DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

229話「ただいま」

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 トラックの運転席の窓から見えるゆったり流れていく景色を眺めていると、屋根に上っているフィーたちの会話が聞こえてくる。

「・・・・・・見えてきた。」
「あれがそうにゃ?」

「うん、あれがボクたちの村だよ!」

 そう、俺の生まれた村はもう目と鼻の先だ。
 少し身を乗り出すようにして、前方に目を凝らす。
 ・・・・・・お、見えた。

 はやる気持ちと同時にアクセルを踏みかけた足を抑える。
 あんまりスピードを出し過ぎると振り落としてしまうからな。

 ゆっくりトラックを進めていくと、村を出た時と変わらない門構えが俺たちを出迎えた。
 門構えと言っても、野生動物が入らないよう村を囲った柵に出入り口の穴を開けた程度のものだ。扉なんかも付いていない。
 今見るとすごく頼りないな。

「うわー・・・・・・懐かしい・・・・・・。」

 思わず呟きが漏れる。

「何も変わってないねー。」
「・・・・・・うん。」

 屋根にいるフィーとニーナも同じ気持ちのようだ。
 そのままトラックを村の入り口前まで進め、止める。

「さ、片付けるから皆降りて。」

 皆を降ろしてからトラックをバラしていると、一人の村人が近づいてきた。

「もしかして・・・・・・アリスたちかい?」
「・・・・・・ラスお姉ちゃん!」

 久しぶりに見る懐かしい顔に、フィーとニーナが駆け寄った。

「あぁ、フィー! 大きくなったねぇ! ニーナもすっかり女の子っぽくなっちゃって!」
「えへへ・・・・・・ただいま!」

 村を出た頃はまだ二十歳前だったが、少女っぽさが抜け、短かった赤毛も肩まで伸びてガラッと印象が変わっている。
 エルクたちからラスが一児の母になったと聞いていたが、今でも引き締まった身体は健在で、より頼れる姉御になった感じだ。

「アリスは学園ですごく優秀なんだって? 耳にタコができるくらい自慢してたよ、エルザークさんが。」
「ぅ・・・・・・そんな自慢するほどのものでは・・・・・・。」

「何言ってんの、ババ様も昔からアンタのことを賢しいってホメてるじゃない!」

 ・・・・・・褒めてるんだろうか、それ。

「で、そっちの子らは友達?」
「うん。学友って言った方が良いのかな? 学院では同じ班で、ずっと一緒の部屋で寝泊まりしてたんだよ。」

「へぇー・・・・・・それで、どの子が結婚相手のお貴族様なんだい? 女の子しかいないみたいだけど・・・・・・。」
「ぇ・・・・・・なんでラス姉さんが知ってるの!?」

 そもそも親父たちにだって報告していないのに、どうして彼女が?
 フィーやニーナが手紙を出したとも思えないし・・・・・・。

「なんでって・・・・・・その相手の親御さんが来てるよ?」
「へ・・・・・・? えぇぇぇぇぇぇ!? どういうこと!?」

「聞いてないのかい? アンタたちの結婚式をやるんだって張り切ってるよ?」
「け、結婚式・・・・・・?」

「アンタらが急いで出発しちゃったもんだから、結婚式してないって言ってるけど・・・・・・。」
「それは・・・・・・うん、してないね・・・・・・。」

 フラムの実家には一日程度しか滞在してなかったからな。
 旅程は伝えてあったから、この村のことを知っているのは不思議ではないけど。

「だからアンタたちの先回りをして、この村までわざわざやって来たんだと。」
「えぇ・・・・・・。」

 知らないうちに大変なことになってた・・・・・・。
 リーフの実家に寄らないのなら遠回りせずにこの国に来れるし、迷宮も行って死魔の騒動もあったから時間的余裕もあり、普通の馬車でも先回りすることは十分可能だろう。

「一体いつ頃からこの村に来てるの?」
「もう二週間以上経ってるねぇ。ババ様のとこに泊まってらっしゃるよ。」

 この村じゃ一番デカい屋敷だしな。
 というより、屋敷と呼べるのはババ様のところだけだろう。

「先にババ様のところ行った方が良いかな・・・・・・?」
「普通ならそうだろうけど、今は長旅から戻ったところなんだし、家に寄ってから行けば良いわよ。荷物もあるんでしょう?」

「分かった。ありがとう、ラス姉さん。」

 というわけで、まずは実家に帰ることに。

「ニーナも家に帰るでしょ? 一旦ここで分かれようか。ババ様のところへは私とフラムで行けばいいし。」
「んー、そうだね。じゃあボクは家に帰った後にフィーと合流するよ!」

「ふむ・・・・・・なら、私はニーナと一緒に行こう。あの時、馬車に乗せてもらったお礼も改めてしたいしな。」
「了解。それじゃあまた後でね。ラス姉さんも。」

 ラスと別れの挨拶を交わしてから、ニーナとヒノカを見送り、俺も実家に向かって歩き出した。
 村の中央にある広場には、結婚式のものらしき飾り付けが・・・・・・。とりあえず見なかったことにしよう。
 懐かしい我が家が視界に入ってくると、我慢できなくなったフィーが駆け出す。

「あ、フィー! ・・・・・・ふふっ、余程嬉しいのね。」

 そして、家まで辿り着いたフィーが扉を壊しそうな勢いで中に突入していった。
 ・・・・・・壊れてないよな?

「ア、アリスは、行かなくて・・・・・・いいの?」
「いや、すぐそこだしね・・・・・・。」

 そんな会話をしている間にも歩みは進み、家はもう目の前である。
 どうしよう・・・・・・なんて声を掛けようか、結局思いついていない・・・・・・。
 少し歩みを緩めて時間を稼ごうと思ったが、それは叶わなかった。
 家の扉が開き、中からフィーと手を繋いだサレニアが姿を見せたのだ。
 彼女はこちらに気が付くとニッコリと微笑み、口を開いた。

「おかえりなさい、アリス。」
「ぁ、うん・・・・・・えっと・・・・・・た、ただいま!」
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