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冥界の番犬

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雪乃はどうして?と馬から降りてしまった。「...お姉ちゃんいっちゃダメっ!」
リリヤが慌てて止めようと馬から飛び降りたが、寸でのところで止められなかった。
「...!何...これ」
雪乃の目線の先には先ほどまで自分が看病してもらってた村があった。それは余りにも残酷に、そして徹底的に破壊され、皆殺されて見る影もない村だった。
「...お姉ちゃん...帰ろ?」
リリヤは雪乃に上目遣いで...消え入りそうな声でいった。リリヤは人の気持ちが読めるから今の雪乃の気持ちもわかるのだろう。
(...どうして?...どうしてこうなるの!...先輩...)
雪乃が泣いて居ると別の方からも泣き声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん...誰か泣いてるみたいだよ...?死んだ人間を悲しむより、生きてる人を助けた方が良いんじゃないかな?」
雪乃はその言葉に半分魂が抜けた様に歩き出した。
「...グスン...母ちゃん...母ちゃんっ!」
雪乃が向かった先には佐吉が座って泣いていた。
「佐吉君っ!」
雪乃は慌てて駆け寄った。すると佐吉は
「...姉ちゃん...母ちゃんが...母ちゃんがっ!安東の殿様の...犬のバケモンに喰われちまったよ...っ!」
佐吉は雅さんの着物をギュと握って泣いて居る。
「...佐吉君?...もしかしてその犬頭が...3つなかった?」
リリヤがもしや?と言う顔で聞いた。
「...あったよ、あったよにいちゃん...!」
見た目の年齢は大して二人とも変わらないが佐吉はリリヤの方が年上だと判断したらしい。リリヤは「にいちゃん」と呼ばれたことに一瞬眉をひそめたがすぐに戻り
「...お姉ちゃん、多分鏡の境界が崩れてる...おそらく奴はケルベロスだよ」
ケルベロスと言えばギリシャ神話に登場する地獄の番犬...冥界の王ハーデスの忠実な配下である。
そしてリリヤは再び口を開けた。
「...お姉ちゃん。おそらくケルベロスは不本意なんだと思う。あいつはこんなことしない。絶対に。...僕の勝手な想像だけど...ハーデス達兄弟は閉じ込められてるんじゃないかな?」
リリヤはそれが当たり前の様に話している。しかし佐吉はもちろん雪乃も
「...?」
脳内にクエスチョンマークがたくさん出ているのであった。
「わからないのも無理ないよ。お姉ちゃんも佐吉君も、とりあえずは李広を探した方が良いんじゃないかな?」
リリヤは少し嬉しそうに話した。
「...にいちゃん!なんで嬉しそうなんだよ!」
佐吉は怒ってリリヤに怒鳴った。
(...ここでなんで笑うの?私にはわからない...)
「佐吉君もお姉ちゃんもわからないかなぁ?ケルベロスがいるって事は、僕も向こうの世界に帰れるかもしれないんだよ!これが嬉しくなくて何と言うんだい?」
リリヤはご機嫌である。
「...コノヤロォっ!」
佐吉はついに殴りかかった。リリヤは
「...佐吉君...ごめんよ。僕が悪かった。でも本当に嬉しいんだ。」
リリヤは素直に謝った。佐吉はバツが悪そうにそっぽをむいた。
「...でもよ...何で母ちゃんが喰われるだよ...」
「いや、多分食べられてないよ。冥界から逃げる奴以外ケルベロスは喰い殺さない。ハーデスとの誓約に反するからね。」
佐吉は
「って事は母ちゃんは生きてるっ!?」
信じられない様に顔をあげた。
「多分ね。」
(...雅さんが生きてる...よかった)
雪乃も心の重しが少し外れた気がした。
「...おい。汝ら、何故この様な場所におるか?」
3人がようやく明るくなったと思うと、どこからかわからない、重く低い声が聞こえてきた。
「...我が問いに答えぃ!汝ら、何故この様な場所におるか?」
同じ質問が2度繰り返された。
「...この声...母ちゃんを襲った奴の声だ!」
佐吉が雪乃に言った。
「...ほう。我が人間如きを取り逃がしておったとわな。ならば、汝もこい。李広に汝らの命と引き換えに楓月綠神槍を頂いて帰る。」
そして佐吉を捕まえようとした。
するとリリヤが
「冥界の王、ハーデスの忠実なる部下よ...何故、我らを襲うか?ハーデスは冥界に来る者...即ち、死んだ者しかお前達の世界でも危害を加えんでなかったか?」
いきなり大人びた感じでいった。
「ほう、汝、我がわかるのか?左様、我が主はこの様な事はせん。が、しかし、ご兄弟のゼウス殿、ネプチューン殿と共にオリュンポスの地下深くに幽閉されておるでの。わしは命令に逆らえんのだ。悪く思うな。」
ケルベロスは暴れる佐吉をくわえようした。
「...では偽の主に伝えるが良い。...天界のミハエルの生き残りがでたとな!」
ケルベロスは一瞬手を止め
「...汝は天使と申すか...それも天界の王、ミハエルの残党とは...。我もこの様な事はしとうない。が、ハーデス様のため仕方ないのだ。」
そう言うと佐吉をくわえて走り去って行った。
「お姉ちゃんごめんね。助けられなかった。でも、すぐに助かるよ。お姉ちゃんの探してる人...大切な人が近づいてるきがするから。」
(...私の大切な人...?先輩がっ!?)
雪乃がそう思うとリリヤが
「てやぁぁああっ!」
雪乃めがけてダイブしてきた。
「...!?」
雪乃はもちろんパニック。
「...やっぱりお姉ちゃん、僕と比べておっぱいおっきいよ...このこのっ!」
リリヤは雪乃の胸をつねったり揉んだり...一体どうなるのやら...
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