61 / 79
第二部 五章
いつまでも慕う 5
しおりを挟む
(なんで貴族の格好をしてるんだ……?)
一人一人の顔ははっきりと見えないが、こちらの不注意でぶつかってしまった男の顔もあった。
それ以外の者は城門や図書室、王族の部屋の前といった厳重な扉を守っている騎士だった。
「レティシア」
すると、ライアンの低く厳かな声が広間に響いた。
「は、はい……!」
愛しい者に名を呼ばれたことで少し正気に戻ったのか、それまで拘束から逃れようともがいていたレティシアは動きを止め、新緑の瞳を煌めかせる。
「お前はたった今から第二王妃ではない」
しかしライアンは階段の上に視線を向けず、冷たい声音で言い放った。
それは王族としての地位を捨てろ、と言っているも同然だった。
「な、っ……なぜですか!? 陛下、私は貴方様のために」
「私がいつ、王配を暗殺しろと頼んだ? いつ、王太子に新しく妃を娶れと勧めた?」
聞くに堪えない、という感情を一切隠さずにライアンは虫を見るような瞳をレティシアに向ける。
「そ、れ……は、っ」
己に向けられた言葉の意味や、ライアンの侮蔑を含んだ視線の意味が分からない、といったふうに目を見開いている。
床に突いている手がぷるぷると震え、しかしレティシアはライアンだけをじっと見下ろしていた。
広間の人間らはもちろん、エルの視線すらも見えていないようだった。
口を開いては閉じてを繰り返しているレティシアから視線を外し、ライアンは吐き捨てる。
「──すべて私に相談せず、お前が独断で決めた事だろう。実の姪まで使った挙句、少しも関係のない者を巻き込んだ罪は重い」
「ちが、う……んです、陛下。……ライ、アン……様、私は」
何度も『違う』『話を聞いて』と言いながら、既に乱れている髪が更に乱れるのも構わず、ぐしゃぐしゃと掻き回す。
レティシアと初めて会った時は綺麗だと感じた茶髪が、今では見るも無惨なほど乱れており、艶が無くなっていた。
「お前がした事は、迷惑以外の何物でもない」
名を呼ばれることすら厭わしいというように、ライアンは低い声で言った。
「王配を誰よりも溺愛しているのが見て分からない、私利私欲のために動いたお前の言葉など聞く価値も無い」
そこで言葉を切り、ライアンは目の前で這いつくばっている男に視線を投げ掛けた。
「お前、名はなんと言う?」
「あ、アディル。アディル・レナムドです」
騎士の手によって顔を上げさせられた男──アディルは、ややカサついた唇を動かす。
唇の端が切れており、アディルが口を開く度にじわりと血が滲んでいた。
「そうか、レナムド伯爵。こたびはアレがすまなかったな。拷問にまで掛けてしまい……さぞ痛むだろう」
「いえ、私は……」
ライアンの言葉にアディルは身体を縮こませ、さも恐縮したふうに目線を下げる。
自身のしでかしてしまった事がどれほどのものなのか、やっと自覚したようにも取れた。
「だが、ああでもしないと王太子が暴れてしまうのでな。私はまだ優しい方だ」
「へ、っ……?」
ひくりとアディルの頬が引き攣った。
ライアンがどんな手を使ったのか想像したくないが、それ以上にエルの方が酷いというのは、仮に暗殺未遂であったとしても怒りがどれほどなのか伺えた。
そっとエルを見つめていると視線に気付いたのか、ぐいと強く肩を寄せられた。
こちらを見る事はなかったものの、その瞳は誰よりも冷静にライアンとアディルのやり取りを見ている。
改めてアディルの姿を頭から爪先まで見ると、あまりにも惨い。
(顔は血が出てるし、服も赤くなって汚れてるし……でも歩けるだけマシってやつか)
最悪、瀕死状態になるまで責め立てられるであろう事は想像に難くない。
しかし手足を折られなかっただけ幸いと思え、とライアンが脅しているようにも取れた。
「だが、たとえ未遂であろうと罪は償ってもらう」
「……なんなりとお受け致します」
アディルは深く頭を垂れ、小さく声を絞り出す。
それは己の所業で家の行く末が落ちてしまった、と理解している声音だった。
「まずは伯爵としての地位を剥奪する。……調べたところ、祖父の代から続くそうではないか。仮に再興したとしても、同じ事を繰り返すのは目に見えている」
レナムド伯爵家の歴史は既に調べている、と前置きライアンはゆっくりと唇を開く。
「父だけでなく兄までも酒や賭博に溺れ、たった一人で頑張ってきたのだろう。……ただ、歴史があるからといって再興する価値は無い、と私は思う」
ライアンは憂いを帯びた瞳をアディルに向け、殊更はっきりとした声で言葉を紡いだ。
「身内と共にこの国を追放する」
「っ、……!」
アディルの黒い瞳が見開かれ、騎士に背中を抑えられている二人の使用人の肩がびくりと震えた。
「行き先はレディガムだ」
レディガムは冬、厳しい寒さに見舞われる。
加えて食物はあまり育たず、山に囲まれているためリネスト国に比べて田舎と言ってもいい小さな国だ。
そこに暮らす者は身分など関係なく自身で食物を育て、また手ずから収穫せねばならない。
人によっては終の住処にも取れ、また地獄と同じとも取れる地だった。
「あの地で一生暮らすのだ。……ただの市民として一から生きろ」
ライアンはアディルの前に膝を突き、そっと手を取った。
その手には赤い線が何本も走り、赤くなっているところもあって痛々しい。
「行ってくれるか」
「は、い」
アディルの瞳には涙が溜まり、今にも零れ落ちそうだった。
「……まぁ本来ならば国外追放まではしないのだがな。お前はどうだ」
ライアンは呆れた溜め息と共にエルに視線を向け、問い掛ける。
黙ってアディルを見下ろすエルの瞳は冷たく、あまり感情が見えないものの、ゆっくりと口を開いた。
「……父上のお決めになったことならば、私がとやかく言うことはありません」
ただ、とエルは聞いている者が底冷えするほどの声で言った。
「一度でも私の前に現れてみろ。その時はただじゃおかない」
「ひっ……!」
「──と、いうことだ。命が惜しくなければ、早いうちに家族と共にこの国を発て」
見る間に怯えるアディルに向けてライアンは軽く手を振る仕草をし、退室させるよう促す。
アディルはよろけつつも、ライアンの言葉にすぐさま立ち上がった。
「さぁ」
アディルの左右に居た騎士らは未だ項垂れている二人の使用人を立ち上がらせ、半ば引き摺られるようにしてアディルの後を着いていく。
一人はぶつぶつと何かを言っていたが、アルトの耳に入ることはなかった。
批難や恐怖の混じった貴族らの視線を一身に浴びながら、唐突な来訪者の姿が広間から消える。
「それから」
ふとライアンは何かを思い出したように、ゆっくりと閉まっていく扉に視線を向けたまま唇を動かした。
「──今日がこの場に居られる最後の機会だと思え」
誰に向けられたものなのか名を呼ばずとも、また顔を見ずとも分かる。
「そ、んな……陛下、どうか……お聞きください。わた、しは」
「くどい」
尚も言い募ろうとするレティシア──ただの女の声が、虚しく広間にこだました。
ライアンは背後を一度たりと振り返ることなく、ゆったりとした脚取りで扉に向かう。
その後ろを、側近であるミハルドをはじめとした騎士らが続いていく。
「俺達も行くよ」
「へ、っ」
不意に間近からわずかに低い声が聞こえ、アルトは図らずも小さく声を漏らす。
「もうここに居る意味はない。……気になる?」
やや眉根を寄せてこちらを見下ろすエルは、こんな時だというのに美しいと感じた。
それと同時に、アルトの意思を汲んでくれているのだと察する。
「……い、や。もういい」
床に伏せているレティシアを見ると震えており、とても話せる状況ではない。
仮に話せたとしても、予想外の事を聞いてしまった後では上手く言葉を紡ぐ自信がなかった。
「……そう」
エルの静かな相槌はすぐに床に落ち、ゆっくりと消えていった。
広間を後にすると、ライアンの扇動で執務室に通された。
王太子の執務室に比べると広く、大の大人が十人は入ろうかというほどだ。
ライアンは奥にある椅子に座ると、低い声を落とした。
「──まずは王として、君には謝らなければならない。すまなかった」
ライアンは机に両手を突き、小さく頭を下げた。
「そんな、顔を上げてください……! 俺は、そもそもこうして聞くまで知らなくて、まだびっくりしてて……」
アルトは慌ててライアンに顔を上げるように促す。
初めてしっかりと話した時も思ったが、一国の王がそこまで下手に出るものではないと思う。
そう言いたいが、喉に何かが貼り付いてしまったように次の言葉が続かなかった。
「……先程エルヴィズが言った事はすべて事実だ。それに、君には怖い思いをさせてしまった」
ライアンは悲痛な面持ちを解くことなく、ゆっくりと口を開いた。
聞けばこの一ヶ月は、毎日のように夜になるとアルトの部屋に刺客が放たれていたという。
それはレティシアの息のかかった者で、その度にミハルドやレオンが沈めていた、と。
「……そういえば騒がしいと思ってたけど、あれって人が倒れた音だったのか」
あまり褒められた事ではないと分かっているが、ここひと月の間は夜遅くまで起きていた。
エルが戻ってくるかもしれない、というかすかな望みをかけて読書をして時間を潰していたのだが、時折何か重いものが落ちた音が聞こえていたのだ。
