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【番外編】溺愛時間を確保する為にすべき事とは?(side:大貴)

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和奏が彩羽コーポレーションの受付から保育士へと転職する過程で、現在は花野井百貨店にある保育施設へ研修に行っている。

彩羽コーポレーション独自の保育施設が完成すれば、研修は終了する。

今までみたいに同じ職場ではなく上がり時間もまちまちな為、電話やメールでのやり取りが主となり、休日しか会う事が出来ない。

お互いに会える時間を確保したいからこそ、俺の自宅付近で和奏が引っ越し出来る物件を探している。

休日に不動産を巡ったり、ネットで物件閲覧をしているが…残念ながら和奏が望む条件の物件はないのだ。

「やっぱり、一等地周辺は高いですね!私には手が出せませんよ!」

物心がついた頃から副社長宅にお世話になっているのだが、いざ物件を探すとなるとこの辺りが高級住宅街なんだと嫌でも感じさせられる。

今思えば…高級住宅街に居候出来る事自体が幸せでもあり、複雑な家庭環境そのものだったとも思う。

「…多少高くても、俺も協力するし大丈夫なんじゃない?」

「協力なんて嫌です!家賃を手伝って貰う事なんて出来ません!」

「真面目だね、和奏は…」

今日は休日で朝から夕方まで物件探しに出かけていた。

歩き疲れてしまい、珍しくデパ地下の惣菜を購入し、和奏の住むアパートへと辿り着き荷物を降ろしてくつろいでいる。

和奏の手料理が食べられないのは残念だが、和奏も疲れ切った様子だからたまには惣菜も良いだろう。

「明日は物件探しは中止にして、どこか出かけない?」

「…そうですね、次の契約更新まで二ヶ月はありますから明日はお休みにしましょうか?」

「うん、その方が良いと思うよ。思い詰めて焦って探しても良い物件が見つかる訳じゃないしね?」

隣に座る和奏の頭を優しく撫でる。

休日の度にほぼ和奏と過ごす日々。

最近は家事や留守番などをお手伝いの染野さんにばかり任せているが、和奏の存在を知られてからは、休日に自宅に居ると社長や染野さん自体に追い出される。

『 いい歳をした男性が家事手伝いをしないで下さい!』とか、『 和奏さんが待ってるんですから相良さんは早く支度して出かけなさい』と言う感じで追い出されている。

最近は花嫁修業の為に副社長の婚約者の秋葉さんが染野さんに料理を教わりに来ているので、染野さんもやりがいがあるのだと言っていた。

「お休みの度に大貴さんと一緒に居られるから嬉しいです」

ぎゅうっと俺の右腕に両手を絡めて、ピタッと寄り添う和奏がとても可愛いらしい。

最近は"相良さん"ではなく、"大貴さん"と呼んでくれる。

呼び捨てで良いと何度も言っているのだが、彼女は恥ずかしいと言って中々呼んではくれない。

「明日はどこに行きたい?」

「大貴さんはどこに行きたい?」

「答えになってないんだけど…!」

「あはは、そうですね。私はたまには…遊園地とか行ってみたいです」

「遊園地…」

子供の頃はたまに行った事があるけれど、最後に行ったのは大学時代か?

「乗り物苦手ですか…?」

「いや、子供の頃は結構、ジェットコースターとか好きだったけど…しばらく行ってないかも…」

「じゃあ、ストレス解消にもなるし行きましょう!どこが良いかなぁー?」

「何で急に遊園地?」

「えっと…保育園の子供達と遊具で遊園地ごっこしてたら、久しぶりに行きたくなりました!」

「……そっか」

ニコニコしながら話す和奏に完全に負けた。

この歳になって遊園地デートとか恥ずかしい気もするが、和奏が望むなら致し方ない。

「早めに食事を済ませて、明日は早起きしましょ」

「…そんな事言ってるけど、起きれないのは和奏だと思うんだけど?」

「そ、それはっ、大貴さんのせいでしょ!」

「……そぉ?」

「そうです!大貴さんがなかなか寝かせてくれなっ…。と、とにかく、今日は早く寝るんですってば!」

自分で人のせいだと言い張った癖に、頬を赤くしながら誤魔化している姿が何とも言えずに可愛い。

子供の頃から世界で一番可愛い生き物は猫だと信じていたが、最近では"和奏"が逆転している。

猫を抱っこしたり、撫でたくなるように…可愛くて仕方なくて、和奏に触れたくなるのだ。

「じゃあ、先にお風呂入る?」

「お風呂入ってからご飯でも良いですよ」

「……一緒に入ろっか?」

「…っえ、それはちょっと…」

和奏の額に自分の額を触れ合わせて、近距離で聞いてみる。

和奏が同意すれば一緒に入っても良いかな?とも思って聞いてみたけれど、目を泳がし拒否された。

「……背中流すくらいなら、大貴さんにしてあげますよ?」

「何それ?俺だけ?」

「はい、そうです…」

「お返ししなきゃね?」

「い、いいですー」

和奏が耳まで真っ赤にして否定するから、更にからかいたくなる。

こんな日常も悪くない。

和奏の居ない世界など暗闇と同じで、それほど迄に俺に光を差し伸べてくれている。
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