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5 副官の務め
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「で、でもそんな風には見えなかったわよ?」
ルークが人間を恨んでいると、エリウスから聞かされた私の感想がそれだった。
確かに、人のことを羽虫とか、消滅させてやるぞ的な発言はされたけど……。
いや、恨んでなかったら普通、消滅させてやるぞとは言わない。
うん、恨んでるわ。人間。
言葉を取り消そうとしたけど、その前にエリウスが頷いた。
「そうですね。
自分の不手際だと、魔王さまはあなたを庇護なさろうとしている。
いくら人間を恨んでいても、非を認めて自分の気持ちを抑えて接することができる。
私が主と仰ぐことのできる、とても素晴らしい方です」
そう言いながら浮かべる笑顔は、柔らかかった。
初めてかもしれない。エリウスのそういう表情を見るの。
さっきまでずっと、人を馬鹿にする陰湿な感じの表情しかしてなかったからね。
でも、なんかこういうの好きだな。
主従関係っていうのかな? このギスギスした世の中(私の世界のほうだけど)、上司を敬う部下って何か格好いい。
「そう言えるエリウスも凄いよ」
「何がですか?」
私が褒めると、エリウスはきょとんとした顔をする。
「だって、本当なら人間の私をさっさと殺してるはずでしょ?
それなのにルークに言われて、どうしてって思いながらも自分を抑えることができるんだもの。
ルークとエリウスってどこか似てるね」
「わ、私ごときが、魔王さまと似ているなどと……。
畏れ多いことです」
うわっ、顔真っ赤だ。
そんなに恥ずかしがることないのに。
こほんと咳をすると、エリウスは元の表情に戻った。
「話を元に戻しましょう。
私が確認したかったのは、あなたが魔界に滞在するに価するか、です。
魔王さまに仇なすものを手元に置いておく訳にはいきませんからね。
でも、それはさっきやり取りで大丈夫だと判断しました。
あなたはこの国の状況を知った上で、私の挑発にも反撃したりせず、冷静に言い返してきた。
黙られたらどう判断しようかと迷いましたが、その心配は無用だったようですね」
いやいやいやいや、あなた完全に本気でしたよ。
あの窓ガラスビリビリが、冗談なわけないじゃん。
って、突っ込めたら、どんなに心がすっきりするだろう。
はははははって、乾いた笑いをするのが精一杯。
「魔王さまの腹心にはあなたのことを伝えてあります。
ですから、この王城の一部なら好きに過ごしてもらって構いません。
場所など詳しいことは、セシリアに聞いてください。
あぁ、あとーー」
「?」
不自然に言葉が切れる。
何、と聞き返そうとしたとき、意味深にエリウスが耳元に顔を近づけてきた。
「確かに身支度前の女性の部屋を訪れるのは、不謹慎でしたね。
けれど、とてもよくお似合いですよ」
「!!」
エリウスの視線が、下着のような寝巻きを身につけた私の体に向けられている。
色々あったせいで、いつの間にか布団から手を離してしまっていたようだ。
今さらだけど、パッと布団で隠す。
私は顔を真っ赤にして叫んだ。
「変態!」
クククククッと、心の底から楽しそうな笑い声を上げるエリウス。
この人、本当にドSだ!
ルークが人間を恨んでいると、エリウスから聞かされた私の感想がそれだった。
確かに、人のことを羽虫とか、消滅させてやるぞ的な発言はされたけど……。
いや、恨んでなかったら普通、消滅させてやるぞとは言わない。
うん、恨んでるわ。人間。
言葉を取り消そうとしたけど、その前にエリウスが頷いた。
「そうですね。
自分の不手際だと、魔王さまはあなたを庇護なさろうとしている。
いくら人間を恨んでいても、非を認めて自分の気持ちを抑えて接することができる。
私が主と仰ぐことのできる、とても素晴らしい方です」
そう言いながら浮かべる笑顔は、柔らかかった。
初めてかもしれない。エリウスのそういう表情を見るの。
さっきまでずっと、人を馬鹿にする陰湿な感じの表情しかしてなかったからね。
でも、なんかこういうの好きだな。
主従関係っていうのかな? このギスギスした世の中(私の世界のほうだけど)、上司を敬う部下って何か格好いい。
「そう言えるエリウスも凄いよ」
「何がですか?」
私が褒めると、エリウスはきょとんとした顔をする。
「だって、本当なら人間の私をさっさと殺してるはずでしょ?
それなのにルークに言われて、どうしてって思いながらも自分を抑えることができるんだもの。
ルークとエリウスってどこか似てるね」
「わ、私ごときが、魔王さまと似ているなどと……。
畏れ多いことです」
うわっ、顔真っ赤だ。
そんなに恥ずかしがることないのに。
こほんと咳をすると、エリウスは元の表情に戻った。
「話を元に戻しましょう。
私が確認したかったのは、あなたが魔界に滞在するに価するか、です。
魔王さまに仇なすものを手元に置いておく訳にはいきませんからね。
でも、それはさっきやり取りで大丈夫だと判断しました。
あなたはこの国の状況を知った上で、私の挑発にも反撃したりせず、冷静に言い返してきた。
黙られたらどう判断しようかと迷いましたが、その心配は無用だったようですね」
いやいやいやいや、あなた完全に本気でしたよ。
あの窓ガラスビリビリが、冗談なわけないじゃん。
って、突っ込めたら、どんなに心がすっきりするだろう。
はははははって、乾いた笑いをするのが精一杯。
「魔王さまの腹心にはあなたのことを伝えてあります。
ですから、この王城の一部なら好きに過ごしてもらって構いません。
場所など詳しいことは、セシリアに聞いてください。
あぁ、あとーー」
「?」
不自然に言葉が切れる。
何、と聞き返そうとしたとき、意味深にエリウスが耳元に顔を近づけてきた。
「確かに身支度前の女性の部屋を訪れるのは、不謹慎でしたね。
けれど、とてもよくお似合いですよ」
「!!」
エリウスの視線が、下着のような寝巻きを身につけた私の体に向けられている。
色々あったせいで、いつの間にか布団から手を離してしまっていたようだ。
今さらだけど、パッと布団で隠す。
私は顔を真っ赤にして叫んだ。
「変態!」
クククククッと、心の底から楽しそうな笑い声を上げるエリウス。
この人、本当にドSだ!
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