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なんて情けない男達だ。
ただ、団長がろくな戦績もないということは、彼の部下達もまたろくに戦争もしたことない、隣国軍からすれば途轍もないお荷物部隊だったのだ。
「生きていたんですね団長! 死んでも死なない男と、ずっと再会を信じていました」
口々に生きていてよかったとこぼすガタイだけは無駄にいいボロ着の男達に、再び涙腺が緩くなった。
「俺もお前たちと再会できて嬉しいよ。少し頼みたいことがあるんだ」
「団長のためなら、俺たちは地獄まででもお供します!」
「そう言ってくれるんならありがたい」
「えっ!?」
「嘘をついたのか?」
「い、いいえ! 騎士に二言など、な、ないです!」
元団員達はふるふると首に横を振った。
「よし、まずは状況を整理しよう。俺はあの後、革命軍と戦い、陛下は亡くなった。そこまではお前達も知っているだろう」
「はい」
「俺は革命軍団長と、その……、夫夫(ふうふ)となって……」
「夫夫!?」
「まあそんな話はどうでもいいだろう! とにかく俺はいま、革命軍にいる」
「そんな、団長が何であんな獣人共と!」
「俺の話はお終いだ。先にお前たちのことを聞かせてくれ」
強制的に話を終わらせた俺に、元団員達は互いに伺いあい、口々に話し出した。
「団長と別れた後、俺たちは隣国に助けを求めに向かいました。すると、隣国兵たちは既に戦の準備をしていて」
「そこで俺たちは国王崩御の知らせを受けました。
そしてどうにか革命軍を倒して王国復興を手伝ってもらえないかと、隣国王に頼みました。
隣国王はかならず約束を果たすといい、大軍を率いてここまで共にきました」
俺は彼らに質問した。
「どうしてそんなボロ着で武器を奪われたまま前線にいるんだ」
「それは、革命軍を倒す対価として全ての持ち物を奪われてしまったのです……」
「馬鹿野郎! なにをしているんだ貴様らは!」
突然足を踏み鳴らして怒鳴った俺に、元団員たちは肩をびくつかせた。
「いきなりどうしたんですか、団長」
「どうしてわからないんだ。
隣国王は王国復興の手伝いなどする気はない。
この戦争で貴様ら全員を戦死させ、革命軍を打ち倒し、我が国を乗っ取ろうとしているのだぞ」
「そんなわけ……」
「ではなぜ貴様らは防具を身につけず、剣も持たずに最前線に送られているんだ」
それに元団員達はすっかり顔を青くさせ、どうしようと震え出した。
「だ、団長……、俺ら、全員殺されちゃうんですか?」
ようやく事態を理解し出した元団員達の頭を撫で、俺は「大丈夫」と言った。
「絶対に死なせない。お前達がしっかり働いてくれれば、必ず生きたまま実家に帰してやる」
「団長~!」
涙を浮かべた元団員たちがわあわあ言って俺に抱きついてきた。
「鬱陶しい! 離れろ!」
「ぐすん……」
「お前達には内部工作をしてもらう。
火薬には水をぶっかけ、銃や大砲は詰め物をして発砲できなくさせろ。
剣は……難しいだろうから何もしなくていい。
とにかく飛び道具を破壊しろ。
近接戦なら獣人族が有利になる」
「はい!」
「それから戦線が騒がしくなったら適当に逃げて隠れていろ。
明日の朝になったら王城で再会しよう」
元団員一人一人と拳を合わせて送り出した。
彼らが工作をおこなっている間、俺は俺でやることがあるのだ。
ただ、団長がろくな戦績もないということは、彼の部下達もまたろくに戦争もしたことない、隣国軍からすれば途轍もないお荷物部隊だったのだ。
「生きていたんですね団長! 死んでも死なない男と、ずっと再会を信じていました」
口々に生きていてよかったとこぼすガタイだけは無駄にいいボロ着の男達に、再び涙腺が緩くなった。
「俺もお前たちと再会できて嬉しいよ。少し頼みたいことがあるんだ」
「団長のためなら、俺たちは地獄まででもお供します!」
「そう言ってくれるんならありがたい」
「えっ!?」
「嘘をついたのか?」
「い、いいえ! 騎士に二言など、な、ないです!」
元団員達はふるふると首に横を振った。
「よし、まずは状況を整理しよう。俺はあの後、革命軍と戦い、陛下は亡くなった。そこまではお前達も知っているだろう」
「はい」
「俺は革命軍団長と、その……、夫夫(ふうふ)となって……」
「夫夫!?」
「まあそんな話はどうでもいいだろう! とにかく俺はいま、革命軍にいる」
「そんな、団長が何であんな獣人共と!」
「俺の話はお終いだ。先にお前たちのことを聞かせてくれ」
強制的に話を終わらせた俺に、元団員達は互いに伺いあい、口々に話し出した。
「団長と別れた後、俺たちは隣国に助けを求めに向かいました。すると、隣国兵たちは既に戦の準備をしていて」
「そこで俺たちは国王崩御の知らせを受けました。
そしてどうにか革命軍を倒して王国復興を手伝ってもらえないかと、隣国王に頼みました。
隣国王はかならず約束を果たすといい、大軍を率いてここまで共にきました」
俺は彼らに質問した。
「どうしてそんなボロ着で武器を奪われたまま前線にいるんだ」
「それは、革命軍を倒す対価として全ての持ち物を奪われてしまったのです……」
「馬鹿野郎! なにをしているんだ貴様らは!」
突然足を踏み鳴らして怒鳴った俺に、元団員たちは肩をびくつかせた。
「いきなりどうしたんですか、団長」
「どうしてわからないんだ。
隣国王は王国復興の手伝いなどする気はない。
この戦争で貴様ら全員を戦死させ、革命軍を打ち倒し、我が国を乗っ取ろうとしているのだぞ」
「そんなわけ……」
「ではなぜ貴様らは防具を身につけず、剣も持たずに最前線に送られているんだ」
それに元団員達はすっかり顔を青くさせ、どうしようと震え出した。
「だ、団長……、俺ら、全員殺されちゃうんですか?」
ようやく事態を理解し出した元団員達の頭を撫で、俺は「大丈夫」と言った。
「絶対に死なせない。お前達がしっかり働いてくれれば、必ず生きたまま実家に帰してやる」
「団長~!」
涙を浮かべた元団員たちがわあわあ言って俺に抱きついてきた。
「鬱陶しい! 離れろ!」
「ぐすん……」
「お前達には内部工作をしてもらう。
火薬には水をぶっかけ、銃や大砲は詰め物をして発砲できなくさせろ。
剣は……難しいだろうから何もしなくていい。
とにかく飛び道具を破壊しろ。
近接戦なら獣人族が有利になる」
「はい!」
「それから戦線が騒がしくなったら適当に逃げて隠れていろ。
明日の朝になったら王城で再会しよう」
元団員一人一人と拳を合わせて送り出した。
彼らが工作をおこなっている間、俺は俺でやることがあるのだ。
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