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第十八話 透と藤子
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「透様はどうぞこちらでお待ちください」
そう言うと、案内の男は一礼をして部屋を去っていった。木製の扉がばたんとしまる。
それを見届けると、透は黒い革張りの応接椅子に腰掛けた。
「御子息お一人で来られたのか」
「まだ二十歳になられたばかりの…在学中だろう」
「私らのような下っ端にまで、会長は手が回らんのだろうよ」
そんな無遠慮な会話が、断片的に廊下から響いてくる。仕方がないことだと分かってはいるものの、透は密かに歯噛みせずにはいられなかった。
物心つくまでには、将来父に代わってこの家を守っていく責務を負うことを自覚していた。それを重荷に思ったこともなければ、自分の未来に疑問を抱いたこともない。父が引退すれば、一族にとってそのとき最も都合の良い娘と身を固め、父の重責を代わりに背負い、美しい母と愛しい妹の後ろ盾となる。それだけを眼前に据えて、これまで生きてきたのだ。
その娘がどのような娘なのか、透には想像しかねた。また、密かにどうでも良いとも思っていた。夫人としての責任を果たし、周囲に恥じぬ振る舞いさえ覚えていてくれれば。そんなことよりも、自分は数多の人々の命運を握っているのだという意識の方が、常に彼の頭を占めていた。
稀に、月の綺麗な晩に窓から庭を見つめているとき、仄かに揺蕩う青い薔薇の香りにつられて、ふと考えることがある。もし、まだ見ぬ花嫁と、両親のような夫婦になることができたら、どうだろうか。そんな未来を思い描くと、透の疲れた体は、温かくほぐれた。
しかし、そんな美しい考えは、よく晴れた月夜に、気まぐれに彼の頭に漂ってくる言わば空想に過ぎない。普段は、特に日中、慌ただしく過ごしているうちは、他のことに思いを馳せている余裕などない。
十年以内にはスムーズに引き継ぎを行えるよう、透は大学に入るなり、すぐに父につくようになった。今年で二年目になる。そう、まだ二年目なのだ。故に、頼りなく見做され、軽んじられるのは当然のこと。そして彼は、どんな対応をされようと、泰然と振る舞わなければならないと自分を律していた。
そう、自分が、この家を、そして家族を、守っていかねばならないのだから。
そのとき、突然、扉が慌ただしく開かれ、何の断りもなしに覚束ない足音が、何者かの入室を知らせた。
透はすぐに平素の温和な表情を貼り付けた。柔かな笑みを、今まさに扉をくぐらんとしている者へと向ける。
しかし、そこにいたのは予想していた会合相手ではなく、給仕をしにやって来た若い女だった。
女は透の顔を見るなり、入室を知らせなかった失態と、透の佇まいに、真っ赤になった。
「す、すみません。あの、ノックをするのを忘れてしまって。お、お茶をお持ち致しました」
微かに震えるおよそ妙齢の女らしからぬ低い声で、女はそう謝罪をして、盆を持ったまま頭を下げた。
癖の強い赤茶けた髪は一本一本が縮れるように波打っていて、それらが無理矢理引っ詰められている。短い毛先が乾いた海藻のようにうねっていた。濃い黄色い肌にそばかすが散っている。
体は細く、出るところも出ていない。透よりはいくつか歳上のようだが、それにしても、年相応の頬の柔らかさは全く見られない。
頭を上げておろおろと顔色を伺う目は小さく、眼鏡は湯気で曇っていた。鼻も小さく低い。薄すぎる唇は、不安げに結ばれていた。
透はふと、彼女のイントネーションが気になった。しかしとりあえず、この雨風にさらされた怯えた小鹿のような婦人をなだめようと、努めて穏やかな声を出す。
「大丈夫ですよ。お茶、ありがとうございます。いただきます」
そう言うと、透は視線で女性を促す。
女は安心したのか、薄い眉を少し下げて笑った。骨張った手で、茶托に湯呑みを乗せて、机の上へと乗せる。
そこで透は、何の気なしに、呟いた。
「ところで、失礼ですが、ご出身はこの辺りですか?」
日頃、透はこのような世間話はしない。相手の沸点が分かるまでは、決して、自分からは踏み込まない。
しかし、何故だろうか。このとき、透はあまりにも無防備だった。本人にすら理由は分からないが、彼女への遠慮という発想が、全く浮かんでこなかったのである。
