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47 挨拶
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蒼士の実家は門から玄関にたどり着くまでそこそこ歩いた。昔ながらの日本家屋といった風情であり屋根は瓦だった。僕は蒼士と一緒に内心びくびくしながら家の中に入った。
応接室だといういかにも高級そうなソファとローテーブルがある部屋に通された。理沙だけが先に座っていて、三人で目配せをした。しばらくして、蒼士と理沙の父親が入ってきた。蒼士によく似た、涼しげな目元の男性だった。
「白鳥美月と申します」
僕と理沙は蒼士の紹介で付き合いだしたことにしていた。まあ、あながち間違ってもいない。時々蒼士と理沙が補足しながら、子供のことと結婚を認めてもらいたいことを訴えた。
「……話はわかった」
蒼士たちの父親は深いため息をついた。すかさず蒼士が口を出した。
「美月には長谷川姓を名乗ってもらう。理沙は……一年くらい休学せなあかんやろうけど。美月に育児に専念してもろて、理沙は卒業さす。これでどないや、親父」
僕たち三人が決めた計画がこれだった。案はほとんど蒼士が出したのだが。
「美月くんの親御さんは何て言うてんねや……」
「僕……親おらんのです。父は誰かすらわかりません。母は僕が大学生の時に亡くなりました」
「そうか……」
蒼士が言った。
「美月との仲は俺の方が長いんや。妊娠はさせてもたけど、真面目な奴やとはよう知っとう。俺も二人のこと支えるから。親父、認めたってくれ」
長い沈黙が流れた。あとはどんな返事が来るかだ。
「……仕方ないなぁ。ええよ。認める。ただ、美月くん。うちの方針には従ってもらうで」
「はい……ありがとうございます」
自分たちの部屋までどう帰りついたのかあまりよく覚えていなかった。僕は寝室に直行してベッドに突っ伏した。
「認めてもらえたぁ……」
蒼士がポンポンと僕の背中を叩いた。
「ようやったなぁ、美月。俺半分ダメかと思ってた」
「一生分勇気使ってしもたわ」
「まだこれからやで。決めることなんぼでもあるからなぁ……」
それから、僕と蒼士と理沙と新しく生まれてくる子供の四人で暮らす算段をつけ始めた。金銭面は長谷川家で面倒を見てもらえるようなので助かった。
クリスマスイブになり、理沙を呼んでパーティーだ。蒼士がクラッカーを構えて叫んだ。
「今年からお腹の中の子と四人でお祝いや! メリークリスマス!」
クラッカーの音に子供は驚いていやしないかやきもきしたが、エコー写真を見せてもらうとまだちっぽけな丸い物体だった。
「僕、本気で自分の子や思って育てるから」
「美月さん子供は好きなんやもんなぁ。せやから心配はしてへんよ」
「それにしても……美月、童貞のまんま父親か……変な話やなぁ」
確かにそうだった。結婚式は挙げないつもりで進めていたが、理沙はもじもじと切り出した。
「その……ドレスは着たいなぁって。写真だけでもあかん?」
「ええよ。撮る撮る」
長谷川家の方針で、年が明けたら籍を入れることになっていた。そうなればとうとう後戻りはできない。しかし、僕の決心は揺るがなかった。
理沙が帰った後、蒼士と湯につかりながら、向かい合ってキスをしていた。
「俺と美月の仲、絶対に秘密になってしもたなぁ……」
「うん……まあ、子供がある程度大きくなったら全部言うてええと思うけど」
「どれくらいやろ。十五歳くらいかなぁ」
子供や結婚の話でバタバタしていたのでこうして二人っきりでのんびりするのは何だか久しぶりだった。
「どないなっても、俺は美月と一緒におるって決めてたから……まさかこんな風になるとは思わへんかったけどな……」
「うん……俺はずっと蒼士のもんやで。それは変わらへん」
湯からあがって身体を拭き、ベッドに裸で寝転んだ。蒼士は僕の上に馬乗りになって身体を舐め始めた。
「んっ……蒼士……気持ちいいっ……」
「子供生まれたら当分できんくなるなぁ……今のうちにしとこ……」
ローションをたっぷり使われて僕も蒼士もぬるぬるになった。丁寧にこすられ、最後は蒼士に飲んでもらった。そして、蒼士は僕の腰の下に枕を置いて位置を高くした。
「どう、美月。ちょっと違った感じ?」
「うん……これもええかも……」
ゆっくりと優しく動かしてもらった。僕は蒼士を感じて声を漏らした。ぴくぴくと身体が跳ねた。
「くふっ……可愛いなぁ」
「蒼士っ……もっとしてぇ……」
終わってタバコを吸いながら僕は蒼士の手の甲をさすった。
「僕さぁ……僕が父親にしてほしかったこと、全部やったんねん。あかんことしてたら蒼士が止めてや」
「わかった。でも大丈夫やで。美月は情が深いもん。血の繋がりなんて関係あらへん。きちんと愛してくれるって信じとうから」
その年のプレゼントは予め示し合わせており、揃いの香水にした。蒼士の好きな柑橘系の爽やかな香りだ。
