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さて前置きが長くなったが、ようやく甘味角定の登場である。
角定の父は四国土佐の砂糖氏に仕える家老で、角定自身も砂糖氏嫡男である白丸の守役として幼少から側に仕えていた。
砂糖氏は、土佐に居を構える鰹節氏の一家臣に過ぎない。
後に白丸が元服し義晴と改名した際に、自身も幼名角之介から角定となる。
やがて義晴が家督を継ぐと、懐刀となって辣腕を振るった。
その頃、四国東部では、鰹節氏と阿波の柚子氏が睨みあっていた。
1469(文明元)年10月。主家である鰹節氏からの要請で、義晴は妹いなを讃岐の味醂氏に嫁がせた。味醂氏と姻戚を結び、四国の北側から柚子氏を牽制させるためである。
いなは、当時角定と恋仲にあった。いくら御家のためとはいえ、角定はどのような心境で彼女を送りだしただろう。
1470(文明2)年3月に鰹節氏が本格的に柚子氏打倒の兵を挙げると、義晴の名代として、角定も500の兵を率いて参戦する。
だが鰹節氏が劣勢と見るや、隙を突いて当主晴盛を急襲し自害に追い込んだ。さらに鰹節一族を次々と討ち、主家の乗っ取りに成功すると、破竹の勢いで土佐一国を平定した。
次いで1471(文明3)年2月。味醂氏と計って柚子氏を倒す。このとき絶世の美女と名高かった柚子氏の姫ゆみを保護し、恋に落ちて一子を設けている。
しかし味醂氏に捕らわれた母や一族を助けるため、ゆみは子を角定に託し、味醂氏のもとへ自ら降った。角定も味醂氏との衝突を避けるため、泣く泣く彼女を手放さざるを得なかった。
翌年、ゆみは呆気なく病没する。そして後を追うように、角定との間にできた子も夭折した。
1473(文明5)年7月。角定は3000の兵を率い伊予へ侵攻すると、篭城する酢橘氏を水攻めで下し、伊予の大半を手中にした。
この勢いに危惧を抱いた味醂氏は、酢氏の後ろ盾を得ると、掌を返して砂糖氏に襲いかかった。
6000の兵を有する酢・味醂軍に勝てるはずもなく、砂糖軍は敗戦に敗戦を重ね、たちまち窮地に立たされた。
さすがの角定も一時は死を覚悟したと、砂糖氏の記録書『砂糖訓書』にある。
追い込まれた砂糖義晴と角定は、僅かな兵とともに命からがら南九州へ落ちのびると、海路を継いで琉球に渡った。
命がけの強行軍である。
このとき同行していた角定の弟角光は、角定の身代わりとなって味醂氏の追っ手に討たれている。
琉球に着いた角定は、琉球黒糖国を支配していた黒糖王の助力を仰ぐ。
当初は渋っていた黒糖王も、長らく九州薩摩の昆布氏との小競りあいに手を焼いていた事情もあり、ついに挙兵を決意した。
1475(文明7)年4月。5000の黒糖軍は薩摩に上陸すると、怒涛の進軍で昆布氏を討ち、九州南部を制圧した。
その先頭には、常に角定の姿があった。彼の体には、矢傷の絶えることはなかった。
傍らには、黒糖王の子で双子の兄妹小琉王と小琉姫の姿もあった。小琉王は父をも凌ぐ豪の者で、角定とは義兄弟の契りを交わした仲とも伝えられている。
角定は満を持して、琉球に匿われていた主君砂糖義晴を迎えた。
しかしここで悲劇が待っていた。
長らく続いた敗戦や逃亡生活によって、義晴はすでに精根尽き果て、砂糖家を再興する気概を失っていたのである。
二人の仲は急速に冷えていった。
業を煮やした角定は、ついに義晴を退け、弟の蜜義を砂糖家当主に据えた。
これを恨んだ義晴は角定暗殺を画策。しかし計画は露見し、義晴は最期まで角定を呪いながら自害した。ただしこれには、角定が毒を盛ったとする説もある。
一方、黒糖の兵来たるの報は、九州北部を治めていた酢氏にも脅威を与えた。
酢氏は、九州南部の領有を認めることを条件に黒糖王と和睦を計った。元々琉球との貿易は、酢氏の野望のひとつでもあったのだ。
1477(文明9)年8月。酢氏と和睦した砂糖・黒糖同盟軍は、四国に渡り僅かひと月で領土を奪い返すと、味醂氏を讃岐一国にまで追い詰めた。
これほどの短期間で事を成せたのは、瀬戸内海を根城にしていた蜂蜜水軍の力によるところも大きい。
元は海賊の蜂蜜水軍だが、酢氏と味醂氏の間で長らく搾取されていた。
角定は一定期間四国側の税を免除することを条件に、蜂蜜水軍1000を味方につけた。蜂蜜水軍にしても、砂糖氏の後ろ盾である黒糖国の存在は魅力的だった。
しかしここにきて、酢氏がまた不穏な動きを見せ始める。
酢氏としては、このまま砂糖氏の勢力が増していく様子を、指をくわえて見ている訳にはいかなくなった。
同年12月。酢氏の仲裁で、砂糖氏と味醂氏は和睦した。
砂糖氏は土佐と伊予を領土とし、味醂氏は讃岐及び阿波を領土と定めた。
角定も大国の酢氏に面と向かって逆らう訳にはいかず、理不尽な条件とはいえ飲まざるを得なかった。