途端に、女は肩を縮めた。居た堪れない風情で視線を彷徨わせ、早口に言葉を継いでいく。
「わ、私の言葉の件でございますか。すみません、直しているつもりではあるのですが…実は、つい先日まで地方で母の手伝いをしていたものなのですけれど、人手が足りていないということで、突然父に呼ばれまして…」
透は、何故気付けなかったのだろうかと自分自身に驚いた。女はこの件をとても気にしているのだ。
「いえ、私は、そのイントネーションが、 何だか心地良いと言いたかっただけで… 」
珍しく慌てた彼は、目の前の茶の存在を失念していた。女を落ち着かせようと伸ばした手が、茶托に擦り、かつんという透明な音が辺りに響く。そして、横倒しになった湯呑みから、淹れたての茶が机いっぱいに広がり、それが透のスラックスにまで流れ落ちた。
それを見た女の顔が、更に沈んだ黄色になる。傍目に見ても明らかなほどに足が震えていた。「も、申し訳…」と、絞り出すような声が微かに聞こえたとき、規則正しいノックの音とともに、再び部屋の扉が開いた。
「透様、お待たせしてしまいまして…」
そう断りながら入室してきた男は、目の前の光景に、一瞬刮目した。そして次の瞬間、透が止める間もなく、震えて身動きのとれない女性めがけて、その拳が振り下ろされた。
がつん、という鋭い音とともに、倒れ込む女。
男の顔は、あまりの怒りに赤黒くなっていた。
「お前という奴は!何ということを!!この…!」
女は、ふらつきながらも、何とか立ち上がった。早くも腫れて赤くなり始めた頬に手を当てながら、頭を下げる。
「……申し訳…」
腫れでうまく話せないのか、蚊の鳴くような声でぼそぼそと、それでも謝罪をしようと必死に口を開く。
そんな彼女に、男は再び拳を上げた。
はっ、とした透は、すぐに立ち上がる。そして、二人の間に入るなり、決然と言葉を発した。オーク色の瞳が、鋭く光る。
「誤解です。彼女は何も悪くはありません。私が、彼女に悪戯をしようとして、自分で倒してしまっただけで」
それから、しっかりと頭を下げた。
「不埒な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした」
前方からも、そして、後方からも、息を飲む音が聞こえた。
机の上で湯気を立てていた茶はやはり熱く、足に違和感を感じたが、透は努めて冷静に頭を下げ続けた。
ようやく言葉の意味を飲み込んだ男が、おろおろと両手を振る。
「と、透様、お止めください。どうか、頭をお上げください。私を、憐れんでくださるならば、どうか…」
その声に、透はゆっくりと顔を上げる。情けない顔をした男は、それを見ると、今度は素早く頭を低くした。
「嗚呼、透様、こんな不器量な娘で宜しければ、何時なりともお戯れにお使いください。後日、お詫びにやらせます」
透は「いえ、そのような真似は致しません」と柔かに応じると、「また、こちらから伺わせていただきます。今日のところは、これで」とその場を後にした。
――――……
そして後日、本当にあの娘が自分を訪ねてやって来たときには、透は内心相当に驚いた。
透の自室に通すと、女は哀れなほど霞んで見えた。毛玉はできていないものの、毛羽立って色の薄くなった茶色のスプリングニットに、灰色のロングスカートが、彼女のまだらに日焼けした黄色い肌を、余計に濃い色に見せていた。そして、化粧映えのしない肌は、乾燥してところどころ薄皮が剥けている。艶など皆無なゴムのような髪は、やはり後ろで一つに結ばれていたが、結び目まで届かないような短い髪が、もわもわと広がっている。
女は、緊張で倒れてしまうのではと心配なほどに、固くなっていた。椅子を勧めると、おかしな動きで座り、用意されていた紅茶を凝視している。
透は、自分のカップを手に取ると、すっとその香りを楽しんだ。爽やかな香りが鼻を抜ける。ふと気がつくと、女はぼんやりと透を見ていた。透は微かに笑うと、相手にもお茶を勧める。
「気分がすっきりしますよ」
そう言うと、春の日差しの中で微笑んだ。
女は、またも見惚れそうになる自分を戒め、急いでカップを手に取る。それを、一気に二口飲んだ。およそ褒められた飲み方ではなかったが、それを透は咎めることなく見守る。
彼女も、少し落ち着いたのか、カップを戻すと、両手を膝の上に揃えた。
「あの、あのときは、ありがとうございました」
