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あなたは私の一等星
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世界が終わる日、あなたなら何をする?
美味しいものを食べる。
豪遊する。
大切な人と過ごす。
あるいは恐怖に体が竦んで、何も手につかないかもしれない。
私は──天野夜凪は、そのどれでもなかった。
その日。きらきら光る星が空を割り、無数に降り落ちて来た世界最後の日。地上は炎に包まれ、夜空の底を焦がして、夜と混ざりあって空を紫色に染め上げていた。
そんな中で私は、星の直撃を受けて瓦礫の山と化した自宅から這々の体で逃げ出し、人気のない寂れた公園のブランコに座って、ポケットに入っていたスマホで「あの子」のスペシャルライブ配信を見ていた。
スマホの小さな画面の中で歌い踊るあの子は、目の覚めるようなブルーのワンピースををまとっている。金色のロングヘアがダンスに合わせて、なびき、精緻な人形のように整った顔が微笑む。しなやかな足でステップを踏むたびに、パニエで膨らませたスカートの裾がふわりと揺れる。
夢のように美しい少女だった。私は美しいものが好きで、だから、この子のことも好きだった。こんな美しいものを見られるのなら、世界最後の日もそう悪くはない。そんな風に、考えてしまえるくらいには。
この国で絶大な人気を得ている国民的アイドル、与渚エメ。動画投稿サイトに投稿された、拙いピアノの演奏をバックに一人で歌う姿が芸能事務所の目に留まりデビュー。高い歌唱力、圧倒的な美貌、優れた身体能力でもって、瞬く間にスターへの道を駆け上った。けれど、本名、年齢、出身地、経歴──彼女個人を特定する情報は一切不明。この国らしからぬ芸名と、金色の髪に緑色の瞳、抜けるように白い肌という外見から、どこかの国とのハーフじゃないかなんて言われているが、それも憶測の域を出ない。
けれど私は知っている。彼女の本名は坂江芽衣。祖母がイギリス人のクォーターで、動画を投稿した際のアカウント名は、単純に名字と名前の最後と最初の一文字を取ったものなのだ。
ライブは続く。
画面の右上には、「与渚エメ、最終ライブ! 世界の終わりまで『女神』の歌声をお届けします!」なんてテロップが映っている。そして画面の中央には、舞うように踊るあの子の姿。透き通るような歌声で、ヒットチャートで一位を獲得したラブソングを歌う。
『あなたの隣を歩くだけで幸せ
ずっと一緒にいようね──』
陳腐な歌詞だ。それに、あの子を女神に例えるなんてセンスがない。馬鹿みたいだ。寝起きの彼女を見たら、きっと誰もそんなフレーズは思いつかないだろう。
頭上で一際明るい星が空を割く。見上げると、一つの星が白銀の尾を引いて地上に落っこちてくるところだった。
私のいる公園は小高い丘の上にあって、街を一望できる。見知った街はコンクリート屑の集まりになって、その間を炎が舐め尽くしていく。人々が走り回り、泣き叫び、怒鳴り合う。その間にも星はびゅんびゅん飛来して、文明を破壊していく。
『会いたいよ
会いたいよ
なによりも大切なあなたに──』
スマホからはあの子の歌声が流れ続ける。それに合わせて私もハミングする。会いたいよ、会いたいよ──世界最後の日に、私が会いたい人って誰だろう。今は瓦礫の下にいる家族? また明日ね、と言って別れた友達? 二ヶ月くらい前から付き合い始めた彼氏?