扉の前を守る騎士が持つ剣か、もしくは鎧かと思ったがどうやらまるきり見当違いだったらしい。
「こ、殺してない、よな……?」
まさか己の部屋の前でそんな事が起きているなどとにわかには信じられず、ライアンの傍に佇むミハルドに怖々と尋ねる。
どれほど屈強な人間であってもミハルドやレオンには敵わない、直接やり取りを見た事は無いがアルトの本能がそう告げていた。
「いえ、そこまでは。悪くても昏倒させるくらいです。その後は私かレオンとお話して、丁重にご帰宅頂きました」
アルトの言葉にミハルドはにこりと微笑み、その隣りに立つレオンに『ねぇ』と語り掛ける。
「……ええ。それはもう、穏便に。殿下が自ら手を下した時は、さすがにお止めしましたが」
「え」
続いて放たれたレオンの口調は冷静で、あまりにも自然に『エルが刺客に何がしかをした』と言われ、アルトは己の隣りで微笑む男を見つめた。
「ん? どうしたの?」
にこにこと普段通りの笑みを向けられ、広間を出てからずっと握られている手の力がわずかに強くなる。
(あ、これは駄目だ)
本当ならば今すぐ手を解いて離れ、ライアンの言葉に耳を傾けるべきなのだろうが、この分では少しも離れてくれそうになかった。
同時に己が好きになった男は、こちらが思っている以上に『朔真』のことが好きだなのだと再確認する。
「──まぁ、そういう事だ。色々と準備をしていてな、本当ならすぐにでも捕らえたかったんだが……あれが何をするか分からなかった」
レティシアの名などもう口にしたくないとでも言うように、小さく息を吐く。
するとライアンはミハルドに視線を移し、頬を掻いた。
「ただ、あー……あの、誰だったか」
「ローガン・ナシェルでございます、陛下」
「ローガン……?」
なぜこの場でローガンの名が出るのだろう、と思っているとすかさずライアンが口を開く。
「そうだ。ローガンが貴族の邸に出入りしているのは知っているかな?」
「は、はい。邸に滞在してる時に本人から聞きました」
エルが眠っている間、それとなく教えてもらったのだ。
『この近辺に家があるから、何かあればすぐに知らせてくれ。……父さんの変わりに、一も二もなく飛んで参りますから』
やや砕けた口調でおどけるように紡がれた、ローガンの言葉を思い出す。
それは幼い頃から見聞きしている懐かしさがあり、不思議な気持ちになったものだ。
「そうか。確かその時だったかな、こちらの手の者が居合わせたらしく『王配に害を成そうとしてる者が居る』と、その日のうちに報告してくれたんだ」
「私も最初こそ耳を疑いましたが、どうやら診察している場で『偶然にも』聞こえてしまった、と。その者が言っていました」
ライアンの言葉を引き継ぐようにミハルドが言い、そっとレオンに視線を向ける。
「……何か」
唐突に兄に見つめられたレオンは無表情のまま、短く声を出した。
「いや、何も」
そんな弟にミハルドは小さく笑い、うっすらと瞳を開く。
血のように赤いそれには憤怒の色が煮え滾っており、しかし声音にはおくびにも出さず続けた。
「レナムド伯爵が実行に移す前に、この手で止めようと思いました」
「っ」
一段と低いミハルドの声に、びくりと肩が跳ねる。
それにエルは目を伏せ、安心させるように手の力を強めてきた。
「……しかし、蓋を開けてみれば第二王妃の息のかかった者だと分かった。これでは迂闊に動けない。そんな時です、お二人が帰城したのは」
ミハルドが言うにはこうだった。
二人が王宮へ戻る前日、ある伯爵家がひそかに暗殺を企てようとしている事を摑んだ。
最初こそ狙われるのは王太子かと思ったが、エル一人を狙うとなるとそれなりの人間が何人も必要だ。
レナムド家は前伯爵や長男が娯楽に耽っているため没落寸前で、金もほとんどないという。
邸には数少ない使用人が居るだけで新たに人を雇うにしても、まして次期国王を暗殺するとなると必要な金も膨れ上がる。
加えて暗殺が成功するか否かと言えば後者で、雇った人間側が返り討ちに遭ってしまう可能性の方が高かった。
ならば、と予想した先は王配──アルトを狙っているということだ。
「第二王妃が伯爵に暗殺を持ち掛けた、と分かるのはすぐでした。どうやら」
「ミハルド」
不意にエルがミハルドの言葉を遮った。
「そこから先はいい」
低く、短く放たれた声にミハルドだけでなく、レオンも目を瞬かせる。
アルトは頭に疑問ばかりが浮かんでいて、同時に水面下ではそこまで動いていたという事実に、今更ながら震えてしまう。
「……お前がこれまでの事を、冷静に言えるかどうかも分からないのにか?」
ただ、ライアンだけが静かな声で問い掛けた。
それは国王としてではなく、父として心配しているとも取れる。
