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がっこうにいこう!
196話「戦地」
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「お、やっと見つけた。」
スライムの迷宮を彷徨って数日。
俺たちはついに次の迷宮への門を見つけることができた。
拾った葉を付け足しまくって半ばミノムシと化したお手製の服とも残念ながらお別れである。
と、思いたい。
「ようやく着替えられるのね。」
「次の迷宮に天井のアレがなければね。」
「い、嫌なこと言わないで頂戴。」
「あはは、ごめんごめん。」
まぁ、同じ迷宮に連続して当たる確率は低いだろう。
次がここよりマシという保証は無いが。
「よし、では行こうか。」
ヒノカを先頭に皆が次々と門をくぐって行く。
全員を見送り、最後は自分。
あばよ、エロスライム。
*****
門をくぐった俺を出迎えたのは、濃い草木の匂い。
そして――
「新シク着任サレタ隊長ニ敬礼!!」
直立不動で敬礼し、整然と立ち並ぶ数体のゴブリンであった。
「えーと、どうなってるの?」
「わ、私に聞かないでよ!」
それもそうか。
現状を把握すべく、まずは首を巡らせ周囲を見渡してみる。
ここは木々に囲まれた場所のようだ。空は曇天。太陽の顔は拝めそうにない。
そこに屋根だけの背が高い簡易天幕を設置し、その下に木箱が数個、長机、どこかの地図が貼られた黒板、そして俺たちが通って来た門。
スペースが狭いため、荷車を引くキシドーは外で待機している。
そして俺たちの前に並んだゴブリンたち。
他の皆も同じ様に挨拶されたのだろう。
で、俺たちを”隊長”と呼ぶからには、このゴブリン達は部下・・・・・・つまりは味方であるらしい。
やはり彼らに聞いてみるのが手っ取り早いか。
「どういう状況になってるか教えてくれる?」
「ハッ! 街ヲ東西ニ二分シ、コボルド軍トオーク軍ガ争イヲ続ケテオリマス。」
黒板に貼られた地図に載っているのがその街らしい。
詳細までは分からないが、全容が掴める内容になっている。
街は四角の外壁に守られており、東西に門が一つずつ。
その門を結ぶように大きな道路が一本。
北側は切り立った崖が天然の外壁となっており、南側には木々が覆う山が連なっている。
おそらく俺たちは南側のどこかに陣を構えているのだろう。
地図にもそう書き込まれてるし。
「ソシテ北側中央ニアル教会ニテ、我ガ同胞ガ抵抗ヲ続ケテオリマス。」
「なるほど・・・・・・で、その同胞とやらを助けに行こうって感じ?」
「ハイ。」
これがイベントってわけか。
そいつらを助ければ門の場所が分かるのか、もしくはその教会の中にあるのかもしれない。
どちらにしてももう少し情報が欲しいところだ。
「街の様子が分かる場所ってある?」
「ハッ、コチラニ――」
「――ちょっと、待ちなさい。」
ゴブリンについていこうとすると、リーフに肩を掴まれる。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないわよ。先に着替えを出してちょうだい。」
「あぁ、そうだね。少し待ってて。」
密閉していた箱から服を取り出してそれぞれに配る。
「あるー、これどうやって着るにゃ?」
「そういやそうか・・・・・・。」
背面部分に大きく穴が開いてしまっているため、服と言うより前掛けみたいな状態だ。
しかも首元の部分まで欠けているので前掛けにも出来ない。
腰から下の部分が無事だったのは救いだな。
「それじゃ、こんな感じでどうかな?」
首元の欠けた部分に鎖を渡し、なびかないよう腰あたりに鎖でベルトを作る。
「これなら葉っぱのヤツより動きやすいにゃ!」
うーむ・・・・・・アレを殺すセーターみたいになってしまったな。
「そ、そんなの着なきゃいけないの!?」
「コレばっかりはどうにもならないね。そのままで良いなら止めないけど・・・・・・。」
葉は全員の肌を隠せる程度には手に入ったので露出度は低めになったが、いかんせん素肌の上に直で着ているのでチクチクして痒い。
寝る時なんかは特に。
しかも擦れて少しずつ破れたりしていることを考慮すれば着替えるしかないのだが。
「じゃあ、着替える人から順番に――」
「――だ、だから待ちなさいよ。着替えるにしても・・・・・・その・・・・・・。」
リーフがチラリとゴブリンたちの方に視線を向ける。
「分かった。着替え用の小屋を作るよ。」
魔物とはいえ、パーティメンバー以外の視線は辛いか。
サーニャは全く気にしていなかったみたいだが。
荷車の土を使って小さめの小屋を作る。
全員入れるほどの大きさではないので、一人ずつ服を調整していく。
とは言っても手間は殆ど掛からず、全員の着替えはすぐさま終わった。
「うぅ・・・・・・背中がスース―するわね。」
「だがまぁ・・・・・・葉で体を覆うよりはマシだな。」
「ハァ・・・・・・そうね。」
ビバ横乳!
