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がっこうにいこう!
157話「最強の末期」
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ガラガラ。ゴロゴロ。
まるで猛火の様な日差しの下、荷車の車輪が石畳とのハーモニーを奏でる。
陽炎で歪んで見える街の中心にある丘の上の遺跡を目指し、一歩一歩足を進めて行く。
荷車に付いて歩くボロ布の服を纏った少女たちは奴隷と見紛う姿。
だが、道行く人からは英雄の如き扱いを受ける。
「お! ラビのとこじゃねえか! 頑張って来いよ!」
「ラビねえちゃーん! いってらっしゃーい!」
街の人たちの声援を受け、ラビが手を振って応える。
「うん! いってきまーす!」
新たな夏休みを迎えた俺たちは、いつものように迷宮都市へと訪れていた。
初日に粗方準備を終えて二日目。
ラビの宿でゆっくり朝食を摂ってから、迷宮のある遺跡へと向かっている。
「うぅ~暑い~・・・・・・。」
「だからもっと日の低い内に出ましょう、って言ったわよね・・・・・・?」
「だって~・・・・・・眠かったんだも~ん・・・・・・。」
「貴女たちが早く寝ないからでしょ。」
昨夜は興奮して眠れなかったのか、夜遅くまで騒いでいたからな・・・・・・いつもの事だが。
・・・・・・いや、無理に明るく振る舞おうとしているニーナに皆が付き合った感じか。
あれから一ヶ月以上は経っているが、心の傷が癒えるにはまだ時間が足りないようだ。
言葉を交わすニーナとリーフに割り込む。
「ま、まぁまぁ二人とも。遺跡に入れば少しは涼しくなるよ。」
「だと良いのだけれど・・・・・・あの行列、外にまで並んでいないかしら?」
リーフの言葉に、遺跡の入り口辺りに目を凝らしてみる。
入り口から伸びた人だかりが、遺跡の外周に沿って並んでいるようだ。
「え・・・・・・うわ~、ホントだ・・・・・・。」
「この時期になると人が沢山来るからねー。」
「でも、いつもより多くない?」
「アリスちゃんの学院の人が増えてるから。」
「そうなの?」
「ほら、外に並んでる人に制服の人がいるよ。」
・・・・・・マジだ。
制服を着た13~16歳程度のやんちゃそうな少年が集まったグループがいくつか。
慣れていないのか、余程自信があるのか・・・・・・ロストしたらどうする気なんだろう。
「大丈夫なのかな、あの人たち・・・・・・。」
「どうだろ・・・・・・きっとアリスちゃん達の噂を聞いて来た人たちだと思うけど。」
「噂?」
「子供だけのパーティが30階まで行った、みたいな。」
「あぁ・・・・・・そういう感じのね。って、それならラビも含まれてるでしょ。」
「あ、そっか。えへへ。」
その話を聞いた学生が「それなら自分たちも」と夏休みを利用して乗り込んで来たのだろう。
・・・・・・ゲームオーバーにならなきゃ良いけど。
「ふむ・・・・・・とにかく、さっさと並んでしまった方が良さそうだな。」
「だね。キシドー、もうちょっと速度上げてくれる?」
キシドーがコクリと頷き力を込めると車輪の回転速度が上がり、荷車に積んだ荷物が小躍りを始めた。
変わらない沿道の声援に応えながら遺跡を目指す。
いくらか時間をかけて遺跡に辿り着いた俺たちは職員の案内に従い、最後尾へと向かう。
その途中、列から一人の青年が飛び出し、こちらへ駆けてきた。
「やぁ、こんにちはラビ! それからアリスさんも、お久しぶりです。」
ラビの知り合いのようだが・・・・・・誰だ?
