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December
期末試験後
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テストは無事終わり、手応えも上々。
放課後に順位の貼られた掲示版を見に行くといつもに増して騒がしく人が集まっていた。
人を掻き分けて、自分の順位を確認しに貼られた紙に視線を向けると自分は手応え通りの1位。贅沢な環境もあって全教科満点だった。2位の欄に視線を移すといつも通り白木葵の名前。そこまでは特に驚くことも無かったのだがその点数を見た瞬間、思わず声が出た。
「…は?」
「うわ僅差じゃん、危ねー」
ジュースを啜る理久の言う通り、白木と俺の点数の差は2点。今回たまたま満点だったから良かったものの、いつも通りの点数だったら絶対負けていた。想像しただけで冷や汗が止まらない。
1位なのに喜ぶのも忘れて呆然と立ち尽くしていると後ろから声を掛けられる。振り向いた先には無表情の白木がいて怖かった。
「橘、ちょっといい?」
「は、はい…」
あまりの威圧感に大人しくついて行く他なく。理久は笑って見送っていたが、今から罪を裁かれる人のような気分で足取りは重い。こうやってテストの後に白木に呼び出されたのは2年間で初めてだ。
人気のない校舎裏に着くなり白木は歩みを止めて立ち止まる。そして勢いよく振り向いた表情は無表情とは一点、眉を顰めて歯を食いしばるような顔をしていた。
「…く、」
「く?」
「悔しい~~~~っ!!!!!!」
人気のない静かな場所で大きく響き渡った声のせいで鳥が逃げていく。俺は驚きのあまり声が出ず、見つめることしか出来ない。
「悔しい悔しい悔しい!!!死ぬほど悔しい!!!今回のテストは勝てるって思ったのに!!!!!」
「ちょ、しら…」
「ていうか今回は絶対勝ちたかったのに!!!なんでまた満点!?!?意味わかんないから!!どういうこと!?いつもの点数なら絶対勝ててたじゃん!!」
地団駄を踏んで今にもハンカチを噛みそうな勢いで泣きながら捲し立てられ、落ち着けようと試みてもすぐ遮られる。ほんのたまに通る人がすごい顔でこちらを見ていて気まずい。
暫くは涙も言葉も止まりそうにない白木を黙って受け入れ、10分程度。
ようやく泣き止んだ白木とベンチに移動し、黙ったまま相手がなにか話すのを待っていると隣の彼は鼻水を啜って小さく呟くような声で口を開いた。
「…橘って、会長と付き合ってるんでしょ」
「…な、んの話…」
「隠しても無駄。この前デートしてる時…というか親衛隊の事件の時に気付いたから」
誤魔化そうと思ったが、白木はもう俺の言葉を聞く気は無いらしい。ぽつりぽつりと泣いた後の震えた状態の声で話を続ける。
「僕さ、本当は会長に好きって言うつもり無かったの。
でも体育祭の見回りの時に、好奇心で好きなタイプを聞いた時…真面目で頭の良い子って言われて……」
そういえば白木と会長は体育祭の見回りのペアだったな。告白したのはてっきり体育祭でペアになったからだと思っていたが、そこが主な原因という訳ではなく、会長と話した内容にある様だった。
「それって僕じゃん!?」
「確かに」
「だから絶対いけるって思ったわけ!!その時!!」
好きなタイプ聞いて自分に当てはまること言われたら普通にいけると思うわな。
「でもダメだった…」と頬杖ついて目を伏せる白木を横目に頭の中は疑問で溢れる。
その好きなタイプは俺のことを言ってるのか、それとも白木のように自分もたまたま当て嵌ってるだけなのか。そもそも会長いつから俺のこと好きだったんだろう。夏休みの辺りはそんな素振りなかった気するけど。
「それからはもーめっちゃアタックしまくって……文化祭前あたりかな。
会長が久我先輩と一緒に帰ってきた時…たまたま寮で会った日があって…」
