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LAST*社内恋愛の絶対条件!"溺愛は退勤時間が過ぎてから"
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───その後の話し合いの結果、年内一杯で彩羽コーポレーションを辞める事になり、年明けからは花野井百貨店の保育園に研修へと向かう予定。
仕事中だと言うのに奈子ちゃんは、目を潤ませている。
「今日で先輩と働くのが最後だと思うと…寂しいです…!」
「私だって寂しいよ。まだまだ一緒に働きたかったよ」
「派遣先のどの方よりも、優しく丁寧な対応をしてくれた先輩が大好きなんですっ。奈子はぁ…相良さんとの恋が実るように…っく、いのっ、て…ます…」
ついに奈子ちゃんの涙が決壊してしまい、声を押し殺しながら泣いている。
私だって寂しくて泣きたいけれど、二人で泣く訳には行かない。
頬を伝う涙がポロポロと受付テーブルに落ちてしまっていたので、奈子ちゃんを化粧室に誘導した。
可愛い後輩の奈子ちゃんが出来て、相良さんに一目惚れして付き合う事になって…元カノの麗紗さんも出てきたりして…あっという間の数ヶ月だった。
奈子ちゃんにはまだ伝える事が出来ないけれど、応援してくれたおかげで恋が実りました。
伝える事が出来ないのは騙しているようで申し訳ないのだけれど、正式に保育園勤務になれば、相良さんとも職場が別になるから伝えても大丈夫だと思うんだ。
今後はプライベートで会えたら良いな、と心から願う。
今日は私の受付嬢としての最終日でもあり、年内の仕事納めの日なので、奈子ちゃんの気持ちが落ち着き次第、私は会議室の掃除へと向かった。
会議室の中を掃除機をかけ、テーブルを拭いてから整えて…いつもより念入りに掃除する。
さほど汚れてはいないけれど…感謝の気持ちを込めて綺麗にしなきゃ。
「いつも綺麗にしていただき、ありがとう御座います」
ドアに背を向けて作業をしていると背後から聞き慣れた声が飛んで来た。
クルリ、と後ろを振り向くと声の主は想像通りのは人で嬉しくて顔がほころぶ。
「相良さんに告白した日と同じシチュエーションですね!」
勢い余って告白した"あの日"と光景は同じだけれども、1つだけ違う事と言えば…会議室のドアが閉められて鍵の締まる音がした事だった。
おいでおいでーと無表情で手招きされ、暖かいペットボトルのカフェオレを手渡された。
整えたばかりの椅子を引き出し、ちょこんと座らせられる。
その隣には相良さんが座り、手渡されたカフェオレと同じ物を飲んでいる。
「ちょっと休憩…」
『ふぅっ…』と小さく溜息を吐き、少しだけ崩れた前髪をかきあげる。
黒縁メガネの隙間から流し目で見られるとドキドキが止まらない。
最近、会社以外では眼鏡を外しているので眼鏡姿の相良さんを間近で見るのは久しぶりなのだ。
チラチラと見ていると目が合ってしまい、恥ずかしくなり思い切り目を反らす。
な、何やってるんだろう…私?
「和奏はいつまでも初々しいね。何がそんなに恥ずかしいの?」
「……え、ちょ、…と…」
ジリジリと追い詰められて、眼鏡をかけた奥の瞳から見つめられたまま、顎に触れられて口角を上げられる。
「いつまでも敬語だし、名前も呼んでくれないし…いつになったら普通に接してくれるの?」
み、見つめられたままなんですけど!
