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30 酔い
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僕と蒼士は三回生になった。必修の単位はほとんど取れていた。その代わりにゼミが始まった。もちろん僕は蒼士と一緒だった。
理沙は時々僕の部屋を訪れるようになったので、彼女のために食器を増やした。制服のままだとスカートにシワがつくからと、部屋着まで置くようになって、僕のクローゼットの一角は占領された。
食費は蒼士が出してくれるしバイトのシフトも増やしたしで徐々に貯金ができた。どこに就職できるかわからないが、場合によっては引っ越す必要があるだろう。その資金は置いておきたかった。
ゴールデンウィークになり、僕と蒼士と理沙でバーベキューをすることになった。山の上にある施設で、バスに三十分ほど揺られた。
蒼士はありったけの肉と野菜と酒を持ってきていて下ごしらえも済んでいるとのことだった。僕はそこまで乗り気ではなかったので、焼くのは蒼士に任せた。
「お兄ちゃん、これいける?」
「まだやって。兄ちゃんが取ったるから理沙は大人しくしとり」
からっとした清々しい天気の日で、僕もビールを飲んでみようかという気になった。肉と交互に口に入れてみると確かに旨かった。
雅彦さんに初めて飲ませてもらった時を思い出した。あれも肉だったが何が違うのか。外だからか。天気か。一緒に居るのが気の置けない兄妹だからか。理由はわからなかったが、とにかく気に入ってしまったのでゴクゴク飲んだ。
「蒼士ぃ、僕のん少なくない?」
「そんなことあらへん。平等に入れとう」
「絶対理沙に多めにしとうやろ」
ダメだ。僕は酔うと絡むみたいだ。勝手に肉を取って蒼士に叱られた。理沙はシラフだというのに終始テンションが高く、嫌いだというピーマンを僕の皿に押し付けて笑っていた。
その施設には小さな遊園地があり、蒼士が金を出してくれたのでジェットコースターに乗った。身長百十センチあれば乗れる、見た目はしょぼそうなやつだったので油断していたら、思ったより高さはあったし右に左にガタガタ揺らされたしそもそも酒が入っているしで、僕はおりてからしばらくしゃがみこんでいた。
「美月ぃ、大丈夫か?」
「こわかった……」
「あははっ、美月さん可愛いなぁ」
帰りのバスでは窓に頭を押し付けてうとうとしていた。僕の部屋に三人で戻り、僕だけベッドを占領して爆睡した。
兄妹はスーパーに行ってきたらしく、うどんとつまみと追加の酒を買ってきていた。あれだけ昼に食べたのに、寝たせいか食欲は戻っており、食べて飲んですっかり気をよくした。
「ビールって旨いんやなぁ!」
「美月もようやく気付いたか」
「ええなぁ、理沙もはよ大人になりたい」
理沙は高校の話をしてきた。女子校ではダンスが流行っているらしく、動画を撮ってSNSに投稿しているのだとか。本だって古いのしか読まないし最近のことには疎い僕だ、何が楽しいのかわからなかった。
けれども理沙のことは可愛いと思った。こんな妹だったら僕も欲しかった。くるくる表情が変わるし飽きない、スナック菓子をカリカリ食べる姿はリスのようだったし、蒼士が入れ込むのも仕方ないと感じた。
何本缶を開けたのかわからなかった。蒼士が自分の髪をかきあげて、見えたうなじにぞくぞくしてしまったので、僕はたまらず抱きついた。
「蒼士ぃ……好きぃ……」
「ちょっ、美月」
理沙がケラケラと笑った。
「理沙、帰った方がいい?」
「兄ちゃんも酔った美月初めてなんや……とりあえず帰ってくれるか……」
僕は蒼士をベッドに押し倒して耳をベロベロ舐めた。
「あかんって、美月あかんって」
「ええやん別にぃ」
止まらなかった。僕は蒼士のシャツのボタンを荒っぽく外した。
「あーもう取れたし。縫わなあかんやん……」
「蒼士裁縫できんの……」
「ボタン付けくらいやったらな」
「ほなええか」
「よくない」
あらわになった肌にむしゃぶりついて、蒼士は僕の唾液でベトベトになった。
「美月タチ悪いな……あんまり飲ませんとこ……」
「あはっ、酔ってると気分いいわぁ」
それからは記憶が飛んだ。僕は裸で寝かされており下半身に感覚があったのでやることはやったんだなとわかった。
「美月……酒禁止……」
「えっ、僕何やったん?」
「覚えてないんかい……抜かずに三発や……搾り取られたわ……」
勿体ないことをした。頭がズキズキと痛んだので温存していた薬を飲んだ。
「美月、水分取っとき」
「んっ」
僕は水道水を何度も流し込んだ。げっそりしている蒼士の横にへばりついて頬をすりつけた。
「蒼士、好きぃ」
「それ言うたら許されると思うなよ」
ペチンとデコピンされて頭がぐわんぐわんと揺れた。