年が明け、僕と理沙は籍を入れ、彼女の望み通りフォトウェディングをした。純白のドレスで微笑む理沙は世界中の女の子の中で一番可愛くて、僕と蒼士の自慢だった。
応接室だといういかにも高級そうなソファとローテーブルがある部屋に通された。理沙だけが先に座っていて、三人で目配せをした。しばらくして、蒼士と理沙の父親が入ってきた。蒼士によく似た、涼しげな目元の男性だった。
「白鳥美月と申します」
僕と理沙は蒼士の紹介で付き合いだしたことにしていた。まあ、あながち間違ってもいない。時々蒼士と理沙が補足しながら、子供のことと結婚を認めてもらいたいことを訴えた。
「……話はわかった」
蒼士たちの父親は深いため息をついた。すかさず蒼士が口を出した。
「美月には長谷川姓を名乗ってもらう。理沙は……一年くらい休学せなあかんやろうけど。美月に育児に専念してもろて、理沙は卒業さす。これでどないや、親父」
僕たち三人が決めた計画がこれだった。案はほとんど蒼士が出したのだが。
「美月くんの親御さんは何て言うてんねや……」
「僕……親おらんのです。父は誰かすらわかりません。母は僕が大学生の時に亡くなりました」
「そうか……」
蒼士が言った。
「美月との仲は俺の方が長いんや。妊娠はさせてもたけど、真面目な奴やとはよう知っとう。俺も二人のこと支えるから。親父、認めたってくれ」
長い沈黙が流れた。あとはどんな返事が来るかだ。
「……仕方ないなぁ。ええよ。認める。ただ、美月くん。うちの方針には従ってもらうで」
「はい……ありがとうございます」
自分たちの部屋までどう帰りついたのかあまりよく覚えていなかった。僕は寝室に直行してベッドに突っ伏した。
「認めてもらえたぁ……」
蒼士がポンポンと僕の背中を叩いた。
「ようやったなぁ、美月。俺半分ダメかと思ってた」
「一生分勇気使ってしもたわ」
「まだこれからやで。決めることなんぼでもあるからなぁ……」
それから、僕と蒼士と理沙と新しく生まれてくる子供の四人で暮らす算段をつけ始めた。金銭面は長谷川家で面倒を見てもらえるようなので助かった。
クリスマスイブになり、理沙を呼んでパーティーだ。蒼士がクラッカーを構えて叫んだ。
「今年からお腹の中の子と四人でお祝いや! メリークリスマス!」
クラッカーの音に子供は驚いていやしないかやきもきしたが、エコー写真を見せてもらうとまだちっぽけな丸い物体だった。
「僕、本気で自分の子や思って育てるから」
「美月さん子供は好きなんやもんなぁ。せやから心配はしてへんよ」
「それにしても……美月、童貞のまんま父親か……変な話やなぁ」
確かにそうだった。結婚式は挙げないつもりで進めていたが、理沙はもじもじと切り出した。
「その……ドレスは着たいなぁって。写真だけでもあかん?」
「ええよ。撮る撮る」
長谷川家の方針で、年が明けたら籍を入れることになっていた。そうなればとうとう後戻りはできない。しかし、僕の決心は揺るがなかった。
理沙が帰った後、蒼士と湯につかりながら、向かい合ってキスをしていた。
「俺と美月の仲、絶対に秘密になってしもたなぁ……」
「うん……まあ、子供がある程度大きくなったら全部言うてええと思うけど」
「どれくらいやろ。十五歳くらいかなぁ」
子供や結婚の話でバタバタしていたのでこうして二人っきりでのんびりするのは何だか久しぶりだった。
「どないなっても、俺は美月と一緒におるって決めてたから……まさかこんな風になるとは思わへんかったけどな……」
「うん……俺はずっと蒼士のもんやで。それは変わらへん」
湯からあがって身体を拭き、ベッドに裸で寝転んだ。蒼士は僕の上に馬乗りになって身体を舐め始めた。
「んっ……蒼士……気持ちいいっ……」
「子供生まれたら当分できんくなるなぁ……今のうちにしとこ……」
ローションをたっぷり使われて僕も蒼士もぬるぬるになった。丁寧にこすられ、最後は蒼士に飲んでもらった。そして、蒼士は僕の腰の下に枕を置いて位置を高くした。
「どう、美月。ちょっと違った感じ?」
「うん……これもええかも……」
ゆっくりと優しく動かしてもらった。僕は蒼士を感じて声を漏らした。ぴくぴくと身体が跳ねた。
「くふっ……可愛いなぁ」
「蒼士っ……もっとしてぇ……」
終わってタバコを吸いながら僕は蒼士の手の甲をさすった。
「僕さぁ……僕が父親にしてほしかったこと、全部やったんねん。あかんことしてたら蒼士が止めてや」
「わかった。でも大丈夫やで。美月は情が深いもん。血の繋がりなんて関係あらへん。きちんと愛してくれるって信じとうから」
その年のプレゼントは予め示し合わせており、揃いの香水にした。蒼士の好きな柑橘系の爽やかな香りだ。
年が明け、僕と理沙は籍を入れ、彼女の望み通りフォトウェディングをした。純白のドレスで微笑む理沙は世界中の女の子の中で一番可愛くて、僕と蒼士の自慢だった。
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