DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

227話「関所を越えて」

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「ふぅー・・・・・・やっと抜けたね。」

 運転席から顔を出して、ついさっき通り抜けた国境の関所を振り返った。
 朝早くから宿を発った俺たちは用意してもらった馬車を断り、トラックで道なき道をかっ飛ばしてきたのだ。
 おかげで太陽が天頂から降り始めたころには国境を抜けることが出来た。馬車に揺られていれば数日は掛かっただろう。

「ねぇ、見てあれ! すごい大きな街!」

 屋根に上がったニーナの歓声に、視線を前に戻す。
 関所を抜けた道の先には、事前に情報をもらっていた通りに大きな街が広がっていた。
 前の国とは違い、こちら側は随分活気があるようだ。

「きょ、今日はあの街に泊まるのよね・・・・・・?」

 ぐったりとした様子のリーフが話しかけてくる。

「うん、ごめんね。結構無理したから、みんな疲れたでしょ?」
「そうだな・・・・・・。しばらく景色にはゆっくり流れていて欲しいところだ。」

「ま、まぁ出国はできたから今後は焦らずに行くよ。」

 急ぎ出国するためスピードを出していたせいでリーフとヒノカ、フラムの三人はグロッキー状態なのである。他の三人は喜んでたけど・・・・・・。

「・・・・・・おなかすいた。」「にゃー!」
「わ、わかってるよ。」

 くっ、やはり携帯食を齧らせただけではもたないか・・・・・・。昨日あれだけ食べてたのになぁ。請求額がすごいことになっていそうだ。
 けどまぁ、俺も運転しながら少し食べた程度だから小腹は空いている。街に着いたら少し遅めのランチタイムと洒落込むのも悪くないだろう。

「それにしても・・・・・・結構人が歩いているわね。」
「そうだね。街まではすぐだし、私たちも歩いていこうか。街中じゃコレは目立ちすぎるしね。」

 そう言って道の端へトラックを寄せて解体し、重要な部品だけインベントリに納めた。
 通りすがりの人たちに何事かと目を向けられるが、街の近くでやるよりはマシだろう。
 片づけを終えてみんなと一緒に歩き出すと、いくらもしないうちに街の門まで辿り着いた。

「あれ、この街は検問やってないんだ。」

 しっかりとした外壁と門があるにもかかわらず、旅人たちはみんな門を素通り。この規模の街にしては珍しく、検問を行っていないようだ。
 門番は目を光らせているが、勝手に門を通る旅人たちを止める素振りも見せない。
 ただ何となく落ち着かない俺は、門をくぐる前に門番に声をかけることにした。
 ちょうど目に留まった、頼りなさそうな感じの青年の門番に話しかける。

「あの、すみません。」
「おや、どうしたんだい? 迷子かい?」

「いえ、えっと・・・・・・身分証は必要ないのですか?」

 ギルド証を取り出し、彼に見せながら質問をぶつける。

「ぼ、冒険者!? こ、これは失礼しました!」

 慌てて敬礼する彼を「気にしないでください。」と宥めながら返答を促す。

「この国では国境近くの街での検問は行わないことになっているので、このまま通って頂いて構いませんよ。」
「そうなんですか?」

「難しいことは分かりませんが、その方が儲かるのだそうです。」
「あぁ、なるほど・・・・・・。ありがとうございました。」

「えぇ、では。」

 ついでに宿の場所も聞き、敬礼で見送ってくれる門番に頭を下げてから街の中へ入っていく。
 辺りの様子を見まわしてみると遠くで見たよりも更に活気が感じられ、屋台や露天に並ぶ商品も安い。早々にこちらへ来て正解だったようだ。

「ねぇ、アリス。検問しないと儲かるって、どういうことかしら?」

 リーフの問いに、少し考えを纏めてから答える。

「人が集まりやすいからじゃないかな。出国するならここで休んでからって考えるし、入国するなら少し足を伸ばそうって思えるでしょ?」
「確かに・・・・・・そうね。」

 人が集まればお金も物も集まるってわけだ。偉い人も色々考えてるんだな。
 そういや関所の向こう側には古い廃屋がポツポツと並んでいたが・・・・・・こっち側に全部客を取られた結果だったか。
 ちょっと頑張って関所を越えれば、楽に入れて物価も安い街があるのだ。そんな勝負、火を見るよりも明らかである。

「まぁ、それはそれで治安維持とか大変だろうけどね。悪者も出入り自由なわけだし。」
「そうよ! 大丈夫なの、そんな場所?」

「んー、パッと見た感じ綺麗な街だし、悪そうな人も居なさそうだし、上手くやってるんじゃない? 何より、ダメな場所だったらもっと寂れてるよ。」

 門番や巡回の兵士が頑張っているのだろう。強国が強国たる所以か。

「む、先程聞いた宿の場所はあの道に入るのではないか?」

 ヒノカが指した方向には妙に派手な看板。
 何をデザインしたものなのかはよく分からないが、聞いた通り目印にはなる。

「あ、ホントだ。確かに目立つ看板だね、あれは・・・・・・。」

 路地へ入っても人通りは減るものの、ガラの悪い雰囲気は感じ取れない。
 やはりそこまで治安は悪くなさそうだ。

「あれが教えてもらった宿じゃないかしら?」

 路地へ入って少し進むと、門番に聞いた名前の看板を掲げた小さな宿があった。
 少し古い建物だが、補修され掃除も行き届いており、不快な感じはしない。
 扉を開けて中に入ると、店主らしい青年がこちらに気付いた。

「いらっしゃ――おや、どうしたんだい? 迷子かい?」

 どこかで聞いたセリフだ。
 俺は門番に紹介されてきた客であることを告げて、宿泊できるか尋ねた。

「あぁ、弟の紹介で来てくれたんだね。嬉しいなぁ。」

 なるほど。言われてみれば顔立ちはよく似ている。
 あの門番の青年の背を高くして垢抜けた顔にすればこのイケメンが出来上がるのだろう。

「えぇ、その弟さんに、綺麗でご飯が美味しくて安い宿を紹介して欲しいとお願いしたんです。」

 口元に手を当て、クククと笑いを堪える仕草も様になっている。

「やぁ、随分とおっかないお嬢さんだ。客室の清掃は店構えよりも力を入れていますし、食事はこの辺りで一番だと僕は思っています。値段の方は・・・・・・勉強させていただきますよ。如何でしょうか、お嬢様方?」
「じゃあそれでお願いします。」

 そんなやり取りをしていると、店の奥から可愛らしい女性が一人現れ、からかうように店主に声をかけた。

「あら、可愛いお嬢さんと随分楽しそうに話しているのね、アナタ?」
「弟が連れてきてくれたお客さんたちだよ。キミの料理の自慢をしていたところさ。ご飯の美味しい宿として紹介されたみたいだからね。」

「ふふ、それは責任重大ね。今日は頑張らなきゃ!」

 軽めの食事を頼んでから部屋に案内してもらい、荷物を置いて机の上に地図を広げた。

「明日はどうするのよ?」

 急ぐ旅ではないが、前の国で少し時間を掛け過ぎてしまった。
 本音ではもっとゆっくりしたいところだが、出発は明日の予定である。

「東側の関所近くの街を目指すよ。そこでまた泊まって、次の日に出国しよう。」

 この国は大きな国ではあるが、南北に長く、横切るだけならさほど距離は無い。トラックを使えばあまり速度を出さなくても一日あれば辿り着けるだろう。
 そして次の関所を越えれば俺の故郷の村がある国だ。
 まぁ、”村の人間”という意識の方が強すぎて、”祖国”とか言われても全くしっくりこないんだけどね。
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