話の流れからすぐにいつの話かわかった。
久我先輩と出掛けるなんてこと滅多にないからきっと4人で遊園地に行った日だ。これから会長から語られていない、2人しか知らない話をされるのだ思うと緊張して、制服のズボンを握り締める。
「…あの時の会長、いつものように笑ってたけどなんか様子がすごく変だった。何かあったんだなって一目で分かるくらい弱ってて………だからチャンスかもって、思ったの…」
チャンスとは多分迫るチャンスということだろう。
遊園地の後当てつけの様に白木と付き合って学園内で噂が流れたことを思い出せば、恐らく。
「つまり…その時、付き合ったってこと?」
「そう!!あの時ちょーーー大変だったんだから!!卒業までって言ってもめちゃくちゃ渋られるし!!やっと文化祭までならって話でOKしてもらえて、速攻新聞部に報告しに行ったもん!!」
話によると噂を流して外堀から埋めようとしたらしい。白木の逞しさにも感服する。俺だったら弱ってる時にこんな可愛い顔した子に迫られたら普通に負けてるかもしれない。
その後は無理やり迫ろうと計画してたがそんな雰囲気ではなかった事、モタモタしてるうちにいつの間にか文化祭最終日で焦った結果、ミスコンであんな発言をしてしまった事など色々話してくれた。
「…だから、襲われた時色々覚悟してたんだよね」
遠くを見つめながら白木は力のない笑みを浮かべる。
覚悟していたとしてもものすごく怖かったに違いない。あの時の抵抗の跡見れば分かる。
「…なんでこんな話をわざわざ俺に?」
「あの時助けてくれたお礼と…前に僕の親衛隊が迷惑掛けちゃったから、その時のお詫び」
会長はこんな話してくれないでしょ、と今度は優しく笑って立ち上がった。
12月の風は冷たくひんやりとした感触が頬を撫でる。長い時間、外で話していたからか白木の耳は赤くなっていた。
「あの時はありがとね。橘」
そう言ってベンチに置いていた鞄を握りしめて少し歩き出した後。あ、と思い出したように振り返っていつもの定番の台詞を元気良く言い放った。
「次は絶対負けないから」
「うん。俺も抜かされないように頑張る」
「じゃ、僕は久我先輩探さなきゃ。またね~!!」
去り際に言った言葉から大変さが窺える。今時あんな健気でいい子いないんだから久我先輩はもっと白木を労ってあげて欲しい。せめて仕事くらいちゃんとしろ。
手を振る白木に振り返すと俺も図書室へと向かった。
試験が終わって人が少なくなった図書室でいつも通り要先輩と返却した本や入荷した本をチェックし、試験結果の話をしていればあっという間に時間は過ぎる。
時刻は7時前。
帰ろうと身支度をして図書室の鍵を閉めた直後、携帯が震えた。携帯画面を見ると[生徒会室]の文字が表示されていて眉間に皺が寄っていくのを感じる。せめて文章で話せ。
「凌から?」
「あ、はい。今から生徒会室行かないと」
「僕、鍵返しとくよ」
じゃあまた明日、と微笑む要先輩の背中を見送り、職員室とは逆方向に足を動かす。
静かな校舎を抜けて生徒会室の扉を開ければ、机の上に大量の紙が積み重なっていた。
「…なんですかこれ」
「ページ数書いてあるから順番通りよろしく」
入るなり流れるようにホッチキスを渡されて思わず受け取る。生徒に配る紙か何かなんだろう。投げ捨てて帰ろうかと思ったが、今回1位キープ出来たのもこの人のお陰もある。恩はここで返しておこう。
文句言いたくなるのを抑えて大人しく用紙を纏め、部屋にはキーボードの音とパチンというホッチキスの音だけが響いた。30分で終わる量なんだろうか、これ。
「会長の好きなタイプって真面目で頭のいい子らしいですね」
「…誰から聞いたのそれ」
「噂で聞きました」
手は暇ではなかったが口は暇だったので白木から聞いた話をすると「そんな噂聞いたことないな」と無表情で返される。もう少し面白い反応してくれると思ったが案外普通でつまらない。なので冗談を交えつつもう少しその話を続けてみることにした。