考えていた通りの言葉に、透は用意していた言葉を返す。
「いえ、半分は真実ですから。わざわざ出向いてくださって、ありがとうございます。頬は大丈夫ですか?」
女は、無意識に頬に手をやると、ぎこちなく笑う。八重歯がちらりと見えた。
「はい、もう、殆ど。すみません、父が、お見苦しいところを」
すると透は、緩やかに首を振る。
「いえ、私が悪かったのですから。あの方はやはりお父上だったのですね」
女は指先同士を絡めながら、少し視線を落とした。
「はい。父とは十年振りの再会だったんですけれど、私のことは憎いようで…別れた母のことを恨んでいる延長で」
透は、色の悪い彼女の指先を見つめた。所在なさげに動かされている。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は成宮透といいます」
目線で促すと、女は、俯きながら「山内藤子と申します」と返答した。
「藤子さん」
そう言って、ちらりと視線を向けると、彼女は、不思議そうにおどおどと「は、はい…?」と返事をする。再び「藤子さん」と呼び掛けると、彼女のシミだらけの顔は赤く染まった。
透は、そんな彼女を見ていると、何だか心が休まった。彼女を相手にするときには、わざわざ言葉を選ぶ必要がないと感じた為かもしれない。
そんな落ち着いた雰囲気に感化されたのか、次第に藤子も寛いだ様子で笑顔を見せるようになった。
彼女は、透に色々な話を聞かせた。実家の母親のこと。彼女の畑のこと。山間の村の朝焼け、夕暮れ、そして星空。冬は雪に閉ざされ、板張りの廊下はまるで氷のように感じられること。夏は地下水で西瓜を冷やし、縁側で母と語らうのが一番の楽しみだったらしい。しかしそこは、ここからずっと遠くにあるのだと、藤子は語った。
「私たちは父には逆らえません」
そう言った藤子の横顔には、暗い影が差しているように思われた。
二人は、時間を忘れて、密やかな会話を楽しんだ。去り際に惜しくなった透が、くれぐれも数日中にはまた訪ねて来てほしいと念を押して、とうとう二人は別れた。そのときの藤子の顔は複雑に歪んでいたが、透はそれを、嬉しさの為だと解釈した。彼女もまた、会話を楽しんでいるように見えたが故である。そして確かに、彼女は透との僅かな時間を心から楽しんでいた。
それから藤子は、毎日のように訪ねて来るようになった。大抵は夕方に訪れ、夜七時には帰っていく。その日々の数時間、二人は熱心に語らい、笑い、窓から見える景色を楽しんだ。
時が進む毎に、藤子は透を知っていった。彼が自分の運命の中でどれほど努力してきたかということ、そして、どれだけ心根の優しい青年かということ。その度に、涙が流れそうになるのだが、彼女はそれを、笑いでごまかした。
季節は、夏を迎えようとしていた。
その日も、時計が七時を指すと、彼女はそそくさと鞄を持ち上げた。
「それでは、今日はこの辺りで…」
透は、彼女の細い首筋をちらりと見ると、すぐにそこから視線を外した。
「もう、梅雨も明けましたし、日も長いでしょう。送らせますから、もう少し宜しいのでは?」
藤子は、僅かに視線を彷徨わせると、首を振った。相変わらずの後れ毛が彼女の荒れた額に落ちる。
「いえ…世間体もありますから、やはりこの時間には…」
そう言って、視線を逸らす藤子の両肩を、透はそっと掴んだ。切れ長の瞳で、彼女の顔を覗き込む。
「…藤子さん、私は貴女を愛しく思っています」
そう、透は、とっくにその気持ちを自覚していた。そしてそれを告げようと、ずっと機会をうかがっていたのだ。下手に告げれば、彼女は慄き、逃げてしまうだろう。透は柔和な笑みで自らの欲を隠し続けてきた。
藤子は、信じられないといった面持ちで透を凝視する。控えめな目が混乱に揺れていた。
何の返事もしない藤子に焦れた透は、そのまま腕の中に閉じ込める。細く骨ばった感触と、自分より少し高めの体温が伝わってくる。赤茶けたくせ毛の髪が、うなじで絡まっていた。
「…今日は、帰らないでください」
聞こえるか聞こえないか、その程度の声音で呟かれた言葉に、藤子は身を固くした。
――――……
寝台で、藤子はいつも泣いていた。透が優しくすればするほどに、彼女は多くの涙を流した。
「私と一緒になるのは嫌ですか?」
そう尋ねる度に、藤子は顔を覆ってゆるゆると首を振る。それが透にとっては、何よりの免罪符となった。
