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第1章

11話 大家さんの娘の真凛に家庭教師をした数日後

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大学の講義数が少なかった曜日に休講も重なり一日休みになる日があった。
 
前日にそのことが分かり、翌日は何をして過ごそうか夜な夜な考えている内に、叔母と急に会いたくなり、モヤモヤとした気分になっていた。
 
そして当日を迎えた。

五月の晴天で暑いくらいの汗ばむ日だった。
 
朝の七時頃に大家さんの家の方から元気な声が聞こえ、このマンションの屋上からも奥様らしき女性の声が聞こえた。

ご主人は経営している会社に出勤し、娘の真凛は学校に登校するために外に出ていて叫び合っていた。

仲の良い家族で私は羨ましく思った。

私の両親は他人が居れば仲良くしているが、いないといつも喧嘩が絶えず父は私たち兄弟にわざと競わせ喧嘩をさせるような意地悪な性格で、母はヒステリーで父と喧嘩した際には特に長男の私にばかり当たる性格だった。

そんな両親の元から離れて私がこうやって生活できているのは祖母のお陰だった。
 
大学の学費も生活費も祖母が出してくれていたからだ。

私がこんな優雅に学生生活を送ることができていたのも祖母と叔母がいたからだ。

これも祖母に可愛がられていた叔母が、私の事を良いように祖母に報告してくれていたからと言うのもあった。

祖母は私の母とは仲が悪かったので余計だった。

話を戻します。
 
マンションの屋上から階段を下りる足音が聞こえ、私の部屋のベルが鳴ったので、ドアを開けると大家さんの奥様だった。

「どうされたのですか?」と訊くと、奥様は息を切らしながら、「マンションの管理人さんが急遽、辞めたので、私が五棟のマンションの共用スペースを掃除することになったの」と悲しそうに言った。

私は「今日は学校が休講になったのです」と話し、お手伝いしたいと申し出ると奥様は大変に喜んでくれた。

他のマンションは車で移動する距離だったので、奥様が車を出して行くとのことで私もジャージに着替えて同乗した。

四棟の共用スペースの清掃を終えてマンションに戻ってくると奥様が、「ミキ君の部屋が見たい」と急に言い出した。

別に私の部屋を見せるのは平気だったので招き入れた。

奥様は部屋の中を見回した後に落ち着かない様子だったので、私は「喉が渇いてないですか?」と言い冷蔵庫から麦茶を出してグラスに入れて渡した。
 
部屋の真ん中のテーブルの手前に座布団を敷いて奥様に座ってもらい私は右隣に座った。
 
「この麦茶、香ばしくて美味しいわ」と奥様が言ったので私は、「豆をそのままヤカンで湯を沸かして煮出しているので」と言うと「久しぶりにこんな美味しい麦茶を飲んだわ」と言ってくれた。

つづく

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