「後、優しくてしっかりした人も好きって話も聞きました」
「運動神経悪くて、すぐ調子に乗るの間違いじゃなく?」
「…今すぐ帰りましょうか?俺」
こっちはこんな作業やめて今すぐ帰っても良いんですが。
手を止めずに尋ねると自分の作業が終わったらしい会長は冗談と笑って俺の隣に座り、作業を手伝い始める。二人でやると早く進んで、残りはあと少し。30分までには余裕で終わりそうだった。
「で、湊の好きなタイプは?」
「俺はそうですね……」
「やっぱりなんでも出来て気遣いの出来る優しい人?」
「いや、性格悪くて人遣い荒いのまちが…いだだたたた!」
よくもまあそんなセリフ出てくるなと思い、先程の会長のよう答えてやろうと口を開くと全部言い切る前に鼻を摘まれ、そのまま引っ張られて唇を重ねられた。
「ん゛~~、っ!ん!んん!」
息が出来ず、口を開けても会長の舌に邪魔されて上手く空気を取り込めない。苦しさに一生懸命肩を叩いて、抵抗するとやっと離れた。
「っ、けほ、…は…殺す気か…」
「生意気だからつい」
まじでありえねー。
乱れた呼吸を整えている間に会長は悪びれる様子もなく残りの用紙全てを手早くホッチキスで止めるとソファーから立ち上がって帰る支度をする。
俺も鞄を手にして生徒会室を後にすれば外はすっかり真っ暗で夕方よりも空気が冷たくもはや痛い。こんな時すぐに帰れる寮生で良かったと心の底から思った。
「今日部屋来る?」
寮につく手前でいつも通り別れようと立ち止まると会長にそう尋ねられる。
「来て欲しいんですか」
「うん」
「…じゃあ行きます」
試験が終わり勉強から解放されたこのタイミングで部屋の誘い。これからやることと言えば1つ。
お互い我慢していたのと明日休みなのもあってお風呂とご飯を済ませた後。行為はいつもの何倍も盛り上がりを見せ、途中から記憶がなくなり、次の日は張りつく喉と軋む身体に悲鳴をあげたのは言うまでもなかった。
放課後に順位の貼られた掲示版を見に行くといつもに増して騒がしく人が集まっていた。
人を掻き分けて、自分の順位を確認しに貼られた紙に視線を向けると自分は手応え通りの1位。贅沢な環境もあって全教科満点だった。2位の欄に視線を移すといつも通り白木葵の名前。そこまでは特に驚くことも無かったのだがその点数を見た瞬間、思わず声が出た。
「…は?」
「うわ僅差じゃん、危ねー」
ジュースを啜る理久の言う通り、白木と俺の点数の差は2点。今回たまたま満点だったから良かったものの、いつも通りの点数だったら絶対負けていた。想像しただけで冷や汗が止まらない。
1位なのに喜ぶのも忘れて呆然と立ち尽くしていると後ろから声を掛けられる。振り向いた先には無表情の白木がいて怖かった。
「橘、ちょっといい?」
「は、はい…」
あまりの威圧感に大人しくついて行く他なく。理久は笑って見送っていたが、今から罪を裁かれる人のような気分で足取りは重い。こうやってテストの後に白木に呼び出されたのは2年間で初めてだ。
人気のない校舎裏に着くなり白木は歩みを止めて立ち止まる。そして勢いよく振り向いた表情は無表情とは一点、眉を顰めて歯を食いしばるような顔をしていた。
「…く、」
「く?」
「悔しい~~~~っ!!!!!!」
人気のない静かな場所で大きく響き渡った声のせいで鳥が逃げていく。俺は驚きのあまり声が出ず、見つめることしか出来ない。
「悔しい悔しい悔しい!!!死ぬほど悔しい!!!今回のテストは勝てるって思ったのに!!!!!」
「ちょ、しら…」
「ていうか今回は絶対勝ちたかったのに!!!なんでまた満点!?!?意味わかんないから!!どういうこと!?いつもの点数なら絶対勝ててたじゃん!!」