「頭痛すんねんから優しくしてや……」
「自業自得や」
その夜蒼士はキスをしてくれなかったので寝てから勝手にした。昼寝をしていたせいかなかなか寝付けなくて、蒼士の髪を撫でて弄んだ。
理沙は時々僕の部屋を訪れるようになったので、彼女のために食器を増やした。制服のままだとスカートにシワがつくからと、部屋着まで置くようになって、僕のクローゼットの一角は占領された。
食費は蒼士が出してくれるしバイトのシフトも増やしたしで徐々に貯金ができた。どこに就職できるかわからないが、場合によっては引っ越す必要があるだろう。その資金は置いておきたかった。
ゴールデンウィークになり、僕と蒼士と理沙でバーベキューをすることになった。山の上にある施設で、バスに三十分ほど揺られた。
蒼士はありったけの肉と野菜と酒を持ってきていて下ごしらえも済んでいるとのことだった。僕はそこまで乗り気ではなかったので、焼くのは蒼士に任せた。
「お兄ちゃん、これいける?」
「まだやって。兄ちゃんが取ったるから理沙は大人しくしとり」
からっとした清々しい天気の日で、僕もビールを飲んでみようかという気になった。肉と交互に口に入れてみると確かに旨かった。
雅彦さんに初めて飲ませてもらった時を思い出した。あれも肉だったが何が違うのか。外だからか。天気か。一緒に居るのが気の置けない兄妹だからか。理由はわからなかったが、とにかく気に入ってしまったのでゴクゴク飲んだ。
「蒼士ぃ、僕のん少なくない?」
「そんなことあらへん。平等に入れとう」
「絶対理沙に多めにしとうやろ」
ダメだ。僕は酔うと絡むみたいだ。勝手に肉を取って蒼士に叱られた。理沙はシラフだというのに終始テンションが高く、嫌いだというピーマンを僕の皿に押し付けて笑っていた。
その施設には小さな遊園地があり、蒼士が金を出してくれたのでジェットコースターに乗った。身長百十センチあれば乗れる、見た目はしょぼそうなやつだったので油断していたら、思ったより高さはあったし右に左にガタガタ揺らされたしそもそも酒が入っているしで、僕はおりてからしばらくしゃがみこんでいた。
「美月ぃ、大丈夫か?」
「こわかった……」
「あははっ、美月さん可愛いなぁ」
帰りのバスでは窓に頭を押し付けてうとうとしていた。僕の部屋に三人で戻り、僕だけベッドを占領して爆睡した。
兄妹はスーパーに行ってきたらしく、うどんとつまみと追加の酒を買ってきていた。あれだけ昼に食べたのに、寝たせいか食欲は戻っており、食べて飲んですっかり気をよくした。
「ビールって旨いんやなぁ!」
「美月もようやく気付いたか」
「ええなぁ、理沙もはよ大人になりたい」
理沙は高校の話をしてきた。女子校ではダンスが流行っているらしく、動画を撮ってSNSに投稿しているのだとか。本だって古いのしか読まないし最近のことには疎い僕だ、何が楽しいのかわからなかった。
けれども理沙のことは可愛いと思った。こんな妹だったら僕も欲しかった。くるくる表情が変わるし飽きない、スナック菓子をカリカリ食べる姿はリスのようだったし、蒼士が入れ込むのも仕方ないと感じた。
何本缶を開けたのかわからなかった。蒼士が自分の髪をかきあげて、見えたうなじにぞくぞくしてしまったので、僕はたまらず抱きついた。
「蒼士ぃ……好きぃ……」
「ちょっ、美月」
理沙がケラケラと笑った。
「理沙、帰った方がいい?」
「兄ちゃんも酔った美月初めてなんや……とりあえず帰ってくれるか……」
僕は蒼士をベッドに押し倒して耳をベロベロ舐めた。
「あかんって、美月あかんって」
「ええやん別にぃ」
止まらなかった。僕は蒼士のシャツのボタンを荒っぽく外した。
「あーもう取れたし。縫わなあかんやん……」
「蒼士裁縫できんの……」
「ボタン付けくらいやったらな」
「ほなええか」
「よくない」
あらわになった肌にむしゃぶりついて、蒼士は僕の唾液でベトベトになった。
「美月タチ悪いな……あんまり飲ませんとこ……」
「あはっ、酔ってると気分いいわぁ」
それからは記憶が飛んだ。僕は裸で寝かされており下半身に感覚があったのでやることはやったんだなとわかった。
「美月……酒禁止……」
「えっ、僕何やったん?」
「覚えてないんかい……抜かずに三発や……搾り取られたわ……」
勿体ないことをした。頭がズキズキと痛んだので温存していた薬を飲んだ。
「美月、水分取っとき」
「んっ」
僕は水道水を何度も流し込んだ。げっそりしている蒼士の横にへばりついて頬をすりつけた。
「蒼士、好きぃ」
「それ言うたら許されると思うなよ」
ペチンとデコピンされて頭がぐわんぐわんと揺れた。
「頭痛すんねんから優しくしてや……」
「自業自得や」
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