二人の関係が変わっても、藤子は変わらず透を訪ねた。窓辺で語らい、夜を共に過ごし、朝焼けを共に浴びた。
そうして、夏が過ぎようとしていた頃、突然、藤子の訪れが途絶えた。二日、三日と進むにつれ、透の心は鉛のように重くなっていく。これまで、彼女は、殆ど毎日のようにやって来ていたのだから。そして、どうしても行けない日には必ず、何らかの連絡が入っていた。四日目にして、何の連絡もない。無論、携帯も繋がらない。
とうとう一週間目の朝、透は彼女の父親の会社を訪ねていた。事前に連絡はしていない。受付に寄るつもりもなかった。マスターキーで裏口から入ると、我が物顔でエレベーターに乗る。そして、社長室を目指した。そう、彼女の父親に、彼女との交際を正式に申し込みに来たのだ。
頭の何処かで、それは自分の責務に反していると分かっていた。家族は彼女のことを知ってはいたが、恐らくただの遊びだと思っていたに違いない。透ですら、そんな自分が信じられなかった。しかし、彼女へ向ける気持ちが本物だと気付いたとき、そして何より、初めて彼女を抱いたとき、透はその事実から目を背けることができなかった。
きっと、誰よりも、彼女のことを愛してしまっているのだと。
エレベーターが、静かに最上階に到着する。そこを降りると、眼前に目的の部屋があった。透は、一歩、歩みを進める。すると中から、変わったイントネーションの、あの懐かしい声が聞こえた。
「お父様、後生ですから、もうやめさせてください。私はもうこれ以上、あの人に抱かれるわけにはいきません。子供が、子供が…できてしまったんです…」
「何!願ったりかなったりではないか。よくやった。後はそれを盾に入籍していただけば…お前のような娘が、まさかこんな役に立つとは…」
「嗚呼、お父様、それだけは、それだけはご勘弁ください。この子は、どうか私一人の手で育てさせてください。生涯に一度の頼みでございます」
それから、声を荒げて何とか納得させようとする男と、泣きながら拒み続ける女の問答が、随分長い間繰り返された。その間、透は目を見開いたまま、その場から動けずにいた。全身が、冷たい汗でしっとりと濡れ、耳に聞こえる音が、やけに大きく感じられた。
とうとう、男は疲れきった声で、こう告げた。
「分かった。お前がそれほど嫌がるものは仕方がない。両手両足を縛り付けて嫁がせるわけにもいかん。腹の子のことは、私が先方に話しておこう…これまで、父の命令に従順に従った褒美だと思っておけ。ご苦労だった」
結局透は、その場から一歩も動けなかった。もし動けば、膝から崩れ落ちてしまいそうだった。悲しみや恨みは、自然と全く湧いてこなかった。ただ、最後に抱いた彼女の頬は、やはり涙に濡れていた、とぼんやり思い出していた。
「そうだったのか」
透は、ぽつりと呟いた。
私は彼女を無理矢理抱いてきたのか。
――――……
それから、透は彼女のことを両親に話した。先方から相談があった後だったようで、両親は既にどう対処していくか細かく決定を下していた。
彼女の子供は男でも、女でも、名前は光。そして、その子は成宮家の第三子、つまりは透の弟妹として扱われるとのことだった。彼女は、この近くの成宮家所有の屋敷に、たった一人で住むらしい。使用人という名の見張りと共に。
この事実を知る者は、透とその両親、そして藤子とその父親の五人に、何としてでも止める。後の家の者には、藤子は国和の愛人であると説明し、それ以上の追求は避ける。透は、それを、なるべく無感情に受け入れた。感情を自覚すれば、叫び出しそうだった。
それから、悲しげに微笑みながら透を抱きしめる両親に、透は心底後悔した。自分は、大切なものを見誤ったのだ。「申し訳ありません」そう繰り返す、今にも泣き出しそうな息子を、マーガレット夫人はひたすらさすり続けた。
――――……
夜、特に月の綺麗な晩には、彼女のことを思い出した。心配になる程色の悪い荒れた肌に、いつも情けない表情をしている黄色い顔。すぐに絡まって、手で梳くことのできない髪。そして、そこに流れ落ちる涙。
そんな日には、透はひたすら彼女の姿に思いを馳せた。
もし、一緒になると言ってくれたなら、もっと良いものを沢山食べさせて、少しは太らせてあげたのに。
そんなくだらない考えに、透は笑った。
