異世界性生活!!~巻き込まれ召喚された勇者のスキルが変態すぎた~

秋津紅音

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二章 温泉の街ハイクベレイ

七話 勇者召喚

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◇ 蓮side

 カルマが辺境伯に挨拶をしている丁度その頃、アルフリード王国の王都にある王城の中庭には、姫と勇者達三人と複数の騎士が待機していた。そこには灰色の魔法陣がありそれは彼ら勇者が現れた場所でもある。

「神託だともうすぐなんだよね?どんな人が来るのかな……怖い人じゃないといいなぁ」

 そんな中で呑気な空気で話すのは久遠紗希くどう さきだ。鎖骨まである焦げ茶色のストレートヘアーは毛先だけ内側にハネていて、幼くも可愛らしい顔によく似合っている。

「そうだな、勇者召喚なんだから悪人ではないと思うけど……」

 そう答えるのは剣道部らしい耳や眉毛が隠れないようにカットされた黒髪ショートヘアーの青年来栖蓮くるす れん。蓮はふと、あの日一緒に召喚された青年を思い出す。女性陣、特にアリシア姫や紗希が猛反対し追放という処分にされた青年。

 確かにあのスキルや称号は彼女持ちとして心穏やかにはいられなかったが、追放までするのはやり過ぎではないかと思う。

 ステータスを表示する魔道具で名前を見たはずだが、その後の剣や魔法の訓練に、魔物との戦闘、仲間の死を経て今はもう名前すら思い出せない過去の人となったあの青年。しかし、今の自分たちの力を見れば、やはり仲間としてやってはいけなかっただろうとも思う。

「……戦いに役立つ人なら、どんな人でもいいわ。私は二人が傷つくところを見たくないから」

 蓮の思考を妨げるように言葉を続けたのは藤堂葵とうどう あおいだ。凛とした空気を身に纏う大和撫子という言葉がよく似合う麗人。長く艶のある黒髪は後頭部の高い位置でポニーテールにし、庭に吹く風にさらさらとそよいでいる。

 その時、魔法陣が赤く光り出し、その場にいる全員の視線が魔法陣に向く。

 途轍もない量の魔力が魔法陣から溢れ、魔法陣の向こう側の景色が蜃気楼のようにゆらめく。余りの高濃度の魔力に恐ろしさすら感じる。

「……これが勇者召喚なのか」

 蓮は思わず呟く。神による勇者の召喚と聞いた、ならばこれは神の魔力なのだろうか。この途轍もない量と密度の魔力が神の力なのだろうか。

 赤い光が一際強く輝き、直視できずに目を瞑る。数秒の後視線を下げながら薄っすら目を開けてみると光は収まり灰色になった魔法陣が見えた。そこには黄色いTシャツに上下黒のジャージ姿の二十歳くらいの女性が呆然と立ち尽くしていた。



 僕らの時と同じく王城の談話室に移動し、紅茶を飲みながら話をする。僕らからは彼女に異世界に召喚された事、勇者や魔王について、彼女は自分の名前や魔道具でステータスを見せてもらった。

 彼女は橘 美桜たちばな みお21歳、フリーターをしていたらしい。柔らかな笑顔の素敵な黒髪ショートヘアーの可愛らしいお姉さんだった。身長は葵と同じくらいの160cmほどかな。
ちなみに紗希が153cmで僕は165cmだ。18歳で体の成長もほぼ止まった僕はクラスの男子の中で一番背が低かった……

 美桜さんのステータスを魔道具で皆に見せてもらう。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

橘 美桜 Lv1 21歳 人間族

HP 550/550 
MP  80/80

筋力  18
魔力  45 
耐久  15
俊敏  20
運    7

スキル 言語理解・回復魔法・解毒魔法・獲得経験値二倍 

称号 聖女 賢者 治癒の御手みて


聖女 神に選ばれた者の証。回復魔法の効果向上。

賢者 魔法の詠唱を省略することができる。

治癒の御手 自身以外を回復することで経験値を獲得する。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「「「おお~~」」」

