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第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル
ダンジョン迷宮⑥
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翌日、俺とニーナは今日よりも早く宿を出て、ダンジョン迷宮に入っていた。
「凄い人でしたね、マスター」
「アレでもピーク時をズラしているから、まだマシな方らしいけどな」
何時もよりも早く宿を出た為、ピークとは言わなくとも、混んでいる時間帯に当たってしまった。
パッと見た感じ、1000人程はいただろうか。
ピーク時は、これの3倍近くいるらしい。多すぎたろ。
「アレよりも多くなるのですか........」
人の群れを想像したニーナが、げんなりとした顔を浮かべる。
我先にと、押し入ってダンジョン迷宮ニーナ入ろうとする男達の群れ.........おぇ、想像するんじゃなかった。
「さ、とっとと3階層まで行こうか。道は覚えているか?ニーナ」
「大丈夫です、マスター。昨日、行きと帰りでしっかりと覚えました」
「OKだ。時間短縮のために走っていこう」
そう言って、俺とニーナは自身に魔力を纏わせて身体強化を使用する。
身体強化とは、その名の通り自分の身体能力を大幅に引き上げる技術だ。
魔法とは違い、魔力を何かに変換している訳ではなく、魔力をただ自分の周りに止めさせ、魔力が覆った場所を強化する魔力操作の一種である。
俺としては、魔法でもいいんじゃね?とは思うが、こういう魔法や魔力を研究している学者曰く全くの別物らしい。
俺にはよく分からん。
更に、身体強化は覆った魔力量に比例する。
つまり、多く魔力を纏えば纏うほど身体能力は強化されていくのだ。
俺はとある事情により、一般人が持つ魔力の2人分の魔力しか1度には使えないので身体強化が余り強くない。
身体強化が得意な、第三軍大将ガンドぐらいになると、1000人近い身体強化できると言う。一騎当千を体現したような奴だ。
そんな訳で、身体強化が得意ではない俺はちょっとした工夫をしている。
魔力の圧縮だ。
本来魔力というものは、圧縮することなど出来ない。
密閉空間に入った空気を、上から圧力をかけて押しつぶせるかと言われれば、無理と答えるしかないだろう。魔力も同じような感じだ。
しかし、それを魔力操作によって強引に行うことにより、魔力圧縮。密閉空間に入った空気が圧力をかけられて、反発する現象のように、魔力も反発する。その力を使って、身体強化を更に強くしているのだ。
この身体強化方法を聞いたもの達は、簡単そうだなと思い真似するが、大抵は圧縮した魔力が爆発して痛い目を見る。
全方向に満遍なく圧力をかけなければならず、それがとても難しい。俺も最初はは苦労したものだ。
ゆっくりと走る事1時間弱、俺達は3階層にたどり着いた。
「とりあえずおばちゃんの地図通り、行ってみるか」
「この○印が着いているところが、魔物がいる可能性が高い場所でしたよね?」
「そうだ。元とは言え、金級冒険者の助言だ。大ハズレってことは無いだろ」
そう言いながら、ここから1番近い○印に向かって歩き出す。
10分も歩かないうちに、おばちゃんの書いてくれたこの地図は有能だったと分からせてくれた。
「お?気配があるな」
ここから大体200m行った辺りに、魔物らしき気配を感じる。
「なんで私の探知魔法よりも先に気づくんですかねぇ.......」
「経験の差だな........1つちょっと強めの気配と5つの弱い気配。多分ホブゴブリンとゴブリンの群れだ」
「..........あーはい。私も探知出来ました。ホブゴブリンとゴブリンですね。冒険者はいなさそうですし、やっと狩れますよ!!」
ニーナがうっきうきだ。昨日は暴れたかったのに、暴れれなかったからなぁ.......
鬱憤が溜まっているのだろう。
「ニーナが1人で殺っていいぞ」
「いいんですか!!」
まるで、欲しいおもちゃを買ってもらった子供のように目を輝かせるニーナ。
どんだけ戦いたかったんだよ。
反応のする方へ行くと、ホブゴブリンとゴブリンを見つける。
「ギギャ!!」
「「「「「ギャーギャー!!」」」」」
ホブゴブリン達もこちらを補足したようで、配下のゴブリン達をけしかけてくる。
「それじゃ、マスターはそこで大人しくしててくださいね」
ニーナはそう言うと、ゴブリン達に向かって走って行く。
「行きますよ!!」
先頭のゴブリンの鼻っ面を蹴り飛ばすと、続け様にその横にいたゴブリンの頭を持ち、地面に叩きつける。
ゴブリン達は、いきなり仲間が2体倒された事に驚きつつも持っていた棍棒を振り上げて、ニーナに攻撃を仕掛けようとする。
だが、ニーナにそんなトロくさい攻撃が当たる訳がない。
迫り来る3つの棍棒を避けると、1番左側にいるゴブリンを蹴りあげる。
蹴りあげられたゴブリンは天井に激突。更にニーナは、その振り上げた足をもう1匹のゴブリンの脳天に叩き込んだ。
頭が陥没したゴブリンも息絶える。
残った最後の1匹は、ニーナの手刀によって首を切り飛ばされ、5匹のゴブリンは幻想だったかのように消え、魔石だけを残していった。
「さて、後は貴方だけですよ?」
「ギギャ!!グギャギャ!!」
最後に残ったホブゴブリンは、仲間たちをやられた怒りからか、顔を赤くしながらニーナに立ち向かっていくが......
ドゴン!!
