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第三章 素直になっちゃえ
(23)素直になっちゃえ その2-1
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『まずいっ!』
目的地に到着して早々、克也は非常に焦っていた。
優菜に連れてこられた場所は「24Hジム」と書かれたビル。
「最近通い始めたんだけど、すっごく汗かくし、ストレス発散になるし、運動不足解消、で、ご飯もおいしくなるっていいことづくめでね。克也くんにぴったりと思ってさ」
克也が立ち尽くしてぼーっとしていると、
「克也くん、何してるの? はやくっ」
克也の手を引いて、優菜は颯爽とビルの中へ入っていく。こりゃ、なるようになるしかない。克也はため息をつき、諦めた表情で優菜についていった。
「今日はお友達キャンペーンで克也くんの分タダだから、思いっきり発散しちゃいなさい」
支払いを終え、白いTシャツに黒のスパッツという身軽な格好に着替えた優菜は、ヨガマットで柔軟を始めた。一方克也もそのままの格好でいるわけにはいかず、Tシャツとレンタルの短パンを身に着けていた。優菜はその恰好を見てふぅーんと鼻を鳴らす。
「克也くんって、入ったころからおしゃれで弱そうなイメージあったけど、じつはムキムキだったんだねぇ」
克也の体格は高校時代にはすでに形成されており、肩幅が広く逆三角形で腹筋も割れており、文字通りのマッチョ体形であった。が、会社に入って以来、肉食を避け、常時栄養が足りていない状態だった克也は外見も貧弱に見えていた。結婚して愛子と一緒にいる時は特に、素肌をさらすことを自分で禁じていた。
柔軟の終わった優菜は、すぐにロデオマシーンのある方向へ足を進める。
「じゃぁ、私、あれ乗ってくるから、克也くんは、適当に汗流してて」
「はいぃ……」
仕方ない。ここまで来て何もしないじゃ返って疑われる。克也も意を決してヨガマットで軽く柔軟をこなした後、ベンチプレスに向かう。
そのころ優菜は――
ロデオマシーンに乗り、腰を上下左右に動かしていた。
「ああっ、やっぱり癖になっちゃったぁ……」
最初にこれに乗った時に全身を襲った電気が走るような快感。太ももから内股を伝ってくる振動が間接的に股間を刺激し、さらに女性器のソコにも快感を与える。さらに鞍が上下左右と思いもよらない動きをするので優菜は最初失神し、金縛りにあったように数秒だけだったが、身動きできなかった。
「あれ、きがついてるひといるんだろぅなぁ……、やだっ、湿ってきちゃう」
十分ほどマシーンを動かしてから、優菜は快楽に身を委ねながらも、何とかスイッチに手を伸ばす。
「ん、今日はこれくらいで……」
名残惜しそうに優菜は鞍から降りる。
「さてっと、克也くんは、っと……、んんっ、何? この匂い。どこから?」
数十分ほどベンチプレスをこなしていた克也の体内から、それまで必死に隠していた匂いが徐々に洩れ始めていた。
「なんだろ、この匂い……。ま、まさかっ!?」
匂いのする方向へ行くと、克也がベンチプレスをしている姿が見えた。
「最初聞いた時は耳を疑ったけど、すごいわ……。噂に違わず」
優菜は匂いのことは話さずに、克也に声をかける。
「克也くーん、少し一緒に走らない?」
克也は優菜に気がつくと、
「あと、ワンサイクルこなしたらランに行きますよ」
汗をかきながら答える。
「わ、わかったぁ……」
近づくとさらに強烈な匂いが優菜の鼻腔を襲っていた。だが、悪臭とは違う。むしろ、気持ちいい……。
優菜は先にランニングマシーンに乗り、ちょっと遅めのペースで走り始める。数分すると、あの匂いを連れて克也が隣で走り始める。
「はっ、はっ……」
もともと体育会系の克也だ。トレーニングの仕方など身体が染みついて忘れない。ジムなどの器具はおもちゃに乗ってる感覚でしかないのかもしれない。
「克也くん、どう? きてよかった?」
息を切らせながら優菜が問う。
「どうでしょうね。それより、後でお聞きしたいことがあります」
克也もさすがに察しがついたようだ。
「ん、匂いの話でしょ? 誰から聞いたか……、とか」
「それです。すごいでしょ。学生時代はこんなもんじゃなかったはずです」
「へぇー。これよりすごかったんだ。最初嗅いだ時、びっくりしたよ」
「はっ、はっ……。ずっと……、隠すつもりでした……。それこそ、墓場まで……」
「うん……。愛子のことだよね……」
「一生、隠すつもりだったんです。なのに……」
「ん、それはね……、後で話すよ。とりあえず走ろうか……」
ふたりは無言で走ることに集中する。無心でひたすら走る。汗をかく。匂いを発散させる……。