「会いたいよ──芽衣」
けれど唇が勝手に名前を紡ぐ。そうして確信してしまう。私はずっと、あの子に会いたかったのだ。幼なじみで、可愛くて、歌がうまくて、なによりも大切な私の友達に。もう手の届かないところで輝いている、私の一等星に。
初めはただのお遊びだったのだ。クラスでサイトに動画を投稿するのが流行っていて、それなら、と私と芽衣は歌ってみた動画を投稿することにした。私は幼い頃にピアノを習っていたから簡単な曲なら弾けたし、芽衣は可愛くて歌が上手かった。アカウント名は私の名前と芽衣の名前を少し変えて合体させただけ。撮影機材なんてなくて、私のスマホで撮影したものをそのままアップした。音質も画質も悪かったけれど、内輪でウケればそれでよかった。
それでよかった、のに。
やはり本物というのは、どんな環境でも眩く光るものらしい。その動画は瞬く間にサイト内ランキングで一位を獲得し、SNSで拡散され、光の速さで世界中が与渚エメを知った。動画にはあの子への称賛のコメントが溢れかえり、世界中の人々があの子を求めた。ついでにピアノが下手というバッシングもあったが、それはどうでもよい話だ。
国内大手の芸能事務所が芽衣をスカウトしにきたのは、動画を投稿してから一週間後のことだった。異例の速さだった。それだけ芽衣の才能が特異だったということだ。
芽衣は誰にも──私にも相談せず、スカウトを受けた。そうして別れも告げず、私の目の前から消えたのだ。それが三年前、私たちが中学三年生のときのことだった。それきりあの子から連絡が来たことは一度もない。
スマホの連絡先アプリを開いて、さ行までスクロールする。「坂江芽衣」の連絡先はまだそこにある。当たり前だ。生まれたときからの付き合いなのだ。お互い初めてスマホを買ったとき、真っ先に交換したのはお互いの連絡先だ。
そっと電話番号に触れる。けれど、これは三年前の番号だ。芽衣だってとっくにスマホを替えているだろうし、大体あの子はライブ中だ。世界の終わりまで人々に女神の歌声をお届けするために、星が降る下で歌って踊るのだ。
しかし私の指は、発信ボタンをタップした。スマホを耳元まで持っていく。コール音が鳴り響く。一回、二回……。十回数えて、繋がらなかったら諦めよう。
八回、九回、十回……。
十五回数えても、繋がらなかった。
当たり前だ。あの子は女神で、世界中の人々から望まれていて、ステージの上で輝くのだ。星がなんだ、笑わせる。そんなものがあの子の輝きに勝てるものか。
それでも、世界が終わるこんな日には、奇跡が起こってもよいと思った。
「そう、思わない? 夜凪」
澄んだ声が響く。私のスマホと、そして背後から。
ゆっくりと振りかえる。スマホを握りしめたまま、ブランコから立ち上がれないまま。身体中の細胞が、そこにいる、と叫ぶ。その懐かしい姿を、瞳がとらえる。
「おかえり、芽衣」
「ただいま、夜凪」
目の覚めるようなブルーのワンピースを、泥だらけの煤だらけにした私の幼なじみが、そこに立っていた。
「なんで、ここに……ライブ中じゃ。というかどうやって」
慌ててスマホにライブを映す。思わず目を見開いた。舞台の上ではあの子ではなく、別のアイドルが歌っていた。流れているのは私の知らない曲だ。片思いのラブソングで、苦しげに眉を寄せて、甲高い歌声を響かせている。いや、苦しそうな表情には他に理由があるのかもしれない。
「与渚エメは引退よ。違約金なんて知ったことか。どうやって、は聞かないで。色々と、としか答えられないわ。どのみち今日で世界が終わるんだから、関係ないわよ」
「そ」
それはそうだけれど。いやそうじゃない。色々聞き捨てならない言葉もあった気がするが、問題は、あの子のライブのことじゃない。
「どうして、芽衣はここに来たの」
声が震える。もう二度と会えないと思っていた。何も言わずに目の前から消えて、はるか高みの舞台の上でスポットライトを浴びるあの子。なによりも眩しくて、綺麗で、秘密に包まれた美少女。
そういうものに、私の幼なじみはなってしまったのに。