エルはライアンに視線を向け、はっきりとした声で言った。
「確かに父上の言う通り、落ち着いて話せるかと言われれば無理です。……ただ、私の口から言わなければならない」
そこでエルは言葉を切り、アルトを見つめた。
「聞いてくれる……?」
その声は幼子が何かを欲しがる時に発する声に似ていて、アルトは目を丸くする。
同時に言葉にするのを怖がっているようにも聞き取れ、しかしエルはこちらが否と言おうと無駄なのだ。
アルトは繋いでいる手の平に力を込め、言葉の代わりに小さく頷く。
「──よかった」
文字通りほっとした表情を見せ、エルが淡く微笑んだ。
久しぶりに間近で見た笑みは美しく、懐かしさすら感じてしまう。
「では私はこれで。……アルト」
「へ、っ」
いやに甘い声で名を呼ばれたかと思えば、身体が唐突な浮遊感に襲われた。
そこでエルに抱き上げられたのだと気付き、今まで以上に身体が密着する。
「え、ちょ、何……!?」
突然のことにアルトが目を白黒させていると、ミハルドとレオンの手によって執務室の扉が両側から開けられる。
「どうぞ気を付けてくださいね、アルト様」
「……念のため忠告しておきますが、あまり羽目を外してはいけませんよ。すべての皺寄せが私に来るので」
にこにこと意味深な笑みを浮かべるミハルドと、レオンには珍しく嫌悪した表情が視界に入ったことで、背筋に冷たい汗が走る。
「な、何を……? レオンさんもなんで、そんな顔」
「こら、喋ってると舌を噛むよ」
エルの声がすぐ側から聞こえ、アルトは口を閉じる。
「……いい子」
「っ!」
甘い声で囁かれ、図らずも頬が熱を持つ。
「ああ、そうだ。陛下」
ふとエルが顔だけを振り向かせ、未だ椅子に座って傍観しているライアンに声を掛けた。
「明日は休みを頂きたいのですが、可能でしょうか?」
「……昼までなら構わない」
ライアンは一瞬考え込む素振りを見せた後、呆れを滲ませた表情で言った。
息子がこれから何をしようとしているのか、既に分かっているとでもいう口振りだった。
「十分です」
ふふ、とエルは楽しそうに笑う。
無意識なのか、半ば鼻歌を歌いながらエルが執務室を後にすると、背後から声が聞こえた。
「私の勘ですが、あの方は昼まで離さないと思いますよ。それより──」
ミハルドのものらしい声はまだ何かを言っていたが、すぐに聞こえなくなった。
一人一人の顔ははっきりと見えないが、こちらの不注意でぶつかってしまった男の顔もあった。
それ以外の者は城門や図書室、王族の部屋の前といった厳重な扉を守っている騎士だった。
「レティシア」
すると、ライアンの低く厳かな声が広間に響いた。
「は、はい……!」
愛しい者に名を呼ばれたことで少し正気に戻ったのか、それまで拘束から逃れようともがいていたレティシアは動きを止め、新緑の瞳を煌めかせる。
「お前はたった今から第二王妃ではない」
しかしライアンは階段の上に視線を向けず、冷たい声音で言い放った。
それは王族としての地位を捨てろ、と言っているも同然だった。
「な、っ……なぜですか!? 陛下、私は貴方様のために」
「私がいつ、王配を暗殺しろと頼んだ? いつ、王太子に新しく妃を娶れと勧めた?」
聞くに堪えない、という感情を一切隠さずにライアンは虫を見るような瞳をレティシアに向ける。
「そ、れ……は、っ」
己に向けられた言葉の意味や、ライアンの侮蔑を含んだ視線の意味が分からない、といったふうに目を見開いている。
床に突いている手がぷるぷると震え、しかしレティシアはライアンだけをじっと見下ろしていた。
広間の人間らはもちろん、エルの視線すらも見えていないようだった。
口を開いては閉じてを繰り返しているレティシアから視線を外し、ライアンは吐き捨てる。
「──すべて私に相談せず、お前が独断で決めた事だろう。実の姪まで使った挙句、少しも関係のない者を巻き込んだ罪は重い」
「ちが、う……んです、陛下。……ライ、アン……様、私は」
何度も『違う』『話を聞いて』と言いながら、既に乱れている髪が更に乱れるのも構わず、ぐしゃぐしゃと掻き回す。
レティシアと初めて会った時は綺麗だと感じた茶髪が、今では見るも無惨なほど乱れており、艶が無くなっていた。
「お前がした事は、迷惑以外の何物でもない」
名を呼ばれることすら厭わしいというように、ライアンは低い声で言った。
「王配を誰よりも溺愛しているのが見て分からない、私利私欲のために動いたお前の言葉など聞く価値も無い」
そこで言葉を切り、ライアンは目の前で這いつくばっている男に視線を投げ掛けた。
「お前、名はなんと言う?」
「あ、アディル。アディル・レナムドです」
