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第二部 四章
忍び寄る影 5
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「……なぁ、フィアナ」
ぼうっと空になった紅茶のカップを見つめ、アルトはぽつりと呟いた。
「なんでしょうか、アルト様」
言いながらフィアナが傍にやってきて、すぐさま新しいものを淹れてくれる。
香しい匂いが鼻腔を擽り、ここ数日塞ぎ込みがちだった心が少し落ち着いてくる気がした。
「エル、は……どうしてる?」
メイドの持ち場は常に決まっており、それ以外の部屋や棟に出入りする事は禁じられている。
フィアナはアルトの専属メイドだが、並びにエルの部屋にも出入りが許されているためか知っていると思ったのだ。
というのも、あの日を境に唐突にエルは寝室には戻ってこなくなり、日中であっても顔を合わせていなかった。
それ以前に『寝室は別にしよう』という伝言を他の使用人から伝えられ、与えられた自室で一人寝をするようになって一ヶ月近くになる。
今の部屋は嫌いではないが正式に婚約する前からあまり出入りしていなかったため、まだ少し違和感があった。
特に夜、一人になると無意識にエルの影を探してしまっている自分がいた。
なんとなく王宮に居るというのは分かっているが、あまりにすれ違ってばかりいる気がして、この数日で特に不安が募っている自覚がある。
「殿下ですか? ……すみません、私もあまりお見かけしなくて」
申し訳なさそうにフィアナが目を伏せ、やや眉を寄せて続けた。
「これは関係があるのか分かりませんが、レオンハルト様が王宮にいらっしゃらないんです。……何かあったのでしょうか」
レオンがエルの側近だというのは知っているが、フィアナもそれ以外は詳しくは知らないらしい。
エルと常に行動を共にしている訳ではなく、用があれば片方を探し出して要件を伝える、というのが主らしかった。
「でもミハルドさんはここに居るんだよな? 外か、あとは……国王陛下が居る執務室だっけ」
ミハルドは午前中、基本的に城の外を護りつつ来客の取り次ぎをし、午後からは何も無ければ国王の傍で仕事をしているという。
『何かあれば私を一番にお呼びください。貴方様のお力になれるよう、可能な限りお手伝いさせて頂きます』
結婚式を挙げて少しした時、そうミハルドが言ってくれた。
その時は嬉しかったが、見方を変えれば『命を賭してでも護る』と言ってくれたエルを信頼していないようにも取れ、やはり不思議な男だと思う。
(外に行って、それから……追い出されるかもしれないけど、執務室にも行ってみよう)
今は昼前で、この時間ならばエルも国王の傍で政務を行っているはずだ。
しかし王配としての己は政の何たるかすら分かっておらず、国のためになるような事をしていない。
そんな『お荷物』がエルが居るかどうか、だけを聞きに行くなど本来であればいけない事なのではないか。
(……駄目だ、また馬鹿なこと考えてる)
エルが傍に居る時は何もなかったのに、いなくなった途端にこれだ。
アルトは顔を俯け、膝に置いていた手を見つめる。
つくづく己は一人では何もできず、出来たとしても足でまといになるような事を頭の片隅で考えてしまっているのだ。
「──さま、アルト様!」
「っ!」
黙ってしまったアルトを不審に思ったのか、フィアナが肩を揺すってきた。
見上げたフィアナは文字通り心配そうで、そんな顔をさせてしまっているのが自分だという事実に更に惨めになる。
「……ごめ、ん」
アルトは反射的に頭を下げ、謝罪の言葉を口にしていた。
自分でも嫌になる癖は直っていたはずで、無闇に言うことなど無いと思っていたはずなのに。
「なんだか……初めてお会いした時のようですね」
そんなアルトを安心させるように、フィアナはゆっくりとした口調で言った。
