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08 蒼士
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僕が選んだのは文学部だった。理系科目がてんでダメで志望の大学に行こうとすると文系科目で勝負するしかなかったのだ。それにテストよりレポートの方が気楽だと思った。
スーツを買う金が無かったので入学式には出ずに履修登録やらの説明だけを聞いた。そして最初の語学の授業で奴と出会ったのだ。
黒地に妙な柄の入ったシャツに真っ青なトレンチコート、サングラス。髪は黒で襟足が長かった。それが長谷川蒼士という男だった。
「美月? 顔だけやなくて名前も女っぽいな」
いきなり下の名前で呼ばれて馴れ馴れしい奴だと思った。話しているうちに取った授業がほとんどかぶっていたことがわかり、なし崩し的に学食で昼食を共にした。
「へえ、一人暮らし?」
「うん。蒼士は?」
「実家。割と近いねん」
室内だというのにサングラスは外さないし服装もメチャクチャだったが、蒼士の食事の仕方は品がよく、それなりの育ちをしてきたのだということがわかった。
午後の予定はなかったのでとっとと別れて喫煙所に行こうとしたのだが蒼士もついてきた。
「美月、タバコ一本ちょうだい」
「一本だけやで」
蒼士は初めてだったらしく渋い顔をしていた。並んで立つと蒼士はかなり背が高いのがわかり、百八十センチくらいはありそうだった。僕はというと百六十五センチほどで止まっていた。もう伸びることはないだろう。
「美月の家行っていい?」
「……はぁ?」
出会ってから数時間くらいしか経っていなかった。僕はバイト探しもしたいし友人作りなど前向きには考えていなかったのだが、蒼士がしつこかったので仕方なく家にあげた。
「うわー、ボロいなぁ」
「もう少し口の聞き方何とかならんか?」
隣は留学生なのだろう、何語かわからないけたたましい話し声がしていてとても安らげる状況ではなかった。それでも母の女の声が聞こえてくるよりマシだった。
蒼士は勝手に僕のベッドに腰かけた。まあ、座る場所といえばそこしかないのだが。僕は隣に行くのも気が引けて突っ立ったままタバコに火をつけた。
「美月めっちゃ吸うなぁ」
「これないとやってられへん」
飲み物くらい出しておくか、と僕はインスタントコーヒーを作ってやった。念のため二つ買っておいたマグカップが早速役に立った。
「美月可愛いけど相当モテてたやろ」
「まあ……姫扱いやったな。蒼士は?」
「女とはそれなりに遊んどったよ。長続きせぇへんけど」
まだわけのわからない男だが、タバコを調達するためには新しい客を開拓する必要があった。僕は蒼士に直球で持ちかけた。
「蒼士って男としたことある?」
「いや、ないけど」
「タバコ買ってくれるんやったらやらしたるけど」
蒼士はプッと吹き出した。
「おいおい、冗談キツいなぁ」
「やる気ないんやったらええで。高校の時はこれで売ってた。セブンスターのボックス、キスなし、ゴム持参」
蒼士は足を組んで僕を見上げた。サングラスのせいでろくに表情がわからなかった。
「まあ興味はなくはない。美月女みたいやし突っ込むだけやったらできるかも」
「……する?」
「コンビニ行ってくるわ」
蒼士が出ていった間に準備をして、セブンスターを受け取った僕は、脱がせてくわえた。
「うわっ……巧っ。相当やりこんどるやん」
蒼士は僕の頭を撫でて息を漏らした。
「キスは……なし?」
「うん、なし」
それだけは譲れなかった。もういいだろうと止め、蒼士に尋ねた。
「どうやって挿れたい?」
「顔見てしたいなぁ。仰向けになってや」
サングラス越しのくせに顔なんて見れるのかよ、とは思いながら寝転がって下を脱いだ。蒼士は僕の足を広げて指を挿れてきた。
「へえ……ほんまに入るんや」
「ゴムしぃや」
蒼士は遠慮なく入ってきた。あっちが勝手に動いてくれるなら僕は楽だ。今までの奴らと同じように僕は自由にさせた。
「あはっ、気持ちええやん」
「男もええやろ?」
蒼士は長かった。何度も突かれて僕も途中から飽きてしまったのだが、とにかく吐き出させるまで待った。
「ふぅ、ふぅ……」
「お疲れさん」
僕はコンドームの口をしばってゴミ箱に放り込んだ。それからさっさと服を着た。
「なんや美月、ムードないなぁ」
「こんなところでムードもへったくれもあるか。それよりさぁ、僕とやりたい奴おったら連れてきてや。条件わかっとうやろ?」
「ええで。俺も世話になるわ」
それから近所のラーメン屋に行って奢ってもらった。連絡先を交換していなかったので帰り際にした。
蒼士とは長い付き合いになりそうだな、と何となく思った。彼が触れ回ってくれれば僕も客を探す手間が省けていい。
