DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

00056話「夜明け」

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 穴へ落ちていった頭でっかちのゴブリンの魔力の気配が消えると、手下のゴブリンたちが一斉にざわめきだした。
 同時に数体が無秩序に叫び声を上げながら襲い掛かってくる。

「はぁっ!」

 襲い掛かってきたやつらを魔法で撃ち、触手で貫き、剣で斬り伏せる。
 さらに次、また次に襲ってくるゴブリンたちを倒していく。
 だがあの頭でっかちのゴブリンに命令されていた時ほどの脅威は全く感じられない。
 統率が取れていないどころか、同士討ちまではじめたのだ。いや、この場合は共喰いと言った方が正しいか。
 お陰で形勢は大乱闘状態。1対多数に比べれば圧倒的にこちらの有利になったのである。

 ゴブリンたちは敵味方の区別は付いていないようで、近くの相手は食料にしか見えてないようだ。
 もとよりこの数である。わざとギリギリまで飢えさせていたというよりは、そうしなければこの規模の群れを維持出来なかったのだろう。
 そして頭でっかちのゴブリンの洗脳によって抑えつけられていた飢餓感が一気に解放され、本能のままに動きだしたのだ。

「あれ、これってわざわざ戦わなくてもいいんじゃ・・・・・・?」

 触手を使って上空まで逃げると、俺を狙っていたゴブリンたちが近くに居た別のゴブリンを襲い始めた。
 時間が経つとともに、数えきれないほどあったゴブリンたちの気配がみるみる消えていく。
 一斉に同士討ちを始めたのだから、当然と言えば当然だろう。

「こりゃ楽だな・・・・・・って言っても、眺めてるだけってわけにはいかないか。」

 上空から魔法を撃ち、ゴブリンの数を減らしていく。
 焼け石に水程度だが、何もしないよりはマシだろう。
 さらに10体、20体、30体と仕留めていく。
 そして――

「い、今ので何体目だ? まぁいいや、とにかく・・・・・・終わったーーーー!」

 周囲に魔物の気配は無し。ついにやり遂げたのだ。
 白みはじめた空から覗く太陽の光が、まるで俺を祝福するかのように降り注いでいる。

「ふぁ・・・・・・。もう朝か、どうりで眠いはずだ。」

 だがまだ眠るわけにはいかない。
 インベントリから箒を取り出し、それに跨って街の上空を飛んでいく。

「ひどいな・・・・・・。」

 街中に居た魔物の掃討は済んでいるようだが、明るくなったことで被害の大きさが露わになっている。
 崩壊してしまった建物もあちこちに見られる。
 防衛隊員や傭兵団たちが協力して住民たちの救助にあたっているようだ。

「やっと博物館に着いたか・・・・・・長い夜だったな。」

 博物館に降り立つと、カレンたちが駆け寄って来る。

「無事だったか、アリス!」
「はい、カレンさんたちも大丈夫ですか?」

「あぁ、アタシらは大丈夫だが・・・・・・。」

 カレンがチラリと視線をやった方を見ると、住民たちが人だかりを作っていた。
 近づいてみると、何かを取り囲んで祈りを捧げているようだ。
 一番後ろにいる住人に声を掛けてみる。

「何をしてるんですか?」
「勇者様に祈りを捧げておるんじゃよ。」

「勇者様・・・・・・って、キシドーたちのことか。」

 この博物館とコレットたちを守るように頼んでいたはずだ。
 人ごみをかき分け、先頭へ進む。

「キシドー・・・・・・! メイ・・・・・・!」

 人だかりの中央には、バラバラになった鎧と人形のパーツが地面に転がっていた。
 地面に突き立てられた剣の柄にはしっかりと籠手が握られている。

「あの、一体キシ・・・・・・勇者様たちはどうなされたんですか?」

 近くに居た住人に話を聞いてみると、魔物を倒し終えたと思ったら崩れてしまったらしい。
 一緒に戦っていた兵士たちを庇い、何度か攻撃を受けていたようなので、限界にきてしまったのだろう。
 キシドーたちだって1000年も前の代物だ。ガタがきていてもおかしくない。
 それにあの頃の魔物に比べるとゴブリンでさえ遥かに強かった。
 1000年前を基準に造られたキシドーたちが耐えられないのは無理もないか・・・・・・。

「あの・・・・・・私も祈らせてもらっていいですか?」
「あぁ、お嬢ちゃんの活躍は兵士さんたちに聞いてるよ。一番前にどうぞ。」

 膝を折り、突き立てられた剣に黙祷を捧げる。

「待っててくれてありがとうね、キシドー、メイ。」

 数分間祈りを捧げた後、立ち上がってその場を離れようとすると――

「ア、アリスちゃん!」

 コレットが抱き着いてきた。

「わっ、コレットちゃん、大丈夫だった?」
「う、うん・・・・・・!」

 人だかりから離れ、カレンの元へ向かいながらコレットと話す。

「ア、アリスちゃんは・・・・・・大丈夫?」
「うん、だいじょう――」

「ア、アリスちゃん!?」

 フラっと倒れそうになったところを、慌てて駆け寄ってきたカレンに抱きとめられる。

「ど、どうしたのアリスちゃん!?」

 コレットとカレンが不安そうに覗き込んでくる。

「あはは、さすがにこの体で徹夜明けは眠くて・・・・・・あとはお願いしますね、カレンさん。」

 黙祷していた時も寝てしまいそうになったのは内緒だ。

「ったく・・・・・・あぁ、任されたよ。」

 こうして長い一夜は俺の眠りとともに明けたのだった。
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