異世界性生活!!~巻き込まれ召喚された勇者のスキルが変態すぎた~

秋津紅音

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三章 愛する者への誓い

十話 準備は上々 いざ桃源郷へ

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「そんなの罠に決まっています!私は反対ですカルマ様!」

 リビングでマリー、ソフィア、グレース、メロディ、ノエルと奴隷達に手紙について説明する。まあ……そうなるだろうとは思ったが、マリーは珍しく声を荒げて反対した。
 ちなみに朝食前のこの時間、グレースはまだ寝ていたけど悪いが叩き起こした。

「まあ今回は人数に制限とか書いてないから、十分戦えるメンバーを揃えて行くつもりだよ」

「それでも!……いえ、カルマ様のそのお顔……止めても無駄なのですね」

 今、俺の顔はどうなっているのだろうか……自分ではわからないな。

「マリー……ごめんな。もう助けるって決めたんだ」

「でも、それなら私もついて行きますからね!今度こそはカルマ様を守ってみせますから!」

 今度こそは……か。マリーは俺がグレースに攫われた時の事を、思い出しているのだろうか。
 胸の前で握りこぶしを作り、口元にはほんのりと笑みを携え、力強い視線を送ってくる。

「私は留守番ね。戦えないし……場所が魔の森の中なら足手まといでしかないもの」

「そうだな。でもソフィアが安全なところにいてくれると、俺は安心できるからありがたいよ」

「ちゃんと無事に帰ってこないと承知しないからねっ」

 ソフィアは信頼の眼差しで俺を見つめ柔らかく微笑む。

「いくらカルマ様でも、複数の夢魔族と連続でするなんて……私は心配ですわ」

 打って変わって心配そうなのがグレースだが……グレースはLv81で攻撃魔法の種類も豊富だ。

「グレースは戦闘も出来るし夢魔族でもあるんだ。出来れば付いてきて欲しいんだけど……」

「もちろんですわ。私に出来ることなら何でもいたしますわ」

 ノエルや美桜も一緒に来たがったが留守番を頼んだ。メロディやソフィアの護衛も必要だし、何より魔の森に行くんだ、危険すぎる。家にはメロディの護衛の騎士もいるから安全だろう。

 ちなみに誰もまだ気づいてないがメロディに解析の目を向けると、メロディとは別のウィンドウが立ち上がったのでおそらく妊娠している。

 家の者も説得したので、俺とマリーはギルドで冒険者の護衛を探すことにした。受付で知り合いの冒険者の予定を確認すると、運よく龍の尾を雇うことが出来た。
 これでメンバーは俺、マリー、グレース、龍の尾の三人だが、もう少し戦闘面でメンバーを増やしたいところだ。

 俺はギルドの酒場で、龍の尾と昼食を食べながら増やすメンバーについて考えを巡らせる。女性冒険者の知り合いは多数いるし、クロエや戦斧というツテもある。

 そんな話をしていると、俺達……いや、俺に向かって歩いてくる集団が見えた。やれやれ……彼らには最近ヤケに縁があるな。黒髪が二人もいる集団なんて俺は一つしか知らない。

「こんにちはカルマさん、美桜さんから話を聞きましたよ。僕らも微力ながらお力になりたいのですが、どうですか?」

 蓮君を先頭に、勇者パーティーが勢揃いで現れた。

「やあ蓮君。それは助かるけど……久遠さんや藤堂さんはいいのか?」

「……ソフィアがどうしてもって言うんだからしょうがないじゃない……!あんたの為じゃないわよっ!……でもあんたが死んだら寝覚めが悪いから、護衛くらいしてあげるわよ……」

 久遠さんはなぜか顔を赤くして、腕を組みそっぽを向きながらそう口にした。ツンデレか?ツンデレなのか?
 ていうかソフィアっていつの間に呼び捨てにする程仲良くなったんだ?
 その横から藤堂さんが一歩踏み出し、前触れもなく俺に向けて頭を下げた。

「カルマさん、その節はすみませんでした。それに毒によって狂わされていた私達を救っていただき、ありがとうございました。カルマさんは私達の命の恩人です。ずっと感謝と、謝罪をしなければと思っていましたが……気持ちの整理がつかず、遅くなってしまって申し訳ありません」

「あ……私も……その、ありがと……それとごめんなさい」

 藤堂さんはきっちり頭を下げ、久遠さんは口頭だけでの感謝と謝罪。対照的な二人の態度だが、少しだけ伏せた久遠さんの目には、後悔の色が浮かんでいた。

「頭を上げて欲しい。追放されたことに恨みはないし謝罪は必要ないよ。感謝だけは受け取っておくから、これからはあんまり軽蔑しないで欲しいかな……あはは」

 藤堂さんが顔を上げてくれたところで、改めて蓮君に視線を向ける。

「それで、俺の護衛をしてくれるってことでいいのかな?」

「ええ、テオもイルナも納得してくれてます。僕ら五人も護衛につきますよ。報酬もいりませんからね」

 蓮君は拳を俺に向け突き出してきた。少々照れくさいが俺も拳を握りコツンと当てる。すると藤堂さんや、久遠さんまで拳を出してきた。

 ――ええ……?君達もするの?