芽衣は少し気まずそうに目を逸らして、私の方へ歩いてきた。そして私の隣のブランコに座ると、地面を蹴ってブランコを揺らす。
「星が、降ってきたでしょ」
「う、うん」
今も、白や赤や青色の尾を引いて、いくつもの星が降り落ちている。夜空はバラバラに割れて、地平線近くから天頂まで、明るい赤色から深い紺色のグラデーションを描いている。時々爆音が聞こえて、地面が揺れる。
世界の終わりまで女神の歌声を聴こうとしていた皆さん、すいません。あなたたちの女神は、今、私の隣でブランコ漕いでいます。
「だから、私も夜凪のところまで降ってもいいかと思って」
「あなたはスターだから?」
揶揄うような私の口調にも、芽衣は微塵も揺らがなかった。胸を張り、真っ直ぐに私を見据える。その鮮やかな緑の瞳は、私の心の奥底まで見透かしそうだった。
「そうよ。与渚エメはスターだったから。私はいつだって輝いていたでしょう」
「……うん。そうだね」
目を閉じる。目蓋の作った暗闇に、舞台で歌うあの子の様子が蘇る。私は何度もあの子のステージに足を運んだ。観客の眼差しを一身に集め、様々な色の光を受けて輝くあの子。華奢な体からは信じられないような声量で朗々と歌い上げ、美しいかんばせに正確無比な笑みを浮かべていた。ダンスのステップは緻密で、どんなに複雑な振り付けでも軽々と踊ってみせていた。
「とっても輝いていたよ」
私の言葉に、芽衣はなぜかほっと息を吐いた。ブランコを漕ぎながら、燃える街へ目をやる。
「あーあ。世界はもうめちゃくちゃね。私の住んでたアパートも、もうなくなっちゃったかしら」
「たぶんね。私の家にも星が直撃したし」
私と芽衣は近くに住んでいた。私たちを産む際に、母親同士が病院で仲良くなったのが、この縁の始まりだった。
芽衣がブランコを止める。
「それじゃ、おばさんたちは……?」
首を横に振った。芽衣はなにも言わず、黙って目を閉じ、祈りを捧げた。それだけで、聖女が教会で厳かな儀式でもしているかのように見えた。
私は薄く笑う。
「いいんだ。私は最後に、芽衣に会えたから。もう二度と、こんな風に会話を交わすことなんてないと思ってた。芽衣は私のこと忘れたかと」
「どうしてそんな風に?」
芽衣が目を見開く。長い金色の睫毛が震え、ブランコの鎖を握る手の関節が白く浮いた。
「どうしてって、芽衣はなんにも言わずにスターになっちゃったから。一応、ピアノ弾いてたのは私なんですけど? 動画投稿したのも私だし?」
違う。こんなことが言いたいわけじゃない。私のことなんてどうだってよかった。私の演奏には人の目を惹く輝きがない。小学校まで嫌々ピアノ教室に通っていたくらいの腕前だ。そもそも私自身が、私の演奏に価値を見出していないのだから。
そうだ。私が価値を見出していたのは、私自身じゃない。
芽衣、あなたなんだよ。
私にとって、あなたが至高だったんだ。
歯を食いしばり、喉奥から唸り声を絞り出す。
「どうして、さよならを言ってくれなかったの」
別れを告げてくれればよかった。そうすれば諦められた。あの子の出演する番組を全て録画して、毎日あの子のSNSをチェックして、ライブの抽選に一喜一憂することもなかった。
その輝きに目を灼かれて、あなた以外見えなくなってしまうこともなかったのに。
唇を噛んで、空を見上げる。いくつもの星が流れ、雨のように地上に降り注ぐ。
芽衣が微笑んだ。
「夜凪は、綺麗なものが好きでしょう」
「まあね。というか、嫌いな人なんていないよ。与渚エメの人気ぶりを見てよ。老いも若きもみんなあの子に夢中だったよ」
「他の人間なんてどうでもいいのよ!」
星が降る。近くに落ちたらしく爆音がここまで届く。遅れて爆風が襲い、私は思わず芽衣に飛びついて地面に伏せさせた。凄まじい風とともに、石や木の枝がバラバラと私の体を打つ。それでも決して芽衣は傷付けまいと、私は唇をひき結んで腕に力を込めた。
やがて風が収まる。密着していた身体を離し、腕の中に視線を向けた。
芽衣は真っ直ぐに私を見つめている。私はなにも言えず、黙って芽衣を見下ろした。