目を反らしたいので、キュッと唇を噛んで目を瞑ると…目元に柔らかい感触がした。
「…………!」
「和奏、顔が真っ赤だよ」
「さ、相良さんが、お、追い詰めるからっ!」
クスクスと笑う相良さんが、余裕たっぷりで憎たらしい。
っぷぅ、と膨れっ面のままでカフェオレを一口含むと相良さんに反論した。
「いっつも余裕そうでムカつきます。私の方がお姉さんなんだからね!」
「…ははっ、知ってるよ。4ヶ月だけね」
相良さんの誕生日は2月なので、10月産まれの私より少しだけ遅い。
勢い余って返した言葉が子供地味た反論で相良さんに笑われる。
「…ぅー、相良さんのバカッ!」
よしよし、と頭を撫でられた。
俯いて下を向いて居ると、落ちてきた前下がりの髪の毛を耳にかけてきて、少しだけ上を向かされて唇が重ねられた。
「もう離れて行かないで。俺は和奏だけが側に居てくれたら、他には何も望まないから…」
相良さんの言葉の中には沢山の意味合いが含まれていそうだったけれど、私にはただ、ひたすらに嬉しくて……
首を縦に振っただけだった。
「ピアニストになるのは挫折してしまったけど、子供達もピアノが好きになると良いね。…まぁ、親の勝手な理想論だけど…」
「きっとなりますよ!孫がピアニストになってくれたら、うちの両親や相良さんの御両親も喜びますよね。…そんな未来が来ると良いですね」
相良さんは声を出さずに口角を上げて、少しだけ微笑んでから…
「ピアニストを目指していた時もあったけど、今の仕事は充分過ぎる位にやりがいもあって、これから先はもっとやりがいを感じると思う。
何年か後には花野井百貨店の親会社、花野井不動産に移動になって、そこでも有澄君と共に業績を上げなきゃいけない。
くたくたになって帰って来て、和奏と子供がおかえりって出迎えてくれたら疲れも吹き飛ぶかな…と思う」
と言った。
私は純粋に子供達の中からピアニストが誕生したら良いなとは思うけれど、相良さんにとっては少し違う考え方なのかもしれない。
副社長は花野井不動産の後継者候補なので、いずれは相良さんと共に移動になるらしい。
そしたらもっと仕事も大変になるし、帰りも遅くなるだろう。
移動になるまでには『籍を入れよう』って相良さんが言ってくれている。
実際に結婚生活が始まってからになるけれど、猫も家族に迎えるつもり。
"猫と暮らす"事が相良さんの囁かな夢らしいから……。
子供も居て、猫も居て、愛が溢れた賑やかな生活を想像してしまう。
相良さんとなら、絶対に幸せになれる。
……だって、誰よりも私の事を大切に扱ってくれるし、一番で考えてくれているもの。
二人きりの時の相良さんはとっても激甘なんですよ!ってバラしてしまいたい位に、自分でも自覚出来る程に溺愛されている。
「……さてと、俺はもう行くから、和奏は早く掃除を済ませて戻りな。今日はもう会えないけど…帰ったら連絡して」
「…は、はいっ。良いお年をお迎え下さいっ」
「はぁ?和奏は年内まで会わないつもりなんだ?…別に良いけどっ」
椅子から立ち上がった相良さんに上から、ギロリと睨みつけられた。
久しぶりの威圧感に硬直してしまう。
「わ、わ…、ち、違いました!間違えです。今のは!受付で別れ際の挨拶をされた時に返答してるので間違えました…」
「ばぁーかっ!…まぁ、和奏らしくて楽しいけど…」
頭をポンポンと軽く叩きながら、笑顔になった相良さんに思わず抱き着いてしまう。
「今日は奈子ちゃんと食事に行きますけど…明日は何にも用事がないので、朝にお迎えに来てくれます?」
「さぁ?気分次第かな…」
「相良さんの事だから絶対に来ます」
「…じゃあ、名前で呼んでくれたら考える」
「…だっ、大、…貴…」
「……うん」
「…………大貴、これからもよろしくお願いします」
名前を呼ぶのがこんなにも恥ずかしくて、緊張するのは相良さんにだけで…大好きなのに上手く呼べない。
相良さんの胸元にポスンッと顔を埋めて、背中に手を回してぎゅっと力を入れる。
職場では今日がお別れだと思うと様々な事柄が浮かんで来て、目尻に涙が浮かんで来る。
奈子ちゃんともお別れしなきゃいけないし、慣れ親しんだ受付嬢としての仕事も終わる。
相良さんにも職場では会えないし、当然だけれど…いつも気にかけてくれる秋葉さん達にも会えずに来年からは一人で新たな場所に向かわなければならない。
「…子供じゃないんだから、いちいち泣かない。一歩踏み出さなきゃ前に進めない事、和奏が一番知ってるでしょう?」
大体の検討がついている相良さんは根掘り葉掘り聞く訳ではないが、気持ちを察してくれているので慰めてくれる。