どこかで見たような気もするが・・・・・・。
「あっトムスさん、こんにちは! トムスさんのところも今日出発ですか?」
「うん・・・・・・また、最初からだけどね。」
バツが悪そうにトムスと呼ばれた青年が頭をかく。
・・・・・・ん? そういえば以前アドバイスをした人がそんな名前だったような。
「お久しぶりです。えっと・・・・・・その後は如何でしたか?」
「はい、一度19階までは辿り着いたのですが、そこでヘマをしてしまいまして・・・・・・。」
緊急脱出して最初から・・・・・・ってワケか。
「それから何度も挑戦しているのですが、10階を突破できず・・・・・・はは、面目ないです。」
「いえ、そんな事は無いですよ。何度も挑戦して、それでもまだ生きているんですから。それを才能と言うんです。」
「そう言って頂けるのは嬉しいですが・・・・・・僕が臆病なだけです。」
「それが必要な気質ですよ。特にこの迷宮では。」
いつでも緊急脱出が出来る。だからこそ無茶をして取り返しのつかない事態に陥ってしまうのだ。
臆病過ぎる程で丁度良い。
それに、何度も挑戦できるという事は、少なくともそれだけの稼ぎを出せているという事でもある。
モチベーションも保てているようだし、素質は十分にある筈だ。
「皆さんはもう30階に到達されたんですよね? ひょっとして、今日は31階から?」
「えぇ、そうです。」
「それは凄い! けど、気を付けて下さいね。ここ数年、31階以上に挑んだ人が居ませんから。」
「そうなんですか?」
「最強と謳われたパーティが挑んでから・・・・・・それっきりです。」
「そのパーティは・・・・・・?」
トマスが黙って首を横に振る。
帰ってこなかった・・・・・・って事か。
「分かりました。情報ありがとうございます。トムスさんも無理はなさらないで下さいね。」
「はい、ありがとうございます! それではまた、宴会でお会いしましょう。」
「そうですね、また宴会で。」
トムスが列に戻るのを見送り、再び最後尾を目指す。
制服姿の少年たちからは不躾な視線を向けられたがそれは無視する。
「街の子が全然並んでないね。」
「そりゃーこれだけ人が多かったらねー。いつもは素通りだから。」
「・・・・・・なるほど。」
今日は特に多いしな。
オフシーズンでも行ける地元の子にとっては辟易するのだろう。
「ぁ、あそこ・・・・・・みたい。」
フラムが指した方には最後尾と書かれた看板を持った職員が汗を流して立っている。
大変そうだな・・・・・・。
職員に挨拶し、最後尾へつくと一つ前に並んでいた女性に声を掛けられた。
「トムスの坊やと何話してたんだい、ラビ?」
「ゾッタさん、こんにちは!」
ゾッタと呼ばれた女性が着るボロ服から伸びる手足には引き締まった筋肉。
背は一般男性よりも頭二つほど高く、頬や目元に付いた傷跡からは歴戦の戦士のような風格。
アマゾネスと一言で形容してしまうのが一番楽だろう。
ゴブリン程度なら射殺せてしまいそうな双眸だが、今は優し気にラビを見下ろしている。
「お互い頑張ろうねって話してたの!」
「ハッハッハ、あの坊やも懲りないね! でもまぁ、見込みはあるよ!」
「それ聞いたらきっとトムスさん喜ぶよ!」
「そうかいそうかい、なら今度会ったら10階の雑魚にはやられない程度に鍛えてやろうかねぇ。」
「それじゃトムスさん死んじゃうよ!?」
「ハッハッハ!」
見た目通り豪気な人のようだ。
ラビから視線を外したゾッタが、俺たちのパーティを品定めする様に見る。
「この子らがそうかい、ラビ?」
「う、うん! アリスちゃんとフィーちゃん、ニーナちゃんにフラムちゃん、ヒノカちゃんととリーフちゃん、サーニャちゃんにキシドーとメイ。」
「ど、どうも・・・・・・。」
ゾッタがニヤリと口元を歪める。
「へぇ・・・・・・その辺の奴らより頼りになりそうじゃないか。土でできた荷車に武具・・・・・・なるほど、この迷宮にゃ持ってこいだ。しかも一級品だね、こりゃ。それに、鎧のバケモノまで手懐けちまってまぁ。」
「ゾッタさん、今日はどうするの?」
「アタシらはいつも通り21階からセコく稼ぐさ。アンタらは・・・・・・先へ挑むんだろ?」
「うん!」
