29 / 127
August
02
しおりを挟む「急に人増えてきたね」
「もうすぐ花火上がる時間ですから」
「もうそんな時間か」
「一応穴場あるんでそこ行きません?」
食べ物でも買ってゆっくり花火を見るのもいいかもしれない。というかゲーム系の屋台を会長にやらせたらダメだと分かったからそうしたい。
俺の提案にすんなり頷いた会長を連れて、家から少し歩いたところに小さな古い公園に向かう。
山の中を歩いたところにあり、人気がなく不気味な雰囲気から幽霊が出るなんて噂が流れている場所だ。
中三の時に夏祭りの時に肝試しか何かで訪れた時にめちゃくちゃ花火が綺麗に見えたのを思い出し、来てみたがやはり相変わらず不気味で人気がなかった。
「幽霊でも出そうだな」
「ガチで出るって噂もありますよ」
「へえ」
10分程山を登ると小さい頃の記憶のままの公園に辿り着く。
ぐるりと落ちないよう塀で隔てられている向こうは祭りの様子も見ることができ、キラキラと輝いていて綺麗だ。
「会長、幽霊とか平気なんですね」
「うん。見たことないし」
「苦手なものとかないんです?」
適当なベンチに屋台で買ったものを広げて特に中身のない会話を続ける。
やったことない射的をあそこまで上手に出来るんだからこの人に苦手なものなんてないのではという気持ちで聞いてみたが、聞いたところで素直に言うタイプにも見えない。
ちらりと様子を伺ってみると予想外にも結構真剣に考えてくれているらしい。会長が考え込むような仕草で黙り込んで暫く風の音だけが耳を撫でた。
「強いて言うなら女の人かな」
「…何で?」
これまた予想外。
思わず敬語も忘れて聞き返してしまう。俺の中学時代の女子手玉に取ってたじゃん。
「扱いにくくて面倒くさい。何考えてるか分かんないし」
「まあ、少しわかります」
「後、昔付き合ってた子につまんないって振られた」
「それは相手が悪かったんじゃないですか?」
「どうだろ。同じようなパターン3回くらい体験してるからな」
会長の話を聞いて、凌くんって本当に私の事好きなの!?と迫られてるところまで容易に想像が出来た。
振られたとは言っているが会長のことだから面倒臭くなって自分から振られる方向に持っていった可能性もあるな。
「てか会長が告白OKするのも珍しいですね。女の子そんなに可愛かったんです?」
「まあ、中学までは来る者拒まずなタイプだったし」
「へえー知らなかった」
「今は適当な理由つけて断ってるけど、あの時はこれもいい経験かなーなんて思ってて」
これまた意外な話でたこ焼きを摘んでいた手が止まる。
経験ナシというはないだろうと思っていたが、学園内では告白は全部断わっていてセフレも居ないクリーンなイメージだったから恋愛経験の差で言えば俺とそう変わらないと思っていた。少し裏切られた気分ではある。
この人もしかして思ったより経験豊富なのだろうか。
俺が知らないだけで過去すごい恋愛してたりする?というか現在進行形で実は好きな人いるとかそんなことあったりする?
どうしよう。色々な気になることが出てきた。
何を聞こうと悩んでいると「まあでも付き合うのは男の方が楽で良かったな」と会長が呟く。
「やっぱりそっちの経験もあるんですね」
「一応。結構長く続いた子もいるよ」
そこでまた疑問が増える。
男同士の場合、会長はどっちなんだろうと。
(久我先輩みたいにあんまり噂とか流れてこないからなー…)
久我先輩なら噂で男役しかしないと聞いたことある。でも会長に関してはあんまりそういう話聞かない。親衛隊の層も結構幅広いから抱かれたい人から抱きたい人まで多種多様。どちらかと言うと抱かれたい人が多いとは思うが。
久石副会長みたいに男前な顔立ちだったら何となく男役なのかなと思うけど、この人どちらかと言うと綺麗系というか美人系というか。うーん、ますますわからん。
「会長って上と下どっちですか?」
「…急にぶっこむな…」
考えることに限界を迎えた俺は思わず訊ねた。
希望としては男役であって欲しい。
何故ならある程度親しくなった男友達の喘ぐ姿を想像したくないから。ちなみにそれは理久に対しても当て嵌る。
「基本は上」
「…基本は…ってもしかして非処女゛、い゛って!」
非処女というワードが気に食わなかったらしく思い切り足を蹴られた。めちゃくちゃ痛い。
「中1の時先輩に頼まれたことはある。最後まではしなかったけど」
「…何でですか?」
「無理だったから」
男同士でそういうことをしたことがないので無理の意味が分からない。生理的にってことなのか、身体的にってことなのか。
そう思っていたのが顔に出ていたのか、会長はそのまま言葉を続けた。
2
お気に入りに追加
1,140
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
おねしょ癖のせいで恋人のお泊まりを避け続けて不信感持たれて喧嘩しちゃう話
こじらせた処女
BL
網谷凛(あみやりん)には付き合って半年の恋人がいるにもかかわらず、一度もお泊まりをしたことがない。それは彼自身の悩み、おねしょをしてしまうことだった。
ある日の会社帰り、急な大雨で網谷の乗る電車が止まり、帰れなくなってしまう。どうしようかと悩んでいたところに、彼氏である市川由希(いちかわゆき)に鉢合わせる。泊まって行くことを強く勧められてしまい…?
大親友に監禁される話
だいたい石田
BL
孝之が大親友の正人の家にお泊りにいくことになった。
目覚めるとそこは大型犬用の檻だった。
R描写はありません。
トイレでないところで小用をするシーンがあります。
※この作品はピクシブにて別名義にて投稿した小説を手直ししたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる