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 一夜明けてみて、やっぱり自分は酷いことをしたと思い蒼士に連絡した。今度こそやらせると。蒼士は昼過ぎにやってきて余っていたアイスケーキを一緒に食べた。

「なぁ……蒼士。昨日はごめん」
「ええって。虫の居所悪かったんやろ」
「今日は蒼士のしたいようにしたる」
「うーん、どうしようかなぁ」

 僕はベッドに押し倒された。Tシャツをめくられ乳首をコリコリといじくられた。

「んっ……」
「こそばい?」
「ううん……」

 そこは雅彦さんに開発されたところだった。ぷっくりと膨れてきたのが自分でもわかった。したいようにさせると言った以上手を止めさせなかった。

「可愛いなぁ、美月。鳴いてほしいなぁ」
「それはお前次第や……」

 蒼士は吸ってきた。

「ふぅっ……んっ……」
「美月ぃ、やっぱりここがええんやろ」

 本番もしつこいがこっちもしつこい。吸われながら下も触られて悲鳴が出てしまった。

「あっ……ひっ……」
「脱ぎ脱ぎしよかぁ」

 下着ごとズボンをおろされて先を撫でられた。

「ぬるぬるになっとうで。舐めたろか?」
「嫌や……それはせんでいい……」
「ほなほぐしたろうっと」

 指をずぷりと挿れられた。唾液で湿らせていたのだろう、ぐちゅぐちゅと音が鳴った。

「あかん、我慢できひん。挿れるで」
「別にええよ……」

 コンドームをつけた蒼士は僕の足を持って広げてきた。刺激されたせいか先が当たっただけで吐息が漏れてしまった。

「ほんまはキスしたいんやけどなぁ……」
「他のことはする。それは嫌や」

 蒼士はゆっくり中に入ってきた。奥まで届き、繋ぎ目を触ってきた。

「うん……みちみちしてる」

 それから蒼士は可愛い可愛いと僕を撫で、いつもよりも長く交わっていた。けれどそれは不快ではなく、もっと続けてもいいとさえ思っていた。

「美月、ありがとうなぁ」

 蒼士は僕の髪を指でといた。ヘアゴムでまとめられるくらいの長さになっていたのだが、この暑さだとかえってそれが楽だった。

「蒼士は彼女とか作らへんの……」

 そう聞いてみると、蒼士はポリポリと頬をかいた。

「んー、作ってもええけど。そしたら美月嫉妬せぇへん?」
「せんわ。思い上がんなよ」

 蒼士はなかなか帰らなかった。立ち上がったと思ったらコンビニに行ってくるとのことで、酒を買って戻ってきた。

「まだ外明るいで」
「せやからええねん。夏休みやし。なあ、二人でどっか遊びに行かへん?」
「嫌や、暑い。他の奴と行き」

 ゴクゴクと喉を鳴らして蒼士はビールを飲んだ。僕も一口もらってみた。

「苦ぁ……」
「何か食いながらやと旨いかもしれへんで。バーベキューとか」
「外で肉焼いて何が楽しいねん」
「楽しいけどなぁ……」

 それから蒼士は夏の思い出を語ってきた。海だ山だプールだとそれはそれは楽しんでいたらしい。僕の方は何も話すことがないのでコーラを飲みながらはいはいそうですかと黙って聞いていた。

「あー、でも美月とこうしてダラダラしとうんが一番楽しいわ」
「やっぱり彼女作れや。男友達とばっかり遊んでへんと」
「友達? 友達なぁ。あいつら友達なんかなぁ」

 意外にドライなことを言うな、こいつ。

「そら……そんだけ一緒に色々すんのは友達やないの?」
「俺、ようわからへんのよな。大学出てしもたら会わんくなるやろうし。今までもそうや。一緒におる奴なんか入れ替え制やで?」

 勝手に情が厚そうな奴だと考えていたがそうでもないのか。それなら僕との関わりも卒業すればなくなるのだろう、そう思ってタバコに火をつけたがこんなことを言ってきた。

「でも、美月とは卒業しても会いたいなぁ」
「はぁ? なんで?」
「美月おもろいもん。激安で身体売ってる癖に媚びは売らんし、メシ旨そうに食うし、おるだけで可愛いし。ネコみたいやねん」

 なら飼いネコになるのは御免だ、僕は煙を薄く吐き出した。

「僕は蒼士とは卒業したら会わへんよ。どうせ仕事で忙しくなるやろうし」
「ええ……寂しいこと言わんといてぇな。友達やろ?」
「待って? 他の奴は友達やないのに僕は友達なん? 基準何なん?」

 蒼士はしばらく考え込んだ後に言った。

「なんつーか……俺、どんだけ楽しくても途中でフッと冷める時あんねん。外側から自分見て、今やっとうことが過去の記憶なんとちゃうかなって感じる、みたいな。美月とおる時だけはそれがないねん」

 説明している本人もよくわかっていなさそうだし僕もわからなかった。ただ、力強く蒼士は言った。

「うん……せやな。今は今を生きとうってちゃんと感じるで。だからやろな。美月とおると安心する」
「僕は……その感覚ようわからへんわ」

 僕はいつだって今を生きている。過去のことや未来の不安に囚われそうになることはあっても自分を見失うことはない。それが蒼士との違いだと思った。

「で、美月は俺のこと友達やと思ってるやんな?」
「ううん。ただの仲介屋」
「えー、なろうな、友達」
「気が向いたらな」

 蒼士は空き缶をすすいでまとめてゴミ袋に入れてから帰っていった。蒼士の抱えているものが何なのか考えを巡らせたが答えは出なかった。
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