「………はい」
「ここで告白された時は本当に驚いたけど、内心は嬉しかったんだ。まさか和奏から声をかけられるとは思わなかったから…。職場では会えないし、新しい職場では初めは和奏も一人ぼっちで寂しいだろうけど…可能な範囲で送迎するから…泣くな」
「……はい。もう泣きません」
"よしよし"と頭を撫でられたが、名残惜しくて離れられない。
「……冷酷な相良さんは実は激甘なんですよーって最後に皆にぶちまけたいですが、私だけの秘密だから内緒にします」
「どうぞ、御勝手に。その代わり、その相当の対価を明日貰うけど良いの?」
「………?対価?」
「冷酷らしい相良さんは明日、和奏を泣くまで貶めようとして寝かせるつもりは無いですが良いですか?」
「……や、やですー。ちゃんと寝たいです」
「そぉ?じゃあ、内密に」
最近の溺愛っぷりは自分で言うのも恥ずかしい位に半端なくて、相良さんが泊まりに来た時は濃密で甘美な時間を過ごし、翌朝に起きられない私の為に朝ごはんまで用意が出来ている。
どこに出かけるにも送迎付きだし、仕事帰りも可能な限りで送ってくれている。
こんなに過保護に溺愛されて良いのでしょうか?
「……じゃ、良いお年をお迎え下さい」
「あ、わざと言ってるーっ!」
おでこに軽く触れるだけのキスを落とし、抱きついた身体をベリッと剥がされて、クスクスと笑いながら立ち去る相良さん。
「これから先も…退勤押したら可愛がってあげるから大人しく待ってて」
去り際に耳元で囁かれた言葉が、心の中を侵食する。
付き合って居るのに相良さんの妖艶なギャップに翻弄されて、毎日の様にドキドキが止まらない。
顔を赤らめながら掃除に集中するが思い出すのは、相良さんの事ばかり。
一生に一度、溺れる恋愛があったとしたら、それが相良さんとの恋愛なのだと思う。
見かけは冷酷な眼鏡男子に溺愛されているだなんて、誰にも想像つかないかもしれないが…それは私と相良さんだけの秘密───……
・*:..。o♬*゚END・*:..。o♬*゚
仕事中だと言うのに奈子ちゃんは、目を潤ませている。
「今日で先輩と働くのが最後だと思うと…寂しいです…!」
「私だって寂しいよ。まだまだ一緒に働きたかったよ」
「派遣先のどの方よりも、優しく丁寧な対応をしてくれた先輩が大好きなんですっ。奈子はぁ…相良さんとの恋が実るように…っく、いのっ、て…ます…」
ついに奈子ちゃんの涙が決壊してしまい、声を押し殺しながら泣いている。
私だって寂しくて泣きたいけれど、二人で泣く訳には行かない。
頬を伝う涙がポロポロと受付テーブルに落ちてしまっていたので、奈子ちゃんを化粧室に誘導した。
可愛い後輩の奈子ちゃんが出来て、相良さんに一目惚れして付き合う事になって…元カノの麗紗さんも出てきたりして…あっという間の数ヶ月だった。
奈子ちゃんにはまだ伝える事が出来ないけれど、応援してくれたおかげで恋が実りました。
伝える事が出来ないのは騙しているようで申し訳ないのだけれど、正式に保育園勤務になれば、相良さんとも職場が別になるから伝えても大丈夫だと思うんだ。
今後はプライベートで会えたら良いな、と心から願う。
今日は私の受付嬢としての最終日でもあり、年内の仕事納めの日なので、奈子ちゃんの気持ちが落ち着き次第、私は会議室の掃除へと向かった。
会議室の中を掃除機をかけ、テーブルを拭いてから整えて…いつもより念入りに掃除する。
さほど汚れてはいないけれど…感謝の気持ちを込めて綺麗にしなきゃ。
「いつも綺麗にしていただき、ありがとう御座います」
ドアに背を向けて作業をしていると背後から聞き慣れた声が飛んで来た。
クルリ、と後ろを振り向くと声の主は想像通りのは人で嬉しくて顔がほころぶ。
「相良さんに告白した日と同じシチュエーションですね!」
勢い余って告白した"あの日"と光景は同じだけれども、1つだけ違う事と言えば…会議室のドアが閉められて鍵の締まる音がした事だった。
おいでおいでーと無表情で手招きされ、暖かいペットボトルのカフェオレを手渡された。
整えたばかりの椅子を引き出し、ちょこんと座らせられる。
その隣には相良さんが座り、手渡されたカフェオレと同じ物を飲んでいる。
「ちょっと休憩…」
『ふぅっ…』と小さく溜息を吐き、少しだけ崩れた前髪をかきあげる。
黒縁メガネの隙間から流し目で見られるとドキドキが止まらない。
最近、会社以外では眼鏡を外しているので眼鏡姿の相良さんを間近で見るのは久しぶりなのだ。
チラチラと見ていると目が合ってしまい、恥ずかしくなり思い切り目を反らす。
な、何やってるんだろう…私?
