【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

獣王国サベレズと武道大会

ノアとアヴェ(本戦)⑦

前回のあらすじ

 やっべ、普通に負けそう。



 胸に突き刺さった手アヴェの腕を見ながら、私は小さく笑う。

｢やってくれたなアヴェ........｣

 アヴェならやりかねない、時間を巻き戻しても戻らない何らかの制約があると思わせ、私を近くに誘き寄せたな。

 しかも、殺気を完全に消していたから、反応に遅れた。

｢どうです？私の今持てる全力ですよ......もう体力の殆どがないので、これで死んでくれないと私の負けなんですがね｣

｢なら、アヴェの負けだ。私は死なない｣

 私のHPは2割まで減っており、今も尚減り続けている。

 今の体は人間と同じなのだ。

 心臓貫かれて即死してないだけで、化け物である。

 不味い、このままだと切り札を切る事になってしまう。

 私は急いでアヴェの腕を胸から抜き、距離をとる。

 速攻でポッカリと空いた胸を治すと、吹き飛ばした女神達が襲いかかってくる。

｢邪魔なんだよ!!さっきから!!｣

 私は女神達に向かって、衝撃の魔眼と絶望の魔眼を発動する。

 魔眼の発動はほんの一瞬遅延ディレイがある。

 女神達出てきた時は、驚きすぎて使うタイミングがなかったんだよな。

 衝撃の魔眼はその名の通り、視界内に入れた対象に向かって見えない衝撃を与える魔眼だ。

 強力なノックバック効果がある。

 アヴェの見えない攻撃に似ているが、ダメージはカスである。

 案の定、女神達に与えた衝撃は雀の涙にもならないダメージしか与えていない。

 ただ、衝撃を食らって何度も吹き飛ばされているだけだ。

 しかし、絶望の魔眼と併用すると、この魔眼は化ける。

 絶望の魔眼は、視界内に収めた対象の魔力を吸収する効果がある。

 本質はそこでは無いが、今回使うのはこの効果だ。

 これと衝撃の魔眼を組み合わせると、相手は魔法を使えず衝撃の魔眼によって近づけないというサイクルが完成する。

 女神を全員視界内に入れているから、アヴェが動かない限り、私に攻撃が届くことは無い。

 弓での遠距離攻撃も、衝撃の魔眼で叩き落とせるし、魔法は絶望の魔眼で魔力を全て奪い取れる。

 後は、時間が過ぎるのを待つだけで、アヴェの体力は減っていくからな。

 そして、アヴェには距離を取る時にちょっとした置き土産をあげた。

 次元魔法『断絶』この魔法は次元を超えて相手を隔離するもので、抜け出すには同じく次元魔法が使えないといけない。

 アヴェは次元魔法を使えるが、今の魔力量では私の『断絶』を破ることは出来ない。

 要は詰みの状態なのだ。

｢危なかったけど、私の勝ちだね｣

 アヴェはゆっくりと力尽きていった。

『勝負あり!!勝者!!アルカン代表『性別詐欺』ノア!!』