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第二幕 女たちの饗宴
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初めて竜剣を操ることができた日は、抜けるような青空だったと思う。
他の弟子たちに比べ、自分が遥かに劣っているのはよく判っていた。
追いだされまいとして、兄弟子たちに体を許したこともあった。結局そのことが明るみになって、破門されてしまったが。
故郷の村に戻って、数ヶ月後。
戦に敗れた流浪の傭兵たちが、徒党を組んで村に押しかけてきた。
本物の戦闘に体は竦み、竜剣を使うどころか、家族を見殺しにしてしまった。
命からがら村を逃げだしたときには、すでに竜剣は何も応えてくれなくなっていた。
これが走馬灯か。
シジュリアは薄れゆく意識のなかで思った。
痛みはなかった。もう感覚すらないのかもしれない。ただ、目の前に広がる景色を呆然と眺めていた。
老婆が、無数の光の刃を少女に放とうとしている。それなのに少女は微動だにしない。
足が竦んで動けないのかい。あの日のあたいのように。
違う。少女は盾になっているのだ。あの竜剣使いを守るために。
四本の竜剣を易々と扱う、あのいけすかない青年。
ミラン。
あの日、目の前で殺された弟と同じ名前の。
シジュリアは目を見開いた。
まだ終わってない。終わってはいけない。
のそりとした動作で、シジュリアは起き上がった。とうに死んだと思っていたのに、まだこんな気力が残っていたとは、自分でも驚きだ。
喉の奥から、低い雄叫びをあげる。掠れて、声にならないが、それでも力が漲った。
老婆がこちらに気付いた。
少女も、そしてミランも、驚いたようにこちらを見つめている。
フン……あたいだって、やるときゃやるんだよ。
緩慢な動作で、ベルトから、竜剣を抜いた。
老婆が、蔑むような笑みを浮かべた。おまえのような者に、竜剣が使えるものか。そう言っているようだった。
師匠や兄弟子のように。
あの日の傭兵たちのように。
今度こそ。
シジュリアは、竜剣を投げた。それはやはり緩慢な動作だったが、持てる最後の力であることは確かだった。
竜剣が飛翔していく。
老婆が目を見張った。
竜剣は信じられないほどの速度で、老婆の心臓を貫いた。
他の弟子たちに比べ、自分が遥かに劣っているのはよく判っていた。
追いだされまいとして、兄弟子たちに体を許したこともあった。結局そのことが明るみになって、破門されてしまったが。
故郷の村に戻って、数ヶ月後。
戦に敗れた流浪の傭兵たちが、徒党を組んで村に押しかけてきた。
本物の戦闘に体は竦み、竜剣を使うどころか、家族を見殺しにしてしまった。
命からがら村を逃げだしたときには、すでに竜剣は何も応えてくれなくなっていた。
これが走馬灯か。
シジュリアは薄れゆく意識のなかで思った。
痛みはなかった。もう感覚すらないのかもしれない。ただ、目の前に広がる景色を呆然と眺めていた。
老婆が、無数の光の刃を少女に放とうとしている。それなのに少女は微動だにしない。
足が竦んで動けないのかい。あの日のあたいのように。
違う。少女は盾になっているのだ。あの竜剣使いを守るために。
四本の竜剣を易々と扱う、あのいけすかない青年。
ミラン。
あの日、目の前で殺された弟と同じ名前の。
シジュリアは目を見開いた。
まだ終わってない。終わってはいけない。
のそりとした動作で、シジュリアは起き上がった。とうに死んだと思っていたのに、まだこんな気力が残っていたとは、自分でも驚きだ。
喉の奥から、低い雄叫びをあげる。掠れて、声にならないが、それでも力が漲った。
老婆がこちらに気付いた。
少女も、そしてミランも、驚いたようにこちらを見つめている。
フン……あたいだって、やるときゃやるんだよ。
緩慢な動作で、ベルトから、竜剣を抜いた。
老婆が、蔑むような笑みを浮かべた。おまえのような者に、竜剣が使えるものか。そう言っているようだった。
師匠や兄弟子のように。
あの日の傭兵たちのように。
今度こそ。
シジュリアは、竜剣を投げた。それはやはり緩慢な動作だったが、持てる最後の力であることは確かだった。
竜剣が飛翔していく。
老婆が目を見張った。
竜剣は信じられないほどの速度で、老婆の心臓を貫いた。
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