその女性だと思って電話したら、母の実妹で父の不倫未遂が母に露見してしまったという間抜けな顛末だった。

そんな訳で私は両親が熱心にやっている新興宗教が大嫌いで、それを嫌っている私に対して両親は嫌悪感を持っていて会合に行こうと言われても一緒に行くことは物心がついた辺りからは一回もなかった。
 
また長男だった父が先祖から受け継いだ不動産があり、その不動産には貸店舗があり、それらの店で買い物や飲み食いをした際の父は、「大家だから代金を払う必要がない」と言っていた。

いつも只食いや無料での商品の持ち出しをしていた時に、私は小中学生時代だったが、「お父さんが間違っている」と諫めた事があった。

その際に父から拳骨をもらい、「子供は余計なことを言うな!」と怒られたことが度々あった。
 
父と私は世間に対する価値観が真っ向から違っていた。

あの常識的は祖母からどう教育を受けたら、こんな自己中の男になるのかと思ったものだった。

しかし私と違って弟たちは、父に対して逆らうことなく、暮らしていたので可愛がられていた。

私は中学を卒業した時に父から「都立以外の高校には行かせないし合格しなければ働け」と言われて、都立の普通高校一校にだけ入試して受かり入学した。

そんな訳で私の高校時代にはグレてしまい、バイトに明け暮れ不良の道に入り喧嘩ばかりしていて地元で有名な不良少年だった。

特に喧嘩した相手は朝鮮高校生や地元の暴走族や反社の若い衆だった。

片や次弟の高校受験は入試をすれば誰でも入れる私立高校に入学させて途中で中退し、建設業の資格を取り、父の出資で会社を興した。

そんな感じで私は実家で生活していたので弟たちと差別されて生活してきたからだった。

そんな私の境遇を心配した祖母が大学の授業料や生活費を出してくれた。

母と祖母のことで思い出したくない事がある。

思い出すとあの時の情景がフラッシュバックして気持ち悪くなるのだ。

それは、祖母は私たち兄弟を隔てることなく可愛がってくれていた。

母が新興宗教の会合に出掛けていたその日、お腹を空かしていた私たち兄弟に私が苦手だったピーマン入りの餃子を祖母が拵えて食べさせてくれていた。

皮も具も手作りの餃子だった。

お陰で空腹を満たした事で私のピーマン嫌いは治った。

そこに母が帰宅して私たちが祖母の部屋に居たので迎えに来た。

その時にその餃子を見た母は鬼の形相になって皿ごとゴミ箱に捨てたのだ。

私は咄嗟に「お母さん、なんて事をするの!?」と叫んでいた。

母は「お祖母ちゃんが作る料理は腐っているからよ!」と言った。

これには理由があった。

以前も祖母は私たち兄弟に食事を作ってくれた。

その際に昔の人なので、腐る手前のご飯で焼き飯を作ってくれた。

それが滅茶苦茶美味しかったが、そのご飯を使ったのを見た母が、この時と同様に皿ごとゴミ箱に投げ捨てたのだ。

話せば祖母への母の仕打ちはまだまだたくさんある。

そしてこの後の人生でも私が両親や弟たちから受けた仕打ちが多々あるし、その時々にお話しさせて頂きたい。

 ※

明くる日に祖母に逢った。

私は両親に見捨てられた子供だったが、その反面、祖母からは溺愛されていた。

祖母が大好きな中華を一緒に食べに行き、私のバイト料でご馳走して日頃のお礼を言うと、帰りに祖母はSEIKO製の腕時計で当時一万円ほどだったが買ってくれた。

その足で私は自分のマンションに帰った。

つづく
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