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序章 この出逢いは最悪だ
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一瞬思考が停止する。そして・・・
「お前は、誰だ?」
色々な疑念が頭の中を駆け回っているが、真っ先に口を突いて出たのは定番中の定番のクエスチョンだった。しかし、彼女の口から出てきたのは質問とは関係の無い、人を小馬鹿にしたような卑下の言葉だった・・・
「ワシに聞いておるのか、ニンゲンよ?」
「そうだ、お前だ!てかお前は人間じゃないのかよ!?」
「何じゃお前は。全く呆れたヤツじゃのぉ。あろうことか、真っ先にワシの出自を尋ねるとはな!なんと滑稽な!ハッ」
鼻で笑われた。どうやら気に触る言い方しかしない(いや、できない)いけ好かない奴のようだ。
「ワシの名は、堕天使ゾエア。」
え?今なんて言った?ダテンシ?人をおちょくるのも大概にしてもらいたいものである。こんなちびっ子が天使などという大仰なものになれるはずがない。
「堕天使様ってんなら、なんか天界特有の芸当やってみせろよ」
意地悪、大人気ない、というワードが思考回路の理性という部分をくすぐる。だが、こうでもしなければいじられた事への示しがつかないのだ。つまるところは、己のメンツの保持のためだと言えよう。
「カカッ、良かろう。見て後悔するでないぞ、ニンゲン。自分の非力さをなッ!」
「ウザい」
──今のオレの心情を実に端的に表したワードである。
それにしてもどこまでいっても悪びれずに見栄をはって、平気で嘘を積み重ねる。まったく・・・ふてぶてしいヤツこの上ない。
「古き契により結ばれし龍の眷属よ。今は無きその姿、汝の御力を我に分け与えたまえ。龍の御名の下に、我この呪文、唱えん。移送!」
なんだか、謎の詠唱をしている。どうやら本当に何か始めようとしているようだ。
──!?
突如強烈な閃光が周りを取り囲み、オレは情景反射的に目を覆った。大気中の何かが膨れ上がるような感覚を肌に感じながら、オレはなされるままに無抵抗でいた。
──少し経っただろうか。なんだか自分の周囲が妙に開けてきた気がする。この感覚が、果たして実際がそうなのか、幻覚から来るものなのか。
「目を開けてみろ、ニンゲン」
言われるがままに目を開いてオレは思わず息を呑む。
「こ、ここは一体どこなんだよ!?」
*
「驚いたか、ニンゲンよ。ようこそ我が楽園、秘密の花園へ!!」
オレの反応に満足したかのように大きく頷きながら、ヤツ・・・いや、堕天使ゾエア様はそう仰られた。
オレはボロを探すかのように、周囲をキョロキョロと見回してみた。しかし、そこには期待したようなものはなかった。代わりに、先程までのオレの故郷とは一変し、周囲は緑が生い茂り、中央にはいわゆる大聖堂と呼ばれるような大きな教会がそびえ立っていた。
──!
来ました、異世界!待ってました!
どうやら異世界へと足を踏み込んだらしいことを実感し始めたオレの脳内では、慇懃無礼な堕天使のことなぞ頭の隅に追いやられ、ただただ新天地に刺激されて心地よく甘い好奇心を掻き立てられていた。
──そう、好奇心だ。
「お前は、誰だ?」
色々な疑念が頭の中を駆け回っているが、真っ先に口を突いて出たのは定番中の定番のクエスチョンだった。しかし、彼女の口から出てきたのは質問とは関係の無い、人を小馬鹿にしたような卑下の言葉だった・・・
「ワシに聞いておるのか、ニンゲンよ?」
「そうだ、お前だ!てかお前は人間じゃないのかよ!?」
「何じゃお前は。全く呆れたヤツじゃのぉ。あろうことか、真っ先にワシの出自を尋ねるとはな!なんと滑稽な!ハッ」
鼻で笑われた。どうやら気に触る言い方しかしない(いや、できない)いけ好かない奴のようだ。
「ワシの名は、堕天使ゾエア。」
え?今なんて言った?ダテンシ?人をおちょくるのも大概にしてもらいたいものである。こんなちびっ子が天使などという大仰なものになれるはずがない。
「堕天使様ってんなら、なんか天界特有の芸当やってみせろよ」
意地悪、大人気ない、というワードが思考回路の理性という部分をくすぐる。だが、こうでもしなければいじられた事への示しがつかないのだ。つまるところは、己のメンツの保持のためだと言えよう。
「カカッ、良かろう。見て後悔するでないぞ、ニンゲン。自分の非力さをなッ!」
「ウザい」
──今のオレの心情を実に端的に表したワードである。
それにしてもどこまでいっても悪びれずに見栄をはって、平気で嘘を積み重ねる。まったく・・・ふてぶてしいヤツこの上ない。
「古き契により結ばれし龍の眷属よ。今は無きその姿、汝の御力を我に分け与えたまえ。龍の御名の下に、我この呪文、唱えん。移送!」
なんだか、謎の詠唱をしている。どうやら本当に何か始めようとしているようだ。
──!?
突如強烈な閃光が周りを取り囲み、オレは情景反射的に目を覆った。大気中の何かが膨れ上がるような感覚を肌に感じながら、オレはなされるままに無抵抗でいた。
──少し経っただろうか。なんだか自分の周囲が妙に開けてきた気がする。この感覚が、果たして実際がそうなのか、幻覚から来るものなのか。
「目を開けてみろ、ニンゲン」
言われるがままに目を開いてオレは思わず息を呑む。
「こ、ここは一体どこなんだよ!?」
*
「驚いたか、ニンゲンよ。ようこそ我が楽園、秘密の花園へ!!」
オレの反応に満足したかのように大きく頷きながら、ヤツ・・・いや、堕天使ゾエア様はそう仰られた。
オレはボロを探すかのように、周囲をキョロキョロと見回してみた。しかし、そこには期待したようなものはなかった。代わりに、先程までのオレの故郷とは一変し、周囲は緑が生い茂り、中央にはいわゆる大聖堂と呼ばれるような大きな教会がそびえ立っていた。
──!
来ました、異世界!待ってました!
どうやら異世界へと足を踏み込んだらしいことを実感し始めたオレの脳内では、慇懃無礼な堕天使のことなぞ頭の隅に追いやられ、ただただ新天地に刺激されて心地よく甘い好奇心を掻き立てられていた。
──そう、好奇心だ。
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