「やったね、回復役だね!」

「そうね、私達に足りないものが補えそうね」

「経験値二倍のスキルに聖女に賢者に治癒の御手ってすごいね」

 戦闘向きではないが、三人とも戦闘しかできない高校生組には、喉から手が出るほど欲しかった人材に歓声を上げる。

「あ、あの……私はお邪魔になりませんか……?」

 おどおどとした態度ながら透き通るような美声に紗希が身を乗り出しながら答える。

「邪魔だなんて全然!!ぜひ私達の仲間になってほしいですよ!」

「あ、ありがとうございます……皆さん優しそうな人達でよかったです」

「改めて、僕は来栖蓮。気軽に蓮と呼んでください。僕も美桜さんと呼んでもいいですか?」

「先程の話では魔物や魔王と戦ったりするのですよね?」

「ええ、その仲間になってほしいと思っています」

「なら、名前は下の名前を呼び捨てにしませんか?指示をしたりするときは短い方が素早くできますよね?」

 その言葉に紗希が食いつく。

「意外と美桜さんRPGとかネットゲーとか得意です?あ、私は久遠紗希!私のことは紗希って呼んでください!」

「ええ、多少はそういうゲームもしたことがあります。そちらの方は……」

「私は藤堂葵と言います。私も葵で構いません」

「みなさんよろしくお願いします。それに折角呼び捨てにするならタメ口で話すのはどうかしら?」

「いいの?お姉さんなのに」

「ええ、そんなに変わらないし一人だけタメ口じゃないなんて仲間外れみたいじゃない?」

 ちょっと悲しそうな顔で微笑む美桜に、紗希は思わず抱き着きながら「じゃあ美桜も今日から仲間だね」と嬉しそうに笑った。葵も嬉しそうな顔で微笑んでいる。うん、みんな受け入れられそうでよかったな。

◇ 美桜side

 それからアリシア姫様とグレイブ王様との挨拶の後、蓮達と一緒に夕食を頂いてみんなの今後の予定を聞いた。

 私は戦闘に向かないけれど回復魔法でレベルが上がるなら一緒に辺境へ行き、しばらくはレベルとステータスの様子を見ながら教会などの治療院でレベル上げをすることを進められた。

 その間蓮達は辺境の先にある魔の森というところで魔物を狩りレベル上げをするそうだ。私が一緒に冒険出来るようになったら一緒に魔物狩りに来て欲しいと言われた。

 自身に宛がわれた部屋に入り一人になった私は着替えをする。部屋には光を発する魔道具もあり、使い方は先ほどステータスを見たときを同じく魔力を流すそうだ。薄明るくなるくらいに留めて用意された服に手をかける。

 この世界の貴族が使用する寝間着ネグリジェと上質な布の衣服が置かれていたので寝間着に着替える。脱いだジャージは大切に保管しておこう。もう手に入らないかもしれないし。

 この部屋には全身を映す鏡があった。全裸で鏡の前に立つ。張りのあるDカップの胸にぷるんと丸いお尻。綺麗に剃り整えた陰毛。全身どこにもシミ一つない、いつもの私の体だ。ずっとずっと手入れしてきた私の体のままだった。

 寝間着を着てベッドに腰かけ、自分の手を見つめる。私の体の中に血が流れるように魔力が巡っているのを感じる。

 手のひらに魔力が集まるイメージをしてみる。少しだけ魔力の流れが速くなった気がするけど集まってはいない。

 今度は魔力の流れを速くするイメージと手に巡ってきた魔力をせき止めるイメージをすると、魔力が溜まり手がほんのり白く光り出した。行き場がなくなった魔力が溢れてるのかな。

「私が……聖女……?」

 せき止めるイメージをやめると魔力が再び巡り白い光は収まった。

「こんなに汚れ切った私が聖女なわけないのに……」

 視線を窓の外に向け、私はみんなに嘘をついたことを悔やむ。でも言えるわけない。幸いあの子たちはまだ若く、私を知っている人もいなかった。ならやり直せるかもしれない。私は私の人生をもう一度やり直せるかもしれない。フリーターというのはとっさについた嘘だ、本当は……

「言えるわけないよ……AV女優でしたなんて……」

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