ニーナの腹蹴りによって、ホブゴブリンの腹にはトンネルが開通していた。
ホブゴブリンもゴブリン達と同じく、幻想のように死体は消え、魔石だけがその場に残されたのだった。
「凄い人でしたね、マスター」
「アレでもピーク時をズラしているから、まだマシな方らしいけどな」
何時もよりも早く宿を出た為、ピークとは言わなくとも、混んでいる時間帯に当たってしまった。
パッと見た感じ、1000人程はいただろうか。
ピーク時は、これの3倍近くいるらしい。多すぎたろ。
「アレよりも多くなるのですか........」
人の群れを想像したニーナが、げんなりとした顔を浮かべる。
我先にと、押し入ってダンジョン迷宮ニーナ入ろうとする男達の群れ.........おぇ、想像するんじゃなかった。
「さ、とっとと3階層まで行こうか。道は覚えているか?ニーナ」
「大丈夫です、マスター。昨日、行きと帰りでしっかりと覚えました」
「OKだ。時間短縮のために走っていこう」
そう言って、俺とニーナは自身に魔力を纏わせて身体強化を使用する。
身体強化とは、その名の通り自分の身体能力を大幅に引き上げる技術だ。
魔法とは違い、魔力を何かに変換している訳ではなく、魔力をただ自分の周りに止めさせ、魔力が覆った場所を強化する魔力操作の一種である。
俺としては、魔法でもいいんじゃね?とは思うが、こういう魔法や魔力を研究している学者曰く全くの別物らしい。
俺にはよく分からん。
更に、身体強化は覆った魔力量に比例する。
つまり、多く魔力を纏えば纏うほど身体能力は強化されていくのだ。
俺はとある事情により、一般人が持つ魔力の2人分の魔力しか1度には使えないので身体強化が余り強くない。
身体強化が得意な、第三軍大将ガンドぐらいになると、1000人近い身体強化できると言う。一騎当千を体現したような奴だ。
そんな訳で、身体強化が得意ではない俺はちょっとした工夫をしている。
魔力の圧縮だ。
本来魔力というものは、圧縮することなど出来ない。
密閉空間に入った空気を、上から圧力をかけて押しつぶせるかと言われれば、無理と答えるしかないだろう。魔力も同じような感じだ。
しかし、それを魔力操作によって強引に行うことにより、魔力圧縮。密閉空間に入った空気が圧力をかけられて、反発する現象のように、魔力も反発する。その力を使って、身体強化を更に強くしているのだ。
この身体強化方法を聞いたもの達は、簡単そうだなと思い真似するが、大抵は圧縮した魔力が爆発して痛い目を見る。
全方向に満遍なく圧力をかけなければならず、それがとても難しい。俺も最初はは苦労したものだ。
ゆっくりと走る事1時間弱、俺達は3階層にたどり着いた。
「とりあえずおばちゃんの地図通り、行ってみるか」
「この○印が着いているところが、魔物がいる可能性が高い場所でしたよね?」
「そうだ。元とは言え、金級冒険者の助言だ。大ハズレってことは無いだろ」
そう言いながら、ここから1番近い○印に向かって歩き出す。
10分も歩かないうちに、おばちゃんの書いてくれたこの地図は有能だったと分からせてくれた。
「お?気配があるな」
ここから大体200m行った辺りに、魔物らしき気配を感じる。
「なんで私の探知魔法よりも先に気づくんですかねぇ.......」
「経験の差だな........1つちょっと強めの気配と5つの弱い気配。多分ホブゴブリンとゴブリンの群れだ」
「..........あーはい。私も探知出来ました。ホブゴブリンとゴブリンですね。冒険者はいなさそうですし、やっと狩れますよ!!」
ニーナがうっきうきだ。昨日は暴れたかったのに、暴れれなかったからなぁ.......
鬱憤が溜まっているのだろう。
「ニーナが1人で殺っていいぞ」
「いいんですか!!」
まるで、欲しいおもちゃを買ってもらった子供のように目を輝かせるニーナ。
どんだけ戦いたかったんだよ。
反応のする方へ行くと、ホブゴブリンとゴブリンを見つける。
「ギギャ!!」
「「「「「ギャーギャー!!」」」」」
ホブゴブリン達もこちらを補足したようで、配下のゴブリン達をけしかけてくる。
「それじゃ、マスターはそこで大人しくしててくださいね」
ニーナはそう言うと、ゴブリン達に向かって走って行く。
「行きますよ!!」
先頭のゴブリンの鼻っ面を蹴り飛ばすと、続け様にその横にいたゴブリンの頭を持ち、地面に叩きつける。
ゴブリン達は、いきなり仲間が2体倒された事に驚きつつも持っていた棍棒を振り上げて、ニーナに攻撃を仕掛けようとする。
だが、ニーナにそんなトロくさい攻撃が当たる訳がない。
迫り来る3つの棍棒を避けると、1番左側にいるゴブリンを蹴りあげる。
蹴りあげられたゴブリンは天井に激突。更にニーナは、その振り上げた足をもう1匹のゴブリンの脳天に叩き込んだ。
頭が陥没したゴブリンも息絶える。
残った最後の1匹は、ニーナの手刀によって首を切り飛ばされ、5匹のゴブリンは幻想だったかのように消え、魔石だけを残していった。
「さて、後は貴方だけですよ?」
「ギギャ!!グギャギャ!!」
最後に残ったホブゴブリンは、仲間たちをやられた怒りからか、顔を赤くしながらニーナに立ち向かっていくが......
ドゴン!!
ニーナの腹蹴りによって、ホブゴブリンの腹にはトンネルが開通していた。
ホブゴブリンもゴブリン達と同じく、幻想のように死体は消え、魔石だけがその場に残されたのだった。
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