異世界性生活!!~巻き込まれ召喚された勇者のスキルが変態すぎた~

秋津紅音

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二章 温泉の街ハイクベレイ

十九話 星空の下で混浴 三日目

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「……知ってる天井なんだよなぁ」

「カルマ様!」

「カルマ!」

 目を覚ますとあれだけ苦しかった眩暈も頭痛も吐き気も、嘘のように無くなっていた。俺が寝かされているのはシャーロット様とソフィアの部屋であるロイヤルスイートのベッドだな。この天井は見たことある。

 目を覚ましてすぐさま左右からマリーとソフィアが顔を覗き込んでくる。二人揃って涙目で微笑む。心配してくれたことに心が温かくなる。

 短剣が貫通していた右手を見ると傷は綺麗に塞がっていた。まるで最初から傷なんてなかったようで少し悲しくなったのはあれだな。名誉の負傷が消えてしまったからだろう。

 しかし、俺は人を殺したんだよな。あんまり後悔とか罪悪感がないのは、殺されそうになったからかもしれない。人を殺したいとは思わないから殺しの快楽に目覚めたりはしていないようだ。

 ぼんやりとした思考の中で、ふと窓の外を見るとすっかり夜の帳が下りていた。は?

「……なあ、俺はどのくらい寝てた?」

 体を起こしマリーに尋ねる。

「十五時間程でしょうか。今は街の衛兵の方々が宿と宿の周辺の警護をしてくれていますので安心してくださいね」

 マリーから俺が眠っていた間の出来事を聞く。幸いこちらに死者はいなかった。負傷者も全員治療済み。襲撃者の目的はおそらくソフィアだったようだ。おそらくというのは襲撃者が全員死亡している為、尋問などで確認が取れないから。しかしシャーロット様の前に現れた襲撃者は、「ここはハズレ」という言葉を残していて、俺達のところに現れた襲撃者は「目標発見」と言っていた。更に窓から侵入した襲撃者は明確にソフィアを狙っていたことからソフィアが目標だったのだろうという結論になった。

 殺害予告もない暗殺未遂の為、理由も推測だがおそらく子爵か男爵辺りの貴族が雇った暗殺者集団だろうとのこと。襲撃者の隠れ家もわからないこの状態では調べようもないらしいが。

「貴族が皇族を殺そうとしたのか……?」

 それって反逆、クーデターになるんじゃ……俺の呟きに答えたのはソフィアだった。

「グレイベル皇国は男女平等主義、政治力、カリスマ性が優れていればお母様のように女皇、つまり女性がトップにもなれる国よ。昔は皇王陛下がいたけれど、お婆様とお母様の二代に渡って女皇陛下が国を率いてきた。そして女性が頂点に君臨するのをよく思わない貴族の鬱憤が、もう何十年も溜まっているわ。そしてお母様の子は三姉妹なの。つまり次期皇王も……」

「じゃあソフィアだけじゃなく……」

「ええ、私達姉妹全員が数年に一度くらい襲撃や暗殺を仕掛けられているわ。でもここまで大きな襲撃は初めてだったの……ごめんなさい!私の所為でカルマが……あんなに酷い怪我を……うぅ……」

 話の途中から涙を溜め、遂には泣き出してしまうソフィア。そっと抱き寄せ頭を撫でる。

「気にしなくていい。ソフィアは怪我してないか?無事で良かったよ」

「ひっく……ごめんなさい……ごめんなさい……守ってくれてありがとうカルマァ……」

 本当に守れて良かった。俺はソフィアが落ち着くまで頭を撫で背中をさすり続けた。

 暫くすると安心感からか泣きつかれて眠ってしまったソフィアをベッドに寝かせ、マリーも襲撃の時からずっと起きているそうなので、もう大丈夫だと添い寝して寝かしつけてあげる。

