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休息日には温泉にゆっくりとつかりましょう。

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「こんなに豪華なお食事……!食べる前に写真撮りたいです!」

「良いけど、冷めないうちに食べよう」

私はスマホで料理を写真に収めてから食べ始めると、一颯さんは自分の方からスマホで私の写真を撮りだした。

「ほら、こっち向いて!」

不意打ちに撮られた写真と声をかけられて撮られた写真は全て見せて貰えず、「後で」と言われてスマホをしまわれた。変な顔してるのは消して欲しかったのに確認出来なかった……。

「和牛はやっぱり美味しいですね。あと、お刺身も美味しいです」

「俺の分も食べるか?」

「美味しいので、一颯さんが食べて下さい!」

いざ食べ始めるとほっぺたが落ちそうな位に美味し過ぎた。和牛はとても柔らかく、お刺身には伊勢海老も乗っていた。

明日も休みだし、後片付けもしなくて良いから、時間を気にせずにゆっくりと食事を堪能しても良いんだ。普段は時間に限りがあり、次の日も仕事だったりして、一颯さんと一緒にゆっくりと食事をとる事はなかなかない。

それに何より、目の前には惚れ惚れしちゃう程に浴衣の似合っている一颯さんがいて、目の保養になっている。スーツ姿の一颯さんも格好良くて好きだけれど、浴衣姿はもっと好きかも!髪型もラフな感じが、また良いのです。箸を持つ姿がとてもセクシーな感じを醸し出していて、浴衣の隙間から見える鎖骨にドキドキする。私も写真に納めたい……!

「……何だ?和牛食べたいの?まだ残ってるからあげるよ?」

ジロジロと見ていたら、和牛が欲しいと勘違いされたようで必死に否定をした。先程は不意打ちで写真を撮られたので、仕返しとばかりに一颯さんの事も不意打ちでカメラに収めた。レンズ越しでも格好良さは変わらず、凛としている表情や姿が素敵である。

「……さっき、俺が勝手に撮ったから仕返しのつもりか?」

「それもあるけど、一颯さんの浴衣姿が気に入りました。普段とは違う格好良さがあります」

濃いめのグレーの生地に白のラインが入っているシンプルな浴衣だけれど、一颯さんにはそのシンプルさが似合っている。正に大人な着こなしと言うか、何と言うか……。いつまで見てても飽きない、麗しさ。私ももっと落ち着いた浴衣を選べば良かったかな。紺色に明るい色合いの花が描いてある浴衣にしてしまった。同じ紺色でも、もっと落ち着いたデザインの浴衣があったのにな。

「お前も世界一可愛いよ」

「………よ、酔ってます?」

「さぁな?」

一颯さんは見た目に変化は見られないが、言動と行動にほろ酔い感が出ている気がする。だって、今も……!

「ちょ、ちょっと!これは身動きとれません!」

向かい合わせに座って居たのだが、「お互いに写真を撮るよりも一緒に食べよう」と言われて、一颯さんの横に座ったつもりが……今は一颯さんの膝の上に座らせられてるんですが……!

しかも膝の上での横抱き、つまり座ったままでのお姫様抱っこ状態に耐えられそうもない。

「顔が真っ赤だな」

「だ、だって、食事中にこの座り方はまずいでしょ!」

「この姿勢でも食べられる。何なら、食べさせてやる」

一颯さんとは大人な関係も済みだが、いつもとは違うシチュエーションに悶絶してしまう。ただでさえ、一颯さんの浴衣姿に心を奪われているのに、これ以上、ドキドキさせないで……!

「……っん、」

一颯さんはグラスに入った日本酒を一口含むと私の唇を奪い、口移しで飲ませた。喉に通ると甘い味の後に少しだけ灼けるような感覚がした。

「地酒。俺には甘すぎたが、純米大吟醸だからフルーティで飲みやすいだろ?」

「……私には喉が灼けました」

「これで?甘くても駄目か…」

「……て言うか、降ろして下さい!」

恥ずかしいので一颯さんに懇願したが、肩をガッシリと抱かれているので離してくれないと降りられない。

「しかも一緒に食べよって言ったのに、お酒飲まされただけだし…」

「はいはい、分かった。はい、口開けて…」

一颯さんは箸で伊勢海老のお刺身を一切れつまみ、少しだけ醤油をつけてから私の口に入れた。行動に驚き、なかなか口を開けなかった私の口元に近付けて無理矢理に入れた感じ。

「次は何が良い?」

「じ、自分で食べれます。一颯さんにも食べさせてあげますか?」

「うん、食べる…」

手を伸ばして同じく伊勢海老のお刺身を一切れ箸で持ち上げると、箸を持つ手を掴まれて自分の口に運んだ。

「…んまい」

私には平気で食べさせたくせに、自分は照れくさいのかそそ草に口に運んでいた。そんな素振りを見せている一颯さんが可愛らしい。

その後に一颯さんの傍を離れないからと約束し、お姫様抱っこから前向きに座らせて貰った。今日はいつも以上にスキンシップをしている。

食事を済ませた後は旅館内を探検し、浴衣で入れるバーに行く事にした。誰にも気にする事はなく、手を繋いで堂々と旅館内を歩ける事に喜びを感じる。通りすがりの女性や女性従業員の目を一颯さんは惹いているのか、目線を感じた。隣に居るのが私でごめんなさい……。やっぱりつり合わないかな?


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