竜剣《タルカ》

チゲン

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第八幕 フランベルジュ

3頁

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 廃墟と化した町のなかを、無数の死人シビトがさ迷っている。恐らく大半が、かつてのグルセンダ人の成れの果てだろう。
 二人を見るなり襲ってくるモノもいたが、漫然と動いているだけのモノも多かった。
「モリバラに操られてる訳じゃないのか」
 襲ってきた死人を竜剣で片付けながら、ミランが意外そうに呟いた。
「魔女の使った竜鱗の残りかすが、死に切れない人たちの魂と融合ゆうごうしたってところかしら」
「…………」
「どうしたの?」
「いえ……よく判りますね」
「ちょっと魔女臭いから」
 彼女らしい表現に、ミランは苦笑する。
 そうこうしているうちに、複数の死人に取り囲まれた。腐敗した肉体を引きずり、じわじわと輪を縮めてくる。
「邪魔よ!」
 セカイが一喝いっかつすると、死人たちが炎に包まれて一瞬で蒸発した。
「な……」
 ミランは思わず絶句する。
「今の……あなたが?」
「そうみたいね」
 よく見ると、セカイの瞳が淡く赤く輝いている。
「そうみたいって……」
「調子がいいの。あなたと結ばれてから」
「う……」
 臆面もなく言われると、かえってこちらが恥ずかしくなる。
 その後も何度か死人に出くわしたが、ミランが竜剣を放つより早くセカイの炎の餌食えじきにあった。
「これが赤の竜剣の力なのか……?」
 ミランは頭を押さえた。奥がちりちりする。
 この光景に見覚えがあった。
 リベアンだ。師が赤の竜剣を駆使して、その炎の舌で敵を焼き尽くす……いや、それは魔女の結界のなかで見た幻だ。
 師が燃やしていたものは、もっと違う何かだった気がする。
「…………」
「ミラン?」
「いえ、何でもありません」
 しばらく歩くと城門が見えてきた。グルセンダ王宮だ。
 やはりと言うべきか……かつては荘厳そうごんであったはずの宮殿も、見るも無残に破壊されていた。
「妙だな」
 半ば崩れ落ちた正門を見て、ミランは首を傾げた。
「どうしたの?」
「門が、大きなつちのような物で破壊されてるんです」
 これは攻城兵器による攻撃の跡だ。
「魔女がこんな物を使うでしょうか?」
「さあ」
 二人は瓦礫がれきを避けながら正門をくぐった。その足元を、一匹の土鼠が駆け抜けていった。
 次の瞬間、セカイとミランは光に包まれた。
「!?」
 強烈な光に、思わず目を閉じる。
「く……」
 ミランは咄嗟とっさに、隣にいたセカイの体におおいかぶさった。
 やがて光が収束していき、視界が回復する。
 サァッと、風が吹き渡る。
 甘く心地よい風。
 ゆっくりと目を開ける。
「え……?」
 二人の前に、色鮮やかな庭園と、絹のような白亜の宮殿が姿を現していた。
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