DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

100話「飯タイム」

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 響く鈴の音を頼りに、図書館を彷徨う少女と再びまみえた。
 先程と変わらず四足で歩く少女に手に入れた本を差し出す。

「それ、わたしが・・・・・・借りてた本?」
「君の名前だよね、これ。」

 本を開いて貸し出しカードを見せると、少女の瞳から雫が溢れ出した。

「ひっく・・・・・・ありがとう・・・・・・。これで、やっと・・・・・・。」
「・・・・・・良かったね。」

 嗚咽を漏らしながら本を大事そうに抱えた女の子は光に包まれ、そのまま消えてしまった。
 少女が残した六つ星の水晶を手にした俺達は図書館を後にし、校舎へ戻らずに中庭へ向かう事に。

「どうして中庭などへ行くのだ?」
「さっき校舎の中から気になるものが見えてね。せっかく外に出たんだし、先にそっちを調べちゃおうかなと。」

「そ、そうなのか? 何も見なかった気がするが・・・・・・。」

 周りを見る余裕なんてあんまり無さそうだしね・・・・・・。

「まぁ、そこを調べたら校舎の方へ戻るつもりだし、そんなに時間は掛からないと思うよ。」

 中庭に到着し、見渡せば小さな池とベンチがいくつか、そして銅像が立っている。
 銅像は光で照らされており、調べてくれと言わんばかりだ。

「確かに何かあるみたいね。でも、あの像は何故薪なんて背負って本を読んでるのかしら?」
「仕事中でも本を読んで勉強してた偉い人なんだって。」

「・・・・・・そんなの、どっちも疎かになると思うのだけれど。」
「頭の出来が違うんだよ、きっと。」

「貴女が言うと随分な皮肉に聞こえるわ。」
「私は・・・・・・そういうのとは違うからね。それより、あれ調べてみようよ。」

 ふと、自分が小学生だった頃に耳にした話を思い出す。

「あ、そうそう。噂では夜中に走り出したりするんだって、あの像。」
「や、止めてよ怖い話は!」

 そんな会話をしながら銅像に近づいて行くと、台座に赤い文字が現れた。

<ち カ づ ク ナ>

「ち・・・・・・近寄るな、って言ってるわよ?」
「うーん、でもそうしないと調べられないしなぁ。」

 もう一歩踏み出してみる。

<と マ レ>

 更にもう一歩。

<サ ワ る ナ>

 血文字の警告は止まないが、何か起こる様子はない。

「ちょ、ちょっと・・・・・・大丈夫なの?」
「この文字以外は何かしてきそうな気配は無いし・・・・・・多分?」

「た、多分って・・・・・・。」

 像の元へ辿り着いた俺は像の周囲を調べてみた。
 すると、像の後ろ側には引き摺ったような跡がついている。

「これ、前から押す感じ?」

<や メ ロ>

 どうやらそれで正解らしい。
 キシドーに指示を出し、銅像を動かす。
 ゴリゴリと音を立てて移動する台座の下から、扉が徐々に姿を現してきた。
 完全に姿を晒した扉を引き上げる様に開けると、そこには地下へ続く階段。