「貴方様が謝る必要はないのです。……むしろ、どんどん頼って頂きたいくらいなんです」
アルト様は頑張りすぎなので、とフィアナが小さく笑いながら続ける。
その声音にはところどころに懐かしさが滲んでおり、それは次第に王宮へ来た時の事を思い起こさせる。
自身の身に何が起きたのか不安で、アルバートにせっつかれて馬車に乗り、そしてエルと出会った。
最初こそ抗っていたものの巡り巡って婚約し、結婚式を挙げてからは忙しいながらも日々は充実していた。
その前に何度となくすれ違ってしまったが、エルにも考えがあるのだろう。
嫌われてしまったのかと勘違いしてしまうが、あの男はアルトを見捨てたりしない、という確信にも似た紛れもない感情が頭をもたげる。
(いきなり声も口調も変わった。……俺、あの夜に何か変なこと言ったんだろうな)
フィアナの言葉で少し余裕が出来たためか、一ヶ月前の事を客観視出来るようになっている自分に驚く。
それと同時に、エルに会って直接話したいという思いが募っていく。
「──アルト様は殿下がお好きなのですね」
「へ!?」
まさか声に出ていたのかと思い、アルトは素っ頓狂な声を漏らす。
「あ、えっと、変な意味ではなくて! ただ……ここ数日、落ち込んでいらっしゃったので」
フィアナは顔の前で両手を振り、やがてそっと視線を床に向けた。
「私で良ければお話相手になりますし、楽しんで過ごして頂けるよう努力します。なので、遠慮なく仰ってくれると嬉しいです」
その時、ミハルドに言われた言葉とフィアナの言葉が重なった。
言葉は違うが、どちらも己を思ってくれているのは同じだ。
気を遣わせてしまっていることに少し嫌気が差してしまうが、いつまでも僻んでいては何も始まらないのだ。
「……ありがとう、フィアナ。元気出た」
心にぽっかりと空いた穴が、少しずつ塞がっていく気配がする。
しかし完全には閉じず、未だに隙間風が吹いている。
(エルがいないからだ)
人からどんなに優しい言葉を掛けられても、こちらを気遣われても、愛しい男の温もりを知ってしまっては何ものにも敵わない。
こちらに向けてくれる優しい笑みも、愛おしそうに呼んでくれる声音も、すべてこの世界に来てから知った。
元の世界では一生知る事のなかった感情に、今更ながら恥ずかしくなった。
「──って、申し訳ございません! 私ってば、生意気なことを……!」
すると自身の放った言葉が重大な問題になると思ったのか、血相を変えて床に土下座しそうな勢いだ。
アルトは堪らず立ち上がり、慌ててフィアナの肩を摑んだ。
「ちょ、そんなことしなくていいって! 俺が怒ってるみたいだから止めてくれ!」
「いいえ、メイド長に伝わった暁にはきつく叱責されます! それに、私の気が済まないのでさせてください!」
しかしフィアナは食い下がり、尚も膝を床に突こうとした。
「思ったこと言っただけで怒られる、ってそんなのあるか!? もしかしてメイド長ってめちゃくちゃ怖いのか?」
フィアナの行動を必死で止めつつ、自身の座っていた椅子に半ば強引に座らせる。
自分よりも少し小さなメイドは息を乱しながら、こちらを見上げている。
その瞳が若干潤んでいるのに気付き、アルトはぽそりと呟いた。
「……俺が言うのもなんだけど、王宮ってブラックでいらっしゃる?」
部屋にはアルトとフィアナしかおらず、仮に誰かが聞き耳を立てていても会話が聞こえないほど王宮の扉は頑丈だ。
だというのに、廊下の向こうに居るともしれない人間を気にする余裕があるのは、我ながら恐れ入る。
しかしフィアナは意味が分からないというように、何度も瞬きを繰り返す。
「ブラック、というのは分かりませんが……やっと、笑われましたね」
「え、っ」