帰ってベッドに寝転びバイトの求人サイトを開いた。近くて融通のきくところがよかったのでコンビニに決めた。写真を撮って履歴書を作ってそれでくたびれたので眠った。大学生活も何とかなりそうだ。
スーツを買う金が無かったので入学式には出ずに履修登録やらの説明だけを聞いた。そして最初の語学の授業で奴と出会ったのだ。
黒地に妙な柄の入ったシャツに真っ青なトレンチコート、サングラス。髪は黒で襟足が長かった。それが長谷川蒼士という男だった。
「美月? 顔だけやなくて名前も女っぽいな」
いきなり下の名前で呼ばれて馴れ馴れしい奴だと思った。話しているうちに取った授業がほとんどかぶっていたことがわかり、なし崩し的に学食で昼食を共にした。
「へえ、一人暮らし?」
「うん。蒼士は?」
「実家。割と近いねん」
室内だというのにサングラスは外さないし服装もメチャクチャだったが、蒼士の食事の仕方は品がよく、それなりの育ちをしてきたのだということがわかった。
午後の予定はなかったのでとっとと別れて喫煙所に行こうとしたのだが蒼士もついてきた。
「美月、タバコ一本ちょうだい」
「一本だけやで」
蒼士は初めてだったらしく渋い顔をしていた。並んで立つと蒼士はかなり背が高いのがわかり、百八十センチくらいはありそうだった。僕はというと百六十五センチほどで止まっていた。もう伸びることはないだろう。
「美月の家行っていい?」
「……はぁ?」
出会ってから数時間くらいしか経っていなかった。僕はバイト探しもしたいし友人作りなど前向きには考えていなかったのだが、蒼士がしつこかったので仕方なく家にあげた。
「うわー、ボロいなぁ」
「もう少し口の聞き方何とかならんか?」
隣は留学生なのだろう、何語かわからないけたたましい話し声がしていてとても安らげる状況ではなかった。それでも母の女の声が聞こえてくるよりマシだった。
蒼士は勝手に僕のベッドに腰かけた。まあ、座る場所といえばそこしかないのだが。僕は隣に行くのも気が引けて突っ立ったままタバコに火をつけた。
「美月めっちゃ吸うなぁ」
「これないとやってられへん」
飲み物くらい出しておくか、と僕はインスタントコーヒーを作ってやった。念のため二つ買っておいたマグカップが早速役に立った。
「美月可愛いけど相当モテてたやろ」
「まあ……姫扱いやったな。蒼士は?」
「女とはそれなりに遊んどったよ。長続きせぇへんけど」
まだわけのわからない男だが、タバコを調達するためには新しい客を開拓する必要があった。僕は蒼士に直球で持ちかけた。
「蒼士って男としたことある?」
「いや、ないけど」
「タバコ買ってくれるんやったらやらしたるけど」
蒼士はプッと吹き出した。
「おいおい、冗談キツいなぁ」
「やる気ないんやったらええで。高校の時はこれで売ってた。セブンスターのボックス、キスなし、ゴム持参」
蒼士は足を組んで僕を見上げた。サングラスのせいでろくに表情がわからなかった。
「まあ興味はなくはない。美月女みたいやし突っ込むだけやったらできるかも」
「……する?」
「コンビニ行ってくるわ」
蒼士が出ていった間に準備をして、セブンスターを受け取った僕は、脱がせてくわえた。
「うわっ……巧っ。相当やりこんどるやん」
蒼士は僕の頭を撫でて息を漏らした。
「キスは……なし?」
「うん、なし」
それだけは譲れなかった。もういいだろうと止め、蒼士に尋ねた。
「どうやって挿れたい?」
「顔見てしたいなぁ。仰向けになってや」
サングラス越しのくせに顔なんて見れるのかよ、とは思いながら寝転がって下を脱いだ。蒼士は僕の足を広げて指を挿れてきた。
「へえ……ほんまに入るんや」
「ゴムしぃや」
蒼士は遠慮なく入ってきた。あっちが勝手に動いてくれるなら僕は楽だ。今までの奴らと同じように僕は自由にさせた。
「あはっ、気持ちええやん」
「男もええやろ?」
蒼士は長かった。何度も突かれて僕も途中から飽きてしまったのだが、とにかく吐き出させるまで待った。
「ふぅ、ふぅ……」
「お疲れさん」
僕はコンドームの口をしばってゴミ箱に放り込んだ。それからさっさと服を着た。
「なんや美月、ムードないなぁ」
「こんなところでムードもへったくれもあるか。それよりさぁ、僕とやりたい奴おったら連れてきてや。条件わかっとうやろ?」
「ええで。俺も世話になるわ」
それから近所のラーメン屋に行って奢ってもらった。連絡先を交換していなかったので帰り際にした。
蒼士とは長い付き合いになりそうだな、と何となく思った。彼が触れ回ってくれれば僕も客を探す手間が省けていい。
帰ってベッドに寝転びバイトの求人サイトを開いた。近くて融通のきくところがよかったのでコンビニに決めた。写真を撮って履歴書を作ってそれでくたびれたので眠った。大学生活も何とかなりそうだ。
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