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BACK TO THE ・・・・・・
00048話「勇者降臨」
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「博物館は確かこの先に・・・・・・あった!」
街中を一気に翔け抜け、俺たちは博物館へと辿り着いた。
しかし――
「な、何だあれ・・・・・・?」
博物館は物々しい雰囲気に包まれていた。
あちこちに設置された魔道具の照明が、まるで昼のように煌々と夜の街を照らし出している。
周囲には魔導装甲車が数台並べられ、武装した兵士たちが魔導銃を持って警戒態勢をとっているようだ。
装備を見るに防衛隊員ではなさそうだが、傭兵団にしては装備の質が良すぎる。
というより、防衛隊が持っている装備よりも質が良さそうだ。
魔物の死体も積み上げられており、交戦した後だというのも見て取れる。謎の一団ではあるが、少なくとも敵ではないように見える。
少し離れたところで博物館から死角になる場所に降り立ち、触手で掴んでいたコレットとコレットの母親を降ろす。
「二人はここで待っててください。私は博物館の様子を見てきます。」
「だ、ダメよアリスちゃん! 危険だわ!」
確かに相手の素性がわからない以上、不用意に近づくのは危険かもしれない。
だが結局、時間が経てばカレンたちとも鉢合うことになるのだ。それなら先に確認しておいた方が良いだろう。
「大丈夫ですよ。いざという時は何とか出来ると思いますし。」
「け、けど・・・・・・。」
コレットの母親の説得を試みていると、袖がクイと引かれる。
「ア、アリスちゃんと離れるの・・・・・・イヤ。」
「う・・・・・・分かったよ・・・・・・。その代わり、危険だと思ったらさっき見たいに二人を魔法で抱えて逃げますからね。」
二人を連れ、手を上げながら謎の一団に近づいていくと・・・・・・。
「あ! あなたたち、そこに居ては危険です! 早くこちらへ! 皆、避難者だ! 警戒を頼む!」
あっという間に俺たちは兵士たちに囲まれ、手厚い保護を受けることになった。
どうも拍子抜けだ。
彼らの姿を見て、何かに気付いたらしいコレットの母親が声を出す。
「あら、その紋章は・・・・・・テルナ商会の?」
「えぇ、我々はテルナ商会の私設兵団です。」
私設兵団!? そんなものまで備えてるのか、さすが世界に名を連ねる商会の一つだ。豪華な装備もテルナ商会の財力の賜物ってわけか。
話を聞くと、彼ら私設兵団はいくつかの部隊に分かれ、博物館のように丈夫な建物を確保し、そこを拠点として民間人の救助に当たるらしい。
今はその設営段階と言ったところだ。
警報が鳴り始めてから数時間ほどだが、かなり早い動きだろう。
なんというか・・・・・・防衛隊より頼りになるんじゃないか?
まだ本格的な救助活動は始まっていないようだが、案内された博物館の中には既に数十人の人たちが避難していた。彼らは勇者の像の周りで身を寄せ合い、肩を震わせている。
「さぁ、君たちもここで大人しくしていてね。」
「ありがとうございます。それから、あの――」
俺はカレンの一団がこちらへ向かっていることを案内してくれた兵士に伝える。
「なるほど、民間の傭兵団か・・・・・・。人手が増えるのはありがたい。出迎えるよう他の者にも通達しておくよ。」
「それで、私が迎えに行きたいんですけど。」
「・・・・・・・・・・・・えぇ!? だ、ダメだよ! 君みたいな子供が! お母さんが心配なのは分かるけど、大人しくしててね。」
そう言葉を残し、忙しそうに駆けて行ってしまった。
やっぱ行かせてはくれないよなぁ・・・・・・。
まぁ隙を見てどうにか抜け出すことは出来るだろう。何しろ彼らの人員が全く足りていないのだ。避難民の監視に割く人員など居ないのである。
ただ彼らの人員不足は俺にとっても大問題。コレットたちを安心して任せることが出来ないのである。
救助に人員を割くということは、ここの護りを薄くすることと同義なのだ。
「あ、そういえばこの博物館には・・・・・・。」
「ど、どうしたの、アリスちゃん?」
「ちょっと用事があるから、行ってくるね。」
俺は私設兵団たちの目を盗み、館内を移動していく。と言っても、彼らは作業の合間に様子を見に来るくらいなので何ら問題は無かった。奥まった場所になればもう目が届かない。やはり人員が足りていないようだ。
記憶を頼りに通路を進んでいくと、ついにそれを見つけた。
「キシドー。メイも行ける?」
俺が声をかけると、佇んでいた騎士の鎧とメイドの人形が動き出した。
彼らなら、救助には加われずとも防衛の戦力になるだろう。
「これから少し働いてもらうから、またよろしくね。」
俺の問いかけに二体が頷いた。
彼らを連れて元の場所へ戻ると、避難民たちが騒ぎ出した。
「な、なんだあれは!?」
「人・・・・・・?」
「魔物か!?」
あー・・・・・・こんな時代に鎧が動いてたらみんな驚くか・・・・・・。
何か良い方法は・・・・・・と考えていると、勇者の像が目に入った。
これだ!