「どうして星は美しいと思う?」
「え……?」
「手が届かないからよ」
言い切って、芽衣は私の頬に両手を伸ばした。その爪には桜色のラメ入りネイルが塗られ、ちらちらと光を反射していた。白くて細い指が、私の頬を包む。芽衣の手は冷たかった。
「スターになれば、画面の向こうの存在になれば、きっともっと輝ける。神秘のヴェールを被って、知らない顔を見せて、変化し続ければ、きっと夜凪は私を好きでい続けてくれる──そう思ったから、私は女神になったのよ」
芽衣の手に優しく引き寄せられ、顔が近づく。気づいたときには、柔らかな唇が、ふに、と私の唇に押し付けられていた。
間近で見ても、芽衣は綺麗だった。白い額には煤がついて、髪に飾られたリボンは取れかけて、メイクだって崩れていたけれど、やっぱり私の友達は世界で一番美しかった。
女神なんかじゃない。
星なんかじゃない。
だって芽衣は、私のそばにいる。手の届くところに、それどころか、私におとなしく抱きしめられている。
どこにでもいる、私と同い年の女の子だ。
それでも、あなたはこんなにも美しい。
知ってるよ。手が冷たいのは緊張してるんでしょう。いつもより声が低いのは、ちょっぴりヤケになっているんでしょう。心臓が飛び出しそうなほど強い鼓動を刻んでいるのも分かってるよ。だってこんなにも近くにいるんだから。
それでも、私に想いを伝えようと、ここまで来てくれた。
世界の終わりの日に。
星の降る夜に。
それが美しくないわけ、ない。
私は身体を起こし、芽衣の腕を取って立ち上がらせた。彼女は少し俯いて、目を合わせようとしなかった。
私は腕を伸ばし、その小さな顔を上向かせ、今度は自分から口付けた。
芽衣の瞳が見開かれる。その宝石みたいな眼に、私の姿が映るのが心地よかった。
「違うよ」
唇を離して囁く。
「星が美しいのは、手が届かないからじゃない。星はただそこで輝いているだけで美しいんだよ」
芽衣がへなへなと崩れ落ちた。真っ赤になって顔を押さえ、呻き声を上げている。
「夜凪は本当に……」
「うん?」
私もしゃがんで芽衣と視線の高さを合わせた。
「そういうことを言うと、私は調子に乗るわよ」
「調子に乗るとどうなるの?」
首を傾げる。芽衣がガバッと顔を上げると、私の胸ぐらを掴んだ。
「手が届いても、美しいって言ってくれるなら……」
「うん」
「私は、夜凪のそばにいたい。一番近くで、私が歌っているのを見て、綺麗だって笑ってほしい」
芽衣の顔はくしゃくしゃに歪んで、目の奥には冴え冴えとした光が宿っていた。私の服を掴んでいる手はぶるぶる震えて、今にも砕けそうだ。
私は笑う。スマホを手にして、振ってみせる。
「いいよ。世界の終わりまで一緒にいよう。あなたはどこにいたって輝いてるってこと、証明してあげる」
こうして、星の降る夜空の下、なんの変哲もないうらびた公園で、与渚エメの最後のライブが始まった。
三年間更新のなかった与渚エメのアカウントで、唐突に始まった生放送。それは型落ちのスマホで撮影されているから、音質も画質も最悪で、ラグもある。画面だってところどころでブレて、ずっと見ていると酔ってしまいそうだった。
拙いピアノの音さえもなくて、エメはアカペラで歌う。しかし、音程を外すこともなく、激しい振り付けのダンスを軽やかにこなしてみせる。
彼女が選んだのは、デビュー曲だった。失恋した女の子が、それでも恋を忘れられず、心を引き裂かれながら叫ぶような曲だった。
彼女は歌う。衣装は泥だらけで、スカートの裾にはかぎ裂きができていて、絹のような髪もボサボサだ。メイクはついに完全に汗で流れ、目の淵にマスカラの隈ができていた。
それでも、彼女は美しい。
画面の向こうに訴えかけるような切実な眼差しを向けて、透き通るような声で切なく歌い上げる。
あっという間に視聴者数は百万人を超え、光の速さでコメントが流れる。『エメ? 本物?』『ライブはどうしたんだ?』『絶対エメちゃんだよ』『可愛い』『最後に見られてよかった』『歌うめえ』『これどこだ』『この歌好き』etc.etc.