半ば諦めた様子の二人を尻目に、直立不動のまま待っていたゴブリンに視線を向ける。
「それじゃあ、案内してくれる?」
ゴブリンに案内されるままついていくと、すぐ近くに街を見下ろせる開けた場所へと出た。
「そこまでおっきな街じゃないねー。」
「・・・・・・それに、ボロボロ。」
荒廃し、家は破壊され、瓦礫が転がっている。
そんな様子が遠目からでも見て取れるほど荒んだ様子。
これじゃあもう人が住んだりは出来ないだろう。
北側の中央にある少し大きな建物。あれがゴブリンの言っていた教会か。
ひどい有様と言えるくらいにはボロボロだが、建物の形は保っている。
「さて、コボルド軍とオーク軍ってのはどんな感じかな・・・・・・っと。」
野営地の長テーブルから拝借した双眼鏡を覗き込む。
軍と呼ばれる割にはどちらも少数規模だ。両軍合わせても50かそこらだろう。
それらが街中で散開して戦っているため戦闘規模は更に小さく、そのためか両軍とも教会を襲うような素振りは見せない。
普通の魔物であれば物の数ではない相手なのだが・・・・・・装備しているものが厄介だ。
コボルド軍が短機関銃、オーク軍が散弾銃である。
あろうことか剣と魔法のファンタジー世界のダンジョン内で魔物が銃を構えてドンパチしているのだ。
魔女たちがノリで魔法を発射する銃を作っていたが、あれとは違いおそらくホンモノだろう。
魔道具に見られる魔力の痕跡が一切感じられない。
コボルドが持ち前の身軽さと連携でオークを四方からハチの巣にし、オークの放った散弾が素早いコボルドを捉える。
そんな一進一退の攻防が続く。
「ねー、ボクにも見せてよ!」
うるさいニーナに双眼鏡を譲り、ゴブリンに話しかける。
「君たちの装備はあるの?」
「野営地ニ備エテアリマス。」
おそらく野営地に置いてあった木箱の中だろう。
この流れなら中身は何らかの銃だと思うが、一応確認しておいた方が良さそうだ。
「なら、戻ったら見せてもらおうかな。」
「了解デアリマス。」
「ねーねーアリス。アイツらの使ってる武器ってなんだろ?」
「んー、弓矢の凄いやつ・・・・・・かな。」
「ふーん・・・・・・。さっきから見てるけど、なんか魔物の数が減ってる気がしないね。」
「ちょっと見せて!」
距離があるので魔物の数は正確に感知するのは難しいが、戦闘規模が小さくなっている様子がない。
俺が見ている間にも倒し倒されしていたのだから、もっと減っている筈だ。
「あ・・・・・・! 原因が分かったよ、ニーナ!」
双眼鏡を返しながら説明する。
「倒された魔物の死体、しばらく経つと消えるでしょ。それと同時に新しい魔物が同じ数だけ街の門から入ってきてるみたい。」
「・・・・・・・・・・・・ホントだ!」
門の外には待機している魔物の姿など無いが、侵入は途絶える様子を見せない。
おそらくは門の位置で復活しているか・・・・・・無限湧きかだろう。
つまり終わることのない不毛な戦いを延々と続けているのだ。
ホント戦争は地獄だぜ。
スライムの迷宮を彷徨って数日。
俺たちはついに次の迷宮への門を見つけることができた。
拾った葉を付け足しまくって半ばミノムシと化したお手製の服とも残念ながらお別れである。
と、思いたい。
「ようやく着替えられるのね。」
「次の迷宮に天井のアレがなければね。」
「い、嫌なこと言わないで頂戴。」
「あはは、ごめんごめん。」
まぁ、同じ迷宮に連続して当たる確率は低いだろう。
次がここよりマシという保証は無いが。
「よし、では行こうか。」
ヒノカを先頭に皆が次々と門をくぐって行く。
全員を見送り、最後は自分。
あばよ、エロスライム。
*****
門をくぐった俺を出迎えたのは、濃い草木の匂い。
そして――
「新シク着任サレタ隊長ニ敬礼!!」