ふふ、とフィアナは淡く口元に笑みを浮かべると、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「殿下がお部屋に戻らないと仰られた日から、アルト様はあまり笑わなくなったので。貴方様には笑顔がよくお似合いですから」
そんなところまで見ているのか、と思うと同時にエルがいつかに『貴方は顔に出やすいな』と言っていたのを思い出す。
その時は分からなかったが、改めて指摘されるとなんとも言えない羞恥心があった。
「……ミハルドさんのところに行ってくる」
フィアナに照れている顔を見せたくなくて、アルトはぬるくなっている紅茶を一息に飲み干すと扉に脚を向けた。
「昼食はどうされますか?」
背後からフィアナが声を掛けてきて、アルトは一瞬考える。
その人がもしいなければ、王宮の奥まで脚を向けなければならない。
そこまでは一度も行った事がなく迷う可能性も十二分にあるため、昼食の時間を優に過ぎてしまうだろう。
「片手で食べられて、腹に溜まるものがいい」
我ながら極端で無茶だと思うが、フィアナはにこりと微笑んで胸の前で小さく拳を握った。
「かしこまりました。沢山作るように、と伝えます!」
「いや、そこまでは……残したら悪いし」
その言葉にアルトは苦笑し、扉を開けようとしたところでややあって立ち止まる。
「フィアナ」
アルトは振り向き、フィアナを見つめた。
少し残ってしまった菓子を、手早く小分けで包んでくれているのが視界の端に見えた。
「エルを見かけたら教えてくれ。あと……俺の部屋で待ってる、って」
きっと然るべき時が来るまでエルは顔を合わせてくれないだろうが、どれほど愛しているかを伝えたかった。
「はい。必ず、お伝えします。──行ってらっしゃいませ、王配殿下」
そんなアルトの意思が伝わったのか、フィアナは普段よりもわずかに低い声を出す。
加えて名ではなく敬称で呼んでくれているのを見るに、本当はどこに向かうのか、聡いメイドは分かっているのだ。
「……ああ、行ってくる」
しかしアルトは小さく返すだけに留め、部屋を出た。
王宮の中は広いが、その人物が居るのがどの部屋かは記憶している。
(ソフィアーナ王女、居たらいいんだけど)
ぼうっと空になった紅茶のカップを見つめ、アルトはぽつりと呟いた。
「なんでしょうか、アルト様」
言いながらフィアナが傍にやってきて、すぐさま新しいものを淹れてくれる。
香しい匂いが鼻腔を擽り、ここ数日塞ぎ込みがちだった心が少し落ち着いてくる気がした。
「エル、は……どうしてる?」
メイドの持ち場は常に決まっており、それ以外の部屋や棟に出入りする事は禁じられている。
フィアナはアルトの専属メイドだが、並びにエルの部屋にも出入りが許されているためか知っていると思ったのだ。
というのも、あの日を境に唐突にエルは寝室には戻ってこなくなり、日中であっても顔を合わせていなかった。
それ以前に『寝室は別にしよう』という伝言を他の使用人から伝えられ、与えられた自室で一人寝をするようになって一ヶ月近くになる。
今の部屋は嫌いではないが正式に婚約する前からあまり出入りしていなかったため、まだ少し違和感があった。
特に夜、一人になると無意識にエルの影を探してしまっている自分がいた。
なんとなく王宮に居るというのは分かっているが、あまりにすれ違ってばかりいる気がして、この数日で特に不安が募っている自覚がある。
「殿下ですか? ……すみません、私もあまりお見かけしなくて」
申し訳なさそうにフィアナが目を伏せ、やや眉を寄せて続けた。
「これは関係があるのか分かりませんが、レオンハルト様が王宮にいらっしゃらないんです。……何かあったのでしょうか」
レオンがエルの側近だというのは知っているが、フィアナもそれ以外は詳しくは知らないらしい。
エルと常に行動を共にしている訳ではなく、用があれば片方を探し出して要件を伝える、というのが主らしかった。
「でもミハルドさんはここに居るんだよな? 外か、あとは……国王陛下が居る執務室だっけ」