騎士の手によって顔を上げさせられた男──アディルは、ややカサついた唇を動かす。
唇の端が切れており、アディルが口を開く度にじわりと血が滲んでいた。
「そうか、レナムド伯爵。こたびはアレがすまなかったな。拷問にまで掛けてしまい……さぞ痛むだろう」
「いえ、私は……」
ライアンの言葉にアディルは身体を縮こませ、さも恐縮したふうに目線を下げる。
自身のしでかしてしまった事がどれほどのものなのか、やっと自覚したようにも取れた。
「だが、ああでもしないと王太子が暴れてしまうのでな。私はまだ優しい方だ」
「へ、っ……?」
ひくりとアディルの頬が引き攣った。
ライアンがどんな手を使ったのか想像したくないが、それ以上にエルの方が酷いというのは、仮に暗殺未遂であったとしても怒りがどれほどなのか伺えた。
そっとエルを見つめていると視線に気付いたのか、ぐいと強く肩を寄せられた。
こちらを見る事はなかったものの、その瞳は誰よりも冷静にライアンとアディルのやり取りを見ている。
改めてアディルの姿を頭から爪先まで見ると、あまりにも惨い。
(顔は血が出てるし、服も赤くなって汚れてるし……でも歩けるだけマシってやつか)
最悪、瀕死状態になるまで責め立てられるであろう事は想像に難くない。
しかし手足を折られなかっただけ幸いと思え、とライアンが脅しているようにも取れた。
「だが、たとえ未遂であろうと罪は償ってもらう」
「……なんなりとお受け致します」
アディルは深く頭を垂れ、小さく声を絞り出す。
それは己の所業で家の行く末が落ちてしまった、と理解している声音だった。
「まずは伯爵としての地位を剥奪する。……調べたところ、祖父の代から続くそうではないか。仮に再興したとしても、同じ事を繰り返すのは目に見えている」
レナムド伯爵家の歴史は既に調べている、と前置きライアンはゆっくりと唇を開く。
「父だけでなく兄までも酒や賭博に溺れ、たった一人で頑張ってきたのだろう。……ただ、歴史があるからといって再興する価値は無い、と私は思う」
ライアンは憂いを帯びた瞳をアディルに向け、殊更はっきりとした声で言葉を紡いだ。
「身内と共にこの国を追放する」
「っ、……!」
アディルの黒い瞳が見開かれ、騎士に背中を抑えられている二人の使用人の肩がびくりと震えた。
「行き先はレディガムだ」
レディガムは冬、厳しい寒さに見舞われる。
加えて食物はあまり育たず、山に囲まれているためリネスト国に比べて田舎と言ってもいい小さな国だ。
そこに暮らす者は身分など関係なく自身で食物を育て、また手ずから収穫せねばならない。
人によっては終の住処にも取れ、また地獄と同じとも取れる地だった。
「あの地で一生暮らすのだ。……ただの市民として一から生きろ」
ライアンはアディルの前に膝を突き、そっと手を取った。
その手には赤い線が何本も走り、赤くなっているところもあって痛々しい。
「行ってくれるか」
「は、い」
アディルの瞳には涙が溜まり、今にも零れ落ちそうだった。
「……まぁ本来ならば国外追放まではしないのだがな。お前はどうだ」
ライアンは呆れた溜め息と共にエルに視線を向け、問い掛ける。
黙ってアディルを見下ろすエルの瞳は冷たく、あまり感情が見えないものの、ゆっくりと口を開いた。
「……父上のお決めになったことならば、私がとやかく言うことはありません」
ただ、とエルは聞いている者が底冷えするほどの声で言った。
「一度でも私の前に現れてみろ。その時はただじゃおかない」
「ひっ……!」
「──と、いうことだ。命が惜しくなければ、早いうちに家族と共にこの国を発て」
見る間に怯えるアディルに向けてライアンは軽く手を振る仕草をし、退室させるよう促す。
アディルはよろけつつも、ライアンの言葉にすぐさま立ち上がった。
「さぁ」
アディルの左右に居た騎士らは未だ項垂れている二人の使用人を立ち上がらせ、半ば引き摺られるようにしてアディルの後を着いていく。
一人はぶつぶつと何かを言っていたが、アルトの耳に入ることはなかった。
批難や恐怖の混じった貴族らの視線を一身に浴びながら、唐突な来訪者の姿が広間から消える。
「それから」
ふとライアンは何かを思い出したように、ゆっくりと閉まっていく扉に視線を向けたまま唇を動かした。
「──今日がこの場に居られる最後の機会だと思え」
誰に向けられたものなのか名を呼ばずとも、また顔を見ずとも分かる。
「そ、んな……陛下、どうか……お聞きください。わた、しは」
「くどい」
尚も言い募ろうとするレティシア──ただの女の声が、虚しく広間にこだました。
ライアンは背後を一度たりと振り返ることなく、ゆったりとした脚取りで扉に向かう。