空から降り注ぐ星の数が増えてきた。ひっきりなしに爆音が鳴り響き、時々熱風が吹き寄せる。今までここに星が落ちなかったのが奇跡みたいだ。
燃える星の引く尾が重なり、数多の色の光が作り出される。あまねく地上を照らすそれは、スポットライトのようにこの舞台を染め抜いた。
紫色の夜空を切り裂いて無数に降り続く流星雨を背に、彼女は私に手を伸ばす。
確実に、私はあなたと目が合った。
微笑み合う。失恋の歌なのに、そんな風に笑ってしまっていいのかな。眩しすぎて、あなたが幸せの絶頂ってこと、分かってしまうけれど。
『ねえ、会いに来て
私はここにいるよ
会いに来て
私はずっと待ってるの──』
星が降る。
世界が終わる。
けれども、あなたは輝き続ける。
(了)
美味しいものを食べる。
豪遊する。
大切な人と過ごす。
あるいは恐怖に体が竦んで、何も手につかないかもしれない。
私は──天野夜凪は、そのどれでもなかった。
その日。きらきら光る星が空を割り、無数に降り落ちて来た世界最後の日。地上は炎に包まれ、夜空の底を焦がして、夜と混ざりあって空を紫色に染め上げていた。
そんな中で私は、星の直撃を受けて瓦礫の山と化した自宅から這々の体で逃げ出し、人気のない寂れた公園のブランコに座って、ポケットに入っていたスマホで「あの子」のスペシャルライブ配信を見ていた。
スマホの小さな画面の中で歌い踊るあの子は、目の覚めるようなブルーのワンピースををまとっている。金色のロングヘアがダンスに合わせて、なびき、精緻な人形のように整った顔が微笑む。しなやかな足でステップを踏むたびに、パニエで膨らませたスカートの裾がふわりと揺れる。
夢のように美しい少女だった。私は美しいものが好きで、だから、この子のことも好きだった。こんな美しいものを見られるのなら、世界最後の日もそう悪くはない。そんな風に、考えてしまえるくらいには。
この国で絶大な人気を得ている国民的アイドル、与渚エメ。動画投稿サイトに投稿された、拙いピアノの演奏をバックに一人で歌う姿が芸能事務所の目に留まりデビュー。高い歌唱力、圧倒的な美貌、優れた身体能力でもって、瞬く間にスターへの道を駆け上った。けれど、本名、年齢、出身地、経歴──彼女個人を特定する情報は一切不明。この国らしからぬ芸名と、金色の髪に緑色の瞳、抜けるように白い肌という外見から、どこかの国とのハーフじゃないかなんて言われているが、それも憶測の域を出ない。
けれど私は知っている。彼女の本名は坂江芽衣。祖母がイギリス人のクォーターで、動画を投稿した際のアカウント名は、単純に名字と名前の最後と最初の一文字を取ったものなのだ。
ライブは続く。
画面の右上には、「与渚エメ、最終ライブ! 世界の終わりまで『女神』の歌声をお届けします!」なんてテロップが映っている。そして画面の中央には、舞うように踊るあの子の姿。透き通るような歌声で、ヒットチャートで一位を獲得したラブソングを歌う。
『あなたの隣を歩くだけで幸せ
ずっと一緒にいようね──』
陳腐な歌詞だ。それに、あの子を女神に例えるなんてセンスがない。馬鹿みたいだ。寝起きの彼女を見たら、きっと誰もそんなフレーズは思いつかないだろう。
頭上で一際明るい星が空を割く。見上げると、一つの星が白銀の尾を引いて地上に落っこちてくるところだった。
私のいる公園は小高い丘の上にあって、街を一望できる。見知った街はコンクリート屑の集まりになって、その間を炎が舐め尽くしていく。人々が走り回り、泣き叫び、怒鳴り合う。その間にも星はびゅんびゅん飛来して、文明を破壊していく。
『会いたいよ
会いたいよ
なによりも大切なあなたに──』
スマホからはあの子の歌声が流れ続ける。それに合わせて私もハミングする。会いたいよ、会いたいよ──世界最後の日に、私が会いたい人って誰だろう。今は瓦礫の下にいる家族? また明日ね、と言って別れた友達? 二ヶ月くらい前から付き合い始めた彼氏?
