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第五幕 リボン
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火元は厨房だった。
夜ということもあって、幸い怪我人や逃げ遅れた者はいなかった。ただ、火も落としていたはずなのに、何が原因で出火したのか。
とにかく住み込みの使用人たちが、大慌てで消火に当たっている。
イレハンドルはセカイを退かせると、消火作業を手伝った。
膂力のある彼が加わったことで、作業は見違えるように捗った。この分なら、他に燃え広がる前に鎮火できそうだ。
「火の回りが早すぎるな」
たまたま発見が早かったから、被害を最小限に食い止められた。
「放火か」
イレハンドルは、すぐに思い至った。
何しろ、これと同じ手段で、とある屋敷に火をかけたことがある。そしてその混乱に乗じて、姉を死に追いやった貴族とその妻を殺害したのだ。
「だとしたら、賊が忍び込んだのかもな」
イレハンドルは、消火作業を眺めていたセカイのもとへ戻った。
彼女は、燃えカスに残った燠火を見つめていた。
「おい、気を付けた方が……」
そのとき、階段から誰かが駆け下りてくる。
「……!」
イレハンドルは、思わず身構えた。
だが下りてきたのは、女と小さな男児だった。
「なっ!?」
イレハンドルは目を見張った。
その二人こそ、デルーシャとオリエス。彼が狙っていた標的に他ならなかった。
「セカイ、大変よ。二階に賊が!」
「ミランは?」
「今、戦ってるわ! でも、まだ起きたばかりなのに……」
「やっと目が覚めたのね」
慌てふためくデルーシャとは反対に、セカイは冷静だ。
だが、この場で最も我を忘れていたのは、イレハンドルだった。
「まさか……」
標的の母子。負傷した竜剣使い。セカイの背格好。
イレハンドルの頭のなかで、パズルのピースが嵌まる。
驚愕の眼差しで、セカイを見る。
「おまえが……」
『気付いたのは、連れのガキだよ』
フオウの言葉が蘇る。
『もう一人、ちょいでけえガキがいただろ』
「あのとき俺の矢に気付いた……!」
全てを察してしまったイレハンドルは、デルーシャが油断している隙を突いて、オリエスの小さな体を抱え上げ拘束した。
「!」
さすがのセカイも、驚きに目を見開いた。
すかさず懐剣を抜いて、捕らえたオリエスの頬に当てる。
「動くな!」
壁を背にして立つ。
デルーシャが声にならない悲鳴をあげた。
「あなた……」
「悪いな。そういうこと……だったらしい」
イレハンドルは、自嘲気味の笑みを浮かべた。
使用人たちは、消火作業に気を取られて、この異常事態に気付いていない。どこの誰だか知らないが、火をかけた賊にキスしてやりたい気分だった。
「道を開けてもらえるか」
「……逃げきれると思ってるの?」
セカイが厳しい表情で、イレハンドルの前に立ちはだかった。
「屋敷の構造なら、頭に入れてある」
「でも、傷がまだ完治してないでしょ。そんな状態で、子供を連れて逃げるなんて、無理に決まってるわ」
「…………」
それは図星だった。
仮にこの場を逃げおおせたとしても、無事にこの町を出られる保証はどこにもない。
だが恐らく、最後の機会なのだ。
「そんなことして何になるの?」
「何……?」
「その子をさらってったところで、あなたに何の得があるの?」
「……金が入る」
「貴族の金よ。あなたが大嫌いな」
「金は金だ」
セカイが一歩進みでた。
「動くな。おまえとこのガキを殺して、あの女だけ連れ帰ってもいいんだぞ」
懐剣の腹を、オリエスの頬に押し当てる。
「やめて!」
デルーシャが半狂乱になって叫んだ。
オリエスは、あまりの恐怖で泣くこともできないらしく、イレハンドルの腕のなかで硬直している。