 予想以上に心を許してくれているみたいだ。二人とも拳を合わせ、ついでにテオ君とイルナちゃんともコツンと拳を当てておいた。仲間外れは良くない。

 今日は準備に専念して、明日の朝に出発することで話がついたが、まだ一つ行かなければいけないところがある。
 俺達は手紙に書かれていた奴隷商のジャクソンを探す。安く治安の悪い酒場でガラの悪い奴らを無視しつつ人探しをすると、割とすぐに目的の人物を見つけることができた。

 別の酒場に移動し、端っこに座る男――奴隷商のジャクソンに話しかける。俺の名前を出すと、ジャクソンは一ヶ所だけ印の付いた地図を見せた。

「そこに行くようにだけ聞いている。その印の場所には洞窟があるらしい。そこに入れとさ……」

 奴隷商のジャクソンはそれだけを言い残し、足早に俺達の前から姿を消した。伝言しか役目がなく、俺達と長く接触するのも忌避しているようだ。

「カルマさん、僕らは前にその洞窟を見たことがあるので案内出来ますよ」

「でも蓮……あそこは洞窟の中も探索したけど、なにもなかったよね?」

 なるほど、蓮君達は一度洞窟を訪れて探索も済んでいるようだ。しかし……

「洞窟はいわば、待ち合わせ場所の目印だな。おそらく洞窟が見える近くの木の上とかで監視してるんじゃないか?」

「なるほど、確かに鬱蒼と生い茂る木々の真ん中を指示したところで、そこがどこかわからないですもんね」

「そうだな、じゃあ今後の予定だが……」

 俺達は一度解散し、それぞれ準備に勤しむことにした。もはや御用達と言っても過言ではないジョセフ商会へ行き、ロープや鞭、ローターとバイブも補充しておく。
 使うかどうかわからないけど、とりあえず腕輪の中にぶち込んでおく。同時に保存食やパンなども買っておく。時間停止機能はないけれど二、三日程度ならパンも大丈夫だろう。

 最後に一本の短い短剣……いやナイフくらいの片刃の剣を購入した。もしもの時はこれで自分を切りつけるつもりだ。
 戦闘で鮮血の爪紅を使うときは、軽く切りつけて血が出た方が使い勝手がいいからな。もちろん先頭に立って戦うつもりはないぞ。あくまでもしもの時の備えだ。


 ◇


 そして翌朝、俺達は揃ってエスタの街を後にする。魔の森に入ってからは先頭を勇者パーティーが務める。
 一番前に近接戦闘の蓮君と盾役のテオ君。続いて迎撃に藤堂さん、魔法攻撃の久遠さん、回復と補助にイルナちゃんだ。

 集団の中央に俺、右にマリー、左にグレース。俺達は護衛される側ではあるが、マリーとグレースは俺の護衛をする気満々だ。そこまで俺は弱いと思われているのだろうか……。
 殿しんがりには龍の尾のエリシュア、シュゼット、オリビアが後方からの接敵に備えて付いてくれている。

「見えましたよ、あれが地図の印にあった洞窟です」

 魔の森を歩くこと、およそ三時間程。十分に一度くらいのペースで魔物と戦闘をしながらも、全員無傷で辿り着くことが出来た。
 しかし予想に反して、洞窟の前には女性が一人佇んでいた。周囲を警戒しつつも蓮君とテオ君を先頭に近づいていく。
 俺も油断せずに解析を掛けながら、隊列を崩さないようについていく。

「お待ちしておりました。私はレイナと申します。皆さんを集落まで案内するように言い付かっております。洞窟の中へと参りますので、後をついてきてくださいませ」

 レイナ……まさかジェシカに優しくしてくれたという子と真っ先に会うことになるとは……いや、彼女を案内役にすることで俺の警戒心を薄れさせる作戦か?
 俺がジェシカからレイナのことを聞き、レイナに対して良い印象を持ってないと成立しないが……その可能性を見越して彼女を案内に寄越したのだろうか。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

レイナ Lv45 16歳 夢魔族

B83 W57 H89 経験人数0人

スキル 剣術・媚薬生成・水魔法・火魔法・転移魔法

称号 オナニー中毒者

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

 レイナの後を付いていく。洞窟は待ち合わせの目印という予想はハズレたようだが、蓮君は中には何もないと言っていた。何か仕掛けがあるのか、あるいは罠か。
 久遠さんとマリーが、光魔法で光りの玉を浮かべてくれたので視界は良好だ。レイナはスルスルと洞窟を進み、辿り着いたのは広いホールのような空間だった。

「ここは……僕らも来たことがあるけど……なにもなかったよね?」

「なにもなかったっすよ!壁も全部調べましたからね!」

 蓮君とテオ君の会話を余所に、レイナさんは壁に向かって歩きだした。

「ここは幻惑魔法で偽装されていますから……こちらです」

 レイナさんが壁に向けて手を伸ばすと、何の抵抗もなく手や腕が壁を通過した。

 ――は!?

「壁に見えているだけで、壁はない……ということか」

「でも俺達は前に来た時に、壁も触って調べたんだぜ!?」

 俺の呟きは耳聡く拾われたが……これはおそらく……

「ザンドラと同じ……認識を誤魔化した。触っていないけれど触ったように認識させた。或いは結界で洞窟の壁を再現しその上から幻惑を掛けたか……」

 いや、岩の肌触りを結界で再現できないと意味がないかな。

「前者で正解です。幻惑魔法は遠巻きには視覚を、幻惑魔法に触れれば触覚にも作用することが可能です。今は来客ということで、弱めて頂いていますので、見た目だけですよ。さあこの先が集落です」

 新しい情報に困惑する俺達を待たずに、レイナは歩を進めた。そして俺達は夢魔族の集落……隠れ里へと足を踏み入れる。 

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