「会いたいよ──芽衣」
けれど唇が勝手に名前を紡ぐ。そうして確信してしまう。私はずっと、あの子に会いたかったのだ。幼なじみで、可愛くて、歌がうまくて、なによりも大切な私の友達に。もう手の届かないところで輝いている、私の一等星に。
初めはただのお遊びだったのだ。クラスでサイトに動画を投稿するのが流行っていて、それなら、と私と芽衣は歌ってみた動画を投稿することにした。私は幼い頃にピアノを習っていたから簡単な曲なら弾けたし、芽衣は可愛くて歌が上手かった。アカウント名は私の名前と芽衣の名前を少し変えて合体させただけ。撮影機材なんてなくて、私のスマホで撮影したものをそのままアップした。音質も画質も悪かったけれど、内輪でウケればそれでよかった。
それでよかった、のに。
やはり本物というのは、どんな環境でも眩く光るものらしい。その動画は瞬く間にサイト内ランキングで一位を獲得し、SNSで拡散され、光の速さで世界中が与渚エメを知った。動画にはあの子への称賛のコメントが溢れかえり、世界中の人々があの子を求めた。ついでにピアノが下手というバッシングもあったが、それはどうでもよい話だ。
国内大手の芸能事務所が芽衣をスカウトしにきたのは、動画を投稿してから一週間後のことだった。異例の速さだった。それだけ芽衣の才能が特異だったということだ。
芽衣は誰にも──私にも相談せず、スカウトを受けた。そうして別れも告げず、私の目の前から消えたのだ。それが三年前、私たちが中学三年生のときのことだった。それきりあの子から連絡が来たことは一度もない。
スマホの連絡先アプリを開いて、さ行までスクロールする。「坂江芽衣」の連絡先はまだそこにある。当たり前だ。生まれたときからの付き合いなのだ。お互い初めてスマホを買ったとき、真っ先に交換したのはお互いの連絡先だ。
そっと電話番号に触れる。けれど、これは三年前の番号だ。芽衣だってとっくにスマホを替えているだろうし、大体あの子はライブ中だ。世界の終わりまで人々に女神の歌声をお届けするために、星が降る下で歌って踊るのだ。
しかし私の指は、発信ボタンをタップした。スマホを耳元まで持っていく。コール音が鳴り響く。一回、二回……。十回数えて、繋がらなかったら諦めよう。
八回、九回、十回……。
十五回数えても、繋がらなかった。
当たり前だ。あの子は女神で、世界中の人々から望まれていて、ステージの上で輝くのだ。星がなんだ、笑わせる。そんなものがあの子の輝きに勝てるものか。
それでも、世界が終わるこんな日には、奇跡が起こってもよいと思った。
「そう、思わない? 夜凪」
澄んだ声が響く。私のスマホと、そして背後から。
ゆっくりと振りかえる。スマホを握りしめたまま、ブランコから立ち上がれないまま。身体中の細胞が、そこにいる、と叫ぶ。その懐かしい姿を、瞳がとらえる。
「おかえり、芽衣」
「ただいま、夜凪」
目の覚めるようなブルーのワンピースを、泥だらけの煤だらけにした私の幼なじみが、そこに立っていた。
「なんで、ここに……ライブ中じゃ。というかどうやって」
慌ててスマホにライブを映す。思わず目を見開いた。舞台の上ではあの子ではなく、別のアイドルが歌っていた。流れているのは私の知らない曲だ。片思いのラブソングで、苦しげに眉を寄せて、甲高い歌声を響かせている。いや、苦しそうな表情には他に理由があるのかもしれない。
「与渚エメは引退よ。違約金なんて知ったことか。どうやって、は聞かないで。色々と、としか答えられないわ。どのみち今日で世界が終わるんだから、関係ないわよ」
「そ」
それはそうだけれど。いやそうじゃない。色々聞き捨てならない言葉もあった気がするが、問題は、あの子のライブのことじゃない。
「どうして、芽衣はここに来たの」
声が震える。もう二度と会えないと思っていた。何も言わずに目の前から消えて、はるか高みの舞台の上でスポットライトを浴びるあの子。なによりも眩しくて、綺麗で、秘密に包まれた美少女。
そういうものに、私の幼なじみはなってしまったのに。
芽衣は少し気まずそうに目を逸らして、私の方へ歩いてきた。そして私の隣のブランコに座ると、地面を蹴ってブランコを揺らす。
「星が、降ってきたでしょ」
「う、うん」