その後ろを、側近であるミハルドをはじめとした騎士らが続いていく。
「俺達も行くよ」
「へ、っ」
不意に間近からわずかに低い声が聞こえ、アルトは図らずも小さく声を漏らす。
「もうここに居る意味はない。……気になる?」
やや眉根を寄せてこちらを見下ろすエルは、こんな時だというのに美しいと感じた。
それと同時に、アルトの意思を汲んでくれているのだと察する。
「……い、や。もういい」
床に伏せているレティシアを見ると震えており、とても話せる状況ではない。
仮に話せたとしても、予想外の事を聞いてしまった後では上手く言葉を紡ぐ自信がなかった。
「……そう」
エルの静かな相槌はすぐに床に落ち、ゆっくりと消えていった。
広間を後にすると、ライアンの扇動で執務室に通された。
王太子の執務室に比べると広く、大の大人が十人は入ろうかというほどだ。
ライアンは奥にある椅子に座ると、低い声を落とした。
「──まずは王として、君には謝らなければならない。すまなかった」
ライアンは机に両手を突き、小さく頭を下げた。
「そんな、顔を上げてください……! 俺は、そもそもこうして聞くまで知らなくて、まだびっくりしてて……」
アルトは慌ててライアンに顔を上げるように促す。
初めてしっかりと話した時も思ったが、一国の王がそこまで下手に出るものではないと思う。
そう言いたいが、喉に何かが貼り付いてしまったように次の言葉が続かなかった。
「……先程エルヴィズが言った事はすべて事実だ。それに、君には怖い思いをさせてしまった」
ライアンは悲痛な面持ちを解くことなく、ゆっくりと口を開いた。
聞けばこの一ヶ月は、毎日のように夜になるとアルトの部屋に刺客が放たれていたという。
それはレティシアの息のかかった者で、その度にミハルドやレオンが沈めていた、と。
「……そういえば騒がしいと思ってたけど、あれって人が倒れた音だったのか」
あまり褒められた事ではないと分かっているが、ここひと月の間は夜遅くまで起きていた。
エルが戻ってくるかもしれない、というかすかな望みをかけて読書をして時間を潰していたのだが、時折何か重いものが落ちた音が聞こえていたのだ。
扉の前を守る騎士が持つ剣か、もしくは鎧かと思ったがどうやらまるきり見当違いだったらしい。
「こ、殺してない、よな……?」
まさか己の部屋の前でそんな事が起きているなどとにわかには信じられず、ライアンの傍に佇むミハルドに怖々と尋ねる。
どれほど屈強な人間であってもミハルドやレオンには敵わない、直接やり取りを見た事は無いがアルトの本能がそう告げていた。
「いえ、そこまでは。悪くても昏倒させるくらいです。その後は私かレオンとお話して、丁重にご帰宅頂きました」
アルトの言葉にミハルドはにこりと微笑み、その隣りに立つレオンに『ねぇ』と語り掛ける。
「……ええ。それはもう、穏便に。殿下が自ら手を下した時は、さすがにお止めしましたが」
「え」
続いて放たれたレオンの口調は冷静で、あまりにも自然に『エルが刺客に何がしかをした』と言われ、アルトは己の隣りで微笑む男を見つめた。
「ん? どうしたの?」
にこにこと普段通りの笑みを向けられ、広間を出てからずっと握られている手の力がわずかに強くなる。
(あ、これは駄目だ)
本当ならば今すぐ手を解いて離れ、ライアンの言葉に耳を傾けるべきなのだろうが、この分では少しも離れてくれそうになかった。
同時に己が好きになった男は、こちらが思っている以上に『朔真』のことが好きだなのだと再確認する。
「──まぁ、そういう事だ。色々と準備をしていてな、本当ならすぐにでも捕らえたかったんだが……あれが何をするか分からなかった」
レティシアの名などもう口にしたくないとでも言うように、小さく息を吐く。
するとライアンはミハルドに視線を移し、頬を掻いた。
「ただ、あー……あの、誰だったか」
「ローガン・ナシェルでございます、陛下」
「ローガン……?」
なぜこの場でローガンの名が出るのだろう、と思っているとすかさずライアンが口を開く。
「そうだ。ローガンが貴族の邸に出入りしているのは知っているかな?」
「は、はい。邸に滞在してる時に本人から聞きました」
エルが眠っている間、それとなく教えてもらったのだ。
『この近辺に家があるから、何かあればすぐに知らせてくれ。……父さんの変わりに、一も二もなく飛んで参りますから』
やや砕けた口調でおどけるように紡がれた、ローガンの言葉を思い出す。
それは幼い頃から見聞きしている懐かしさがあり、不思議な気持ちになったものだ。
「そうか。確かその時だったかな、こちらの手の者が居合わせたらしく『王配に害を成そうとしてる者が居る』と、その日のうちに報告してくれたんだ」