ミハルドは午前中、基本的に城の外を護りつつ来客の取り次ぎをし、午後からは何も無ければ国王の傍で仕事をしているという。
『何かあれば私を一番にお呼びください。貴方様のお力になれるよう、可能な限りお手伝いさせて頂きます』
結婚式を挙げて少しした時、そうミハルドが言ってくれた。
その時は嬉しかったが、見方を変えれば『命を賭してでも護る』と言ってくれたエルを信頼していないようにも取れ、やはり不思議な男だと思う。
(外に行って、それから……追い出されるかもしれないけど、執務室にも行ってみよう)
今は昼前で、この時間ならばエルも国王の傍で政務を行っているはずだ。
しかし王配としての己は政の何たるかすら分かっておらず、国のためになるような事をしていない。
そんな『お荷物』がエルが居るかどうか、だけを聞きに行くなど本来であればいけない事なのではないか。
(……駄目だ、また馬鹿なこと考えてる)
エルが傍に居る時は何もなかったのに、いなくなった途端にこれだ。
アルトは顔を俯け、膝に置いていた手を見つめる。
つくづく己は一人では何もできず、出来たとしても足でまといになるような事を頭の片隅で考えてしまっているのだ。
「──さま、アルト様!」
「っ!」
黙ってしまったアルトを不審に思ったのか、フィアナが肩を揺すってきた。
見上げたフィアナは文字通り心配そうで、そんな顔をさせてしまっているのが自分だという事実に更に惨めになる。
「……ごめ、ん」
アルトは反射的に頭を下げ、謝罪の言葉を口にしていた。
自分でも嫌になる癖は直っていたはずで、無闇に言うことなど無いと思っていたはずなのに。
「なんだか……初めてお会いした時のようですね」
そんなアルトを安心させるように、フィアナはゆっくりとした口調で言った。
「貴方様が謝る必要はないのです。……むしろ、どんどん頼って頂きたいくらいなんです」
アルト様は頑張りすぎなので、とフィアナが小さく笑いながら続ける。
その声音にはところどころに懐かしさが滲んでおり、それは次第に王宮へ来た時の事を思い起こさせる。
自身の身に何が起きたのか不安で、アルバートにせっつかれて馬車に乗り、そしてエルと出会った。
最初こそ抗っていたものの巡り巡って婚約し、結婚式を挙げてからは忙しいながらも日々は充実していた。
その前に何度となくすれ違ってしまったが、エルにも考えがあるのだろう。
嫌われてしまったのかと勘違いしてしまうが、あの男はアルトを見捨てたりしない、という確信にも似た紛れもない感情が頭をもたげる。
(いきなり声も口調も変わった。……俺、あの夜に何か変なこと言ったんだろうな)
フィアナの言葉で少し余裕が出来たためか、一ヶ月前の事を客観視出来るようになっている自分に驚く。
それと同時に、エルに会って直接話したいという思いが募っていく。
「──アルト様は殿下がお好きなのですね」
「へ!?」
まさか声に出ていたのかと思い、アルトは素っ頓狂な声を漏らす。
「あ、えっと、変な意味ではなくて! ただ……ここ数日、落ち込んでいらっしゃったので」
フィアナは顔の前で両手を振り、やがてそっと視線を床に向けた。
「私で良ければお話相手になりますし、楽しんで過ごして頂けるよう努力します。なので、遠慮なく仰ってくれると嬉しいです」
その時、ミハルドに言われた言葉とフィアナの言葉が重なった。
言葉は違うが、どちらも己を思ってくれているのは同じだ。
気を遣わせてしまっていることに少し嫌気が差してしまうが、いつまでも僻んでいては何も始まらないのだ。
「……ありがとう、フィアナ。元気出た」
心にぽっかりと空いた穴が、少しずつ塞がっていく気配がする。
しかし完全には閉じず、未だに隙間風が吹いている。
(エルがいないからだ)
人からどんなに優しい言葉を掛けられても、こちらを気遣われても、愛しい男の温もりを知ってしまっては何ものにも敵わない。
