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四章 魔物大戦争編
九話 帰宅と奴隷と眷属
しおりを挟む本来なら討伐した魔物は解体して素材を回収するのだが、壮絶な戦いの後でみんな疲れているのと、今は夜中という事もあり、体を休めて明るくなってから行うらしい。
食事と酒を目当てに、冒険者と兵士たちがぞろぞろと広場へ向けて移動する。その間にも手当たり次第に解析を掛けていくが……今のところ成果はない。
「カルマさん。ずっと右目が金色に光ってますけど……どうかしたんですか?」
俺の様子がおかしいことを心配する蓮君が小声で話しかけてきた。解析中は光るのか……知らなかったな。
蓮君との距離を詰め、彼にならって小声でさっき聞こえた声について説明する。
「それが魔物使いの可能性ですか……。そういえば、僕が黒炎龍に挑んた時に魔物使いの声を聞いたんですけど……関西弁でしたね」
「そうか……」
日本人なのは、ほぼ確定だが――
「――敵は日本人なのか」
ヒュッ……と、息を呑んだ音が聞こえた。蓮君が驚いた顔をしているが……関西弁で気付かなかったのか? いや……無意識に気付かない振りをしていたのかもしれないな。
そして広場で祝勝会という名目で宴会が始まる。マリー達とニトラに端っこで待ってるように言い、俺は辺境伯の下へと向かうが、あっという間に酔っぱらった冒険者に絡まれてしまった。
「何してんだよカルマぁー、一緒に飲もうぜ救世主様ぁー」
肩に腕を回されグイグイと引っ張られる。抱いたことのあるボインボインなお姉さんだが、冷たい鎧が邪魔で柔らかさは感じられない……残念でならない。
…………残念でならないッ!!
「悪いな、辺境伯様に用事があるんだ。あそこにいる勇者様が相手してくれるだろうぜ」
「あぁーあいつらも凄かったなぁ……よっしゃ! じゃああいつらと飲む!」
「異世界から召喚された勇者様だし、戦争でも大活躍だっただろう? 朝まで盛大に盛り上がるといい」
そう耳元で囁いてあげると、女冒険者は酒瓶をひっさげ意気揚々と蓮君達の所へと向かっていった。
「わりぃな……でも今晩は長居するわけにはいかないんだ」
女冒険者に絡まれる蓮君と、慌てる久遠さんに、それを宥める藤堂さんと、馬鹿笑いするテオ君。それらを眺めながら、誰にも届かないほど小さな声で呟く。
俺は足早に辺境伯の下へといき、魔物使いの情報と力を使い過ぎたので帰って眠る旨を伝えた。
「なに……?体は大丈夫なのかね?」
「御心配なく、一時的なものですから明日には良くなっています。魔力切れに近いものだとお考え下さい」
「そうか、護衛は必要ないか?」
心配そうに俺を気遣ってくれるお義父さんを安心させ、本題を切り出すことにした。
「ええ、マリーやヘルミーナもいますから……それと、もしかしたら嫁が一人増えるかもしれません」
「構わんよ、マリーを悲しませないならな」
「ありがとうございます。では魔物使いの件はよろしくお願いします……それに関して少しお聞きしたいことがありまして……」
奴隷契約についてお義父さんへと話し、許可を得られたので本当に帰宅することにする。
マリーと美桜に合流するとヘルミーナとクロエも一緒にいた。探す手間が減って助かったな。いや、それを見越して待っていてくれたのかもな。
「ヘルミーナ、自己紹介は済んだか?」
「はい、お二人にも一緒に住むことを了承してくださいました」
「そうか、クロエもありがとうな、色々世話になった」
「男娼君もお疲れー。でもクロエはまだ暴れ足りないかなー」
十分大暴れだったと思うが、クロエ的には足りなかったようだ。「じゃあまたねー」と手を振りながら彼女は去って行った。
「さて……家に帰ろうか、悪いけどちょっと急ぐよ」
本当は龍の尾も労ってやりたかったけど、そろそろ堪えるのも辛くなってきた。足早に家に向けて歩き出した俺の隣にマリーが並ぶ。
「カルマ様、宴会には出なくて良かったのですか? それに何だか急いでいらっしゃるような……」
「ああ……実はな……」
もう人気もないから話してもいいだろう。俺の中には吸血鬼と淫魔の二つの人格があったわけだが、淫魔の人格は吸血鬼の人格が吸収した。
吸収されて人格は消滅したが、淫魔の力は消えてはいない。どこにいったかと言えば、当然吸血鬼の力に淫魔の力が入っている状態だろう。
「おそらくその所為で……吸血鬼の力を使い過ぎると副作用で女性を抱きたい衝動が抑えられなくなってな……」
マリーと美桜の視線が自然と俺の股間へと向かっていき、バキバキに勃起してズボンを押し上げる愚息を目にする。
広場を出るギリギリまで我慢したが、身内だけで夜道を歩き出すとすぐに勃ち上がってしまった。
早く帰りたがる俺の意図を理解した二人が、帰ったらどうなるかを想像したのか顔を赤くし俯いた。
「あの……カルマ様。その……あんまり激しいのは……」
淫魔に支配された時の事をグレースに聞いたのだろうか。マリーに不安そうな顔をさせてしまったな。
「大丈夫だ。もう暴走はしないから……ただ朝どころか昼間まで萎えないかもしれないけど……」
「そ……それなら」
「それなら?」
「な、なんでもないでひゅ……」