「おまえこそ、貴族は嫌いだったんじゃないのか?」
「ええ、大嫌いよ」
あっさりとセカイは肯定した。
「じゃあ、この親子がどうなったって構わないだろう」
「そうね。でも、ミランが悲しむわ」
「……?」
セカイの周囲の空気が揺らめく。
「何だ?」
その異様な気配に、イレハンドルは半ば本能的に身を引いた。
「こんなときに、まだ眠ってる気?」
「……何を言ってる?」
彼女の言葉は、自分に向けられたものではない。
だが、この圧迫感は何か。心臓を……魂を握り潰されるような。
十四歳の少女に、イレハンドルは気圧されていた。
「目覚めなさい、老いぼれ!」
セカイが叫んだ。
その瞬間、腕の中のオリエスの懐から光が溢れた。
「なっ!?」
ちらりと見えたそれに、見覚えがある。フオウが持っていたのと同じ……竜鱗だ。
次の瞬間、バンと衝撃が走り、左腕が不可視の力に弾かれた。
「!」
戒めを解かれたオリエスの体が落下した。
セカイが真下に飛び込み、義弟の小さな体を受け止める。そして、デルーシャに向かって放り投げた。
「ああっ」
デルーシャが、全身で我が子を抱き止めた。
運動能力に乏しい彼女にしてみれば奇跡だった。これも母の力なのかもしれない。
「ふざけた真似を!」
イレハンドルの左腕が伸び、今度はセカイの首を絞め上げた。
「ぐっ……」
セカイの顔が苦痛に歪む。
その頬に、イレハンドルが懐剣の刃を当てた。
「セカイ!」
デルーシャが再び絶叫した。
「騒…がないでよ……みっともない……」
セカイが絞りだすように言った。
「おまえ……何をした?」
イレハンドルは聞かざるを得なかった。
「わたしを人質にした…ところで……何の意味もないわよ」
セカイは質問に答えない。
苦しげな息の下から、なおもイレハンドルを睨みつけている。
「……まるで他人事だな。もっと自分の命を大切にしろ」
「あなたに…言われたくないわ」
「もっともだ」
苦笑い。
「一人で…さっさと逃げてもいいのよ……別に追いかけたりしないから」
「任務を果たせなかったんだ。もう俺に、逃げる場所はない。いずれ殺される」
「じゃあ…投降する?」
「そしたら拷問にかけられて……やはり殺される。貴族に殺されるのだけは勘弁だ」
イレハンドルは、軽く肩を竦めた。
「いっそ、おまえを殺して俺も死ぬか」
「やめて!」
悲痛な声をあげたのは、デルーシャだった。
「?」
セカイもイレハンドルも、怪訝な顔を向ける。
「その子を返して」
デルーシャはオリエスを下ろすと、自分の後ろに退がらせた。
「私が替わります」
「なっ……」
セカイの顔に、初めて動揺が走った。
「あんた……」
イレハンドルが何か言いかける前に、セカイが割り込んできた。
「いいからその子を連れて……さっさと逃げなさい」
「セカイ……あなたを、置いていける訳ないでしょう」
「あなたには関係ないことよ」
「お黙りなさい!」
デルーシャが鋭い声をあげた。
今までの、どこか消え入りそうな儚い女とは思えない、剣のように鋭い声だった。
セカイが言葉を飲み込んだ。
「その子の替わりに、私を連れていきなさい。その替わり、セカイにもオリエスにも、もう手を出さないで」
「……あんた、自分が何を言ってるのか、判ってんのか?」
イレハンドルの問いに、デルーシャは悲壮な面持ちで頷いた。
「無事では済まないぞ。あんたみたいな美人なら、なおさらな」
その言葉が何を意味しているか、判らない訳ではあるまい。だがその表情は揺るがなかった。
「我が子を守るのが、親の使命です」
やはりそうか。
二人はよく似ている。
「そういえば、姉貴もあのとき、こんな顔をしてたな」
嫌ならやめろ。好きな男がいるんだろ。
あのとき、その言葉をイレハンドルは最後まで言えなかった。
「……こっちへ来い。ゆっくりと」
