DTガール!

Kasyta

文字の大きさ
上 下
446 / 453
BACK TO THE ・・・・・・

二話「契約の儀」

しおりを挟む
「えーっと・・・・・・ひとまず頭を上げて、現在の状況を説明してもらえませんか?」

 頭を下げたままの巫女に、俺は言葉をかけた。
 結界を破って逃げ出すにしても、情報を仕入れておいて損は無いだろう。
 今の俺に分かっているのは、どうやらここが日本らしいということくらいだしな。

「分かりました。ご説明いたします。」

 巫女の説明によると、俺は妖怪と戦わされるために召喚されたらしい。

「いや、ちょっと待って!? もっと初めの方から話して欲しいんですけど!?」
「初めの方・・・・・・とは?」

「そもそも此処は何処なのか、とか。日本・・・・・・なんだよね?」
「はい。日本で間違いありません。」

 やはり日本で合っていたようだ。
 だが気になることは他にも山ほどある。

「それじゃあこうしよう。私が質問するからそれに答えてくれる?」
「招致しました。」

 俺は知りたいことを質問していき、それに答えてもらう。
 どうやら、俺が居た頃の数百年後の日本らしい。嘘だろと思いたいが、こんな普通に河童が出てくるような世界ではなかったし、さもありなんといった感じ。
 ある時、日本国内で妖怪が大量発生し、多くの被害が出たのが始まりである。
 原因は後になって判明したのだが、いつの間にか世界に溢れていた妖力によって、封印されていたり眠ったりしていた妖怪が活動を始めたのだという。
 だが政府やいくつかの団体は事前に察知しており、最悪の事態は免れることができたという話だ。

 そういえば転生させられる時にそんな話を聞いた気がするな。
 地球に魔力が漏れないように、魔力を持った魂を異世界へ転生させていたはずだ。
 対処療法だと言っていたので、それが間に合わなくなってしまっての結果なのだろう。
 でもその対処療法のおかげで人類が滅亡するような事態にはならなかったということか。

 そして世界は魑魅魍魎が跋扈する世界に変わってしまったのである。
 そんな魑魅魍魎から人の世を取り戻さんと戦っているのが、ここに居る彼らなのだそうだ。
 それにしては規模が小さいような気がするが・・・・・・それだけ人類側が追い詰められてるってことか?

 その魑魅魍魎に対抗するための手段の一つとして、式神とかいうのが存在するらしい。
 まぁ、要するに召喚獣的なやつだ。
 それで俺が召喚されたらしいが・・・・・・どうしてそうなった。

「どうして私が召喚されたんですか?」
「そ、それは・・・・・・。」

 この質問には言葉を濁してしまう巫女。
 答えを待っていると、代わりに隣の河童が口を開いた。

「術者の実力に見合った式神が召喚されるようになっておりますじゃ・・・・・・本来ならば。」
「本来ならば・・・・・・? つまり私はイレギュラーだと?」

 河童が頷いて答える。

「左様でございますじゃ。式神様の妖力はこちらの巫女よりも遥かに高く、契約の紋を刻んだとて、式神様を操るようなことは出来ぬでしょうな。」

 ということは、俺の存在は彼らにとっては持て余すものだということか。

「でしたら、私を元の世界に帰してもらえませんか?」
「も、申し訳ありません・・・・・・! 里の総力をもってしても式神様ほどの力を持つ御方を帰すだけの送還術は発動出来ないかと・・・・・・。」

 巫女がもう一度深々と頭を下げる。
 うん、分かってた。そう簡単に帰れるはずないよねー・・・・・・。

「はぁ・・・・・・分かりました。とりあえず衣食住くらいは用意してもらえるんですよね?」
「も、勿論です! では早速契約の儀を・・・・・・。」

「それってやらないとダメなんです?」

 俺に効果があるのかは未知数だし、そもそもよく分からない契約なんて結びたくはない。
 どうせなら自由に動けるようにしておきたいしな。

「え、えぇと・・・・・・。」

 口ごもる巫女に代わってまた河童が答える。

「召喚された式神は不安定な存在であるため、契約の紋には式神をこの世に留める力もあると聞き及んでおりますじゃ。」
「不安定、というのは?」

「この世に留める力が無ければ、次元の狭間へ引きずり込まれやすくなるとも言われとります。」
「それは元の世界に帰されたということでは?」

「送還術を使ったのでなければ、儂らには判断がつきませんのじゃ。全て古い書に記された情報ですので、判断は式神様のお好きなようになさってくだされ。式神様の御力であれば、このような結界も容易く砕けるでしょうしの。」

 この河童にはお見通しだったか。
 しかしイヤな情報を聞かされてしまった。これじゃあ契約を断るということは出来ないな。
 この世界から更に変な場所へ飛ばされるよりも、ここに残って元の世界へ帰る方法を見つける方が良さそうだ。
 おそらく契約の儀というのも魔力を介して行う術のはず。魔力の流れを解析してやれば、いざとなったとき解除することも可能だろう。

「分かりました。契約の儀をお願いします。」
「あ、ありがとうございます! では私の呪言に続き『”ケいやク”』と唱えてください。」

 『”契約”』ね。
 俺は了承の意味を込めて巫女に頷いた。
 その様子を見て取った河童は、俺たちの傍を離れて魔法陣の外へ向かう。

「それでは、参ります。式神様、手をこちらへ翳してください。」

 巫女はそう言って手のひらを俺に向けると、不協和音のような共通語を唱え始めた。
 俺は巫女の手のひらと向け合うように手のひらを翳す。
 不協和音に思わず耳を塞ぎそうになったが、ここはガマンだ。

『――なんジ と われ たまシいを交わし つなギトめん ”ケいやク”!』
『・・・・・・あ、”契約”。』

 俺が答えると、結界の中に描かれた魔法陣が光りを放ち、外側の魔法陣へと伝播するように広がっていく。
 ”契約”がこの魔法陣の起動語だったようだが、巫女の言葉では発音が悪すぎて起動しなかったらしい。
 結界へと注がれていた魔力が途切れ、互いの手のひらの間に集まっていく。
 なるほど、魔力の流れを切り替えてそのまま”契約”の方に回したのか。
 しばらくして光が収まると、お互いの手のひらには小さな印が残った。これが契約の印というやつだろう。

「これで終わり?」
「はい、恙無く。」

 改めて手のひらに刻まれた印を眺めてみる。どうやら、魔力の送受信機能があるようだ。
 ただし、こちらから送る魔力の効果は減衰され、受け取る魔力の効果は増幅されるようになっている。
 巫女に付いた印には、おそらくその逆の作用があるのだろう。

「何かありましたか、式神様?」
「いえ・・・・・・あぁ、契約したあとに聞くのもなんですけど・・・・・・。」

「何なりとお聞きください。」
「教えてくれますか? あなたの名前。」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...