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一章 辺境の街の女達
二話 辺境の街
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◇
「それでカルマ君はこれから冒険者になるんかい?」
門を越えたところで商人のおじさん――推定45歳――が話しかけてくる。
護衛の冒険者のおっさん三人も、興味深げに見つめてくる。
「まぁ俺は王都から追放されたようなものですから、商人よりは冒険者になるべきなんでしょうけど……」
王都には近づかない方がいいだろうしな……俺はちらっと冒険者のおっさんに視線を送る。
「でもお前さんは戦えないんだろう?冒険者は護衛に素材採集に魔物討伐……腕に覚えがなきゃ務まらんぞ」
「そうなんですけどねぇ……どうしましょうね。登録だけして他の仕事探すとか?」
「まぁその辺はギルドで相談してみな。冒険者は自由な職業だからな。変わったことやってる奴もたまにいるしな」
話しながらも馬車はゆっくりと商人さんの店に向けて動き続ける。ちなみに俺は門でチェックされたときから馬車から降りて歩いている。
もう街の中だから魔物もいないし安全だろう。
それにこれから俺が住むのだから興味があるし、中世っぽい街並みは見ていて飽きない。
「店まで着いたら俺らの仕事も終わりだし、一緒にギルドに行ってみっか」
「はい。お願いしますね」
◇
20分ほど歩き商人さんの店へ行く。街には街商人と行商人と二種類の商人がいる。その街で作られた物や作物を扱う商人と、他所の街から買ってきたものを売る商人。魔物に襲われる危険性や護衛を雇う分、他の街にも店を持っているとか、行商中の店を開ける人とか必要なものが多く、敷居は高いが利益も多いので大商会や中商会がするそうだ。街商人は個人営業の店で、農家や鍛冶師から買い取ったものを売る。小さなスーパーマーケットと、デパートみたいな差なのかもしれない。
「ではカルマさん、なにかご入用でしたらぜひ、うちの商会でお買い求めください」
「お世話になりました。ではまた機会がありましたら……」
流石商人。こんな辺境送りの現状身元不明のニートにも商魂たくましいことで……。
商人さんに別れを告げ冒険者ギルドに向かう。ちなみに商人さんの名前はジョセフさんらしい。ありきたりな名前でどこにでも居そうだ。石畳の街並みを歩く。辺境の街はまるでヨーロッパの古い町並みのようで、これぞ異世界!って感じに心が躍る。
「おっ、あのでっけぇ建物が冒険者ギルドだぞ」
しばらく歩くと石造りの土台の上に木造が組み合わさった大きな建物が見えてくる。大通りに面しているが、横幅だけで隣の一軒家の店の五倍くらいあるな。ここからでは見えないが、当然奥行きも三倍くらいあるのだろう。建物の高さと窓からおそらく三階建てなのだろうと目星を付ける。周りが平屋や二階建てばかりなので、それなりに目立つ。わかりやすいのは助かるな。
「んじゃ俺らは数日休んでまた護衛依頼かなんか受けて王都に行くからな。元気でやれよ」
「はい。お世話になりました。お元気で!」
ギルドの入り口で別れの挨拶を済ます。おっさんだがいいおっさんだったな。おっさん達は一人が受付へ向かい、二人が併設されている酒場へと向かっていった。俺もおっさん達に旅の間に色々聞いていた、まずは受付で冒険者登録だ。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付はピンクの髪を鎖骨のあたりで切りそろえた爆乳の美人で、濃いグレーのフォーマルスーツに近い感じの制服だ。カウンターが邪魔で下半身は見えないが、フリル付きの白いブラウスを押し上げる爆乳が眩しいお姉さんだった。白い生地の服が真っ白ではないのは、この世界の技術力といったところだろう。少し黄ばんでいるが不潔感はない。
「……あの~?お客様?」
しまった。あまりの乳の暴力に、言葉を失い見惚れてしまった。
「失礼しました、あまりの美しさに見とれてしまいました。冒険者登録と仕事の相談をしたいのですが……」
「うふふ……♡ありがとうございます。お上手ですね。では登録はこちらの魔道具を使います。登録料で銀貨1枚必要ですが大丈夫でしょうか?」
「はい。大丈夫です」
そして出てきたのは1枚のタブレットのようなもの。左端の手前に丸い水晶のようなものがあり、その奥に四角いくぼみがある。窪みと水晶の右側のほとんどはi〇adの画面ようだ。ここまで透明なガラスなんてあるんだなと感心させられる。
「こちらの窪みに未登録の冒険者登録証をはめます、左手を丸い水晶に置いて貰えますか?」
冒険者証はドッグタグ状のネックレスで、そのタグに冒険者としての情報などが記録されるそうだ。
「はい……げっ!」
言われるがまま手を置くと右側の画面に名前やLv、ステータスが表示された。勿論スキルや称号も。スキルや称号も!!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カルマ Lv1 18歳
HP 800/800
MP 28/30
筋力 15
魔力 10
耐久 35
俊敏 28
運 8
スキル 言語理解・生殖器強化Lv1
称号 女の敵 性獣 巻き込まれ勇者
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あ、MPが減ってる。魔道具使ったからかなー。俺は受付嬢さんから視線を逸らし、遠い目をして現実からも目を逸らした。
「「………………」」
「……お姉さん」
「……はい」
「……内密にお願いします」
「……奥で詳しいお話を聞かせてもらいましょうか♡」
やっべぇ。逮捕?タイーホされたりすんの!?犯罪はしてないよ!?犯罪的なスキルや称号ですけどね!!