「和奏はいつまでも初々しいね。何がそんなに恥ずかしいの?」
「……え、ちょ、…と…」
ジリジリと追い詰められて、眼鏡をかけた奥の瞳から見つめられたまま、顎に触れられて口角を上げられる。
「いつまでも敬語だし、名前も呼んでくれないし…いつになったら普通に接してくれるの?」
み、見つめられたままなんですけど!
目を反らしたいので、キュッと唇を噛んで目を瞑ると…目元に柔らかい感触がした。
「…………!」
「和奏、顔が真っ赤だよ」
「さ、相良さんが、お、追い詰めるからっ!」
クスクスと笑う相良さんが、余裕たっぷりで憎たらしい。
っぷぅ、と膨れっ面のままでカフェオレを一口含むと相良さんに反論した。
「いっつも余裕そうでムカつきます。私の方がお姉さんなんだからね!」
「…ははっ、知ってるよ。4ヶ月だけね」
相良さんの誕生日は2月なので、10月産まれの私より少しだけ遅い。
勢い余って返した言葉が子供地味た反論で相良さんに笑われる。
「…ぅー、相良さんのバカッ!」
よしよし、と頭を撫でられた。
俯いて下を向いて居ると、落ちてきた前下がりの髪の毛を耳にかけてきて、少しだけ上を向かされて唇が重ねられた。
「もう離れて行かないで。俺は和奏だけが側に居てくれたら、他には何も望まないから…」
相良さんの言葉の中には沢山の意味合いが含まれていそうだったけれど、私にはただ、ひたすらに嬉しくて……
首を縦に振っただけだった。
「ピアニストになるのは挫折してしまったけど、子供達もピアノが好きになると良いね。…まぁ、親の勝手な理想論だけど…」
「きっとなりますよ!孫がピアニストになってくれたら、うちの両親や相良さんの御両親も喜びますよね。…そんな未来が来ると良いですね」
相良さんは声を出さずに口角を上げて、少しだけ微笑んでから…
「ピアニストを目指していた時もあったけど、今の仕事は充分過ぎる位にやりがいもあって、これから先はもっとやりがいを感じると思う。
何年か後には花野井百貨店の親会社、花野井不動産に移動になって、そこでも有澄君と共に業績を上げなきゃいけない。
くたくたになって帰って来て、和奏と子供がおかえりって出迎えてくれたら疲れも吹き飛ぶかな…と思う」
と言った。
私は純粋に子供達の中からピアニストが誕生したら良いなとは思うけれど、相良さんにとっては少し違う考え方なのかもしれない。
副社長は花野井不動産の後継者候補なので、いずれは相良さんと共に移動になるらしい。
そしたらもっと仕事も大変になるし、帰りも遅くなるだろう。
移動になるまでには『籍を入れよう』って相良さんが言ってくれている。
実際に結婚生活が始まってからになるけれど、猫も家族に迎えるつもり。
"猫と暮らす"事が相良さんの囁かな夢らしいから……。
子供も居て、猫も居て、愛が溢れた賑やかな生活を想像してしまう。
相良さんとなら、絶対に幸せになれる。
……だって、誰よりも私の事を大切に扱ってくれるし、一番で考えてくれているもの。
二人きりの時の相良さんはとっても激甘なんですよ!ってバラしてしまいたい位に、自分でも自覚出来る程に溺愛されている。
「……さてと、俺はもう行くから、和奏は早く掃除を済ませて戻りな。今日はもう会えないけど…帰ったら連絡して」
「…は、はいっ。良いお年をお迎え下さいっ」
「はぁ?和奏は年内まで会わないつもりなんだ?…別に良いけどっ」
椅子から立ち上がった相良さんに上から、ギロリと睨みつけられた。
久しぶりの威圧感に硬直してしまう。