直立不動で敬礼し、整然と立ち並ぶ数体のゴブリンであった。
「えーと、どうなってるの?」
「わ、私に聞かないでよ!」
それもそうか。
現状を把握すべく、まずは首を巡らせ周囲を見渡してみる。
ここは木々に囲まれた場所のようだ。空は曇天。太陽の顔は拝めそうにない。
そこに屋根だけの背が高い簡易天幕を設置し、その下に木箱が数個、長机、どこかの地図が貼られた黒板、そして俺たちが通って来た門。
スペースが狭いため、荷車を引くキシドーは外で待機している。
そして俺たちの前に並んだゴブリンたち。
他の皆も同じ様に挨拶されたのだろう。
で、俺たちを”隊長”と呼ぶからには、このゴブリン達は部下・・・・・・つまりは味方であるらしい。
やはり彼らに聞いてみるのが手っ取り早いか。
「どういう状況になってるか教えてくれる?」
「ハッ! 街ヲ東西ニ二分シ、コボルド軍トオーク軍ガ争イヲ続ケテオリマス。」
黒板に貼られた地図に載っているのがその街らしい。
詳細までは分からないが、全容が掴める内容になっている。
街は四角の外壁に守られており、東西に門が一つずつ。
その門を結ぶように大きな道路が一本。
北側は切り立った崖が天然の外壁となっており、南側には木々が覆う山が連なっている。
おそらく俺たちは南側のどこかに陣を構えているのだろう。
地図にもそう書き込まれてるし。
「ソシテ北側中央ニアル教会ニテ、我ガ同胞ガ抵抗ヲ続ケテオリマス。」
「なるほど・・・・・・で、その同胞とやらを助けに行こうって感じ?」
「ハイ。」
これがイベントってわけか。
そいつらを助ければ門の場所が分かるのか、もしくはその教会の中にあるのかもしれない。
どちらにしてももう少し情報が欲しいところだ。
「街の様子が分かる場所ってある?」
「ハッ、コチラニ――」
「――ちょっと、待ちなさい。」
ゴブリンについていこうとすると、リーフに肩を掴まれる。
「どうしたの?」
「どうしたの、じゃないわよ。先に着替えを出してちょうだい。」
「あぁ、そうだね。少し待ってて。」
密閉していた箱から服を取り出してそれぞれに配る。
「あるー、これどうやって着るにゃ?」
「そういやそうか・・・・・・。」
背面部分に大きく穴が開いてしまっているため、服と言うより前掛けみたいな状態だ。
しかも首元の部分まで欠けているので前掛けにも出来ない。
腰から下の部分が無事だったのは救いだな。
「それじゃ、こんな感じでどうかな?」
首元の欠けた部分に鎖を渡し、なびかないよう腰あたりに鎖でベルトを作る。
「これなら葉っぱのヤツより動きやすいにゃ!」
うーむ・・・・・・アレを殺すセーターみたいになってしまったな。
「そ、そんなの着なきゃいけないの!?」
「コレばっかりはどうにもならないね。そのままで良いなら止めないけど・・・・・・。」
葉は全員の肌を隠せる程度には手に入ったので露出度は低めになったが、いかんせん素肌の上に直で着ているのでチクチクして痒い。
寝る時なんかは特に。
しかも擦れて少しずつ破れたりしていることを考慮すれば着替えるしかないのだが。
「じゃあ、着替える人から順番に――」
「――だ、だから待ちなさいよ。着替えるにしても・・・・・・その・・・・・・。」
リーフがチラリとゴブリンたちの方に視線を向ける。
「分かった。着替え用の小屋を作るよ。」
魔物とはいえ、パーティメンバー以外の視線は辛いか。
サーニャは全く気にしていなかったみたいだが。
荷車の土を使って小さめの小屋を作る。
全員入れるほどの大きさではないので、一人ずつ服を調整していく。
とは言っても手間は殆ど掛からず、全員の着替えはすぐさま終わった。
「うぅ・・・・・・背中がスース―するわね。」
「だがまぁ・・・・・・葉で体を覆うよりはマシだな。」
「ハァ・・・・・・そうね。」
ビバ横乳!