「……わかりました」
そして俺は、ギルドの奥の個室へと連れていかれるのだった。
「それでカルマ君はこれから冒険者になるんかい?」
門を越えたところで商人のおじさん――推定45歳――が話しかけてくる。
護衛の冒険者のおっさん三人も、興味深げに見つめてくる。
「まぁ俺は王都から追放されたようなものですから、商人よりは冒険者になるべきなんでしょうけど……」
王都には近づかない方がいいだろうしな……俺はちらっと冒険者のおっさんに視線を送る。
「でもお前さんは戦えないんだろう?冒険者は護衛に素材採集に魔物討伐……腕に覚えがなきゃ務まらんぞ」
「そうなんですけどねぇ……どうしましょうね。登録だけして他の仕事探すとか?」
「まぁその辺はギルドで相談してみな。冒険者は自由な職業だからな。変わったことやってる奴もたまにいるしな」
話しながらも馬車はゆっくりと商人さんの店に向けて動き続ける。ちなみに俺は門でチェックされたときから馬車から降りて歩いている。
もう街の中だから魔物もいないし安全だろう。
それにこれから俺が住むのだから興味があるし、中世っぽい街並みは見ていて飽きない。
「店まで着いたら俺らの仕事も終わりだし、一緒にギルドに行ってみっか」
「はい。お願いしますね」
◇
20分ほど歩き商人さんの店へ行く。街には街商人と行商人と二種類の商人がいる。その街で作られた物や作物を扱う商人と、他所の街から買ってきたものを売る商人。魔物に襲われる危険性や護衛を雇う分、他の街にも店を持っているとか、行商中の店を開ける人とか必要なものが多く、敷居は高いが利益も多いので大商会や中商会がするそうだ。街商人は個人営業の店で、農家や鍛冶師から買い取ったものを売る。小さなスーパーマーケットと、デパートみたいな差なのかもしれない。
「ではカルマさん、なにかご入用でしたらぜひ、うちの商会でお買い求めください」
「お世話になりました。ではまた機会がありましたら……」
流石商人。こんな辺境送りの現状身元不明のニートにも商魂たくましいことで……。
商人さんに別れを告げ冒険者ギルドに向かう。ちなみに商人さんの名前はジョセフさんらしい。ありきたりな名前でどこにでも居そうだ。石畳の街並みを歩く。辺境の街はまるでヨーロッパの古い町並みのようで、これぞ異世界!って感じに心が躍る。
「おっ、あのでっけぇ建物が冒険者ギルドだぞ」
しばらく歩くと石造りの土台の上に木造が組み合わさった大きな建物が見えてくる。大通りに面しているが、横幅だけで隣の一軒家の店の五倍くらいあるな。ここからでは見えないが、当然奥行きも三倍くらいあるのだろう。建物の高さと窓からおそらく三階建てなのだろうと目星を付ける。周りが平屋や二階建てばかりなので、それなりに目立つ。わかりやすいのは助かるな。
「んじゃ俺らは数日休んでまた護衛依頼かなんか受けて王都に行くからな。元気でやれよ」
「はい。お世話になりました。お元気で!」
ギルドの入り口で別れの挨拶を済ます。おっさんだがいいおっさんだったな。おっさん達は一人が受付へ向かい、二人が併設されている酒場へと向かっていった。俺もおっさん達に旅の間に色々聞いていた、まずは受付で冒険者登録だ。
「いらっしゃいませ。本日はどのようなご用件でしょうか?」
受付はピンクの髪を鎖骨のあたりで切りそろえた爆乳の美人で、濃いグレーのフォーマルスーツに近い感じの制服だ。カウンターが邪魔で下半身は見えないが、フリル付きの白いブラウスを押し上げる爆乳が眩しいお姉さんだった。白い生地の服が真っ白ではないのは、この世界の技術力といったところだろう。少し黄ばんでいるが不潔感はない。
「……あの~?お客様?」
しまった。あまりの乳の暴力に、言葉を失い見惚れてしまった。
「失礼しました、あまりの美しさに見とれてしまいました。冒険者登録と仕事の相談をしたいのですが……」
「うふふ……♡ありがとうございます。お上手ですね。では登録はこちらの魔道具を使います。登録料で銀貨1枚必要ですが大丈夫でしょうか?」
「はい。大丈夫です」
そして出てきたのは1枚のタブレットのようなもの。左端の手前に丸い水晶のようなものがあり、その奥に四角いくぼみがある。窪みと水晶の右側のほとんどはi〇adの画面ようだ。ここまで透明なガラスなんてあるんだなと感心させられる。
「こちらの窪みに未登録の冒険者登録証をはめます、左手を丸い水晶に置いて貰えますか?」
冒険者証はドッグタグ状のネックレスで、そのタグに冒険者としての情報などが記録されるそうだ。
「はい……げっ!」
言われるがまま手を置くと右側の画面に名前やLv、ステータスが表示された。勿論スキルや称号も。スキルや称号も!!!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
カルマ Lv1 18歳
HP 800/800
MP 28/30
筋力 15
魔力 10
耐久 35
俊敏 28
運 8
スキル 言語理解・生殖器強化Lv1
称号 女の敵 性獣 巻き込まれ勇者
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
あ、MPが減ってる。魔道具使ったからかなー。俺は受付嬢さんから視線を逸らし、遠い目をして現実からも目を逸らした。
「「………………」」
「……お姉さん」
「……はい」
「……内密にお願いします」
「……奥で詳しいお話を聞かせてもらいましょうか♡」
やっべぇ。逮捕?タイーホされたりすんの!?犯罪はしてないよ!?犯罪的なスキルや称号ですけどね!!
「……わかりました」
そして俺は、ギルドの奥の個室へと連れていかれるのだった。
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