<す ス む な>

「少し狭いみたいだし、行くのは私とフラムと・・・・・・あと一人くらいかな? 行きたい人いる?」

 返答なし。仕方ないか。

「じゃあ私とフラムの二人で――」
「ま、待って! ・・・・・・私も行くよ。」

「大丈夫なの、ラビ?」
「う・・・・・・あ、あんまり平気じゃないけど、地図・・・・・・描かないとだし。」

 まぁ、下りたら”地下に迷宮が広がってました”なんて話もありえなくはないだろうが。

「地図が必要そうなら戻って来るし、無理しなくてもいいよ?」
「で、でも必要なかったら下にはもう行かないかもしれないんだよね?」

「それはそうだけど、わざわざそんな所まで描かなくても――」
「わ、私が役に立てるの・・・・・・これぐらいしかないから・・・・・・。」

 ノートをギュッと胸に抱えるラビ。
 そのノートには、この学校の地図もきちんと書き込まれている。
 校内図があったにも関わらずだ。

「分かった。お願いするよ。他の皆はこの辺で休憩してて、ベンチもあるし。」
「こ、こんなところで落ち着けないわよ!」

*****

<モ ど れ><ヒ き か エ せ><タ ち さ レ>

 階段を一段下りる度に血文字が現れ、その度にフラムとラビが小さな悲鳴を上げている。
 魔法の光で先を照らすと階段は真っ直ぐに続いており、床も見えているため、それ程深くはなさそうだ。
 だがその分一段が高く、自分の身長には合わないため少し歩き辛い。

 最後の段を飛ぶように降り立つ。

 そこには迷宮など広がっておらず、小さな四角い部屋になっていた。
 部屋の奥には次の迷宮への門。

「・・・・・・何でこんな所に?」

 ふと口をついて出た疑問。
 それはそうだ。今まで集めた水晶玉とは何だったのか、という話になる。

<だ メ><い か ナ い デ><オ ね ガ イ><タ す け テ>

 増え続ける血文字は最早警告文というより、悲痛な叫びのようだ。
 考え込んでいると、フラムが袖を引く。

「も、もう・・・・・・戻ろう?」
「そ、そうだよぉ・・・・・・ち、地図はもう描けたからぁ~・・・・・・。」

「・・・・・・そうだね、一旦戻ろうか。」

 下りてきた急な階段を上り、地上へと出る。
 リーフ達は俺達の姿を見て驚いたような顔で集まって来た。

「どうしたのよ、アリス。随分早かったけれど・・・・・・何かあったの?」
「小さな部屋と門があっただけだったよ。」

「門って・・・・・・次への?」
「そうだよ。」

 俺の返答を聞いてホッと胸を撫で下ろすリーフ。

「良かった・・・・・・ようやく此処から出られるのね。」

 ”ようやく”と言っても、まだ一日も経ってないのだが。
 まぁ、お化け屋敷にしては長いか。
 ただ俺としては、このまま進んでしまうのは少し後ろ髪を引かれる思いだ。

「んー・・・・・・、もうちょっと此処を調べたいんだけど。」
「ど、どうしてよ!? こんな所早く終わらせましょう?」

「この水晶玉の事とかも気になるしね。」
「それは・・・・・・そうだけど・・・・・・。」

「どうせ次は三十階なんだし、先に行って待っててくれても構わないよ?」
「そんなのっ! ・・・・・・出来ないわよ。出来る訳ないじゃない・・・・・・。卑怯だわ、分かっているクセに。」

「・・・・・・ごめんなさい。」
「はぁ・・・・・・私は構わないわ。皆の意見はどう?」

 やりとりを黙って見ていたヒノカが口を開く。

「ふむ・・・・・・まぁ、これも精神の鍛錬だと思えば良いだろう。なぁ、ニーナ?」
「えぇ~! ボ、ボクもぉ~!? ・・・・・・分かったよぉ~。」

「・・・・・・アリスの面倒はわたしが見ないといけないから。」
「ア、アリスがそうしたいなら、い・・・・・・いいよ。」

「こ・・・・・・怖いけど頑張って地図描くから!」
「ご飯まだにゃ?」

 この流れでそれを言うか。
 まぁ、サーニャは特に怖がってる様子は無かったしな・・・・・・。
 注目を浴びたサーニャは首を傾げる。

「みんなどうしたにゃ? もうご飯の時間過ぎてるにゃ。」

 彼女の腹時計が言うのなら正しいのだろう。
 毒気を抜かれた皆はクスクスと笑いだす。

「ぷっ・・・・・・ふふっ・・・・・・。そうね、すっかり忘れていたわ。」
「そうだな・・・・・・まずは腹ごしらえをするとしよう。」

 食事の準備を始めた皆を余所に開けっ放しになっていた地下への扉を閉める。
 誰かが落ちたりしたら危ないしな。
 すると、扉に血文字が浮かび上がって来た。

<あ リ ガ と ウ>
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