何年経とうと、そんな夜は減ることがない。そして、年月が経つ程に、我が子をこの手に抱きたくなる。一度も見えたことのない「光」は、一体、どんな子なのだろう。
そして、彼女は、こんな夜を、一体、どう過ごしているのだろうか。
そう言うと、案内の男は一礼をして部屋を去っていった。木製の扉がばたんとしまる。
それを見届けると、透は黒い革張りの応接椅子に腰掛けた。
「御子息お一人で来られたのか」
「まだ二十歳になられたばかりの…在学中だろう」
「私らのような下っ端にまで、会長は手が回らんのだろうよ」
そんな無遠慮な会話が、断片的に廊下から響いてくる。仕方がないことだと分かってはいるものの、透は密かに歯噛みせずにはいられなかった。
物心つくまでには、将来父に代わってこの家を守っていく責務を負うことを自覚していた。それを重荷に思ったこともなければ、自分の未来に疑問を抱いたこともない。父が引退すれば、一族にとってそのとき最も都合の良い娘と身を固め、父の重責を代わりに背負い、美しい母と愛しい妹の後ろ盾となる。それだけを眼前に据えて、これまで生きてきたのだ。
その娘がどのような娘なのか、透には想像しかねた。また、密かにどうでも良いとも思っていた。夫人としての責任を果たし、周囲に恥じぬ振る舞いさえ覚えていてくれれば。そんなことよりも、自分は数多の人々の命運を握っているのだという意識の方が、常に彼の頭を占めていた。
稀に、月の綺麗な晩に窓から庭を見つめているとき、仄かに揺蕩う青い薔薇の香りにつられて、ふと考えることがある。もし、まだ見ぬ花嫁と、両親のような夫婦になることができたら、どうだろうか。そんな未来を思い描くと、透の疲れた体は、温かくほぐれた。
しかし、そんな美しい考えは、よく晴れた月夜に、気まぐれに彼の頭に漂ってくる言わば空想に過ぎない。普段は、特に日中、慌ただしく過ごしているうちは、他のことに思いを馳せている余裕などない。
十年以内にはスムーズに引き継ぎを行えるよう、透は大学に入るなり、すぐに父につくようになった。今年で二年目になる。そう、まだ二年目なのだ。故に、頼りなく見做され、軽んじられるのは当然のこと。そして彼は、どんな対応をされようと、泰然と振る舞わなければならないと自分を律していた。
そう、自分が、この家を、そして家族を、守っていかねばならないのだから。
そのとき、突然、扉が慌ただしく開かれ、何の断りもなしに覚束ない足音が、何者かの入室を知らせた。
透はすぐに平素の温和な表情を貼り付けた。柔かな笑みを、今まさに扉をくぐらんとしている者へと向ける。
しかし、そこにいたのは予想していた会合相手ではなく、給仕をしにやって来た若い女だった。
女は透の顔を見るなり、入室を知らせなかった失態と、透の佇まいに、真っ赤になった。
「す、すみません。あの、ノックをするのを忘れてしまって。お、お茶をお持ち致しました」
微かに震えるおよそ妙齢の女らしからぬ低い声で、女はそう謝罪をして、盆を持ったまま頭を下げた。
癖の強い赤茶けた髪は一本一本が縮れるように波打っていて、それらが無理矢理引っ詰められている。短い毛先が乾いた海藻のようにうねっていた。濃い黄色い肌にそばかすが散っている。
体は細く、出るところも出ていない。透よりはいくつか歳上のようだが、それにしても、年相応の頬の柔らかさは全く見られない。
頭を上げておろおろと顔色を伺う目は小さく、眼鏡は湯気で曇っていた。鼻も小さく低い。薄すぎる唇は、不安げに結ばれていた。
透はふと、彼女のイントネーションが気になった。しかしとりあえず、この雨風にさらされた怯えた小鹿のような婦人をなだめようと、努めて穏やかな声を出す。
「大丈夫ですよ。お茶、ありがとうございます。いただきます」
そう言うと、透は視線で女性を促す。
女は安心したのか、薄い眉を少し下げて笑った。骨張った手で、茶托に湯呑みを乗せて、机の上へと乗せる。
そこで透は、何の気なしに、呟いた。
「ところで、失礼ですが、ご出身はこの辺りですか?」
日頃、透はこのような世間話はしない。相手の沸点が分かるまでは、決して、自分からは踏み込まない。
しかし、何故だろうか。このとき、透はあまりにも無防備だった。本人にすら理由は分からないが、彼女への遠慮という発想が、全く浮かんでこなかったのである。
途端に、女は肩を縮めた。居た堪れない風情で視線を彷徨わせ、早口に言葉を継いでいく。