「ゆ、勇者さまが来てくれたんだよ!!」
その言葉と同時に、後ろ手でちょいちょいと指示を出す。
キシドーが勇者の像に向かって歩き出すと、避難民たちがモーゼの海割のように道を開ける。
勇者の像へと辿り着いたキシドーは、像が手に握っている土剣を奪い取った。
バキィッ!!
あ、像の腕が折れた・・・・・・。
剣を手にしたキシドーは勇者の像と同じように天高く掲げる。
「おぉ・・・・・・ゆ、勇者さま・・・・・・。勇者さまがご降臨なされたぞ!」
避難民の中に居たお爺さんが声を上げると、徐々に周りにその熱が伝わり、歓声が大きくなっていく。
「何ですか、この騒ぎは・・・・・・魔物っ!?」
騒ぎを聞いて駆け付けた先ほど案内してくれた兵士が、キシドーに向かって魔導銃を構えた。
しかしその魔導銃をお爺さんが叩いて、兵士を混乱させる。
「何をやっとるんじゃ馬鹿者! 勇者さまがご降臨なされたのじゃぞ! この罰当たりめ!」
「え? は? ハァ、スミマセン・・・・・・。」
アナタは間違ってないと思うよ、兵士さん・・・・・・。
ともあれ、防衛力の問題に関しては幾分かマシになりそうだ。
街中を一気に翔け抜け、俺たちは博物館へと辿り着いた。
しかし――
「な、何だあれ・・・・・・?」
博物館は物々しい雰囲気に包まれていた。
あちこちに設置された魔道具の照明が、まるで昼のように煌々と夜の街を照らし出している。
周囲には魔導装甲車が数台並べられ、武装した兵士たちが魔導銃を持って警戒態勢をとっているようだ。
装備を見るに防衛隊員ではなさそうだが、傭兵団にしては装備の質が良すぎる。
というより、防衛隊が持っている装備よりも質が良さそうだ。
魔物の死体も積み上げられており、交戦した後だというのも見て取れる。謎の一団ではあるが、少なくとも敵ではないように見える。
少し離れたところで博物館から死角になる場所に降り立ち、触手で掴んでいたコレットとコレットの母親を降ろす。
「二人はここで待っててください。私は博物館の様子を見てきます。」
「だ、ダメよアリスちゃん! 危険だわ!」
確かに相手の素性がわからない以上、不用意に近づくのは危険かもしれない。
だが結局、時間が経てばカレンたちとも鉢合うことになるのだ。それなら先に確認しておいた方が良いだろう。
「大丈夫ですよ。いざという時は何とか出来ると思いますし。」
「け、けど・・・・・・。」
コレットの母親の説得を試みていると、袖がクイと引かれる。
「ア、アリスちゃんと離れるの・・・・・・イヤ。」
「う・・・・・・分かったよ・・・・・・。その代わり、危険だと思ったらさっき見たいに二人を魔法で抱えて逃げますからね。」
二人を連れ、手を上げながら謎の一団に近づいていくと・・・・・・。
「あ! あなたたち、そこに居ては危険です! 早くこちらへ! 皆、避難者だ! 警戒を頼む!」
あっという間に俺たちは兵士たちに囲まれ、手厚い保護を受けることになった。
どうも拍子抜けだ。
彼らの姿を見て、何かに気付いたらしいコレットの母親が声を出す。
「あら、その紋章は・・・・・・テルナ商会の?」
「えぇ、我々はテルナ商会の私設兵団です。」
私設兵団!? そんなものまで備えてるのか、さすが世界に名を連ねる商会の一つだ。豪華な装備もテルナ商会の財力の賜物ってわけか。
話を聞くと、彼ら私設兵団はいくつかの部隊に分かれ、博物館のように丈夫な建物を確保し、そこを拠点として民間人の救助に当たるらしい。
今はその設営段階と言ったところだ。
警報が鳴り始めてから数時間ほどだが、かなり早い動きだろう。
なんというか・・・・・・防衛隊より頼りになるんじゃないか?