デルーシャが、恐る恐る近付いてくる。
これでセカイともお別れだと思うと、少し寂しかった。
「ふっ……」
こんな愛想も色気もない少女相手に、何を血迷っているのか。いっしょにいても、たぶん気苦労の方が多いだろう。
それなのに、寂しいと感じてしまった。
「ふざけるな……」
地の底から沸き上がるような声がした。
一瞬、イレハンドルもデルーシャも、互いの顔を見やってしまった。
「セカイ?」
デルーシャが、おずおずと声をかける。
地の底からの声の主は、首を吊られたまま、両肩を震わせていた。
「子供のために身代わりになるって?」
「セカイ……」
「そんなこと」
「おい、おまえ……」
「許さない!」
顔を上げ、セカイが目を見開いた。
イレハンドルは、本能的に危険を感じ、セカイを突き飛ばした。
その瞬間、天井を突き破って、一本の竜剣がイレハンドルに襲いかかってきた。
「!」
咄嗟に横転して、回避する。
立ち上がったイレハンドルと、セカイが対峙する。
セカイの側には、ひと振りの竜剣が浮いていた。シジュリアの竜剣だ。
「おまえも竜剣使いだったのか……?」
「どいつもこいつも、勝手なことばかり!」
セカイが、左手でデルーシャを突き飛ばした。
「きゃっ!」
デルーシャが床に倒れる。そこにオリエスが駆け寄った。
「あなたに、わたしを助ける資格はないわ」
きっぱりと言い放つ。
「セカイ……」
デルーシャの声は震えている。目端に光る涙は、恐怖のためではないだろう。
「おまえ……」
イレハンドルは目の前の光景が信じられなかった。
セカイの目は、赤い輝きを放っていた。
漆黒の闇に浮かぶ、冷たき炎。
「その目……」
人のモノとは思えなかった。
「美しい……」
イレハンドルは無意識に呟いていた。
「何て美しい目をしてるんだ」
イレハンドルは、懐剣を正面に構えた。
あの炎に焼かれてみるのも、一興かもしれない。
イレハンドルは跳躍した。
セカイの目が煌いた。
刃が交錯した。
夜ということもあって、幸い怪我人や逃げ遅れた者はいなかった。ただ、火も落としていたはずなのに、何が原因で出火したのか。
とにかく住み込みの使用人たちが、大慌てで消火に当たっている。
イレハンドルはセカイを退かせると、消火作業を手伝った。
膂力のある彼が加わったことで、作業は見違えるように捗った。この分なら、他に燃え広がる前に鎮火できそうだ。
「火の回りが早すぎるな」
たまたま発見が早かったから、被害を最小限に食い止められた。
「放火か」
イレハンドルは、すぐに思い至った。
何しろ、これと同じ手段で、とある屋敷に火をかけたことがある。そしてその混乱に乗じて、姉を死に追いやった貴族とその妻を殺害したのだ。
「だとしたら、賊が忍び込んだのかもな」
イレハンドルは、消火作業を眺めていたセカイのもとへ戻った。
彼女は、燃えカスに残った燠火を見つめていた。
「おい、気を付けた方が……」
そのとき、階段から誰かが駆け下りてくる。
「……!」
イレハンドルは、思わず身構えた。
だが下りてきたのは、女と小さな男児だった。
「なっ!?」
イレハンドルは目を見張った。
その二人こそ、デルーシャとオリエス。彼が狙っていた標的に他ならなかった。
「セカイ、大変よ。二階に賊が!」
「ミランは?」
「今、戦ってるわ! でも、まだ起きたばかりなのに……」
「やっと目が覚めたのね」
慌てふためくデルーシャとは反対に、セカイは冷静だ。
だが、この場で最も我を忘れていたのは、イレハンドルだった。
「まさか……」
標的の母子。負傷した竜剣使い。セカイの背格好。
イレハンドルの頭のなかで、パズルのピースが嵌まる。
驚愕の眼差しで、セカイを見る。
「おまえが……」
『気付いたのは、連れのガキだよ』
フオウの言葉が蘇る。