「わ、私の言葉の件でございますか。すみません、直しているつもりではあるのですが…実は、つい先日まで地方で母の手伝いをしていたものなのですけれど、人手が足りていないということで、突然父に呼ばれまして…」
透は、何故気付けなかったのだろうかと自分自身に驚いた。女はこの件をとても気にしているのだ。
「いえ、私は、そのイントネーションが、 何だか心地良いと言いたかっただけで… 」
珍しく慌てた彼は、目の前の茶の存在を失念していた。女を落ち着かせようと伸ばした手が、茶托に擦り、かつんという透明な音が辺りに響く。そして、横倒しになった湯呑みから、淹れたての茶が机いっぱいに広がり、それが透のスラックスにまで流れ落ちた。
それを見た女の顔が、更に沈んだ黄色になる。傍目に見ても明らかなほどに足が震えていた。「も、申し訳…」と、絞り出すような声が微かに聞こえたとき、規則正しいノックの音とともに、再び部屋の扉が開いた。
「透様、お待たせしてしまいまして…」
そう断りながら入室してきた男は、目の前の光景に、一瞬刮目した。そして次の瞬間、透が止める間もなく、震えて身動きのとれない女性めがけて、その拳が振り下ろされた。
がつん、という鋭い音とともに、倒れ込む女。
男の顔は、あまりの怒りに赤黒くなっていた。
「お前という奴は!何ということを!!この…!」
女は、ふらつきながらも、何とか立ち上がった。早くも腫れて赤くなり始めた頬に手を当てながら、頭を下げる。
「……申し訳…」
腫れでうまく話せないのか、蚊の鳴くような声でぼそぼそと、それでも謝罪をしようと必死に口を開く。
そんな彼女に、男は再び拳を上げた。
はっ、とした透は、すぐに立ち上がる。そして、二人の間に入るなり、決然と言葉を発した。オーク色の瞳が、鋭く光る。
「誤解です。彼女は何も悪くはありません。私が、彼女に悪戯をしようとして、自分で倒してしまっただけで」
それから、しっかりと頭を下げた。
「不埒な真似をしてしまい、申し訳ありませんでした」
前方からも、そして、後方からも、息を飲む音が聞こえた。
机の上で湯気を立てていた茶はやはり熱く、足に違和感を感じたが、透は努めて冷静に頭を下げ続けた。
ようやく言葉の意味を飲み込んだ男が、おろおろと両手を振る。
「と、透様、お止めください。どうか、頭をお上げください。私を、憐れんでくださるならば、どうか…」
その声に、透はゆっくりと顔を上げる。情けない顔をした男は、それを見ると、今度は素早く頭を低くした。
「嗚呼、透様、こんな不器量な娘で宜しければ、何時なりともお戯れにお使いください。後日、お詫びにやらせます」
透は「いえ、そのような真似は致しません」と柔かに応じると、「また、こちらから伺わせていただきます。今日のところは、これで」とその場を後にした。
――――……
そして後日、本当にあの娘が自分を訪ねてやって来たときには、透は内心相当に驚いた。
透の自室に通すと、女は哀れなほど霞んで見えた。毛玉はできていないものの、毛羽立って色の薄くなった茶色のスプリングニットに、灰色のロングスカートが、彼女のまだらに日焼けした黄色い肌を、余計に濃い色に見せていた。そして、化粧映えのしない肌は、乾燥してところどころ薄皮が剥けている。艶など皆無なゴムのような髪は、やはり後ろで一つに結ばれていたが、結び目まで届かないような短い髪が、もわもわと広がっている。
女は、緊張で倒れてしまうのではと心配なほどに、固くなっていた。椅子を勧めると、おかしな動きで座り、用意されていた紅茶を凝視している。
透は、自分のカップを手に取ると、すっとその香りを楽しんだ。爽やかな香りが鼻を抜ける。ふと気がつくと、女はぼんやりと透を見ていた。透は微かに笑うと、相手にもお茶を勧める。
「気分がすっきりしますよ」
そう言うと、春の日差しの中で微笑んだ。
女は、またも見惚れそうになる自分を戒め、急いでカップを手に取る。それを、一気に二口飲んだ。およそ褒められた飲み方ではなかったが、それを透は咎めることなく見守る。
彼女も、少し落ち着いたのか、カップを戻すと、両手を膝の上に揃えた。
「あの、あのときは、ありがとうございました」
考えていた通りの言葉に、透は用意していた言葉を返す。
「いえ、半分は真実ですから。わざわざ出向いてくださって、ありがとうございます。頬は大丈夫ですか?」