半ば諦めた様子の二人を尻目に、直立不動のまま待っていたゴブリンに視線を向ける。
「それじゃあ、案内してくれる?」
ゴブリンに案内されるままついていくと、すぐ近くに街を見下ろせる開けた場所へと出た。
「そこまでおっきな街じゃないねー。」
「・・・・・・それに、ボロボロ。」
荒廃し、家は破壊され、瓦礫が転がっている。
そんな様子が遠目からでも見て取れるほど荒んだ様子。
これじゃあもう人が住んだりは出来ないだろう。
北側の中央にある少し大きな建物。あれがゴブリンの言っていた教会か。
ひどい有様と言えるくらいにはボロボロだが、建物の形は保っている。
「さて、コボルド軍とオーク軍ってのはどんな感じかな・・・・・・っと。」
野営地の長テーブルから拝借した双眼鏡を覗き込む。
軍と呼ばれる割にはどちらも少数規模だ。両軍合わせても50かそこらだろう。
それらが街中で散開して戦っているため戦闘規模は更に小さく、そのためか両軍とも教会を襲うような素振りは見せない。
普通の魔物であれば物の数ではない相手なのだが・・・・・・装備しているものが厄介だ。
コボルド軍が短機関銃、オーク軍が散弾銃である。
あろうことか剣と魔法のファンタジー世界のダンジョン内で魔物が銃を構えてドンパチしているのだ。
魔女たちがノリで魔法を発射する銃を作っていたが、あれとは違いおそらくホンモノだろう。
魔道具に見られる魔力の痕跡が一切感じられない。
コボルドが持ち前の身軽さと連携でオークを四方からハチの巣にし、オークの放った散弾が素早いコボルドを捉える。
そんな一進一退の攻防が続く。
「ねー、ボクにも見せてよ!」
うるさいニーナに双眼鏡を譲り、ゴブリンに話しかける。
「君たちの装備はあるの?」
「野営地ニ備エテアリマス。」
おそらく野営地に置いてあった木箱の中だろう。
この流れなら中身は何らかの銃だと思うが、一応確認しておいた方が良さそうだ。
「なら、戻ったら見せてもらおうかな。」
「了解デアリマス。」
「ねーねーアリス。アイツらの使ってる武器ってなんだろ?」
「んー、弓矢の凄いやつ・・・・・・かな。」
「ふーん・・・・・・。さっきから見てるけど、なんか魔物の数が減ってる気がしないね。」
「ちょっと見せて!」
距離があるので魔物の数は正確に感知するのは難しいが、戦闘規模が小さくなっている様子がない。
俺が見ている間にも倒し倒されしていたのだから、もっと減っている筈だ。
「あ・・・・・・! 原因が分かったよ、ニーナ!」
双眼鏡を返しながら説明する。
「倒された魔物の死体、しばらく経つと消えるでしょ。それと同時に新しい魔物が同じ数だけ街の門から入ってきてるみたい。」
「・・・・・・・・・・・・ホントだ!」
門の外には待機している魔物の姿など無いが、侵入は途絶える様子を見せない。
おそらくは門の位置で復活しているか・・・・・・無限湧きかだろう。
つまり終わることのない不毛な戦いを延々と続けているのだ。
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