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第一章 花開くクレマチス

(6)花開くクレマチス その3-2

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 ホテルに着き、フロントで愛子が無料券を出すと、中からスタッフが出てきて、ふたりに挨拶をした。
  
「ようこそお越しくださいました。お部屋の準備整っております。どうぞごゆっくり」

 克也とそんなに年の離れていないスーツ姿の男性スタッフは、克也にカギを渡してエレベーターホールまで案内した。ふたりは少し照れ臭くなりながらエレベーターに乗り込む。
  
「いまの、VIP待遇だよね」
「わたし、ラブホであんなのやられたことないよ?」
「いよいよもって謎だなぁ。真奈美さんに明日にでも訊いてみよう」

 エレベーターのドアが開いて四階に着くと、ふたりは廊下の部屋番号の案内に沿って廊下を奥へ進む。
  
「一番奥だね」

 廊下の突き当りにある一番奥の「406」の部屋の鍵を克也が開けると、愛子が歓声を上げる。
  
「うわぁー、きれいー!」

 この手のホテルとしては珍しく、部屋のカーテンが開けられており、外の風景が見ることができた。海岸通り沿いに位置しているので、昼間にチェックインすれば、綺麗なオーシャンビューが広がるはずだ。愛子たちの目に飛び込んできたのは、海岸通りを走る車が作り出す光の群れだった。外の夜景から内側へと目を移すと、ソファーのある部屋とベッドのある部屋が独立しており、ベッドの部屋には天蓋が施されていた。
  
「うわぁ、憧れのお姫様ベッドだー!」

 愛子が目を輝かせて舞い上がる。
  
「高級ホテルだな。これは人気あるのわかるよ」
「うんうん、すごいねー」

 克也は、歓喜して浮かれる愛子の後ろから、そっと両腕を腰のあたりへ伸ばす。
  
「愛子……」

 愛子は、はしゃぐのをピタッと止め、ゆっくり後ろを振り返り、克也の瞳を見つめる。そして克也の方に向き直ると、そっと潤んだ目を閉じ、顎を上げる。克也は愛子に顔を近づけ、そっと唇を奪いに行く。
  
「んっ……」

 最初は唇どうしの軽いキスを二、三度繰り返して触れ合いを楽しむようについばむ。愛子は克也から唇を離すと、上目遣いで克也の目をみつめ、少し口を開けて舌を伸ばす。克也は愛子の腰に腕をまわして身体を引き寄せると、愛子の下唇を甘く噛み、左右に顔を動かす。そして舌先を愛子の唇に這わせると、愛子も応えて克也の唇や舌を舐める。愛子から吐息が漏れると克也は深く、愛子の口腔の中へ舌先を挿入して唇を唇で塞ぐ。
  
「んんっ、んっ……」

 そのまま克也は愛子をソファーにゆっくりと押し倒し、花柄の入った薄いピンクのワンピースのファスナーに手をかける。
  
「家出る前、ちょっとおしゃれしたでしょ。知ってるよ」

 克也は唇を離すと、意地悪っぽい口調で愛子の耳元で囁く。
  
「んっ、克也さんのための、とっておきの一枚だよ」

 愛子はファスナーを下ろしやすいように若干上体を起こす。克也はゆっくりとファスナーを下まで降ろすと、そのまま腰までずり下げる。愛子は腰を浮かせながら両脚を器用に使ってワンピースを床まで落とすと、右腕を伸ばして拾い上げ、ソファーの背もたれにかける。そして流れるようにそのまま克也の腰に両腕をまわし、Tシャツを脱がせ、ベルトに手をかけてジーンズをずり降ろす。そしてふたりはお互いの身体を舐めるように見つめ合う。
  
「似合ってるよ」
「ありがとっ」

 愛子はお昼にショッピングモールで買ったばかりの、薄いピンクのクレマチスの花をあしらったレースのブラジャーとパンティーを身に着けていた。
  
「克也さんが、あのとき、ピンクって言ってくれたの、本当、嬉しかったぁ」
「愛妻の好みの色くらい、ぴたっ、て当てないと……。ね」
「うふふっ」

 ふたりは再びお互いの両腕を腰に伸ばして引き寄せ合い、唇を求め合う。そして愛子は克也の股間に左腕を伸ばす。すでに激しく自己主張を繰り返している熱い肉棒に触れた愛子は、そっと唇を離す。
  
「ん……、そろそろ、お風呂、いこっか」
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