気がつけば、空気清浄機をまわす音が部屋中にしていた。
目的地に到着して早々、克也は非常に焦っていた。
優菜に連れてこられた場所は「24Hジム」と書かれたビル。
「最近通い始めたんだけど、すっごく汗かくし、ストレス発散になるし、運動不足解消、で、ご飯もおいしくなるっていいことづくめでね。克也くんにぴったりと思ってさ」
克也が立ち尽くしてぼーっとしていると、
「克也くん、何してるの? はやくっ」
克也の手を引いて、優菜は颯爽とビルの中へ入っていく。こりゃ、なるようになるしかない。克也はため息をつき、諦めた表情で優菜についていった。
「今日はお友達キャンペーンで克也くんの分タダだから、思いっきり発散しちゃいなさい」
支払いを終え、白いTシャツに黒のスパッツという身軽な格好に着替えた優菜は、ヨガマットで柔軟を始めた。一方克也もそのままの格好でいるわけにはいかず、Tシャツとレンタルの短パンを身に着けていた。優菜はその恰好を見てふぅーんと鼻を鳴らす。
「克也くんって、入ったころからおしゃれで弱そうなイメージあったけど、じつはムキムキだったんだねぇ」
克也の体格は高校時代にはすでに形成されており、肩幅が広く逆三角形で腹筋も割れており、文字通りのマッチョ体形であった。が、会社に入って以来、肉食を避け、常時栄養が足りていない状態だった克也は外見も貧弱に見えていた。結婚して愛子と一緒にいる時は特に、素肌をさらすことを自分で禁じていた。
柔軟の終わった優菜は、すぐにロデオマシーンのある方向へ足を進める。
「じゃぁ、私、あれ乗ってくるから、克也くんは、適当に汗流してて」
「はいぃ……」
仕方ない。ここまで来て何もしないじゃ返って疑われる。克也も意を決してヨガマットで軽く柔軟をこなした後、ベンチプレスに向かう。
そのころ優菜は――
ロデオマシーンに乗り、腰を上下左右に動かしていた。
「ああっ、やっぱり癖になっちゃったぁ……」
最初にこれに乗った時に全身を襲った電気が走るような快感。太ももから内股を伝ってくる振動が間接的に股間を刺激し、さらに女性器のソコにも快感を与える。さらに鞍が上下左右と思いもよらない動きをするので優菜は最初失神し、金縛りにあったように数秒だけだったが、身動きできなかった。
「あれ、きがついてるひといるんだろぅなぁ……、やだっ、湿ってきちゃう」
十分ほどマシーンを動かしてから、優菜は快楽に身を委ねながらも、何とかスイッチに手を伸ばす。
「ん、今日はこれくらいで……」
名残惜しそうに優菜は鞍から降りる。
「さてっと、克也くんは、っと……、んんっ、何? この匂い。どこから?」
数十分ほどベンチプレスをこなしていた克也の体内から、それまで必死に隠していた匂いが徐々に洩れ始めていた。
「なんだろ、この匂い……。ま、まさかっ!?」
匂いのする方向へ行くと、克也がベンチプレスをしている姿が見えた。
「最初聞いた時は耳を疑ったけど、すごいわ……。噂に違わず」
優菜は匂いのことは話さずに、克也に声をかける。
「克也くーん、少し一緒に走らない?」
克也は優菜に気がつくと、
「あと、ワンサイクルこなしたらランに行きますよ」
汗をかきながら答える。
「わ、わかったぁ……」
近づくとさらに強烈な匂いが優菜の鼻腔を襲っていた。だが、悪臭とは違う。むしろ、気持ちいい……。
優菜は先にランニングマシーンに乗り、ちょっと遅めのペースで走り始める。数分すると、あの匂いを連れて克也が隣で走り始める。
「はっ、はっ……」
もともと体育会系の克也だ。トレーニングの仕方など身体が染みついて忘れない。ジムなどの器具はおもちゃに乗ってる感覚でしかないのかもしれない。
「克也くん、どう? きてよかった?」
息を切らせながら優菜が問う。
「どうでしょうね。それより、後でお聞きしたいことがあります」
克也もさすがに察しがついたようだ。
「ん、匂いの話でしょ? 誰から聞いたか……、とか」
「それです。すごいでしょ。学生時代はこんなもんじゃなかったはずです」
「へぇー。これよりすごかったんだ。最初嗅いだ時、びっくりしたよ」
「はっ、はっ……。ずっと……、隠すつもりでした……。それこそ、墓場まで……」
「うん……。愛子のことだよね……」
「一生、隠すつもりだったんです。なのに……」
「ん、それはね……、後で話すよ。とりあえず走ろうか……」
ふたりは無言で走ることに集中する。無心でひたすら走る。汗をかく。匂いを発散させる……。
気がつけば、空気清浄機をまわす音が部屋中にしていた。
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