「わ、わ…、ち、違いました!間違えです。今のは!受付で別れ際の挨拶をされた時に返答してるので間違えました…」
「ばぁーかっ!…まぁ、和奏らしくて楽しいけど…」
頭をポンポンと軽く叩きながら、笑顔になった相良さんに思わず抱き着いてしまう。
「今日は奈子ちゃんと食事に行きますけど…明日は何にも用事がないので、朝にお迎えに来てくれます?」
「さぁ?気分次第かな…」
「相良さんの事だから絶対に来ます」
「…じゃあ、名前で呼んでくれたら考える」
「…だっ、大、…貴…」
「……うん」
「…………大貴、これからもよろしくお願いします」
名前を呼ぶのがこんなにも恥ずかしくて、緊張するのは相良さんにだけで…大好きなのに上手く呼べない。
相良さんの胸元にポスンッと顔を埋めて、背中に手を回してぎゅっと力を入れる。
職場では今日がお別れだと思うと様々な事柄が浮かんで来て、目尻に涙が浮かんで来る。
奈子ちゃんともお別れしなきゃいけないし、慣れ親しんだ受付嬢としての仕事も終わる。
相良さんにも職場では会えないし、当然だけれど…いつも気にかけてくれる秋葉さん達にも会えずに来年からは一人で新たな場所に向かわなければならない。
「…子供じゃないんだから、いちいち泣かない。一歩踏み出さなきゃ前に進めない事、和奏が一番知ってるでしょう?」
大体の検討がついている相良さんは根掘り葉掘り聞く訳ではないが、気持ちを察してくれているので慰めてくれる。
「………はい」
「ここで告白された時は本当に驚いたけど、内心は嬉しかったんだ。まさか和奏から声をかけられるとは思わなかったから…。職場では会えないし、新しい職場では初めは和奏も一人ぼっちで寂しいだろうけど…可能な範囲で送迎するから…泣くな」
「……はい。もう泣きません」
"よしよし"と頭を撫でられたが、名残惜しくて離れられない。
「……冷酷な相良さんは実は激甘なんですよーって最後に皆にぶちまけたいですが、私だけの秘密だから内緒にします」
「どうぞ、御勝手に。その代わり、その相当の対価を明日貰うけど良いの?」
「………?対価?」
「冷酷らしい相良さんは明日、和奏を泣くまで貶めようとして寝かせるつもりは無いですが良いですか?」
「……や、やですー。ちゃんと寝たいです」
「そぉ?じゃあ、内密に」
最近の溺愛っぷりは自分で言うのも恥ずかしい位に半端なくて、相良さんが泊まりに来た時は濃密で甘美な時間を過ごし、翌朝に起きられない私の為に朝ごはんまで用意が出来ている。
どこに出かけるにも送迎付きだし、仕事帰りも可能な限りで送ってくれている。
こんなに過保護に溺愛されて良いのでしょうか?
「……じゃ、良いお年をお迎え下さい」
「あ、わざと言ってるーっ!」
おでこに軽く触れるだけのキスを落とし、抱きついた身体をベリッと剥がされて、クスクスと笑いながら立ち去る相良さん。
「これから先も…退勤押したら可愛がってあげるから大人しく待ってて」
去り際に耳元で囁かれた言葉が、心の中を侵食する。
付き合って居るのに相良さんの妖艶なギャップに翻弄されて、毎日の様にドキドキが止まらない。
顔を赤らめながら掃除に集中するが思い出すのは、相良さんの事ばかり。
一生に一度、溺れる恋愛があったとしたら、それが相良さんとの恋愛なのだと思う。
見かけは冷酷な眼鏡男子に溺愛されているだなんて、誰にも想像つかないかもしれないが…それは私と相良さんだけの秘密───……
・*:..。o♬*゚END・*:..。o♬*゚
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