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彼女に嘘をついた男

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数日後、仕事から帰る途中だった。

突然、背後から何か鈍器のようなもので叩かれ気を失った。





気がつくと大きな円形の広間にいた。
手錠が後ろ手にかけられていた。


「起きたか」


少し離れた先

椅子に、玉座に座る国王がいた。


  
ここは王宮の中?



「どうして……?」

「君の魔力だよね? あの青い光は。誰かの魔力を判定していたんだよね?」


「なぜ……」

なぜ知ってる?

「君が使った魔法の光について報告を受けた時、昔見た光に似てるなと思ってね」

国王は立ち上がった。そしてこちらのほうに向かって歩き出した。




「その光はある男がみせてくれたんだ」

そして私の目の前で立ち止まった。


「時計職人だったかな、まぁそれは表向きの職業で、魔力判定師として父さんのもとで働いていたんだ」










まさか

「で、自分の魔力が知りたくてその男を城に呼んで、判定させたよ。だけどあの男、恐れ多くも王太子の私に魔力はないなんて言いやがったんだ」














「王家の私が魔力を持ってないわけがない。むかついたからその場で斬り殺したよ」














「それで、あの男の家族も殺すよう兵に命じた――」
「なぜ家族も、家族も殺したんですか?」

思わず聞いてしまった。

すると国王は後ろを振り向き、先ほどまで座っていた玉座の方を見た。

「父さんの名を使って人を城に呼ぶことはまずかったからね……」

そしてこちらに顔を戻した。その顔は

「それに父さん、あの男を信頼してた。だから家族全員行方不明という形にすれば都合がよかったんだ」

微笑んでいた。





「昔話もここまでにしておこう」



父と母を殺したのは





「今日、ここに君を連れてきたのには」



今、目のまえにいるやつ




「二つ理由がある、まずは」



許せない



「君が判定したのは誰だ?」






許せない、絶対に、許せない。許せるはずがない。










「どうした? 答えられないのか?」




だけど


「いえ、旅の方です。今はどこにいるのか……」

「嘘をつくな!  君の妻だろ? それは調べがついてる! で、その妻はどこにいる?」






だけど


「彼女は……」


落ち着け


「彼女は今出かけてます。場所は分かりません」


「探して捕まえろ」



息がつまった。息がつまりながらも冷静に抵抗を試みた。

「彼女は、彼女の魔力は人を傷つけるものじゃないです!」

「そんなことはどうでも良いんだ」

「……え?」

「魔力を持つ者は皆、殺す。本来なら君も殺すことになるけど、魔力判定師は必要だからね。つまり、君はこれから私のために働くんだ」



「もし……私が断ると言えば?」

 「その時はためらわず、君を殺す。だけど、それだけじゃ済まないよ」

国王は広間の端にある窓のほうに目線を向けた。


「だって、君の父と母が今どこに住んでいるのか、もう分かってるからね」






その時、私はどんな顔をしてただろうか。

押さえきれない、気持ち。

〈お前の言うことなんて聞くか。お前は……私の父と母を殺した! 判定が気に食わなくて殺した? 家族全員行方不明の形にしたくて殺した? ふざけるな! ……殺す、今いる大切な人達のためにもお前を絶対殺してやる!〉




そんなことを叫べば良かったのだろうか。

だけど私はこの時、ぎりぎりのところで

本当にぎりぎりのところで冷静になれた。


これも彼女の魔力のおかげだったと思う。


「分かりました」

「よし、明日兵とともに出発せよ 。三日以内に見つけ出せ」



その後

王宮を出た。


しばらく道を歩き、そこで立ち止まった。




雨が降っていた。


髪の毛がずぶ濡れになった。



地面に水溜まりができ、そこに自分の顔が映った。



顔をあげ、前を向いた。

そして

走り出した。


あの日のように走った。


向かった先は、長老の家だった。


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