『もう一人、ちょいでけえガキがいただろ』
「あのとき俺の矢に気付いた……!」
全てを察してしまったイレハンドルは、デルーシャが油断している隙を突いて、オリエスの小さな体を抱え上げ拘束した。
「!」
さすがのセカイも、驚きに目を見開いた。
すかさず懐剣を抜いて、捕らえたオリエスの頬に当てる。
「動くな!」
壁を背にして立つ。
デルーシャが声にならない悲鳴をあげた。
「あなた……」
「悪いな。そういうこと……だったらしい」
イレハンドルは、自嘲気味の笑みを浮かべた。
使用人たちは、消火作業に気を取られて、この異常事態に気付いていない。どこの誰だか知らないが、火をかけた賊にキスしてやりたい気分だった。
「道を開けてもらえるか」
「……逃げきれると思ってるの?」
セカイが厳しい表情で、イレハンドルの前に立ちはだかった。
「屋敷の構造なら、頭に入れてある」
「でも、傷がまだ完治してないでしょ。そんな状態で、子供を連れて逃げるなんて、無理に決まってるわ」
「…………」
それは図星だった。
仮にこの場を逃げおおせたとしても、無事にこの町を出られる保証はどこにもない。
だが恐らく、最後の機会なのだ。
「そんなことして何になるの?」
「何……?」
「その子をさらってったところで、あなたに何の得があるの?」
「……金が入る」
「貴族の金よ。あなたが大嫌いな」
「金は金だ」
セカイが一歩進みでた。
「動くな。おまえとこのガキを殺して、あの女だけ連れ帰ってもいいんだぞ」
懐剣の腹を、オリエスの頬に押し当てる。
「やめて!」
デルーシャが半狂乱になって叫んだ。
オリエスは、あまりの恐怖で泣くこともできないらしく、イレハンドルの腕のなかで硬直している。
「おまえこそ、貴族は嫌いだったんじゃないのか?」
「ええ、大嫌いよ」
あっさりとセカイは肯定した。
「じゃあ、この親子がどうなったって構わないだろう」
「そうね。でも、ミランが悲しむわ」
「……?」
セカイの周囲の空気が揺らめく。
「何だ?」
その異様な気配に、イレハンドルは半ば本能的に身を引いた。
「こんなときに、まだ眠ってる気?」
「……何を言ってる?」
彼女の言葉は、自分に向けられたものではない。
だが、この圧迫感は何か。心臓を……魂を握り潰されるような。
十四歳の少女に、イレハンドルは気圧されていた。
「目覚めなさい、老いぼれ!」
セカイが叫んだ。
その瞬間、腕の中のオリエスの懐から光が溢れた。
「なっ!?」
ちらりと見えたそれに、見覚えがある。フオウが持っていたのと同じ……竜鱗だ。
次の瞬間、バンと衝撃が走り、左腕が不可視の力に弾かれた。
「!」
戒めを解かれたオリエスの体が落下した。
セカイが真下に飛び込み、義弟の小さな体を受け止める。そして、デルーシャに向かって放り投げた。
「ああっ」
デルーシャが、全身で我が子を抱き止めた。
運動能力に乏しい彼女にしてみれば奇跡だった。これも母の力なのかもしれない。
「ふざけた真似を!」
イレハンドルの左腕が伸び、今度はセカイの首を絞め上げた。
「ぐっ……」
セカイの顔が苦痛に歪む。
その頬に、イレハンドルが懐剣の刃を当てた。
「セカイ!」
デルーシャが再び絶叫した。
「騒…がないでよ……みっともない……」
セカイが絞りだすように言った。
「おまえ……何をした?」
イレハンドルは聞かざるを得なかった。
「わたしを人質にした…ところで……何の意味もないわよ」
セカイは質問に答えない。
苦しげな息の下から、なおもイレハンドルを睨みつけている。
「……まるで他人事だな。もっと自分の命を大切にしろ」
「あなたに…言われたくないわ」
「もっともだ」
苦笑い。
「一人で…さっさと逃げてもいいのよ……別に追いかけたりしないから」
「任務を果たせなかったんだ。もう俺に、逃げる場所はない。いずれ殺される」