こちらに向けてくれる優しい笑みも、愛おしそうに呼んでくれる声音も、すべてこの世界に来てから知った。
元の世界では一生知る事のなかった感情に、今更ながら恥ずかしくなった。
「──って、申し訳ございません! 私ってば、生意気なことを……!」
すると自身の放った言葉が重大な問題になると思ったのか、血相を変えて床に土下座しそうな勢いだ。
アルトは堪らず立ち上がり、慌ててフィアナの肩を摑んだ。
「ちょ、そんなことしなくていいって! 俺が怒ってるみたいだから止めてくれ!」
「いいえ、メイド長に伝わった暁にはきつく叱責されます! それに、私の気が済まないのでさせてください!」
しかしフィアナは食い下がり、尚も膝を床に突こうとした。
「思ったこと言っただけで怒られる、ってそんなのあるか!? もしかしてメイド長ってめちゃくちゃ怖いのか?」
フィアナの行動を必死で止めつつ、自身の座っていた椅子に半ば強引に座らせる。
自分よりも少し小さなメイドは息を乱しながら、こちらを見上げている。
その瞳が若干潤んでいるのに気付き、アルトはぽそりと呟いた。
「……俺が言うのもなんだけど、王宮ってブラックでいらっしゃる?」
部屋にはアルトとフィアナしかおらず、仮に誰かが聞き耳を立てていても会話が聞こえないほど王宮の扉は頑丈だ。
だというのに、廊下の向こうに居るともしれない人間を気にする余裕があるのは、我ながら恐れ入る。
しかしフィアナは意味が分からないというように、何度も瞬きを繰り返す。
「ブラック、というのは分かりませんが……やっと、笑われましたね」
「え、っ」
ふふ、とフィアナは淡く口元に笑みを浮かべると、ゆっくりと椅子から立ち上がった。
「殿下がお部屋に戻らないと仰られた日から、アルト様はあまり笑わなくなったので。貴方様には笑顔がよくお似合いですから」
そんなところまで見ているのか、と思うと同時にエルがいつかに『貴方は顔に出やすいな』と言っていたのを思い出す。
その時は分からなかったが、改めて指摘されるとなんとも言えない羞恥心があった。
「……ミハルドさんのところに行ってくる」
フィアナに照れている顔を見せたくなくて、アルトはぬるくなっている紅茶を一息に飲み干すと扉に脚を向けた。
「昼食はどうされますか?」
背後からフィアナが声を掛けてきて、アルトは一瞬考える。
その人がもしいなければ、王宮の奥まで脚を向けなければならない。
そこまでは一度も行った事がなく迷う可能性も十二分にあるため、昼食の時間を優に過ぎてしまうだろう。
「片手で食べられて、腹に溜まるものがいい」
我ながら極端で無茶だと思うが、フィアナはにこりと微笑んで胸の前で小さく拳を握った。
「かしこまりました。沢山作るように、と伝えます!」
「いや、そこまでは……残したら悪いし」
その言葉にアルトは苦笑し、扉を開けようとしたところでややあって立ち止まる。
「フィアナ」
アルトは振り向き、フィアナを見つめた。
少し残ってしまった菓子を、手早く小分けで包んでくれているのが視界の端に見えた。
「エルを見かけたら教えてくれ。あと……俺の部屋で待ってる、って」
きっと然るべき時が来るまでエルは顔を合わせてくれないだろうが、どれほど愛しているかを伝えたかった。
「はい。必ず、お伝えします。──行ってらっしゃいませ、王配殿下」
そんなアルトの意思が伝わったのか、フィアナは普段よりもわずかに低い声を出す。
加えて名ではなく敬称で呼んでくれているのを見るに、本当はどこに向かうのか、聡いメイドは分かっているのだ。
「……ああ、行ってくる」
しかしアルトは小さく返すだけに留め、部屋を出た。
王宮の中は広いが、その人物が居るのがどの部屋かは記憶している。
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