まだ本格的な救助活動は始まっていないようだが、案内された博物館の中には既に数十人の人たちが避難していた。彼らは勇者の像の周りで身を寄せ合い、肩を震わせている。
「さぁ、君たちもここで大人しくしていてね。」
「ありがとうございます。それから、あの――」
俺はカレンの一団がこちらへ向かっていることを案内してくれた兵士に伝える。
「なるほど、民間の傭兵団か・・・・・・。人手が増えるのはありがたい。出迎えるよう他の者にも通達しておくよ。」
「それで、私が迎えに行きたいんですけど。」
「・・・・・・・・・・・・えぇ!? だ、ダメだよ! 君みたいな子供が! お母さんが心配なのは分かるけど、大人しくしててね。」
そう言葉を残し、忙しそうに駆けて行ってしまった。
やっぱ行かせてはくれないよなぁ・・・・・・。
まぁ隙を見てどうにか抜け出すことは出来るだろう。何しろ彼らの人員が全く足りていないのだ。避難民の監視に割く人員など居ないのである。
ただ彼らの人員不足は俺にとっても大問題。コレットたちを安心して任せることが出来ないのである。
救助に人員を割くということは、ここの護りを薄くすることと同義なのだ。
「あ、そういえばこの博物館には・・・・・・。」
「ど、どうしたの、アリスちゃん?」
「ちょっと用事があるから、行ってくるね。」
俺は私設兵団たちの目を盗み、館内を移動していく。と言っても、彼らは作業の合間に様子を見に来るくらいなので何ら問題は無かった。奥まった場所になればもう目が届かない。やはり人員が足りていないようだ。
記憶を頼りに通路を進んでいくと、ついにそれを見つけた。
「キシドー。メイも行ける?」
俺が声をかけると、佇んでいた騎士の鎧とメイドの人形が動き出した。
彼らなら、救助には加われずとも防衛の戦力になるだろう。
「これから少し働いてもらうから、またよろしくね。」
俺の問いかけに二体が頷いた。
彼らを連れて元の場所へ戻ると、避難民たちが騒ぎ出した。
「な、なんだあれは!?」
「人・・・・・・?」
「魔物か!?」
あー・・・・・・こんな時代に鎧が動いてたらみんな驚くか・・・・・・。
何か良い方法は・・・・・・と考えていると、勇者の像が目に入った。
これだ!
「ゆ、勇者さまが来てくれたんだよ!!」
その言葉と同時に、後ろ手でちょいちょいと指示を出す。
キシドーが勇者の像に向かって歩き出すと、避難民たちがモーゼの海割のように道を開ける。
勇者の像へと辿り着いたキシドーは、像が手に握っている土剣を奪い取った。
バキィッ!!
あ、像の腕が折れた・・・・・・。
剣を手にしたキシドーは勇者の像と同じように天高く掲げる。
「おぉ・・・・・・ゆ、勇者さま・・・・・・。勇者さまがご降臨なされたぞ!」
避難民の中に居たお爺さんが声を上げると、徐々に周りにその熱が伝わり、歓声が大きくなっていく。
「何ですか、この騒ぎは・・・・・・魔物っ!?」
騒ぎを聞いて駆け付けた先ほど案内してくれた兵士が、キシドーに向かって魔導銃を構えた。
しかしその魔導銃をお爺さんが叩いて、兵士を混乱させる。
「何をやっとるんじゃ馬鹿者! 勇者さまがご降臨なされたのじゃぞ! この罰当たりめ!」
「え? は? ハァ、スミマセン・・・・・・。」
アナタは間違ってないと思うよ、兵士さん・・・・・・。
ともあれ、防衛力の問題に関しては幾分かマシになりそうだ。
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