「じゃあ…投降する?」
「そしたら拷問にかけられて……やはり殺される。貴族に殺されるのだけは勘弁だ」
イレハンドルは、軽く肩を竦めた。
「いっそ、おまえを殺して俺も死ぬか」
「やめて!」
悲痛な声をあげたのは、デルーシャだった。
「?」
セカイもイレハンドルも、怪訝な顔を向ける。
「その子を返して」
デルーシャはオリエスを下ろすと、自分の後ろに退がらせた。
「私が替わります」
「なっ……」
セカイの顔に、初めて動揺が走った。
「あんた……」
イレハンドルが何か言いかける前に、セカイが割り込んできた。
「いいからその子を連れて……さっさと逃げなさい」
「セカイ……あなたを、置いていける訳ないでしょう」
「あなたには関係ないことよ」
「お黙りなさい!」
デルーシャが鋭い声をあげた。
今までの、どこか消え入りそうな儚い女とは思えない、剣のように鋭い声だった。
セカイが言葉を飲み込んだ。
「その子の替わりに、私を連れていきなさい。その替わり、セカイにもオリエスにも、もう手を出さないで」
「……あんた、自分が何を言ってるのか、判ってんのか?」
イレハンドルの問いに、デルーシャは悲壮な面持ちで頷いた。
「無事では済まないぞ。あんたみたいな美人なら、なおさらな」
その言葉が何を意味しているか、判らない訳ではあるまい。だがその表情は揺るがなかった。
「我が子を守るのが、親の使命です」
やはりそうか。
二人はよく似ている。
「そういえば、姉貴もあのとき、こんな顔をしてたな」
嫌ならやめろ。好きな男がいるんだろ。
あのとき、その言葉をイレハンドルは最後まで言えなかった。
「……こっちへ来い。ゆっくりと」
デルーシャが、恐る恐る近付いてくる。
これでセカイともお別れだと思うと、少し寂しかった。
「ふっ……」
こんな愛想も色気もない少女相手に、何を血迷っているのか。いっしょにいても、たぶん気苦労の方が多いだろう。
それなのに、寂しいと感じてしまった。
「ふざけるな……」
地の底から沸き上がるような声がした。
一瞬、イレハンドルもデルーシャも、互いの顔を見やってしまった。
「セカイ?」
デルーシャが、おずおずと声をかける。
地の底からの声の主は、首を吊られたまま、両肩を震わせていた。
「子供のために身代わりになるって?」
「セカイ……」
「そんなこと」
「おい、おまえ……」
「許さない!」
顔を上げ、セカイが目を見開いた。
イレハンドルは、本能的に危険を感じ、セカイを突き飛ばした。
その瞬間、天井を突き破って、一本の竜剣がイレハンドルに襲いかかってきた。
「!」
咄嗟に横転して、回避する。
立ち上がったイレハンドルと、セカイが対峙する。
セカイの側には、ひと振りの竜剣が浮いていた。シジュリアの竜剣だ。
「おまえも竜剣使いだったのか……?」
「どいつもこいつも、勝手なことばかり!」
セカイが、左手でデルーシャを突き飛ばした。
「きゃっ!」
デルーシャが床に倒れる。そこにオリエスが駆け寄った。
「あなたに、わたしを助ける資格はないわ」
きっぱりと言い放つ。
「セカイ……」
デルーシャの声は震えている。目端に光る涙は、恐怖のためではないだろう。
「おまえ……」
イレハンドルは目の前の光景が信じられなかった。
セカイの目は、赤い輝きを放っていた。
漆黒の闇に浮かぶ、冷たき炎。
「その目……」
人のモノとは思えなかった。
「美しい……」
イレハンドルは無意識に呟いていた。
「何て美しい目をしてるんだ」
イレハンドルは、懐剣を正面に構えた。
あの炎に焼かれてみるのも、一興かもしれない。
イレハンドルは跳躍した。
セカイの目が煌いた。
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