期待外れと追放された神眼使いが《墓守》に就職したら墓地にダンジョンが出来てました

紙風船

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第二話 バックスタブ系勇者、現る

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 等と気合いを入れてはみたもの、何をどうしたらいいのか。

「うーん……どうしたものか……」
「おい!」
「どぅえぇあ!?」

 いきなり声を掛けられてとんでもない声が出た。振り向くと其処には鎧を着て剣を手にする金髪の若い男が僕を睨んでいた。何なら今すぐ斬りかかってきそうな、そんな剣呑な雰囲気に自然と唾を飲み込む。

「……鳴き声か?」
「違います。悲鳴です」
「そうか……」

 残念そうな顔で見られる。おや、彼の後ろにも人がいるようだ。片方は大きな鍔がついた帽子をかぶった黒衣なのに露出の激しい豊満な女性。もう片方は法衣と呼べばいいのか、先程の女性とは打って変わって露出の少ない服装だが豊満であることは各部位が主張している、そんな女性だ。

 ていうかこの金髪、ハーレムじゃないか。ちょっと腹立ってきたな……。

「あの、フィンギー様……この方の様子と服装が、その……」
「うん?」

 法衣を着た女性が何処か言い難そうに僕を見ながら金髪に話し掛けている。様子と服装と聞こえたが、この警備服が何か問題……あっ、問題しかない。此処、ファンタジー世界じゃないか……。

「……そうかお前、異界人か!」
「異界人……?」
「えっと、異なる世界の住人……でしょうか?」
「あー……はい」

 金髪は合点がいったという様子だし、法衣の人に再度確認され、どう考えても言い逃れ出来ないので認めざるを得なかった。

 この後どうなるのだろう。捕まって奴隷にされるのか、それとも身包み剥がされて殺されちゃうのか。せめてもの抵抗をしたい所だが武器となるものの所持を認められていない。つまり丸腰だ。

「おいお前、異界人なら何かスキル持ってるだろう!?」
「スキル……っていうと、何だろう……卵焼きが得意とか、そういう……?」
「ちげーよ馬鹿垂れ、攻撃スキルや支援スキルだよ! 何かないのか!?」

 攻撃や支援と言われても、いきなり何か出来るようになった感覚はない。手を振っても何も出ないし、かざしても効果らしい効果は感じない。

「……まだほら、戦闘中に発動するかもしれないし! とりあえずお前、パーティー加入な」
「えっ、ちょっと、いきなりですか?」
「つったってお前、こっからどうやって帰るつもりなの?」
「それは……」

 来た経緯も分からないのに帰る手段なんて当然分からる訳もなく。

「じゃあ……よろしくお願いします」
「おう! ……そういやお前、名前は?」

 聞かれて自己紹介をしていないことに気付いた。

「あっ、僕は七緒っていいます」
「よろしく、ナナヲ! 改めて俺はフィンギー=ノルク! 勇者だ!」
「えっ……えぇ!?」

 成り行きとは言え、勇者のパーティーに加えられてしまった。果たしてこれからどうなるのか……全く予想がつかないが、妙にワクワクしている自分が居ることに呆れ、それでも開き直ろうとしている自分に驚いた。
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