地団駄を踏んで今にもハンカチを噛みそうな勢いで泣きながら捲し立てられ、落ち着けようと試みてもすぐ遮られる。ほんのたまに通る人がすごい顔でこちらを見ていて気まずい。
暫くは涙も言葉も止まりそうにない白木を黙って受け入れ、10分程度。
ようやく泣き止んだ白木とベンチに移動し、黙ったまま相手がなにか話すのを待っていると隣の彼は鼻水を啜って小さく呟くような声で口を開いた。
「…橘って、会長と付き合ってるんでしょ」
「…な、んの話…」
「隠しても無駄。この前デートしてる時…というか親衛隊の事件の時に気付いたから」
誤魔化そうと思ったが、白木はもう俺の言葉を聞く気は無いらしい。ぽつりぽつりと泣いた後の震えた状態の声で話を続ける。
「僕さ、本当は会長に好きって言うつもり無かったの。
でも体育祭の見回りの時に、好奇心で好きなタイプを聞いた時…真面目で頭の良い子って言われて……」
そういえば白木と会長は体育祭の見回りのペアだったな。告白したのはてっきり体育祭でペアになったからだと思っていたが、そこが主な原因という訳ではなく、会長と話した内容にある様だった。
「それって僕じゃん!?」
「確かに」
「だから絶対いけるって思ったわけ!!その時!!」
好きなタイプ聞いて自分に当てはまること言われたら普通にいけると思うわな。
「でもダメだった…」と頬杖ついて目を伏せる白木を横目に頭の中は疑問で溢れる。
その好きなタイプは俺のことを言ってるのか、それとも白木のように自分もたまたま当て嵌ってるだけなのか。そもそも会長いつから俺のこと好きだったんだろう。夏休みの辺りはそんな素振りなかった気するけど。
「それからはもーめっちゃアタックしまくって……文化祭前あたりかな。
会長が久我先輩と一緒に帰ってきた時…たまたま寮で会った日があって…」
話の流れからすぐにいつの話かわかった。
久我先輩と出掛けるなんてこと滅多にないからきっと4人で遊園地に行った日だ。これから会長から語られていない、2人しか知らない話をされるのだ思うと緊張して、制服のズボンを握り締める。
「…あの時の会長、いつものように笑ってたけどなんか様子がすごく変だった。何かあったんだなって一目で分かるくらい弱ってて………だからチャンスかもって、思ったの…」
チャンスとは多分迫るチャンスということだろう。
遊園地の後当てつけの様に白木と付き合って学園内で噂が流れたことを思い出せば、恐らく。
「つまり…その時、付き合ったってこと?」
「そう!!あの時ちょーーー大変だったんだから!!卒業までって言ってもめちゃくちゃ渋られるし!!やっと文化祭までならって話でOKしてもらえて、速攻新聞部に報告しに行ったもん!!」
話によると噂を流して外堀から埋めようとしたらしい。白木の逞しさにも感服する。俺だったら弱ってる時にこんな可愛い顔した子に迫られたら普通に負けてるかもしれない。
その後は無理やり迫ろうと計画してたがそんな雰囲気ではなかった事、モタモタしてるうちにいつの間にか文化祭最終日で焦った結果、ミスコンであんな発言をしてしまった事など色々話してくれた。
「…だから、襲われた時色々覚悟してたんだよね」
遠くを見つめながら白木は力のない笑みを浮かべる。
覚悟していたとしてもものすごく怖かったに違いない。あの時の抵抗の跡見れば分かる。
「…なんでこんな話をわざわざ俺に?」
「あの時助けてくれたお礼と…前に僕の親衛隊が迷惑掛けちゃったから、その時のお詫び」
会長はこんな話してくれないでしょ、と今度は優しく笑って立ち上がった。
12月の風は冷たくひんやりとした感触が頬を撫でる。長い時間、外で話していたからか白木の耳は赤くなっていた。
「あの時はありがとね。橘」
そう言ってベンチに置いていた鞄を握りしめて少し歩き出した後。あ、と思い出したように振り返っていつもの定番の台詞を元気良く言い放った。
「次は絶対負けないから」
「うん。俺も抜かされないように頑張る」
「じゃ、僕は久我先輩探さなきゃ。またね~!!」
去り際に言った言葉から大変さが窺える。今時あんな健気でいい子いないんだから久我先輩はもっと白木を労ってあげて欲しい。せめて仕事くらいちゃんとしろ。
手を振る白木に振り返すと俺も図書室へと向かった。
試験が終わって人が少なくなった図書室でいつも通り要先輩と返却した本や入荷した本をチェックし、試験結果の話をしていればあっという間に時間は過ぎる。
時刻は7時前。
帰ろうと身支度をして図書室の鍵を閉めた直後、携帯が震えた。携帯画面を見ると[生徒会室]の文字が表示されていて眉間に皺が寄っていくのを感じる。せめて文章で話せ。
「凌から?」
「あ、はい。今から生徒会室行かないと」
「僕、鍵返しとくよ」
じゃあまた明日、と微笑む要先輩の背中を見送り、職員室とは逆方向に足を動かす。
静かな校舎を抜けて生徒会室の扉を開ければ、机の上に大量の紙が積み重なっていた。
「…なんですかこれ」
「ページ数書いてあるから順番通りよろしく」
入るなり流れるようにホッチキスを渡されて思わず受け取る。生徒に配る紙か何かなんだろう。投げ捨てて帰ろうかと思ったが、今回1位キープ出来たのもこの人のお陰もある。恩はここで返しておこう。
文句言いたくなるのを抑えて大人しく用紙を纏め、部屋にはキーボードの音とパチンというホッチキスの音だけが響いた。30分で終わる量なんだろうか、これ。
「会長の好きなタイプって真面目で頭のいい子らしいですね」
「…誰から聞いたのそれ」
「噂で聞きました」
手は暇ではなかったが口は暇だったので白木から聞いた話をすると「そんな噂聞いたことないな」と無表情で返される。もう少し面白い反応してくれると思ったが案外普通でつまらない。なので冗談を交えつつもう少しその話を続けてみることにした。
「後、優しくてしっかりした人も好きって話も聞きました」
「運動神経悪くて、すぐ調子に乗るの間違いじゃなく?」
「…今すぐ帰りましょうか?俺」
こっちはこんな作業やめて今すぐ帰っても良いんですが。
手を止めずに尋ねると自分の作業が終わったらしい会長は冗談と笑って俺の隣に座り、作業を手伝い始める。二人でやると早く進んで、残りはあと少し。30分までには余裕で終わりそうだった。
「で、湊の好きなタイプは?」
「俺はそうですね……」
「やっぱりなんでも出来て気遣いの出来る優しい人?」
「いや、性格悪くて人遣い荒いのまちが…いだだたたた!」
よくもまあそんなセリフ出てくるなと思い、先程の会長のよう答えてやろうと口を開くと全部言い切る前に鼻を摘まれ、そのまま引っ張られて唇を重ねられた。
「ん゛~~、っ!ん!んん!」
息が出来ず、口を開けても会長の舌に邪魔されて上手く空気を取り込めない。苦しさに一生懸命肩を叩いて、抵抗するとやっと離れた。
「っ、けほ、…は…殺す気か…」
「生意気だからつい」
まじでありえねー。
乱れた呼吸を整えている間に会長は悪びれる様子もなく残りの用紙全てを手早くホッチキスで止めるとソファーから立ち上がって帰る支度をする。
俺も鞄を手にして生徒会室を後にすれば外はすっかり真っ暗で夕方よりも空気が冷たくもはや痛い。こんな時すぐに帰れる寮生で良かったと心の底から思った。
「今日部屋来る?」
寮につく手前でいつも通り別れようと立ち止まると会長にそう尋ねられる。
「来て欲しいんですか」
「うん」
「…じゃあ行きます」
試験が終わり勉強から解放されたこのタイミングで部屋の誘い。これからやることと言えば1つ。
お互い我慢していたのと明日休みなのもあってお風呂とご飯を済ませた後。行為はいつもの何倍も盛り上がりを見せ、途中から記憶がなくなり、次の日は張りつく喉と軋む身体に悲鳴をあげたのは言うまでもなかった。
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