 時刻は深夜に差し掛かり、襲撃時から起きていた俺達の面々は全員眠りについた頃。一日中寝ていた俺は全っ然眠れそうにない。

 なのでロイヤルスイートルームの露天風呂にやってきた。風呂場には小さなランタンが数個設置され、明るすぎず暗すぎないようにされていた。流石はロイヤルスイート、何時でも入れると豪語するだけはある。

 今回浸かるのは大理石のように光沢のある、綺麗に切られた石組みの露天風呂。プールのような大きさの風呂に、肩まで浸かり夜空を仰ぐ。この時間は街灯くらいしか光のないこの世界と、薄明かりの露天風呂の上には満点の星空が広がっていた。

「ぁあーーー!……最高だな――」

 星を眺めながら誰もいない露天風呂で呟く。

「――なあ、そう思わないか?魔王」

 今、俺を見ている確信なんてなにもない。けれど、きっとこの声は届くだろう。

「――イヴじゃ。わらわのことはそう呼ぶが良い」

 ほらな。俺の横……と言っても4mくらい離れた位置に、漆黒の渦が現れる。そこからスケスケの黒のネグリジェ姿の魔王が顔を出す。お前は貞〇か。あ、ごめん睨まないで、死んじゃうから。もうHP減少は始まってるから!!でもスケスケのネグリジェ最高です、ありがとうございます!

「イヴ、助けてくれてありがとうな」

 あの漆黒の杭。実は俺の目の前にいた奴らだけじゃなく、あの時点で生きていた襲撃者全員が、心臓部に杭が現れ死亡していたそうだ。そんなこと出来るのは俺は一人しか知らないな。

「構わぬ。ただの気まぐれじゃ」

 俺との距離はおよそ4m、イヴはそのまま湯に浸かり、さっきまでの俺と同じく夜空を仰いだ。お客様!着衣風呂は困ります!あーっ!いけません!

 冗談はさておき……ただでさえスケスケのネグリジェがお湯を吸い、イヴの肌に張り付く。マリーを超えるその驚異的な胸や腰のクビレ、お尻の丸みまではっきりわかってしまう。あんなに胸が大きいのに乳首と乳輪は小さくて綺麗なピンクなんだな……

「ふふっ、なにやら熱い視線を感じるのう……♡」

「す、すまん。余りに綺麗だったからつい」

「ふっふっふっ♡お主は本当に女子に目がないのう」

「俺のこともカルマって呼んでくれよイヴ」

「カ、カルマ……少し話をしようかの」

 少しだけ頬を赤らめたイヴ。もうのぼせたのか?

「そうだな、俺のHPが三分の一になるくらいまでにしてくれよ?」

「勿論じゃ、殺す気などないからの。四分の一になったらわらわは去るのじゃ」

 どうやら交渉の余地はないらしい。

「まぁいいけど……話ってなんだ?」

「お主……んっんっ、カルマにはわらわの力を授けたと言ったのう。わらわの力とは、即ちわらわの持つ種族としての力でもある。わらわの中にはサキュバスの他にも、大鬼と吸血鬼の血も流れておる。カルマがあの時目覚めたスキルは、吸血鬼のスキルじゃな」

「吸血鬼……じゃあ……」

「うむ、それに大鬼は怪力と頑丈さが取柄の種族。カルマのステータスの耐久力はその辺りが関係しているやもしれんな」

 なるほどな……異常に耐久のステータスが伸びているのは確かに関係してそうだ。

「それともう一つ教えておいてやろう。これは神とわらわくらいしか知らんことじゃから、むやみに言いふらさぬように気を付けよ。カルマの家族や仲間くらいまでなら構わんがな」

「……随分もったいぶるな。まぁむやみやたらに言いふらすつもりはないけどさ」

「悪神の話の続きじゃがな。悪神はいたずらに魔物を作り魔力やスキルや称号を作り出したと言ったの?」

「あぁ、そういう話だったな」

「しかし、なんの対価もなく力が授けられるはずもないのじゃよ。悪神は性欲を対価に力を授けるように世界を作り替えたのじゃ」

 性欲?男の性欲が弱く、女性の性欲が強いというこの世界の法則が関係するのか?