女は、無意識に頬に手をやると、ぎこちなく笑う。八重歯がちらりと見えた。
「はい、もう、殆ど。すみません、父が、お見苦しいところを」
すると透は、緩やかに首を振る。
「いえ、私が悪かったのですから。あの方はやはりお父上だったのですね」
女は指先同士を絡めながら、少し視線を落とした。
「はい。父とは十年振りの再会だったんですけれど、私のことは憎いようで…別れた母のことを恨んでいる延長で」
透は、色の悪い彼女の指先を見つめた。所在なさげに動かされている。
「そういえば、自己紹介がまだでしたね。私は成宮透といいます」
目線で促すと、女は、俯きながら「山内藤子と申します」と返答した。
「藤子さん」
そう言って、ちらりと視線を向けると、彼女は、不思議そうにおどおどと「は、はい…?」と返事をする。再び「藤子さん」と呼び掛けると、彼女のシミだらけの顔は赤く染まった。
透は、そんな彼女を見ていると、何だか心が休まった。彼女を相手にするときには、わざわざ言葉を選ぶ必要がないと感じた為かもしれない。
そんな落ち着いた雰囲気に感化されたのか、次第に藤子も寛いだ様子で笑顔を見せるようになった。
彼女は、透に色々な話を聞かせた。実家の母親のこと。彼女の畑のこと。山間の村の朝焼け、夕暮れ、そして星空。冬は雪に閉ざされ、板張りの廊下はまるで氷のように感じられること。夏は地下水で西瓜を冷やし、縁側で母と語らうのが一番の楽しみだったらしい。しかしそこは、ここからずっと遠くにあるのだと、藤子は語った。
「私たちは父には逆らえません」
そう言った藤子の横顔には、暗い影が差しているように思われた。
二人は、時間を忘れて、密やかな会話を楽しんだ。去り際に惜しくなった透が、くれぐれも数日中にはまた訪ねて来てほしいと念を押して、とうとう二人は別れた。そのときの藤子の顔は複雑に歪んでいたが、透はそれを、嬉しさの為だと解釈した。彼女もまた、会話を楽しんでいるように見えたが故である。そして確かに、彼女は透との僅かな時間を心から楽しんでいた。
それから藤子は、毎日のように訪ねて来るようになった。大抵は夕方に訪れ、夜七時には帰っていく。その日々の数時間、二人は熱心に語らい、笑い、窓から見える景色を楽しんだ。
時が進む毎に、藤子は透を知っていった。彼が自分の運命の中でどれほど努力してきたかということ、そして、どれだけ心根の優しい青年かということ。その度に、涙が流れそうになるのだが、彼女はそれを、笑いでごまかした。
季節は、夏を迎えようとしていた。
その日も、時計が七時を指すと、彼女はそそくさと鞄を持ち上げた。
「それでは、今日はこの辺りで…」
透は、彼女の細い首筋をちらりと見ると、すぐにそこから視線を外した。
「もう、梅雨も明けましたし、日も長いでしょう。送らせますから、もう少し宜しいのでは?」
藤子は、僅かに視線を彷徨わせると、首を振った。相変わらずの後れ毛が彼女の荒れた額に落ちる。
「いえ…世間体もありますから、やはりこの時間には…」
そう言って、視線を逸らす藤子の両肩を、透はそっと掴んだ。切れ長の瞳で、彼女の顔を覗き込む。
「…藤子さん、私は貴女を愛しく思っています」
そう、透は、とっくにその気持ちを自覚していた。そしてそれを告げようと、ずっと機会をうかがっていたのだ。下手に告げれば、彼女は慄き、逃げてしまうだろう。透は柔和な笑みで自らの欲を隠し続けてきた。
藤子は、信じられないといった面持ちで透を凝視する。控えめな目が混乱に揺れていた。
何の返事もしない藤子に焦れた透は、そのまま腕の中に閉じ込める。細く骨ばった感触と、自分より少し高めの体温が伝わってくる。赤茶けたくせ毛の髪が、うなじで絡まっていた。
「…今日は、帰らないでください」
聞こえるか聞こえないか、その程度の声音で呟かれた言葉に、藤子は身を固くした。
――――……
寝台で、藤子はいつも泣いていた。透が優しくすればするほどに、彼女は多くの涙を流した。
「私と一緒になるのは嫌ですか?」
そう尋ねる度に、藤子は顔を覆ってゆるゆると首を振る。それが透にとっては、何よりの免罪符となった。
二人の関係が変わっても、藤子は変わらず透を訪ねた。窓辺で語らい、夜を共に過ごし、朝焼けを共に浴びた。