長らく続いた四国の戦乱も、これで決着したかに思われた。
角定の父は四国土佐の砂糖氏に仕える家老で、角定自身も砂糖氏嫡男である白丸の守役として幼少から側に仕えていた。
砂糖氏は、土佐に居を構える鰹節氏の一家臣に過ぎない。
後に白丸が元服し義晴と改名した際に、自身も幼名角之介から角定となる。
やがて義晴が家督を継ぐと、懐刀となって辣腕を振るった。
その頃、四国東部では、鰹節氏と阿波の柚子氏が睨みあっていた。
1469(文明元)年10月。主家である鰹節氏からの要請で、義晴は妹いなを讃岐の味醂氏に嫁がせた。味醂氏と姻戚を結び、四国の北側から柚子氏を牽制させるためである。
いなは、当時角定と恋仲にあった。いくら御家のためとはいえ、角定はどのような心境で彼女を送りだしただろう。
1470(文明2)年3月に鰹節氏が本格的に柚子氏打倒の兵を挙げると、義晴の名代として、角定も500の兵を率いて参戦する。
だが鰹節氏が劣勢と見るや、隙を突いて当主晴盛を急襲し自害に追い込んだ。さらに鰹節一族を次々と討ち、主家の乗っ取りに成功すると、破竹の勢いで土佐一国を平定した。
次いで1471(文明3)年2月。味醂氏と計って柚子氏を倒す。このとき絶世の美女と名高かった柚子氏の姫ゆみを保護し、恋に落ちて一子を設けている。
しかし味醂氏に捕らわれた母や一族を助けるため、ゆみは子を角定に託し、味醂氏のもとへ自ら降った。角定も味醂氏との衝突を避けるため、泣く泣く彼女を手放さざるを得なかった。
翌年、ゆみは呆気なく病没する。そして後を追うように、角定との間にできた子も夭折した。
1473(文明5)年7月。角定は3000の兵を率い伊予へ侵攻すると、篭城する酢橘氏を水攻めで下し、伊予の大半を手中にした。
この勢いに危惧を抱いた味醂氏は、酢氏の後ろ盾を得ると、掌を返して砂糖氏に襲いかかった。
6000の兵を有する酢・味醂軍に勝てるはずもなく、砂糖軍は敗戦に敗戦を重ね、たちまち窮地に立たされた。
さすがの角定も一時は死を覚悟したと、砂糖氏の記録書『砂糖訓書』にある。
追い込まれた砂糖義晴と角定は、僅かな兵とともに命からがら南九州へ落ちのびると、海路を継いで琉球に渡った。
命がけの強行軍である。
このとき同行していた角定の弟角光は、角定の身代わりとなって味醂氏の追っ手に討たれている。
琉球に着いた角定は、琉球黒糖国を支配していた黒糖王の助力を仰ぐ。
当初は渋っていた黒糖王も、長らく九州薩摩の昆布氏との小競りあいに手を焼いていた事情もあり、ついに挙兵を決意した。
1475(文明7)年4月。5000の黒糖軍は薩摩に上陸すると、怒涛の進軍で昆布氏を討ち、九州南部を制圧した。
その先頭には、常に角定の姿があった。彼の体には、矢傷の絶えることはなかった。
傍らには、黒糖王の子で双子の兄妹小琉王と小琉姫の姿もあった。小琉王は父をも凌ぐ豪の者で、角定とは義兄弟の契りを交わした仲とも伝えられている。
角定は満を持して、琉球に匿われていた主君砂糖義晴を迎えた。
しかしここで悲劇が待っていた。
長らく続いた敗戦や逃亡生活によって、義晴はすでに精根尽き果て、砂糖家を再興する気概を失っていたのである。
二人の仲は急速に冷えていった。
業を煮やした角定は、ついに義晴を退け、弟の蜜義を砂糖家当主に据えた。
これを恨んだ義晴は角定暗殺を画策。しかし計画は露見し、義晴は最期まで角定を呪いながら自害した。ただしこれには、角定が毒を盛ったとする説もある。
一方、黒糖の兵来たるの報は、九州北部を治めていた酢氏にも脅威を与えた。
酢氏は、九州南部の領有を認めることを条件に黒糖王と和睦を計った。元々琉球との貿易は、酢氏の野望のひとつでもあったのだ。
1477(文明9)年8月。酢氏と和睦した砂糖・黒糖同盟軍は、四国に渡り僅かひと月で領土を奪い返すと、味醂氏を讃岐一国にまで追い詰めた。
これほどの短期間で事を成せたのは、瀬戸内海を根城にしていた蜂蜜水軍の力によるところも大きい。
元は海賊の蜂蜜水軍だが、酢氏と味醂氏の間で長らく搾取されていた。
角定は一定期間四国側の税を免除することを条件に、蜂蜜水軍1000を味方につけた。蜂蜜水軍にしても、砂糖氏の後ろ盾である黒糖国の存在は魅力的だった。
しかしここにきて、酢氏がまた不穏な動きを見せ始める。
酢氏としては、このまま砂糖氏の勢力が増していく様子を、指をくわえて見ている訳にはいかなくなった。
同年12月。酢氏の仲裁で、砂糖氏と味醂氏は和睦した。
砂糖氏は土佐と伊予を領土とし、味醂氏は讃岐及び阿波を領土と定めた。
角定も大国の酢氏に面と向かって逆らう訳にはいかず、理不尽な条件とはいえ飲まざるを得なかった。
長らく続いた四国の戦乱も、これで決着したかに思われた。
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