上 下
1 / 51

01 セブンスター

しおりを挟む
 高校生の喫煙描写、暴力描写、性描写があります。
 二十歳未満の者の喫煙は法律で禁止されています。



 白鳥美月しらとりみづきというホストの源氏名みたいな本名のせいで幼い頃から目立っていたが、それに見合う容姿を僕は与えられ、母に似てぱっちりとした二重の女顔をしていた。
 父のことは知らない。最初からいないのだからそれが普通だと思っていたし、母が朝でも昼でも夜でも色んな男を連れ込んで裸でアンアン喘いでいても、それが僕の日常だった。
 小遣いも与えられなかったが祖父母の仕送りを僕は抜いていて、よく夜のゲーセンに行った。補導されかけたこともあったが、ジュースを奢ってくれるオッサンもいて、それなりに息抜きができていた。
 ろくな教育はされなかったが、勉強はよくできた。小中と公立校で高校は地元でも進学校とされるところに合格でき、母は何も反応しなかったが祖父母は大層喜んでくれた。
 勉強には厳しかったが校則がゆるいのがその高校のいいところで、僕は早速金髪に脱色した。やれお人形さんだの何だのと褒めそやされたため、髪は長めにしてたなびかせ、周囲の視線を集めた。
 母があんなのだったから女なんかろくなもんじゃないと思っていて、告白されてもボロカスにけなして振りまくった。僕は男としかつるまなかった。身長が伸びなかったせいかやたらと撫でられ可愛がられ、姫とさえ呼ばれていた。
 それは高校二年生の夏のことで、高校から帰宅するとリビングで知らない男が椅子に座ってタバコを吸っていた。また新しい相手か、今度は金持ってそうな身なりのいいオッサンだな、と思いながら、そいつの横をすり抜けて冷蔵庫からコーラを取り出すと、話しかけられた。

「美月くんやんな?」
「……はぁ」

 オッサンは四十代くらいに見えた。体格がよく鼻筋も通っていて女には苦労しなさそうなツラだった。母がだらしないのにはうんざりしていたが連れてくる相手に不細工はいなかったのでそこだけは感心していた。

「お母さんなら寝てるで。少し話さへん?」
「話ですか……」

 こんな風に母の相手と喋るのは初めてだった。出くわしても大抵無視されるかそそくさと逃げ帰られるのがオチだったから。僕も興味が沸いてしまったのでオッサンの向かい側の椅子に腰かけた。

「高校生やんな。何年生?」
「二年生です」
「そうかぁ。進学のこととか考えてるん?」
「大学は……行きたいです。この家も出たいんで」

 僕の成績はあの進学校の中では中くらいといったところで、国立は無理でもそこそこの私立なら行けるんじゃないかと教師には言われていた。費用なら祖父母に泣きつけば何とかなりそうで、僕はこの家から遠い大学に照準を合わせていた。

「彼女とかおるん?」
「いませんよ。女なんて要らないです」
「可愛い顔しとうのにな。お母さんそっくりや」

 オッサンは立ち上がって僕に近づいてきた。そして、素早く僕の首を絞めた。

「……かはっ」
「言うこと聞いてもらおか。ベッド行くんや」

 小柄な僕がオッサンに敵うわけはない。殺されてはたまらないので半泣きになりながら僕の部屋に行くと、オッサンはベッドに突き飛ばしてきた。

「ズボンおろそか」
「い、嫌や……」

 平手が飛んできた。僕は震える手でベルトを外した。ぐっと下着ごとおろされて、まじまじと見られた。

「可愛いなぁ……毛ぇも薄いし。使ったことないんやろ」
「はい……」

 オッサンは僕のものをふにふにと触ってきた。誰かにそんなことなどされたことがなかった。僕はきゅっと目を閉じた。セミがうるさく鳴いていた。ねっとりとした感触がして舐められたのだとわかった。

「うっ……ううっ……」

 下唇を噛んで必死に耐えた。大人しくしてさえいれば満足してくれるだろうか、そう考えて時の過ぎるのを待った。じゅぷじゅぷといやらしい音がして、嫌なのに、気持ち悪いのに、僕は勃起してしまっていた。レイプされる女も濡れるのだという。それと同じ状況だった。

「出してええんやで……」

 悪魔の囁きだった。誰がオッサンなんかの手と舌で、そう思えば思うほど脈打つのがわかり、僕は情けなく口の中に吐き出してしまった。

「あっ……ああっ……」

 オッサンは僕の髪を掴んで、僕の顔を自分の股間に近付けた。

「美月くんもやるんやで。できへんとは言わせへんで。おれの口に出したんやからな」
「わかりました……」

 他人のものはやっぱりグロい、年のいったオッサンのものなら尚更だ。やけに毛深くて黒ずんでいて、僕はこわごわとそれを握って動かした。

「もっと強くしてもええんやで。舌も使って。先舐めて」

 言われた通りに僕は動いた。とにかく出してしまえばいいのだろう、その一心で命令を聞いた。口をすぼめ、決して歯をたてないように。オッサンのものはとても太くて、口の中がパンパンになった。

「拙いなぁ……でも一生懸命やな。頑張り屋さんは好きやで」

 予告もされずに出された。僕はなるべく味を感じなくても済むよう呼吸をせずに飲み込んだ。それでもしつこく残る精液の味は生臭くて苦くて今すぐ歯を磨きたかった。

「ようできたな。ええ子や。タバコやるわ」

 そうしてリビングに戻って一本もらった。それがセブンスターとの出会いだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結・虐げられオメガ側妃なので敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン溺愛王が甘やかしてくれました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

【完結】運命さんこんにちは、さようなら

ハリネズミ
BL
Ωである神楽 咲(かぐら さき)は『運命』と出会ったが、知らない間に番になっていたのは別の人物、影山 燐(かげやま りん)だった。 とある誤解から思うように優しくできない燐と、番=家族だと考え、家族が欲しかったことから簡単に受け入れてしまったマイペースな咲とのちぐはぐでピュアなラブストーリー。 ========== 完結しました。ありがとうございました。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

キンモクセイは夏の記憶とともに

広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。 小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。 田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。 そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。 純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。 しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。 「俺になんてもったいない!」 素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。 性描写のある話は【※】をつけていきます。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

【完結】幼馴染から離れたい。

June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。 βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。 番外編 伊賀崎朔視点もあります。 (12月:改正版)

処理中です...