「そうかい・・・・・・止めやしないけどさ、ちゃんと生きて帰ってくるんだよ。」
「ゾッタさん・・・・・・?」
ゾッタの表情が少し翳る。
「先程、トムスさんから最強のパーティが帰って来なかったという話を聞きました。」
「そうか・・・・・・あの坊やからね・・・・・・実は、少し違うんだよ。」
「違う?」
「あぁ・・・・・・帰ってきたのさ、二人。」
「そうなんですか!?」
「パーティの長だった男は片腕と両足を失って・・・・・・その一員だった女は喉を貫かれて、ね。」
「二人は・・・・・・どうなったんですか?」
「すぐに死んじまったよ。あんな奴らでも坊や達には人気があったからね。戻って来なかった事にしたのさ。」
そんな話が広がれば、観光地としてもよろしくない。
当然の措置だろう。
「どうしてその話を・・・・・・私たちに?」
「先に挑むってんなら、知る権利はあると思ったのさ。・・・・・・それに、こんな話を聞いても止める気は無いんだろ?」
「無論だ。」
「な、何言ってるのよ、ヒノカ!」
「ハッハッハ! 悪かったね、湿っぽい話をしちまって!」
ゾッタが暗い雰囲気を吹き飛ばすように笑い、懐から硬貨の入った小さな革袋を取り出すと、彼女のパーティメンバーの一人に投げつけた。
ヒョロヒョロとした男が取り落としそうになりつつも何とか受け止める。
「ヤコポ! そいつで肉と酒をありったけ買ってきな! この子らの分もね!」
「ハァ・・・・・・姐さん、今から酒はマズいですぜ。」
「わ、分かってるよ! 雰囲気だよ、雰囲気! 気が利かない男だね! さっさと行ってきな!!」
「へいへい・・・・・・全く人使いが荒いんだから。それじゃあお嬢さん方、また後程。」
ヤコポと呼ばれた男が地を蹴ると、あっという間に小さくなってしまった。
速度を落とすことなく、人ごみの中をすり抜けていく。
「悪かったね、口うるさい男で。さぁ、景気付けだよ!!」
そう言うとゾッタが鞄から干し肉を取り出して齧り付いた。
・・・・・・それ、迷宮用の食糧じゃ?
彼女のパーティメンバーは諦めた表情である。
「あちしも食べるにゃー!」
「何言ってるのよ、サーニャ!」
「おぉ、獣人かい? こりゃ珍しい! いいよ、食いな食いな!!」
・・・・・・少なくとも、並んでる間は退屈しなさそうだな。
長い溜め息を吐いたリーフが耳打ちしてくる。
「ねぇ、ところでこれ・・・・・・いつになったら入れるのかしら・・・・・・?」
「さぁ・・・・・・。」
まぁ、コミケよりはマシかな。
まるで猛火の様な日差しの下、荷車の車輪が石畳とのハーモニーを奏でる。
陽炎で歪んで見える街の中心にある丘の上の遺跡を目指し、一歩一歩足を進めて行く。
荷車に付いて歩くボロ布の服を纏った少女たちは奴隷と見紛う姿。
だが、道行く人からは英雄の如き扱いを受ける。
「お! ラビのとこじゃねえか! 頑張って来いよ!」
「ラビねえちゃーん! いってらっしゃーい!」
街の人たちの声援を受け、ラビが手を振って応える。
「うん! いってきまーす!」
新たな夏休みを迎えた俺たちは、いつものように迷宮都市へと訪れていた。
初日に粗方準備を終えて二日目。
ラビの宿でゆっくり朝食を摂ってから、迷宮のある遺跡へと向かっている。
「うぅ~暑い~・・・・・・。」
「だからもっと日の低い内に出ましょう、って言ったわよね・・・・・・?」
「だって~・・・・・・眠かったんだも~ん・・・・・・。」
「貴女たちが早く寝ないからでしょ。」
昨夜は興奮して眠れなかったのか、夜遅くまで騒いでいたからな・・・・・・いつもの事だが。
・・・・・・いや、無理に明るく振る舞おうとしているニーナに皆が付き合った感じか。
あれから一ヶ月以上は経っているが、心の傷が癒えるにはまだ時間が足りないようだ。
言葉を交わすニーナとリーフに割り込む。
「ま、まぁまぁ二人とも。遺跡に入れば少しは涼しくなるよ。」
「だと良いのだけれど・・・・・・あの行列、外にまで並んでいないかしら?」
リーフの言葉に、遺跡の入り口辺りに目を凝らしてみる。
入り口から伸びた人だかりが、遺跡の外周に沿って並んでいるようだ。
「え・・・・・・うわ~、ホントだ・・・・・・。」