「私も最初こそ耳を疑いましたが、どうやら診察している場で『偶然にも』聞こえてしまった、と。その者が言っていました」
ライアンの言葉を引き継ぐようにミハルドが言い、そっとレオンに視線を向ける。
「……何か」
唐突に兄に見つめられたレオンは無表情のまま、短く声を出した。
「いや、何も」
そんな弟にミハルドは小さく笑い、うっすらと瞳を開く。
血のように赤いそれには憤怒の色が煮え滾っており、しかし声音にはおくびにも出さず続けた。
「レナムド伯爵が実行に移す前に、この手で止めようと思いました」
「っ」
一段と低いミハルドの声に、びくりと肩が跳ねる。
それにエルは目を伏せ、安心させるように手の力を強めてきた。
「……しかし、蓋を開けてみれば第二王妃の息のかかった者だと分かった。これでは迂闊に動けない。そんな時です、お二人が帰城したのは」
ミハルドが言うにはこうだった。
二人が王宮へ戻る前日、ある伯爵家がひそかに暗殺を企てようとしている事を摑んだ。
最初こそ狙われるのは王太子かと思ったが、エル一人を狙うとなるとそれなりの人間が何人も必要だ。
レナムド家は前伯爵や長男が娯楽に耽っているため没落寸前で、金もほとんどないという。
邸には数少ない使用人が居るだけで新たに人を雇うにしても、まして次期国王を暗殺するとなると必要な金も膨れ上がる。
加えて暗殺が成功するか否かと言えば後者で、雇った人間側が返り討ちに遭ってしまう可能性の方が高かった。
ならば、と予想した先は王配──アルトを狙っているということだ。
「第二王妃が伯爵に暗殺を持ち掛けた、と分かるのはすぐでした。どうやら」
「ミハルド」
不意にエルがミハルドの言葉を遮った。
「そこから先はいい」
低く、短く放たれた声にミハルドだけでなく、レオンも目を瞬かせる。
アルトは頭に疑問ばかりが浮かんでいて、同時に水面下ではそこまで動いていたという事実に、今更ながら震えてしまう。
「……お前がこれまでの事を、冷静に言えるかどうかも分からないのにか?」
ただ、ライアンだけが静かな声で問い掛けた。
それは国王としてではなく、父として心配しているとも取れる。
エルはライアンに視線を向け、はっきりとした声で言った。
「確かに父上の言う通り、落ち着いて話せるかと言われれば無理です。……ただ、私の口から言わなければならない」
そこでエルは言葉を切り、アルトを見つめた。
「聞いてくれる……?」
その声は幼子が何かを欲しがる時に発する声に似ていて、アルトは目を丸くする。
同時に言葉にするのを怖がっているようにも聞き取れ、しかしエルはこちらが否と言おうと無駄なのだ。
アルトは繋いでいる手の平に力を込め、言葉の代わりに小さく頷く。
「──よかった」
文字通りほっとした表情を見せ、エルが淡く微笑んだ。
久しぶりに間近で見た笑みは美しく、懐かしさすら感じてしまう。
「では私はこれで。……アルト」
「へ、っ」
いやに甘い声で名を呼ばれたかと思えば、身体が唐突な浮遊感に襲われた。
そこでエルに抱き上げられたのだと気付き、今まで以上に身体が密着する。
「え、ちょ、何……!?」
突然のことにアルトが目を白黒させていると、ミハルドとレオンの手によって執務室の扉が両側から開けられる。
「どうぞ気を付けてくださいね、アルト様」
「……念のため忠告しておきますが、あまり羽目を外してはいけませんよ。すべての皺寄せが私に来るので」
にこにこと意味深な笑みを浮かべるミハルドと、レオンには珍しく嫌悪した表情が視界に入ったことで、背筋に冷たい汗が走る。
「な、何を……? レオンさんもなんで、そんな顔」
「こら、喋ってると舌を噛むよ」
エルの声がすぐ側から聞こえ、アルトは口を閉じる。
「……いい子」
「っ!」
甘い声で囁かれ、図らずも頬が熱を持つ。
「ああ、そうだ。陛下」
ふとエルが顔だけを振り向かせ、未だ椅子に座って傍観しているライアンに声を掛けた。
「明日は休みを頂きたいのですが、可能でしょうか?」
「……昼までなら構わない」
ライアンは一瞬考え込む素振りを見せた後、呆れを滲ませた表情で言った。
息子がこれから何をしようとしているのか、既に分かっているとでもいう口振りだった。
「十分です」
ふふ、とエルは楽しそうに笑う。
無意識なのか、半ば鼻歌を歌いながらエルが執務室を後にすると、背後から声が聞こえた。
「私の勘ですが、あの方は昼まで離さないと思いますよ。それより──」
ミハルドのものらしい声はまだ何かを言っていたが、すぐに聞こえなくなった。
49
お気に入りに追加
429
あなたにおすすめの小説
