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運命の出会い②
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呼ばれた神官の名はヤイルというらしい。
エルスより身長が高く、派手な金髪と碧眼を持つ、エルスに負けず劣らず派手な男だった。
ヤイルは神官長の前ではにこやかにエルスに挨拶したが、神官長の部屋を出ると途端に顔をしかめた。
「ふん、お前が魔術が下手すぎて魔術騎士団をクビになったエルスか」
「そうだけど、なんか文句でもあるわけ?」
「わざわざ公爵家のコネで入れてもらったくせに、結局追い出されて間抜けなやつだな」
高慢そうに顔を歪めて笑う男に、エルスもむかっときた。
「その公爵家の息子である僕に、そんな口きいていいと思ってるわけ」
「ここがどこだと思ってるんだ。治外法権の神殿内で、お前は見習い神官。そして僕はお前の先輩。立場をわきまえろよ新人」
「性格悪いなぁ、ヤイル先輩」
嫌味を言い合っているうちにエルスの部屋の前に着いたらしい。
ヤイルは扉を指差して「あれがお前の部屋だ」と言った。
「くれぐれも寝坊はするなよ。あと僕に口答えするな」
「はいはい。案内ありがとうございます」
不機嫌そうに去っていくヤイルの背中を見送り、エルスは自室の扉を開いた。
「……なんじゃこりゃ」
エルスは部屋の中に入ると思わず両手で口をおおった。
室内はあちこちにクモの巣が張っている。
ベッドはボロボロでかび臭く、机はホコリまみれ。
「最悪だ」
そう呟いて、エルスは今日一日持って歩いていた小さな荷物を部屋の隅においた。
エルスは家事なんてものをしたことがない。
だが、この神殿には侍従どころか、エルスより立場が低いものなどいないのだ。
エルスは仕方なく自分で掃除することに決めた。
部屋を見渡すと、奥の方にほうきと雑巾とバケツが捨て置かれていることに気づいた。
かつて誰かがこの部屋を掃除して、そのまま置いていったのだろう。
これらはいったい何年前から放置されているのだろうか。
クモの巣をかき分けてバケツを手に取り、まずは水をくみにいくことにした。
神殿内には大きな噴水が設置されており、その水は人々が自由に利用できるようになっている。
エルスは噴水の前にしゃがみこむと、バケツいっぱいに水をくんだ。
その重くなったバケツを持ち上げようと力を入れた時、横から伸びてきた手が先に軽々とバケツを取り上げた。
エルスはバケツを奪った相手を振り返ると、思わず飛び上がった。
「王子! お久しぶりです」
そこには近衛隊員をずらりと引き連れたテレオノーラ王国の第一王子であるイリエル・ヴィ・ドラン・テレオーラが立っていたのだ。
エルスより身長が高く、派手な金髪と碧眼を持つ、エルスに負けず劣らず派手な男だった。
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「はいはい。案内ありがとうございます」
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