「クルゥウ?」
より赤くなった顔を両手で覆ってしまったマリーを、ニトラが不思議そうな顔で下から覗き込む。
それなら大歓迎とか……?マリーはむっつりさんだなぁ。
「や、やめて見ないでニトラちゃん……!」
顔を覆ったまま走り出すマリーと、何か遊びが始まったのかとニトラが追いかける……よく転ばずに走れるな。
というかマリーはニトラが雌だとわかったのか? 可愛いから『ちゃん付け』なのかもな。龍の性別なんて見分けられないだろうに……ちなみにニトラは雌だ。
「やれやれ……騒がしくなってきたな」
「ふふふっ、賑やかですね御主人様」
「ああ……そうだな」
戦いの後に訪れた平和な光景。マグラの予知の通りにならなくて本当によかったと思う。
家に付くとグレース達は全員起きて待っていた。まぁ街の外で戦争してるのに寝てられないよな。
リビングでニトラとヘルミーナを紹介し、ニトラの可愛さに全員が瞬殺されるまでの流れをやってからみんなの前で宣言する。
「修行中はあんまり出来なかったし、スキルの副作用で今の俺は非常にムラムラしている……乱暴にしたりはしないけど、多分昼くらいまで続けてヤルだろうから相手を頼みたい」
今は深夜5時くらいだ。朝までやっても終わらないだろうから昼までコースだな。
「カルマ様……私の体ならいつでも、どこでも求めて頂いて構いませんわ♡ それに……」
グレースは俺の横に立ち、ズボンを押し上げる膨らみにそっと手を添えた。
「お帰りになられてからずっと雄の匂いを撒き散らされては……私ももう我慢できませんわ……♡ 」
うっとりとした顔で、いやらしい手つきでちんぽを撫で上げる。
「じゃあ最初はマリー様とグレース様からということで、私達は控えていますので、いつでもお声かけ下さい」
美桜がしおらしい事を言ってくれるが話はそれだけではない。
「その前に……美桜」
俺のちょっと真剣な顔に美桜の顔も釣られて真剣なものへと変わった。
「ニトラは吸血鬼のスキルで眷属になった訳だが、眷属化は魔物だけでなく人にも使える」
「……」
その意味を察したのだろうか、マリーやグレースといった他の面々も息を呑んだ。
「眷属化には三段階の深度があってな。ニトラはもちろん最大深度で眷属化したが、一番軽い眷属化ならレベルやステータスに影響なく、吸血鬼のスキル類も付与されないし、種族も人間のままだ。主である俺の命令に絶対服従なのは……まぁ今と変わらないだろう」
「では……なんのために?」
「メリットはあるよ。まず奴隷契約を眷属化で上書き出来る……その首の奴隷紋も消えるだろう。眷属紋というものに書き換わるが、場所は自由に選べるから……お腹とかお尻なら服で隠れるだろう」
魔物使いの支配を奪い取ったように、奴隷契約の支配を眷属化で上書き支配することが出来る。ニトラは額にある紋章が眷属紋だな。お腹なら淫紋みたいだな……ちょっと見てみたい。
美桜の手がそっと自分の喉元に添えられる。奴隷紋をなぞり上げる彼女の細い指……美桜は今、何を思っているんだろうか。
「それに、犯罪奴隷は原則として結婚は認められていないが……奴隷契約を消し去ることが出来る眷属化なら……」
「そ……それは……えっと……」
一歩、美桜へ向けて踏み込み右手を差し出す。残念ながらまだ指輪は用意できていないから、少し格好がつかないが……。
「美桜……眷属となって…………俺と結婚してくれ」
複数嫁のいる男なんて嫌かもしれないけど……愛人でも奴隷でもいいと言ってくれる美桜なら、受け入れてくれると思うのはエゴだろうか。
目にいっぱい涙を溜め、差し出した手に彼女の手が重なった。
「……はい……こんな私でよければ……」
「美桜がいいんだ。美桜を俺の嫁にしたいんだよ」
その言葉に美桜の両目から涙が溢れ、震える声で答えてくれた。
「はい……愛しています知業さん……」
「愛しているよ美桜」
涙を零す美桜を落ち着くまでそっと抱きしめると、弱々しくも彼女の両腕が俺の背中へと回された。
ハーフサキュバスのジェシカや兎獣人のルーシーが気を遣って静かにしていてくれた。
ニトラもおすわりしながら、黙ってこちらを見ていた。
……お前絶対犬だろ。
しばらくすると落ち着いた美桜がそっと離れる。
「美桜さんおめでとうございます。一緒にカルマ様を支えていきましょうね」
「おめでとうございますわ。私達は美桜さんを歓迎致しますわ」
マリーとグレースも受け入れてくれたようだ。一番最初に抱かれるのは美桜一人でどうかと提案してくれたマリーだが、美桜自身がそれを断った。
「お嫁さん三人で一緒にしませんか? ……それに今の知業さんは、一人ではお相手出来そうにありませんから……」
マリーとグレースも了承してくれたので、寝室に向かおうとする俺をグレースが引き留めた。
「カルマ様、まずは汗を流しましょう? マリーさんもお疲れでしょうし、美桜さんは血の匂いがしますわ。お風呂は沸かしてありますので……」
グレースが一度言葉を区切り、唇を舌なめずりをした。その妖艶な姿に息子がビクンと跳ねる。
「……まずはお風呂場でご奉仕致しますわ……♡ 」
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