そうして、夏が過ぎようとしていた頃、突然、藤子の訪れが途絶えた。二日、三日と進むにつれ、透の心は鉛のように重くなっていく。これまで、彼女は、殆ど毎日のようにやって来ていたのだから。そして、どうしても行けない日には必ず、何らかの連絡が入っていた。四日目にして、何の連絡もない。無論、携帯も繋がらない。
とうとう一週間目の朝、透は彼女の父親の会社を訪ねていた。事前に連絡はしていない。受付に寄るつもりもなかった。マスターキーで裏口から入ると、我が物顔でエレベーターに乗る。そして、社長室を目指した。そう、彼女の父親に、彼女との交際を正式に申し込みに来たのだ。
頭の何処かで、それは自分の責務に反していると分かっていた。家族は彼女のことを知ってはいたが、恐らくただの遊びだと思っていたに違いない。透ですら、そんな自分が信じられなかった。しかし、彼女へ向ける気持ちが本物だと気付いたとき、そして何より、初めて彼女を抱いたとき、透はその事実から目を背けることができなかった。
きっと、誰よりも、彼女のことを愛してしまっているのだと。
エレベーターが、静かに最上階に到着する。そこを降りると、眼前に目的の部屋があった。透は、一歩、歩みを進める。すると中から、変わったイントネーションの、あの懐かしい声が聞こえた。
「お父様、後生ですから、もうやめさせてください。私はもうこれ以上、あの人に抱かれるわけにはいきません。子供が、子供が…できてしまったんです…」
「何!願ったりかなったりではないか。よくやった。後はそれを盾に入籍していただけば…お前のような娘が、まさかこんな役に立つとは…」
「嗚呼、お父様、それだけは、それだけはご勘弁ください。この子は、どうか私一人の手で育てさせてください。生涯に一度の頼みでございます」
それから、声を荒げて何とか納得させようとする男と、泣きながら拒み続ける女の問答が、随分長い間繰り返された。その間、透は目を見開いたまま、その場から動けずにいた。全身が、冷たい汗でしっとりと濡れ、耳に聞こえる音が、やけに大きく感じられた。
とうとう、男は疲れきった声で、こう告げた。
「分かった。お前がそれほど嫌がるものは仕方がない。両手両足を縛り付けて嫁がせるわけにもいかん。腹の子のことは、私が先方に話しておこう…これまで、父の命令に従順に従った褒美だと思っておけ。ご苦労だった」
結局透は、その場から一歩も動けなかった。もし動けば、膝から崩れ落ちてしまいそうだった。悲しみや恨みは、自然と全く湧いてこなかった。ただ、最後に抱いた彼女の頬は、やはり涙に濡れていた、とぼんやり思い出していた。
「そうだったのか」
透は、ぽつりと呟いた。
私は彼女を無理矢理抱いてきたのか。
――――……
それから、透は彼女のことを両親に話した。先方から相談があった後だったようで、両親は既にどう対処していくか細かく決定を下していた。
彼女の子供は男でも、女でも、名前は光。そして、その子は成宮家の第三子、つまりは透の弟妹として扱われるとのことだった。彼女は、この近くの成宮家所有の屋敷に、たった一人で住むらしい。使用人という名の見張りと共に。
この事実を知る者は、透とその両親、そして藤子とその父親の五人に、何としてでも止める。後の家の者には、藤子は国和の愛人であると説明し、それ以上の追求は避ける。透は、それを、なるべく無感情に受け入れた。感情を自覚すれば、叫び出しそうだった。
それから、悲しげに微笑みながら透を抱きしめる両親に、透は心底後悔した。自分は、大切なものを見誤ったのだ。「申し訳ありません」そう繰り返す、今にも泣き出しそうな息子を、マーガレット夫人はひたすらさすり続けた。
――――……
夜、特に月の綺麗な晩には、彼女のことを思い出した。心配になる程色の悪い荒れた肌に、いつも情けない表情をしている黄色い顔。すぐに絡まって、手で梳くことのできない髪。そして、そこに流れ落ちる涙。
そんな日には、透はひたすら彼女の姿に思いを馳せた。
もし、一緒になると言ってくれたなら、もっと良いものを沢山食べさせて、少しは太らせてあげたのに。
そんなくだらない考えに、透は笑った。
何年経とうと、そんな夜は減ることがない。そして、年月が経つ程に、我が子をこの手に抱きたくなる。一度も見えたことのない「光」は、一体、どんな子なのだろう。
そして、彼女は、こんな夜を、一体、どう過ごしているのだろうか。
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