「この時期になると人が沢山来るからねー。」
「でも、いつもより多くない?」
「アリスちゃんの学院の人が増えてるから。」
「そうなの?」
「ほら、外に並んでる人に制服の人がいるよ。」
・・・・・・マジだ。
制服を着た13~16歳程度のやんちゃそうな少年が集まったグループがいくつか。
慣れていないのか、余程自信があるのか・・・・・・ロストしたらどうする気なんだろう。
「大丈夫なのかな、あの人たち・・・・・・。」
「どうだろ・・・・・・きっとアリスちゃん達の噂を聞いて来た人たちだと思うけど。」
「噂?」
「子供だけのパーティが30階まで行った、みたいな。」
「あぁ・・・・・・そういう感じのね。って、それならラビも含まれてるでしょ。」
「あ、そっか。えへへ。」
その話を聞いた学生が「それなら自分たちも」と夏休みを利用して乗り込んで来たのだろう。
・・・・・・ゲームオーバーにならなきゃ良いけど。
「ふむ・・・・・・とにかく、さっさと並んでしまった方が良さそうだな。」
「だね。キシドー、もうちょっと速度上げてくれる?」
キシドーがコクリと頷き力を込めると車輪の回転速度が上がり、荷車に積んだ荷物が小躍りを始めた。
変わらない沿道の声援に応えながら遺跡を目指す。
いくらか時間をかけて遺跡に辿り着いた俺たちは職員の案内に従い、最後尾へと向かう。
その途中、列から一人の青年が飛び出し、こちらへ駆けてきた。
「やぁ、こんにちはラビ! それからアリスさんも、お久しぶりです。」
ラビの知り合いのようだが・・・・・・誰だ?
どこかで見たような気もするが・・・・・・。
「あっトムスさん、こんにちは! トムスさんのところも今日出発ですか?」
「うん・・・・・・また、最初からだけどね。」
バツが悪そうにトムスと呼ばれた青年が頭をかく。
・・・・・・ん? そういえば以前アドバイスをした人がそんな名前だったような。
「お久しぶりです。えっと・・・・・・その後は如何でしたか?」
「はい、一度19階までは辿り着いたのですが、そこでヘマをしてしまいまして・・・・・・。」
緊急脱出して最初から・・・・・・ってワケか。
「それから何度も挑戦しているのですが、10階を突破できず・・・・・・はは、面目ないです。」
「いえ、そんな事は無いですよ。何度も挑戦して、それでもまだ生きているんですから。それを才能と言うんです。」
「そう言って頂けるのは嬉しいですが・・・・・・僕が臆病なだけです。」
「それが必要な気質ですよ。特にこの迷宮では。」
いつでも緊急脱出が出来る。だからこそ無茶をして取り返しのつかない事態に陥ってしまうのだ。
臆病過ぎる程で丁度良い。
それに、何度も挑戦できるという事は、少なくともそれだけの稼ぎを出せているという事でもある。
モチベーションも保てているようだし、素質は十分にある筈だ。
「皆さんはもう30階に到達されたんですよね? ひょっとして、今日は31階から?」
「えぇ、そうです。」
「それは凄い! けど、気を付けて下さいね。ここ数年、31階以上に挑んだ人が居ませんから。」
「そうなんですか?」
「最強と謳われたパーティが挑んでから・・・・・・それっきりです。」
「そのパーティは・・・・・・?」
トマスが黙って首を横に振る。
帰ってこなかった・・・・・・って事か。
「分かりました。情報ありがとうございます。トムスさんも無理はなさらないで下さいね。」
「はい、ありがとうございます! それではまた、宴会でお会いしましょう。」
「そうですね、また宴会で。」
トムスが列に戻るのを見送り、再び最後尾を目指す。
制服姿の少年たちからは不躾な視線を向けられたがそれは無視する。
「街の子が全然並んでないね。」
「そりゃーこれだけ人が多かったらねー。いつもは素通りだから。」
「・・・・・・なるほど。」
今日は特に多いしな。
オフシーズンでも行ける地元の子にとっては辟易するのだろう。
「ぁ、あそこ・・・・・・みたい。」
フラムが指した方には最後尾と書かれた看板を持った職員が汗を流して立っている。
大変そうだな・・・・・・。
職員に挨拶し、最後尾へつくと一つ前に並んでいた女性に声を掛けられた。
「トムスの坊やと何話してたんだい、ラビ?」
