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第一部 王国編 第一章 迷宮都市インゼル

魔王円卓会議①

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 城の中に入り、円卓会議が行われている部屋へと足を運ぶ。

 場所はわかっているので案内人はいない。

 普段はサボっているが、それでも本当に俺にも参加させたい案件を取り扱っている時は魔王城から参加しろという手紙が来るのだ。

 今回、手紙は来てなかったけど、ニーナが行け行けうるさいので出席する事に.....

 屋敷に帰って寝たい。

 そんな事を考えながら歩いていくと、目的の場所にたどり着いた。

 大きい扉ではなく、一般の家に付いているような質素な扉だ。

 俺はその扉をノックもせずに、バン!!と音を立てながら少し乱暴に開ける。

 部屋の中を見渡すと、部屋にいる15人全員が俺とニーナに視線を向けていた。

「おいニーナ、俺はどうやら人気者らしい。皆から注目されてるぞ」

「マスターがそう思うなら、そうなんじゃないんですかね」

 なんともまぁ投げやりな返答だ。

 俺は一身に注目を集めつつ、我らが魔王陛下の元に歩みを進める。

「『最弱』!!貴様!!普段から円卓会議に参加しない上に、遅れてくるとは何事だ!!」

 魔王陛下の元に行く途中に野次が飛んでくるが、俺とニーナはガン無視する。

「おい!!無視をするな!!『最弱』!!」

 無視をされて更に吠える老害を更に無視して、魔王陛下の元にたどり着いた俺は膝をつく。

 ぶっちゃけ魔王陛下に敬意とかないが、仮にも雇い主だ。最低限の礼儀はいる。

「魔王陛下、第8軍大将グレイ。同じく第8軍補佐官ニーナ。只今参上致しました」

「ほぉ、珍しいのぉ。グレイ。妾が招集を掛けた時以外に来たのは何年ぶりかのぉ」

「20年振りぐらいですかね。あの時は暇だったので参加したと記憶しております」

「いつもの暇じゃろうに」

 半分呆れた目で見てくる魔王陛下。

 ジジくさい言葉使いだが、見た目は褐色幼女だ。

 健康そうな褐色の肌に、白色の長髪。血よりも濃い深紅の目、身長はニーナよりも少し高いぐらいで、少女よりの幼女と言っても過言ではない。

 かなり大きめのローブを羽織っているため、服装は分からないが、体型は少女その物だと思う。

 ただ、魔王陛下は他の魔族達と違い、額から2本の角が生えている。

 この国の旗印も2本の角を交差させた紋章だ。

 この見た目で魔王かよと、最初は思ったが、それ相応の実力やカリスマ性を持っているのは確かなのだ。

 まぁ、他の連中がいない非公式の場ではよく『ロリババァ』って呼ぶけどな。

「一応聞くが遅れた理由はなんじゃ?と言うかそもそもなぜ来る気になったのじゃ?」

「遅れたのは道に迷っていた老人を案内しておりました。出席の理由は、俺が出席しないと我が副官に文句を垂れる有象無象がいる為ですかね」

 もちろん遅刻の理由はでっち上げだ。

 どうせ嘘ついたってわからんやろ(適当)

「ほう?ニーナに難癖付ける者がおるのか?......まぁいい、さっさと席に着け」

 俺は魔王陛下の前から立ち去り、自分と席に着く。すると....

「魔王陛下!!」

 先程からギャーギャー喚く老害が更に喚く。

 俺の席はさほど近くにいないから、ちょっとうるせぇな程度にしか思わないが、俺よりも近くにいる奴らはもっと煩いだろう。

 事実、何人かは顔を顰めている。

「どうした?ドレング」

 ドレングと呼ばれたオールバックの白髪にちょび髭を生やした男の老人は、顔を真っ赤にしながら喚き続ける。

 ちなみに第3軍の大将、俺と同じ最高幹部の1人だ。

「どうしたもこうしたもありません!『最弱』はこの大事な円卓会議を遅刻してきたのです!!何かしらの罰を与えるというのが筋というものでは無いのですか?!」

「だ、そうだが?」

 老害の叫びを心底うんざりした表情を浮かべながら、会話を俺に丸投げしてきた。

 正直勘弁して欲しい。

 この老害の言ってることもあながち間違ってない為、下手に言い返さない方がいいのだ。

 サボってるのは俺だし遅刻したのも俺。

 円卓会議に出席しなければいけない立場にもかかわらず、サボり遅刻。

 誰がどう見ても悪いのは俺だろう。

 しかし、俺は魔王軍最高幹部。この程度の事で頭を下げるなんてまっぴらゴメンだ。....と言うかこの老害の思い通りになるのは癪に障る。

「それはそれは失礼した。確かに遅刻は良くないものだ。ところでドレング殿?貴殿は東方の戦線でしたな」

 魔王国は大きくわけて4つの戦線を抱えている。神聖皇国と争う北方戦線、帝国と争う東方戦線、人間以外の人間種が集まって国を作っている連合国と争う南方戦線、そして王国と争う西方戦線だ。

 そして今現在、北方と南方の戦線は停滞しており、西方は押し返しているが、東方はジリジリと戦線を下げている。

 要は負け続けているのだ。

「.....それが?」

「いやぁ?特に何かあるという訳ではありませんよ?......サボらず遅刻をしなくとも、最高幹部がその程度の実力とは考えものだな」

 俺が最後に放った言葉は、ドレングには聞こえていない。しかし、奴は唇を読めるのを俺は知っている。

 そして、わざと読ませるように、頭を抱えるふりをして仮面をズラした。

「貴様ァ!!この私が実力が無いと申すのか!!」

「おやおや?急にどうしたのですかなドレング殿?」

「分かっている癖に惚けるな!!新参者が!!」

「その新参者よりも戦果を残せていない古参者がいるらしいですね。もう少し有能な人に変えたらいいと思うのですが、ドレング殿はどう思います?」

「貴様ァ!!」

「黙れ」

 このままヒートアップするかに思えた言い合いは、魔王陛下の一言で幕を閉じる。

「おい、グレイ。お主は何故毎回毎回煽らねば気がすまんのだ?普通に老人を助けていたからと言えばいいだろうに」

「おっとそれは失礼、人助けを遅刻の言い訳にしてしまっては、その老人に申し訳なくなってしまうとおもったまでです」

「よく言うわ」

 俺への注意を終えると次はドレングに目を向ける。

「それとドレング、貴様も一々グレイに突っかかるな。正直煩いし、貴重な円卓会議の時間を浪費させるな」

「はっ!申し訳ございません.....」

 頭を下げてはいるが、粘っこい視線を感じる。

 その視線は、"てめぇのせいで俺まで怒られたじゃねぇか"と言わんばかりだ。

「まぁ良い。お主らが言い合いをするのはいつもの事出しのぉ.....さて、続きから始めるかの」

 そう言って締めくくると、円卓会議は進み始めるのだった。
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