今も、白や赤や青色の尾を引いて、いくつもの星が降り落ちている。夜空はバラバラに割れて、地平線近くから天頂まで、明るい赤色から深い紺色のグラデーションを描いている。時々爆音が聞こえて、地面が揺れる。
世界の終わりまで女神の歌声を聴こうとしていた皆さん、すいません。あなたたちの女神は、今、私の隣でブランコ漕いでいます。
「だから、私も夜凪のところまで降ってもいいかと思って」
「あなたはスターだから?」
揶揄うような私の口調にも、芽衣は微塵も揺らがなかった。胸を張り、真っ直ぐに私を見据える。その鮮やかな緑の瞳は、私の心の奥底まで見透かしそうだった。
「そうよ。与渚エメはスターだったから。私はいつだって輝いていたでしょう」
「……うん。そうだね」
目を閉じる。目蓋の作った暗闇に、舞台で歌うあの子の様子が蘇る。私は何度もあの子のステージに足を運んだ。観客の眼差しを一身に集め、様々な色の光を受けて輝くあの子。華奢な体からは信じられないような声量で朗々と歌い上げ、美しいかんばせに正確無比な笑みを浮かべていた。ダンスのステップは緻密で、どんなに複雑な振り付けでも軽々と踊ってみせていた。
「とっても輝いていたよ」
私の言葉に、芽衣はなぜかほっと息を吐いた。ブランコを漕ぎながら、燃える街へ目をやる。
「あーあ。世界はもうめちゃくちゃね。私の住んでたアパートも、もうなくなっちゃったかしら」
「たぶんね。私の家にも星が直撃したし」
私と芽衣は近くに住んでいた。私たちを産む際に、母親同士が病院で仲良くなったのが、この縁の始まりだった。
芽衣がブランコを止める。
「それじゃ、おばさんたちは……?」
首を横に振った。芽衣はなにも言わず、黙って目を閉じ、祈りを捧げた。それだけで、聖女が教会で厳かな儀式でもしているかのように見えた。
私は薄く笑う。
「いいんだ。私は最後に、芽衣に会えたから。もう二度と、こんな風に会話を交わすことなんてないと思ってた。芽衣は私のこと忘れたかと」
「どうしてそんな風に?」
芽衣が目を見開く。長い金色の睫毛が震え、ブランコの鎖を握る手の関節が白く浮いた。
「どうしてって、芽衣はなんにも言わずにスターになっちゃったから。一応、ピアノ弾いてたのは私なんですけど? 動画投稿したのも私だし?」
違う。こんなことが言いたいわけじゃない。私のことなんてどうだってよかった。私の演奏には人の目を惹く輝きがない。小学校まで嫌々ピアノ教室に通っていたくらいの腕前だ。そもそも私自身が、私の演奏に価値を見出していないのだから。
そうだ。私が価値を見出していたのは、私自身じゃない。
芽衣、あなたなんだよ。
私にとって、あなたが至高だったんだ。
歯を食いしばり、喉奥から唸り声を絞り出す。
「どうして、さよならを言ってくれなかったの」
別れを告げてくれればよかった。そうすれば諦められた。あの子の出演する番組を全て録画して、毎日あの子のSNSをチェックして、ライブの抽選に一喜一憂することもなかった。
その輝きに目を灼かれて、あなた以外見えなくなってしまうこともなかったのに。
唇を噛んで、空を見上げる。いくつもの星が流れ、雨のように地上に降り注ぐ。
芽衣が微笑んだ。
「夜凪は、綺麗なものが好きでしょう」
「まあね。というか、嫌いな人なんていないよ。与渚エメの人気ぶりを見てよ。老いも若きもみんなあの子に夢中だったよ」
「他の人間なんてどうでもいいのよ!」
星が降る。近くに落ちたらしく爆音がここまで届く。遅れて爆風が襲い、私は思わず芽衣に飛びついて地面に伏せさせた。凄まじい風とともに、石や木の枝がバラバラと私の体を打つ。それでも決して芽衣は傷付けまいと、私は唇をひき結んで腕に力を込めた。
やがて風が収まる。密着していた身体を離し、腕の中に視線を向けた。
芽衣は真っ直ぐに私を見つめている。私はなにも言えず、黙って芽衣を見下ろした。
「どうして星は美しいと思う?」
「え……?」
「手が届かないからよ」
言い切って、芽衣は私の頬に両手を伸ばした。その爪には桜色のラメ入りネイルが塗られ、ちらちらと光を反射していた。白くて細い指が、私の頬を包む。芽衣の手は冷たかった。
「スターになれば、画面の向こうの存在になれば、きっともっと輝ける。神秘のヴェールを被って、知らない顔を見せて、変化し続ければ、きっと夜凪は私を好きでい続けてくれる──そう思ったから、私は女神になったのよ」
芽衣の手に優しく引き寄せられ、顔が近づく。気づいたときには、柔らかな唇が、ふに、と私の唇に押し付けられていた。