「……は?性欲?男の性欲が弱いのはわかるけど、じゃあ女性は?差し出してると言えるのか?」

「一緒じゃよ。性欲を意図的に書き換えられるという対価じゃ。そして強い能力を持つ者ほど、支払う対価も強くなる」

「つまり強い能力を持つ男はより性欲が弱くなり、強い能力を持つ女はより性欲が強くなる……と?」

「そういうことじゃな。それと、これもこの前は時間がなく伝えてやれなんだが、悪神である第二の神は既に消滅しておるよ」

「はぁ!?じゃあなんで勇者が召喚されて魔王も生まれ続けているんだ!?」

「五十年前に召喚された勇者がの、『世界の根源』まで辿りついたのじゃ。そしてそれに触れた。神が代替わりし勇者が神になり悪神は消滅したのじゃ……しかし、それで世界が救われることはなかった。物語はハッピーエンドにはならなんだのじゃ」

「何が……」

「悪神の改変した『世界の根源』はもうどうにも変えられなんだ。世界には魔物が溢れ、魔王が存在し、人々はスキルに頼り、魔物から取れる魔石を日常的に使用している。神が『世界の根源』で干渉出来るのは生命の誕生するまでじゃ。生まれた後に干渉は出来ん。仮に『世界の根源』を変更したとして、急に魔物が生まれ無くなって、スキルもステータスもない世界に変わったら……どうなるじゃろうな」

 世界からスキルやステータスや魔石が消える……日本とは違うこの世界では原始時代に逆戻りだな。それこそ限りある魔石を奪い合う戦争になるだろう。新たに生まれた人は、レベルを上げている人には絶対に勝てないだろう。

 俺の険しい表情から俺の思考を察したのだろう。

「そう、世界はもう後戻りも出来ない状態なのじゃ……」

 すっとイヴが立ち上がる。ステータスを見れば俺のHPは既に半分以下になっていた。

「それと最後にわらわからカルマに助言じゃ」

「……なんだよ?厄介事か?」

 真面目な話なのに、立ち上がったイヴの体に張り付くネグリジェから目が離せない。今すぐ押し倒してちんぽをぶち込みたくなるが、多分ぶち込む前に死ぬ。今の俺は4m離れた距離で数分話すのが精いっぱいなんだな。なのに俺の息子さんはお構いなく腹に張り付くほど怒張している。お前空気読めよ!!

 そんな俺の股間をニヨニヨしながら見つめるイヴ。なに笑っとんねん!お前の所為やぞ!

「んっんっ……異世界から召喚された勇者は強力なスキルを得る。つまり性欲もその分大きく振れる。新しく召喚された勇者の話は知っておるじゃろう?」

「あぁ……話は聞いている。辺境に来ているらしいな。辺境伯や冒険者仲間が調べといてくれるらしいが」

「お主が戻れば出会うことになるじゃろう。救ってやるがよい。あの女を救えるのはお主しかおらん故な」

 あの女ね……意味深な言葉を残してイヴは俺に背を向け湯船から上がる。今日初めて見えたスケスケネグリジェの張り付く尻に視線が行って今の話に集中できない。イヴはその場で立ち止まりその先に漆黒の渦を出す。

「ではの。また会おう」

 最後に振り返りながらいつもの言葉を残して去って行った。格好つけやがって……でもひとつだけ、いやふたつだけ言わせてほしい。

「えっっっろいんだよ!!!あと俺のHPが五分の一まで減ってるんだけど!!?」

 俺は簡易表示にしているステータスウインドウを横目に見ながらそう叫んだ。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

カルマ Lv65

HP 3240/18650
MP  625/  625

◇◆◇◆◇◆◇◆◇
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