竜剣《タルカ》

第一幕 父の死

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　丘の上の墓地に、リベアンは埋葬された。
　質素な墓だった。
　葬儀そうぎらしい葬儀もなかった。数人の村人が訪れて、花を置いていった。
　その日の午後には、セカイは旅支度じたくを整えていた。
「行きましょうか、お嬢様」
　二年を過ごした村を去る。
　その旅立ちもまた、誰に見送られることもなかった。
　一人だけ。
　グリンだけが、二人を村外れまで見送った。
「セカイ……ほんとに行っちゃうの？」
「わたしがこの村にいる理由がないから」
「そんなことないよう」
　グリンは、半べそをかいている。その頭に、セカイはそっと左手を置いた。
「わたしの代わりに、みんなの面倒めんどうを見てあげてね」
　そう言い残すと、二人は歩きだした。
　置いてけぼりのグリンは、セカイの名を叫ぶ。
　セカイは振り向かなかった。
「本当によろしいのですか、お嬢様」
「何が？」
「危険な旅になります」
「だって、赤の竜剣を取り返さなきゃならないし」
「相手はあの魔女モリバラなんですよ。お嬢様の身に、もしものことがあったら……」
「いいのよ。あの村に、わたしの居場所がないのは本当なんだから。それとも、あなたもわたしを置いて、一人で行っちゃうの？」
「……卑怯ひきょうですよ」
　それを言われると、断り切れないではないか。
　ミランは諦あきらめて嘆息した。
「だいいち、わたし」
「えっ？」
「子供なんて大嫌いだから」
「…………」
　二つの人影は、すぐに小さくなっていった。

　（第一幕　完）