「ゾッタさん、こんにちは!」
ゾッタと呼ばれた女性が着るボロ服から伸びる手足には引き締まった筋肉。
背は一般男性よりも頭二つほど高く、頬や目元に付いた傷跡からは歴戦の戦士のような風格。
アマゾネスと一言で形容してしまうのが一番楽だろう。
ゴブリン程度なら射殺せてしまいそうな双眸だが、今は優し気にラビを見下ろしている。
「お互い頑張ろうねって話してたの!」
「ハッハッハ、あの坊やも懲りないね! でもまぁ、見込みはあるよ!」
「それ聞いたらきっとトムスさん喜ぶよ!」
「そうかいそうかい、なら今度会ったら10階の雑魚にはやられない程度に鍛えてやろうかねぇ。」
「それじゃトムスさん死んじゃうよ!?」
「ハッハッハ!」
見た目通り豪気な人のようだ。
ラビから視線を外したゾッタが、俺たちのパーティを品定めする様に見る。
「この子らがそうかい、ラビ?」
「う、うん! アリスちゃんとフィーちゃん、ニーナちゃんにフラムちゃん、ヒノカちゃんととリーフちゃん、サーニャちゃんにキシドーとメイ。」
「ど、どうも・・・・・・。」
ゾッタがニヤリと口元を歪める。
「へぇ・・・・・・その辺の奴らより頼りになりそうじゃないか。土でできた荷車に武具・・・・・・なるほど、この迷宮にゃ持ってこいだ。しかも一級品だね、こりゃ。それに、鎧のバケモノまで手懐けちまってまぁ。」
「ゾッタさん、今日はどうするの?」
「アタシらはいつも通り21階からセコく稼ぐさ。アンタらは・・・・・・先へ挑むんだろ?」
「うん!」
「そうかい・・・・・・止めやしないけどさ、ちゃんと生きて帰ってくるんだよ。」
「ゾッタさん・・・・・・?」
ゾッタの表情が少し翳る。
「先程、トムスさんから最強のパーティが帰って来なかったという話を聞きました。」
「そうか・・・・・・あの坊やからね・・・・・・実は、少し違うんだよ。」
「違う?」
「あぁ・・・・・・帰ってきたのさ、二人。」
「そうなんですか!?」
「パーティの長だった男は片腕と両足を失って・・・・・・その一員だった女は喉を貫かれて、ね。」
「二人は・・・・・・どうなったんですか?」
「すぐに死んじまったよ。あんな奴らでも坊や達には人気があったからね。戻って来なかった事にしたのさ。」
そんな話が広がれば、観光地としてもよろしくない。
当然の措置だろう。
「どうしてその話を・・・・・・私たちに?」
「先に挑むってんなら、知る権利はあると思ったのさ。・・・・・・それに、こんな話を聞いても止める気は無いんだろ?」
「無論だ。」
「な、何言ってるのよ、ヒノカ!」
「ハッハッハ! 悪かったね、湿っぽい話をしちまって!」
ゾッタが暗い雰囲気を吹き飛ばすように笑い、懐から硬貨の入った小さな革袋を取り出すと、彼女のパーティメンバーの一人に投げつけた。
ヒョロヒョロとした男が取り落としそうになりつつも何とか受け止める。
「ヤコポ! そいつで肉と酒をありったけ買ってきな! この子らの分もね!」
「ハァ・・・・・・姐さん、今から酒はマズいですぜ。」
「わ、分かってるよ! 雰囲気だよ、雰囲気! 気が利かない男だね! さっさと行ってきな!!」
「へいへい・・・・・・全く人使いが荒いんだから。それじゃあお嬢さん方、また後程。」
ヤコポと呼ばれた男が地を蹴ると、あっという間に小さくなってしまった。
速度を落とすことなく、人ごみの中をすり抜けていく。
「悪かったね、口うるさい男で。さぁ、景気付けだよ!!」
そう言うとゾッタが鞄から干し肉を取り出して齧り付いた。
・・・・・・それ、迷宮用の食糧じゃ?
彼女のパーティメンバーは諦めた表情である。
「あちしも食べるにゃー!」
「何言ってるのよ、サーニャ!」
「おぉ、獣人かい? こりゃ珍しい! いいよ、食いな食いな!!」
・・・・・・少なくとも、並んでる間は退屈しなさそうだな。
長い溜め息を吐いたリーフが耳打ちしてくる。
「ねぇ、ところでこれ・・・・・・いつになったら入れるのかしら・・・・・・?」
「さぁ・・・・・・。」
まぁ、コミケよりはマシかな。
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