間近で見ても、芽衣は綺麗だった。白い額には煤がついて、髪に飾られたリボンは取れかけて、メイクだって崩れていたけれど、やっぱり私の友達は世界で一番美しかった。
女神なんかじゃない。
星なんかじゃない。
だって芽衣は、私のそばにいる。手の届くところに、それどころか、私におとなしく抱きしめられている。
どこにでもいる、私と同い年の女の子だ。
それでも、あなたはこんなにも美しい。
知ってるよ。手が冷たいのは緊張してるんでしょう。いつもより声が低いのは、ちょっぴりヤケになっているんでしょう。心臓が飛び出しそうなほど強い鼓動を刻んでいるのも分かってるよ。だってこんなにも近くにいるんだから。
それでも、私に想いを伝えようと、ここまで来てくれた。
世界の終わりの日に。
星の降る夜に。
それが美しくないわけ、ない。
私は身体を起こし、芽衣の腕を取って立ち上がらせた。彼女は少し俯いて、目を合わせようとしなかった。
私は腕を伸ばし、その小さな顔を上向かせ、今度は自分から口付けた。
芽衣の瞳が見開かれる。その宝石みたいな眼に、私の姿が映るのが心地よかった。
「違うよ」
唇を離して囁く。
「星が美しいのは、手が届かないからじゃない。星はただそこで輝いているだけで美しいんだよ」
芽衣がへなへなと崩れ落ちた。真っ赤になって顔を押さえ、呻き声を上げている。
「夜凪は本当に……」
「うん?」
私もしゃがんで芽衣と視線の高さを合わせた。
「そういうことを言うと、私は調子に乗るわよ」
「調子に乗るとどうなるの?」
首を傾げる。芽衣がガバッと顔を上げると、私の胸ぐらを掴んだ。
「手が届いても、美しいって言ってくれるなら……」
「うん」
「私は、夜凪のそばにいたい。一番近くで、私が歌っているのを見て、綺麗だって笑ってほしい」
芽衣の顔はくしゃくしゃに歪んで、目の奥には冴え冴えとした光が宿っていた。私の服を掴んでいる手はぶるぶる震えて、今にも砕けそうだ。
私は笑う。スマホを手にして、振ってみせる。
「いいよ。世界の終わりまで一緒にいよう。あなたはどこにいたって輝いてるってこと、証明してあげる」
こうして、星の降る夜空の下、なんの変哲もないうらびた公園で、与渚エメの最後のライブが始まった。
三年間更新のなかった与渚エメのアカウントで、唐突に始まった生放送。それは型落ちのスマホで撮影されているから、音質も画質も最悪で、ラグもある。画面だってところどころでブレて、ずっと見ていると酔ってしまいそうだった。
拙いピアノの音さえもなくて、エメはアカペラで歌う。しかし、音程を外すこともなく、激しい振り付けのダンスを軽やかにこなしてみせる。
彼女が選んだのは、デビュー曲だった。失恋した女の子が、それでも恋を忘れられず、心を引き裂かれながら叫ぶような曲だった。
彼女は歌う。衣装は泥だらけで、スカートの裾にはかぎ裂きができていて、絹のような髪もボサボサだ。メイクはついに完全に汗で流れ、目の淵にマスカラの隈ができていた。
それでも、彼女は美しい。
画面の向こうに訴えかけるような切実な眼差しを向けて、透き通るような声で切なく歌い上げる。
あっという間に視聴者数は百万人を超え、光の速さでコメントが流れる。『エメ? 本物?』『ライブはどうしたんだ?』『絶対エメちゃんだよ』『可愛い』『最後に見られてよかった』『歌うめえ』『これどこだ』『この歌好き』etc.etc.
空から降り注ぐ星の数が増えてきた。ひっきりなしに爆音が鳴り響き、時々熱風が吹き寄せる。今までここに星が落ちなかったのが奇跡みたいだ。
燃える星の引く尾が重なり、数多の色の光が作り出される。あまねく地上を照らすそれは、スポットライトのようにこの舞台を染め抜いた。
紫色の夜空を切り裂いて無数に降り続く流星雨を背に、彼女は私に手を伸ばす。
確実に、私はあなたと目が合った。
微笑み合う。失恋の歌なのに、そんな風に笑ってしまっていいのかな。眩しすぎて、あなたが幸せの絶頂ってこと、分かってしまうけれど。
『ねえ、会いに来て
私はここにいるよ
会いに来て
私はずっと待ってるの──』
星が降る。
世界が終わる。
けれども、あなたは輝き続ける。
(了)
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