【本編完結済】前世の英雄(ストーカー)が今世でも後輩(ストーカー)な件。
とかげになりたい僕
BL
表では世界を救った英雄。
裏ではボクを狂ったほどに縛り付ける悪魔。
前世で魔王四天王だったボクは、魔王が討たれたその日から、英雄ユーリに毎夜抱かれる愛玩機となっていた。
痛いほどに押しつけられる愛、身勝手な感情、息苦しい生活。
だがユーリが死に、同時にボクにも死が訪れた。やっと解放されたのだ。
そんな記憶も今は前世の話。
大学三年生になった僕は、ボロアパートに一人暮らしをし、アルバイト漬けになりながらも、毎日充実して生きていた。
そして運命の入学式の日。
僕の目の前に現れたのは、同じく転生をしていたユーリ、その人だった――
この作品は小説家になろう、アルファポリスで連載しています。
2024.5.15追記
その後の二人を不定期更新中。
悪役令嬢のペットは殿下に囲われ溺愛される
白霧雪。
BL
旧題:悪役令嬢のポチは第一王子に囲われて溺愛されてます!?
愛される喜びを知ってしまった――
公爵令嬢ベアトリーチェの幼馴染兼従者として生まれ育ったヴィンセント。ベアトリーチェの婚約者が他の女に現を抜かすため、彼女が不幸な結婚をする前に何とか婚約を解消できないかと考えていると、彼女の婚約者の兄であり第一王子であるエドワードが現れる。「自分がベアトリーチェの婚約について、『ベアトリーチェにとって不幸な結末』にならないよう取り計らう」「その代わり、ヴィンセントが欲しい」と取引を持ち掛けられ、不審に思いつつも受け入れることに。警戒を解かないヴィンセントに対し、エドワードは甘く溺愛してきて……
❁❀花籠の泥人形編 更新中✿ 残4話予定✾
❀小話を番外編にまとめました❀
✿背後注意話✿
✾Twitter → @yuki_cat8 (作業過程や裏話など)
❀書籍化記念IFSSを番外編に追加しました!(23.1.11)❀
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
少女漫画の当て馬に転生したら聖騎士がヤンデレ化しました
猫むぎ
BL
外の世界に憧れを抱いていた少年は、少女漫画の世界に転生しました。
当て馬キャラに転生したけど、モブとして普通に暮らしていたが突然悪役である魔騎士の刺青が腕に浮かび上がった。
それでも特に刺青があるだけでモブなのは変わらなかった。
漫画では優男であった聖騎士が魔騎士に豹変するまでは…
出会う筈がなかった二人が出会い、聖騎士はヤンデレと化す。
メインヒーローの筈の聖騎士に執着されています。
最上級魔導士ヤンデレ溺愛聖騎士×当て馬悪役だけどモブだと信じて疑わない最下層魔導士
地味顔陰キャな俺。異世界で公爵サマに拾われ、でろでろに甘やかされる
冷凍湖
BL
人生だめだめな陰キャくんがありがちな展開で異世界にトリップしてしまい、公爵サマに拾われてめちゃくちゃ甘やかされるウルトラハッピーエンド
アルファポリスさんに登録させてもらって、異世界がめっちゃ流行ってることを知り、びっくりしつつも書きたくなったので、勢いのまま書いてみることにしました。
他の話と違って書き溜めてないので更新頻度が自分でも読めませんが、とにかくハッピーエンドになります。します!
6/3
ふわっふわな話の流れしか考えずに書き始めたので、サイレント修正する場合があります。
公爵サマ要素全然出てこなくて自分でも、んん?って感じです(笑)。でもちゃんと公爵ですので、公爵っぽさが出てくるまでは、「あー、公爵なんだなあー」と広い心で見ていただけると嬉しいです、すみません……!
ある日、義弟に突然「兄ちゃんが主人公で総受けとかウケるwww俺は絶対好きにならn…好き…」…いや、お前もかーい。
彩ノ華
BL
ある日、突然義弟からこの世界はBL小説の世界だと言われ俺はその中の〝主人公〟なのだとか…。
『兄ちゃんが主人公で総受けとかウケるwww俺は絶対好きにならないwww』
と笑っていたお前だが…
いや、お前もやないかい。
イケメン義弟×無自覚たらし兄
※ゆるゆる投稿
※素人作品
中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています
橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが……
想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。
※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる